第1話-③ 魔法少女は修学旅行へ行きました。
私は、左手にコンパクトを持ち、空中へと浮かぶ。
そして、マップを見ながら目的地へと向かった。
風を切るように空中を飛んでいて、森林の香りが鼻を通り、私はリラックスした気持ちになる。
いつもはどこに目をやっても建物ばかりなためか、目に映る景色がとても新鮮に感じられる。
下を見ると、月夜に照らされた木の葉が色づき始めている。
私は、クラスメイトたちよりも京都を堪能できている気がして、修学旅行中に指令がきたのは嫌だったが、少し得した気分になった。
しばらく飛んでいると、私の現在位置と、目的地のピンが重なる。
私は、コンパクトを閉じると、胸元にコンパクトをつけた(魔法服とコンパクトが磁石でくっつくわけでも、引っ掛けるでもなく、魔法が施されており、魔法服とコンパクトがくっつくようになっている)。
気配を感じる方向を見ると、動いている影が見えた気がした。おばあちゃまからの指令対象かもしれない。
私は目を凝らしながら、急いでその影が見えた下へと降りる。
先程見えた影が2体だと確証できるところまで近づいた頃、その2体のうちの1体が、もう1体によって消滅された。
どうやら、残っている方の1体は人間のようだ。
私は、状況を確認すべく下へ降りることをやめないでいると、その人は私のいる方向へと飛んでくる。
そして、その人と同じ目線の高さとなったとき、私は目を見開いた。厳密にいうと、相手も目を見開いていた。
そんなことってあるのか。
まさか、17年間生きてきて、幼馴染のキテレツな格好を目の当たりにするとは思わなかった。
どう見ても、勇者だ。よくアニメとか漫画で見るような、勇者の格好をしている。
「な、何をしているの……?」
思わず声が出てしまった。
家が隣同士だというのに、ここ数年言葉を交わしていなかった。
「そっちこそ、なんだよその格好は……」
そう言われて、自分の姿を見る。
あ、忘れてた……。私は今、魔法少女の格好をしているんだった。
あまりにも驚きすぎて、私は自分自身がフリフリな魔法服に身を包んでいることを忘れてしまっていた。
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