第2話 夜の訪問者 2

40歳代の男性(以下田畑さん)にもその話をしましたが、そんなことは初めて聞いたと言って笑っていました。私が仕事に慣れて6か月経った頃、私が用事があって仕事に行けない事があってその日、田畑さんも行けなくておっくんが一人で仕事をしたそうです。


その時からおっくんは仕事を休むことが多くなりました。そして最終的に辞めてしまいました。派遣の営業の人に確認すると夜中に音がして怖いと言って辞めたといいます。


何か変な辞め方だなと思いましたがその時はそのまま精神的に弱い人なのかなと思って納得しました。それから1か月しないうちに新しい人が入って来ました。年齢はおっくんより少し年上の20歳代後半位の男性(以下たっくん)でした。


たっくんは不真面目ではないですがマイペースでゆっくり作業をするタイプでした。たっくんは基盤テストがスタートすると休憩室でタバコを吸っていて10~15分位で自分のパソコンの席に戻ってきてその繰り返しでした。


仕事としては土日祝日は基本休みですが、忙しい時だけ出勤してくれとの依頼があります。ある日休日出勤依頼がありましたが、私は予定があったので出勤は断りはした。


その次の日出勤してみるといつもはあまり話をしない田畑さんが話しかけてきてたっくんが昨日の夜、仕事の途中で勝手に帰ったというのです。よくよく聞いてみると田畑さんも昨日は出勤しておらず、たっくんが一人で仕事したそうです。


たっくんはマイペースだけど勝手に帰るような人ではなかったと思います。よく聞いてみると夜中に一人で仕事していると大きな金属音がして怖くなって帰ったと言います。


何か変な話だなと思いその日は2人で仕事を終えました。それから1か月しないうちに田畑さんも夜勤が辛くなってきて辞めることにしたと言ってきました。


そこから私一人の夜勤が始まり一人夜勤が3か月が経とうとする位から3階のフロアの2/3の消灯している方から小さい音ですが「カチャッ」という音がしているのに気付きました。


最初のうちは「カチャッ」と機械の動作音にまぎれていたのでわかりませんでしたが、考えてみたら人がいないのに音はしないなと思って3階フロア全ての照明を点灯させて隅まで確認しに行きましたが行くと音がしなくなるので気のせいかと思い、また仕事に戻りました。


そのうちにいつも音がしているのでそういう物かと思い気にならなくなりました。そこから2か月が経過して「カチャッ」という音が隣のパソコン辺りからしているのに気付き何かおかしいな?と再び思うようになりました。


そして数日後、一人仕事になって3か月が経つ頃の深夜3時過ぎにそれは起こりました。3階フロアの消灯している箇所から厚手の金属を両手に持って力いっぱいに叩きつけたかのような音が「カンカンカンカン」と音がしたのです。


最初は何が起こったかわからなくて暗闇をずっと見ていましたが、私しか人がいない暗闇の同じフロアでしかも深夜3時に金属を叩きつける音を出す作業はしないし、もし警備員がいてもそんな音出さないよね?と思い3階フロアを全て点灯させました。


フロアの端まで見に行きましたが誰もおらずこれはかなりおかしいと思い始め3階フロアの床から天井までの高さは3m位あって天井には直線型の蛍光灯が付いています。


そして、パソコンのキーボードと照明の間には何も邪魔する物は無いのですが、キーボードを打ち込んでいると黒い影が横切るのです。


帰りたい気分ででしたが仕事が終わってそれからは、自宅でも同じような「カチャッ」という音がするようになり着いてきたのかなと思い友人に相談すると霊感の強い人を紹介してくれました。


見てもらうと、今の派遣先の仕事場が霊の通り道になっていて着かれてしまったのではないかというのです。


通りすがりだから大丈夫だけど念のためお祓いしてもらった方が良いというのでネットで調べて霊のお祓いをしてもらえるお寺を探して行き「うちがそういうお寺だとよくわかったね」と言われました。気分的な問題かもしれませんがその日から音も金属音も黒い影もしなくなりました。


今思い出しても怖かったです。今でも思い出すと背筋がぞっとします。

これを書きながら背筋に寒気が走っています。

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黒い影 アーディ @ardy

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