第10話体育祭
6月体育祭当日
開会式が始まった。生徒達が入場し、校歌の斉唱や、宣誓が行われていた中、俺の心はどこか他の場所に飛んでいた。
今日の競技にあまり、やる気が出ない。2人も好きな人がいる。その事を考え、ぐるぐると考えていたからだ。
はっきりさせなきゃ、そして、自分に自信を持つ。そう言いながら欠伸をした。
綱引きが始まった、ダルかったけど、やり始めると夢中になるんだよな。
うりゃー!
引いてる、生徒達も一所懸命になって、踏ん張っている。それに鼓舞された俺も手に力が入る。
後少し、もう少し…最後に相手チームが体制を崩す。よっしゃあー。
おーし、勝った。意外と楽しかった。
友達少ない俺だけど、この時は、一丸になって頑張る素晴らしさを感じた。
穂乃果の視点
クラス対抗戦。私は運動が得意な為、100メートルクラス代表になった。
もちろん1位を取るのは、自信があった。長距離のが得意なんだけどなぁ。とは思ったけれど。
いよいよ、私の番…良し頑張るぞ。自分に気合いを入れてさて、行きますか。
晴人君私のこと応援してくれるかな?
可憐ちゃん…あれから何も言って来てない。
はぁどうなるんだろ。
私はここに来て、全く違う事を考えてしまった。全く情けないな、自分。
今はレース頑張んなきゃ。私は耳に集中をして、笛が鳴るのを待った。
パン、笛の音がなり、スタート…ふふ、スタートダッシュ成功。
1位取れそう。そう確信した、その時。
「穂乃果頑張れ!」
そう言われて私は彼を見た。ありがとう…あっ…手を振って答えようと、バランスを崩すしてしまった。
しまった。彼の声援が嬉しすぎて、気を取られちゃった。
「穂乃果! 怪我しなかった?」
「悪い俺が急に大きな声で声援送って、びっくりしちゃたよな。」
「ううん、私が考え事してたからだよ。
自分のミス…」と私は彼に言った。
先生が駆け寄って来た。保健室に連れて行くと提案したけれど。
「いや、俺のせいなんで、俺が送って行きます。」
そう彼は言った。
晴人君のせいじゃない。そう思っていたけれど、保健室に連れて行ってくれるので、何も言わなかった。
「大丈夫か、穂乃果ちょっと触るけど、嫌なら言ってくれ。」
「ううん、嫌じゃないよ。」私はそう伝えた。
彼の手が私をお姫様抱っこしてくれた。
その彼の手が少し震えていた。顔も私を見ないようにしていた。やっぱり好き避けなのかな。そう思うと安心した。
保健室のベットに乗せてくれた。
彼が保健室の先生と話しをして、レース中の事故や、私の状態に詳しく説明してくれた。
「捻挫をしてる訳じゃないみたいで、擦り傷が結構あります。」彼はそう先生に言った。
彼が私に近づき言った。
「俺、穂乃果の為に一位取る!
だから今回の事は気にするな。」と晴人君がそう言ってくれた。
…私の為なんて言っちゃ駄目だよ。彼の言葉に胸がドキドキしてきた。
彼が中学の頃にサッカーで勝つからと、見事にハットトリックを決めて勝ったことを思い出した。
風邪で弱ってる、私を励ます為に言ってくれた。けれど、彼はそのことを覚えていない。
「じゃあ行ってくる、そう言った彼を私は引き止めた。」
「待って、晴人君が1位取るところ、私も見たいから、連れって。」そう彼に伝えた。
前は晴人君の勇姿を見れなかった。
今度は、絶対に見たい。例え2位でも構わない。彼はサッカー部辞めてるから、今は1位取れないかも。
彼を信じなくてどうする?
私は、さっき考えた事を否定した。
そう、彼が絶対1位を取ってくれると信じる。
「大丈夫なん?」
「うん、大丈夫だから連れって、お願い。」
彼はため息をつき、先生に言って、連れて行きたいと言った。
先生もため息をついた。「ごめんなさい先生お願いします。」私からも先生にお願いした。
仕方ない、分かった。そう先生は言った。
「ありがとう先生。」
「またお姫様抱っこして。」
「我儘なお姫様だな。」彼はそう言って、連れて行ってくれた。
「疲れてない?」
「これぐらいなら疲れないよ。それに、一応運動自体は毎日してる。
いつサッカーまたやりたいってなるかもって考えてな。」
「そっか。」
彼と運動場に向かった。
しばらく経ち彼が呼ばれた。
「じゃあ行って来る。」
「うん、行ってらしゃい、無理しないでね。」彼にそう伝えた。
彼とお兄ちゃんが少し離れた場所で何かを話し合っているのが見てた。なんだろう、気になるなぁ〜後で、お兄ちゃんに聞いてみよう。
笛の音が鳴り、彼がスタート。
私はハラハラして見た。私は小さい声で応援した。
お兄ちゃんごめん。今回は負けてね。心でそう呟いた。
レース場で晴人君は、先頭のまま、2位は、陸上部の人だ。
うう、駄目…お願い…私は心から彼の勝利を願った。
あっ…お兄ちゃんが2位になった、まずい、晴人君が…ああっ…私は立ち上がって、痛みを堪え、晴人君頑張れっと声を上げた。
彼は見事に一位を取った。二位は、お兄ちゃんだった。
有言実行した彼は格好良すぎて、顔が火照って来た。完全に晴人くんに恋をしてしまっている。
「見てた? 」
「見てました…格好良すぎですよ!」
イェーイ、そう言いながら彼は親指を突き立て私にウインクした。
「晴人凄い、1位おめでとう。」彼にそう声をかけてきたのは、可憐ちゃんだった。
晴人…可憐ちゃんいつの間に呼び捨てで彼を…でもそっか…彼を好きになったんだから、それぐらい親しくなってるのも当たり前か。
私はそう思った。
男子も彼に声をかけてきた。「やるじゃねーか。
1位おめでとう。」
少し気が紛れた気がした。また女子に声をかけられたら、やきもち妬いてしまう。
彼と付き合ってもいないのに…私はため息をついた。今日だけで何回つくのだろう。
「レースで転んだの見たけど、大丈夫だった?」
男子の1人がそう声をかけて来た。
「うん、大丈夫、軽い擦り傷だから。心配してくれてありがとう。」私はそう答えた。
「あのさ、良かったら、俺と付き合わない?」
男子がそう言って来た。
う、いきなり…はぁ…心でため息をついた。
「ごめんなさい、私他に好きな人がいるから。」私こればかりはいつも同じ答えなんだ。
「まぁ、そう言わずにさ、付き合おうよ。その好きな人とは、付き合ってないんだよね?
穂乃果ちゃん。俺、その人忘れるぐらい楽しませる自信あるよ。」
「ありがとう、気を遣ってくれて、でもごめんなさい。その人のことで頭いっぱいだから。忘れるのは無理だと思うから。」
「付き合ってみないと分からないよね?」
「俺の妹に何か用?」
「お兄ちゃん。」
「いや、うん、ちょっとしつこかったかな。じゃ、また。」
「悪い虫が来ていたか?」
「お兄ちゃんありがとう、助かったけど、その言い方は、良くないよ。」
「ふん。」
「俺なら、告られたら、彼女いるんで無理です。可能性ゼロなんで諦めて下さい、って言うぞ。」
「お兄ちゃん酷い、心がないね。さすが魔王だ。」
「おい、それは違うぞ。変に優しくして可能性あると思われて、無駄に時間を俺に使うのなら、違う事に使わせようって、俺なりの気遣い。」
「穂乃果には分からないか。」
「じゃあさ、私が晴人君に、そう言われたらどう?
私凄い傷つくと思うよ。」
「そんな事言ったらぶっ飛ばしに行くな。はぁ…穂乃果様が正しいです。」
「よろしい。」
体育祭終了後
「真壁と言います。西条さん、一目見た時から好きでした。付き合って下さい。」
「ごめんなさい、私他に好きな人がいるから。」
「そうですか…はぁ。」
「ありがとう、気持ちはありがたいから、こんな私を好きになってくれて。気を落としたりしないでね。」
「いえ…いきなりこんなこと言って、すみません。でも、これからも仲良くしてくれたら嬉しいです。」
「うん、よろしくね。」私は笑顔で言った。
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