第5話誕生日

ベンチで待ち合わせだ。「美咲、来たか。」


「やぁやぁ、晴人〜はい、お弁当どうぞ。」


「おーありがとう。

めっちゃ上手いじゃん。美咲、料理上手じゃん。」



「ありがと、でもこれネタバレすると、親が作ったんだよね。」



「私が作ったやつ、親に食べさせたら、まずかったみたいで、代わりに作ってもらった。」



「そうなんだ…でも俺上手い料理より、美咲の気持ちがこもった料理のが良かったな。」



「晴人! お前ってイケメンは!

惚れてまうやろー。」


「うわ、いって、上から抱きつくなよ。当たり前の事言っただけだぞ?」


「そんなんで惚れんなよ。」


「このイケメンが! 私が1番望んでたこと言いやがって。」


「ふぅ…全く罪深い男ね、いつか刺されるわね。」



「怖い事言うなよ。」


「うふふ、ごめん。

お弁当食べよ。」


「ご馳走様、洗って返すよ。」


「いいよ、こっちで洗うから、じゃまた勉強してくる。マジでテストやばいから。」



「お、偉いまたな!」


「ええ、またね。」


ふわぁ〜食べたら眠くなってくるな。


「だ〜れだ?」


「まったく、すぐ分かるよ、穂乃果だろ?」


「正解〜!

さすが晴人君。」


「さすがなのか? 

ほぼ毎日聞く声だぞ?」


「ふふ…ねぇ横座っていい?」


「ああ構わないよ。」



「晴人君モテモテだから、2人きりに中々なれないよね? 久しぶりじゃない? こうして2人きりになるの。」


「いや、モテないって、そんな。」


「ふーん…さっきも美咲ちゃんと仲良くしてませんでした?」


「見てたのか? まぁ友達だから。」


「友達か…そっか。」



「明日晴人くんの誕生日だよね。祝いたいから明日お家来て?」


「えーいいよ、わざわざそんな、祝わなくても。」



「だーめ、来るの!」


「拒否権なし?」


「拒否権はあるよ? 嫌だったら、大丈夫。」



「うーん…分かった、行くよ。」

俺は、断る理由特にないなと。穂乃果元気なかったし、逆に勇気づけてやろうかなと思った。



「じゃあ決まり!  

良かった、じゃあ明日…楽しみにしてね。」


「うん分かった。じゃそろそろ教室戻るか。」


「そうだね。」



それから授業が終わった。


「晴人君、明日誕生日だよね?」


「可憐さん、そう明日誕生日。」


「もし良かった、明日アニメ映画観に行かない?」


「この前勉強の時アニメ好きだって話してたじゃない?

だから良かったら。」


「明日…ごめん明日は、友達と先約があって明後日なら大丈夫なんだけど。」


「いいよ、いきなりだもんね。明後日行こ。」



ふぅ〜良かった。もちろん可憐さんと行きたいとこだが、さすがに、穂乃果が俺の為に祝ってくれるのに、可憐さん優先させたら、罰があたるよな。


それに穂乃果後ろにいるし。


「ありがとう、じゃあ明後日よろしくお願いします。」



「うん、お願いします。」

と可憐さんが立ち去った。



これは間違いなく、デートのお誘いだよな。

可憐さんと両思い? かもしれない。



トントンと背後から穂乃果が指で突いた。


「晴人くん…いいの? 可憐ちゃんのお誘い断って。」


「当たり前だろ? 

先約優先、それに可憐さんとは、明後日行くし。」


「そっか、ありがとう、優先してくれて、ほんと嬉しい。」


「おう!」



「なんか誕生日って聞こえたけど、晴人の誕生日の日は、私と勉強するんだよね?」

美咲が聞いてきた。



「いや、さすがに誕生日勉強はしたくない。」俺は笑って言った。


「えーいいじゃん、もうすぐテストなんだから。私を助けると思って、一緒に過ごそ?」

美咲が甘える様に言ってきた。



「いや、もう先約があるから駄目。」


「私の誘いを断るとは〜さては、女だな?」


げほげほ、俺は咽せた。

鋭いな、美咲は、けど友達だ。と俺は思った。


「そっか〜残念だが、諦めるか。次回また誘うね。」


「分かった。まぁ今回は無理だから。」

 

「はいはい、そんな何回も無理いうなし。」


「悪い、せっかく誘ってもらったのに、まぁ埋め合わせはするさ。」


「無理して〜優しいな。分かった、また今度ね。」

美咲はそう言って去った。



しかし…誕生日に3人から誘いがあるとは…まさにカオスな状況だな。



うーん…小学生の頃思い出すな。同時に3人からデートに誘われて、1人とデートした。それで、デート後に告ったんだけど、そんなつもりじゃなかった。



あれは、ショックだったな。勘違いは、怖い。


「モテるね〜晴人くんは。そう、うしろから穂乃果の声が聞こえた。」


「いや…どうかな? 

俺より、穂乃果のがずっとモテるだろ?」



「それは…わかんない。」



「さて、明日に向けて今日は、早く帰って、早く寝るわ。穂乃果、明日よろしく!」



「うん、期待してて、晴人くんまた!」

 



穂乃果の自宅



「おかあさん、晴人君、明日誕生日だから、祝ってあげようと思ってお誘いしたから、明日お願いします。」


「あらあら、穂乃果ちゃんそう言う大事なことは、前もって知らせるのよ。」


「だって…断られるかもしれなかったし。」


「なら明日は早退しなさい、それでプロメイクしてる友達呼ぶから、色々準備しないと。」



「えーそこまでしなくて大丈夫だよ。」



「何言ってるの! 

あなたの大好きな晴人くんが来るんでしょ?

できるだけの事はするの。」


「大好きな晴人くん…って、おかあさん、お兄ちゃんから聞いたの?」


「聞かなくても、あなたの晴人くん見る目が恋する乙女になってたから、透ちゃんに、青春ですよー。なんて言われてピンと来たわ。」


「うぅ…変なこと晴人くんに言わないでね。」


「言わないわよ。」


「じゃあ明日お願いします。」


誕生日当日になった。



ピーンポーン。「あらいらしゃい、待ってたわ。」


「おかあさん、お邪魔します、今日はよろしくお願いします。」


「はい、さ、中に入って。」



「晴人くん、こんにちは、どうぞ座って。」

と見知らぬ女性が話しかけてきた。


え〜と、誰だ?穂乃果に声が似てるけど。


「初めまして、晴人ですよろしくお願いします。」透の知り合いかな?


「ぷぷ…違います〜穂乃果です。」



「マジか…穂乃果なん?」

ヤバい…可愛すぎる…しかもめっちゃタイプな顔じゃないか。


透明感がやばい…しかも目がめっちゃ訴えてくるものがある。

ふぅ…ドキドキする。慣れないとまずいな。

「可愛いでしょ〜穂乃果ちゃん。」

と彼女の母が言う。

「はい、めっちゃくちゃ可愛いです。」とつい言ってしまった。


「でしょう〜。さすが晴人君だわ。」とおかあさんが褒めるように言う。


「ありがとう、晴人くん。」

穂乃果が礼を言う。


「お誕生日おめでとう。」



ぎゃ〜その可愛いさで言うのは辞めてくれ。

ふぅ…とりあえず落ち着こう。


「ありがとう。」そう言って俺は飲み物を口に含んだ。


「晴人くんはいつ、穂乃果をお嫁に貰う予定?」

彼女の母が言った。


俺はそれに吹き出してしまった。

ゴホッゴホッ。


「晴人くん大丈夫?」

おかあさん変な事言わないでって言ったじゃん。


「ほんと親子そっくり、お兄ちゃんみたい。」

と親子である穂乃果が言った。


穂乃果がハンカチで俺の顔を拭いてくれた。お礼を言おうと思って、ふと見ると、彼女と顔が近くになっていた。

俺は恥ずかしくて彼女の視線から逃れた。



「さぁケーキ蝋燭の火消して」。穂乃果の母が言った。


ふぅ〜俺は火を消した。


「ぱちぱち、お誕生日おめでとう!」

2人の優しい声が心地よく聞こえた。


「ありがとう、来てよかったよ。」

お礼を言った。


「ふふ、良かった。

穂乃果がケーキ食べて」と言って、お皿にケーキを持ってきてくれた。


「上手い、いやー美味しいね。」


「良かった〜。2人が言う。」


「穂乃果、晴人君に告白しないなら、私がしちゃおうかしら?」

旦那と別れて。


「ちょっと…おかあさん、もう、いい加減にしてください。」彼女が怒って言った。


「そうですね、俺おかあさんタイプかも。」


「晴人君! おかあさんに乗っからないの。」


はははと俺が笑ってみんなで笑い合った。


「ただいま!」


「透ちゃんね、いま行きます。」


「お帰り。」


「いやーサッカーの部活で疲れたわ〜。

おっわ。びっくりした。」


「晴人さんの彼女ですね。透です、よろしくお願いします。」



「ふふ、お兄ちゃん、私だよ?」

と穂乃果が笑って言った。



かうん、知ってる」。透がとぼけた感じで穂乃果に言った。



「うん…どゆこと? と穂乃果が透に聞いた。

あ…彼女…もうお兄ちゃん、おかあさんと一緒!」

と穂乃果が兄に怒って言った。


間違ってないだろ?

透が穂乃果に言った。


「いや…」俺は苦笑いした。


穂乃果が俺を見た。


「どうした?」 と俺は聞いた。


「晴人くんお兄ちゃんいつも、私のこといじるの。助けて?」


「駄目だぞ、透。妹をいじるなんて可哀想に。」

俺は透に注意した。


「そりゃないぜ。2人とも俺を悪者にして。」


「はは、まぁ座れよ。」

俺は透に言った。


「そうだな。」



「晴人くんはい、これ、プレゼント。」


「ありがとう、穂乃果。」


「俺からもプレゼント、それは妹だ。」



「おい…」透のジョークに俺は爆笑してしまった。


「あの…ねお兄ちゃん、そう言うジョーダン、恥ずかしいから。」


「悪い、ちょっと待って、晴人、これプレゼントな。」


「ありがとうな。」


こうしてみんなに祝ってもらい、至福の時を過ごした。


「今日はありがとうな。」

俺は言った。


「うん、楽しかった。

晴人くんばいばい。

気をつけて帰ってね。」

と穂乃果が言う。


「ああ、誘ってくれてありがとな。プレゼントも。それじゃ。」


手を振って俺はお別れをした。


帰り道にふと考えごとをした。

穂乃果ってもしかして俺の事好きなんかな?やっぱり。


そうでなければ、彼女の母親があんな事言わないよなぁ。でもなぁ、それで違ったら恥ずかしいな。

俺は戸惑いを覚えた。

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