第1話始まりの春

欠伸をしながら授業に耐えている。夜更かし大好き人間の俺は、今日ほとんど寝てないからだ。



「余裕ですねー」と後ろの席の子が声をかけた。俺の親友の双子の妹、西条穂乃果だ。



「いやー余裕ってより、ただ眠いだけ。」


「でも勉強めっちゃ出来るからでしょー?

ボーとしてても問題なしぐらい。」

笑顔で彼女が言う。



「お互い様でしょ?」と俺は呟いた。



「私はちゃーんと、真面目に授業受けてますからね。」と穂乃果は、頬を膨らませて言った。



「でも、俺に話しかけるのは、余裕があるって事しょ?」

と俺は彼女に返した。



「それは…いじわる…余裕だから話しかけてるんじゃないです。」


「じゃあなんだよ?」

俺は彼女を見て聞いた。



「いいですもう、知らない!」

と彼女は怒ってしまった。


先生は俺たちの会話に気付いてないが、何やら視線を感じる。嫉妬の熱い視線が。



彼女は、この学校1の美少女だ。そのせいで、俺に対して嫉妬の視線を、いつも周りがしてくる。


でも俺は、親友の顔が重なるから妹のようにしか見れない。



そりゃそうだ、双子だから、そっくりだし、どうしてもチラついてくる。



向こうも俺のことは、兄のように慕ってくれているのだろう。凄い馴れ馴れしく、体を密着させて、接してくる。



だから嫉妬なんて受ける筋合いはない。まぁ紹介してくれって良く言われるが、全て断っている。


それは、男子から穂乃果だけじゃなく、女子から穂乃果の兄も紹介してと、言われるのも一つの理由だ。


なにせ、学校1番の美少女、その双子の兄も、学校で1.2を争うほどのイケメンだから。



煩わしい。



紹介したら感謝されて仲良くなって…友達の輪が出来そう。だが俺はそういうのは間に合ってる。


それにあいつには、好きな彼女がいる。紹介なんてしても、迷惑になるだけだ。



授業が終わった。早く帰って寝たいと思った。


「晴人くーん」と声がして、いきなり後ろから抱きつかれた。


「なんだよ…穂乃果暑苦しい。」と俺は呟いた。



「良いじゃん、まだ春だし。ねぇ今日家に遊びに来ない? 」

と穂乃果が囁いた。


「おい、誤解されるようなこと…言うなって、少なくとも教室では、辞めてくれ。」

と俺は注意するように言った。


「えー…もう公然の仲でしょ?」



「なんの仲だよ?

行かない。今日は眠いから遠慮しとく。」



「可憐ちゃんも来るんだけど…仕方ない、親友と仲良く遊ぼうっと。」



俺の想い人の可憐さんが…それを早く言えよっ、と心で呟いた。



白鳥可憐さんは、穂乃果の中学校時代からの親友らしい。かなりの美少女で、やはり彼女も 穂乃果に近い人気がある。



俺は彼女の顔に惹かれたというより、清楚な感じに惹かれて好きだ。



なんだ、少し寂しそうにいうなぁ〜分かった。行ってあげるよ。と俺は行きたいとは、素直に言わなかった。



「わぁ〜晴人くんありがとう。眠いのにごめんね。彼女が嬉しそうに言った。」



そう明るく言われると、無下に出来ないな。と思った。



「穂乃果がうるさいから、目が覚めたよ。」


「ひどい! そんなこと言うの晴人くんだけだよ?」



「冗談だよ、穂乃果様の可愛い声で目が覚めました。」


「よろしい、許してあげます。でも様ってなんか引っかかるよ?」



「バカしにしてないよ? ちゃんと敬意を込めて言ったんだから。」

と俺は上手く返事を返した。


「そっか…私、気にしすぎだね。」



「それは気にしすぎだよ。」と俺は穂乃果の頭をポンと触った。



「仲がいいのね?」


俺はその声がした方を見る。

可憐さんだった。

微笑みを浮かべていた。



「可憐さん…まぁ兄妹みたいなもんだからね。」と俺は誤解されないように言った。



「今日穂乃果のところに遊びに行くみたいで、俺も行くので、よろしくね。」


「うん、楽しみ。晴人さんよろしくね。

と可憐さんが言った。その表情はとても愛らしい。」


少し見惚れていた。


「どうしたの、晴人さん?

何か気になる事があるのかな?」

可憐さんが不思議がって聞いた。



「いえなんでもないです…ちょっと疲れてるのかも。」

と彼女に言う。



あなたに見惚れてました!

とは言えないもんな。

と心で照れながら呟いた。


それから、みんなで、穂乃果の家に向かった。


相変わらず家が大きい。羨ましいね。と俺は呟いた。


穂乃果がドアを開き、「どうぞ入って」と言った。


「お邪魔します。俺と可憐さんで言った。」


何回も来ているから、緊張することはなかった。


とりあえずゲームで遊ぼうと、対戦ゲームでやりあっていた。


ソファーでくつろぎながら、可憐さんに質問した。


「2人の馴れ初め聞かせてよ。」


「私は昔は内気で、友達ができなくて、そんな時、お弁当食べていたら、声をかけてきた女子がいたんだ。」


「お母さんの手作りお弁当?

美味しそうじゃん! 私にもちょうだい。」って言ってお弁当をこぼしたの。


「わりぃ、手が滑った。それもったないから食べろよ。犬みたいにさ。」


「あははと周りが笑ってた時に、穂乃果が来たの。」


「ちょっと、こぼしたならちゃんと謝りなさいよ! 大丈夫? 可憐さん。って声をかけてくれて。」


「その時に、穂乃果と、友達になったの。」


「それを聞いて、やるじゃん、穂乃果ナイス!」

と俺は言った。


「イェーイ、でも、私当たり前の事言っただけだよ?」

穂乃果が謙遜して言ってるなと思った。


「その当たり前の事が出来ないんだよな。

それをやれた穂乃果は凄いよ。」と俺は感想を言った。



照れくさそうに、穂乃果は「ちょっと待ってて」と台所に行った。


「じゃじーん私が作ったクッキーだよ。みんな食べて。穂乃果が笑顔で言った。」



見ると、とても手の込んだチョコが合わさったクッキーだった。



はむっと口に含んだ。



「どう美味しい?」

と穂乃果が聞いた。


「うまっ、ほんと凄いなぁ、穂乃果は良いお嫁さんなれるよ。」と俺は褒めた。



「ありがとう! お嫁さんか…あのその…も」

穂乃果がお礼を言った。



「早く穂乃果彼氏作りなよ。もったいない。良い男捕まえな。」と俺は言った。



「むぅ…やっぱりクッキーあげない! 吐き出せ。」と穂乃果は訳の分からない事を言った。


「なんだよー食べさせろ。」と俺は何か、勘に触ること言ったかな?

と思った。


その横で可憐さんが笑っていた。


「ほんと変なやつだよ。と可憐さんに愚痴った。」


「穂乃果は子供ぽいところがあるから。晴人くんは大人ぽいよのね。2人とも、個性があって良いと思う。」と可憐さんがフォロー? する様に言った。



「そう言う可憐ちゃんも大人だと思う。私は子供ぽい…2人に比べたら…だよね。」と穂乃果が呟いた。



「穂乃果そう言えば、透は?」

と俺は穂乃果に聞いた。


「お兄ちゃんは、サッカーの部活で遅くなるよ。」


「そっか早速やってるか。」



「晴人くんはサッカー辞めたんだね。サッカーやってる晴人くん凄いカッコ良かったよ。」

と穂乃果が言う。


「時代は帰宅部だよ。可憐さんも穂乃果も帰宅部だろ?」



「私はまだやりたいことないから。今は勉強に専念したいかな。」と可憐さんが言った。



「私は…お兄ちゃんのいるサッカー部のマネジャーしようかと思ってたけど。時代は帰宅部だよね。」と穂乃果が同意した。



「そう言うこと。おりゃー」と俺はゲームに集中した。


しかし…俺と可憐さんは、穂乃果にフルボッコにされた。


「穂乃果…手加減しろよ。」



「強いわね〜ハンデか欲しいよね?

晴人さん。」と俺を見て言った。


「ごめん…2人ともゲストだから、接待プレイしないとだよね。」穂乃果が笑って言った。



「まぁ…そうだなぁ。良い考えが浮かんだ。穂乃果俺と可憐さんにアドバイスの方に回ってくれない?

それで上手くなれたらみんなで楽しめると思うんだよね〜」

と俺は彼女に提案した。



「うん!

良いよ、いっぱい教えてあげる。」

嬉しそうに彼女は言った。


その後俺たちは、仲良く遊んでいた。


「ただいま。」と玄関から声が聞こえた。


「お兄ちゃん帰ってきたね。」と穂乃果が言う。


「透か、お出迎えしないとな。」俺は立ち上がって言った。


「そうね。」と可憐さんも一緒に透のもとに向かった。


「おっ、皆さんお揃いで、お出迎えありがとう。」と透が笑顔で答えた。


「お邪魔してます。」可憐さんが笑顔で言った。


「ゆっくりしてってね。俺は部活で疲れたから、ちょっと今日は風呂入って寝るから。」透の表情は確かに疲れを感じさせた。


「ああ、もうすぐ俺も帰って寝るかな。今日は2人ともありがとうね。」


「うん、晴人くんありがとう。また遊ぼうね。」と穂乃果が手を振って笑顔で言った。


「私はもう少し穂乃果と遊んでるね。晴人さんまた明日学校で。」可憐さんも笑顔で言う。


「またね。」と俺は答えて帰路についた。

今日はよく寝れそう。そう思いながら3人で遊んだ事を振り返っていた。








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