最終話

柔らかな日差しが香奈美を包み込んでいる。

とても気持ち良さそうに眠る香奈美。

慌てたレイスがやって来る。


レイス

「ちょっと香奈美!呑気に寝てる場合!?」

香奈美

「え?……あ、おはよう。」


香奈美、のんびり起きる。

レイス、申し訳なさそうに俯く。


香奈美

「……どうした?」

レイス

「どうしたもこうしたも無いじゃない!」

香奈美

「……何が?」

レイス

「昨日、地球人を調べたの!」

香奈美

「伝説の僻地なんて載ってるの?」

レイス

「……そんなに分かんなかったけど。」


香奈美、笑う。

レイス、真剣な顔で香奈美を見つめる。


レイス

「……貴方達の生命維持が原始的だって事は分かった。」

香奈美

「……。」

レイス

「生命がストップしたら、それまでなんでしょ!?」

香奈美

「そうじゃない?普通。」

レイス

「そうじゃないよ!」

香奈美

「そうなの?」

レイス

「私はここでストップしたって星に核が冷凍されてるもん。」

香奈美

「ほう。不死身だね。」

レイス

「……数には個体差があるけどね。」


レイス、そう言う事じゃないと首を振る。


レイス

「香奈美、このままじゃ明日にもストップしちゃうかも!」

香奈美

「しょうがないよ。」


レイス、泣きそうになる。


香奈美

「でも、何か普通に元気。お腹も空かないし。レイスのお陰かなぁ?」


香奈美、そう言えばとお腹をさする。


レイス

「そんなの直に切れちゃうよ。」

香奈美

「それまでに直ると良いね、車。」

レイス

「……もう直った。」

香奈美

「良かったじゃん。」

レイス

「緊急無線も繋がった。」

香奈美

「おぉ!」

レイス

「香奈美の事も話してる。」

香奈美

「……。」

レイス

「何としてでも私は香奈美を連れて行くから。」

香奈美

「良いよぉ。地球の一部と化すよ。」

レイス

「何でよ……。」

香奈美

「レイス達の星と地球じゃあ、感覚が違い過ぎるしさ。」


香奈美、レイスに微笑み掛ける。


レイス

「そんなの、私が居るから問題ない。」

香奈美

「ドジなのに?」

レイス

「……。」


レイス、膨れる。

香奈美、笑う。


香奈美

「それに、きっと直ぐに飽きる。」

レイス

「そんな事ない!」

香奈美

「今が特別なだけ。」

レイス

「香奈美が特別なの。」

香奈美

「レイスには、ほんの数日かもしれないけど……。

私にとっては、何年。下手すりゃ何十年もの事なんだよ?」

レイス

「私の星は地球みたいに飽き性じゃない。」

香奈美

「分かんない、から。」

レイス

「私の事、信じられない?」

香奈美

「レイスは凄く良い子だよ!きっと地球人だとしても友達だった。」

レイス

「なら、どうして?」

香奈美

「……負担掛けたくないんよ。」

レイス

「そんな事思わない。」


香奈美、小さく笑う。

暫くの沈黙。


香奈美

「私が耐えられないから……。」

レイス

「え?」

香奈美 

「最期の地球人として、地球に残りたいのさ!」


香奈美の目から涙が溢れる。

レイス、覚悟を決めた顔で手拍子を2回打つ。

綺麗な音が響き渡る。


香奈美

「……何?」

レイス

「私の生命維持装置、止めちゃった♪」

香奈美

「は?!」

レイス

「これなら香奈美と同じスピードで過ごせると思う。」

香奈美

「ちょっと待ってよ!」

レイス

「核は冷凍保存されてる筈だから。」

香奈美

「何してんの!」

レイス

「一個以上はある、と思うから。」

香奈美

「思う?」

レイス

「冷凍保存の話は授業で習うんだけど……。

記憶を引き継げるのかは、よく分かんないんだよねー。」

香奈美

「……。」

レイス

「いったい何体目?って感じ。」


レイス、戯けて自分に指を差す。

香奈美、考えが追い付かない。


レイス

「この私がオリジナルという事に賭けるっ!」

香奈美

「……今からでも作動出来ないの?」

レイス

「しないよ。」

香奈美

「どうして!?」


レイス、にっこり笑う。


レイス

「素敵なプレゼントをくれた友達、置いてくなんて出来ないよ。」

香奈美

「……暇潰し相手で良いの!道連れになる事なんかない!」

レイス

「……ごめんね、こんなんにして。」

香奈美

「もう大丈夫だから。大した思い入れも無いしね。」

レイス

「さっき、地球と化すって言ったじゃん。」

香奈美

「……。」

レイス

「私が嫌だ。香奈美と居られなくなるの。」

香奈美

「レイスの星には友達が沢山居るでしょ?」

レイス

「また会えるっしょ。核あるし。」

香奈美

「……過ごした記憶は大事だよ?」

レイス

「一番大事な友達は香奈美。少なくともこの個体は。」


レイス、自分の胸を叩く。

香奈美、レイスを抱き締める。


香奈美

「本当に良いの?」

レイス

「もちろん。」

香奈美

「後悔しない?」

レイス

「しない。」


香奈美、レイスの胸で泣く。

ベットの上で抱擁する二人。

遠くで大きな爆発音がする。


(終わり)

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終末な週末 @yuzu_dora

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