第5話

激しく揺さぶられて起きる香奈美。


レイス

「もー、君は良く寝る子だなぁ。」


香奈美、安心した表情になる。

何処か自慢げなレイス。


レイス

「少し機能が復活したから、良い物見せてあげるね♪」

香奈美

「ん?」


レイス、丸いクッキー缶の様な物を香奈美の前に置く。

開くと部屋が出来ている。


レイス

「これ、私の部屋の中身。」


可愛らしい家具で綺麗に纏まった、いかにも女の子な部屋。


香奈美

「可愛い部屋だねぇー。何か意外。」

レイス

「どう言う意味だい?」

香奈美

「とっ散らかってると思ってた。」

レイス

「私、美しい淑女で通ってるんですけど。」

香奈美

「ご冗談を。」


レイス、膨れる。


レイス

「もう見せないっ!」

香奈美

「レイスは美しいと言うより、可愛らしいんだと思うけど。」

レイス

「……何それ。」

香奈美

「?」


顔が赤くなるレイス。

机をタップする。

すると机だけが映し出される。


香奈美

「見せないんじゃなかったのぉ?」

レイス

「……気が変わったの。」

香奈美

「そうかい。」


レイス、机から一冊の分厚いノートを取り出す。


香奈美

「これ何?」

レイス

「旅行日記。旅の思い出を忘れない様に書いてるんだぁ。」

香奈美

「……見ても良いの?」

レイス

「香奈美には特別。」


レイス、小さく手拍子を一回打つ。

香奈美、旅行日記を持てる様になる。

ページを開ける事に驚きながら読む。

写真と細かい場所の説明、感想等が書いてある。


香奈美

「ガイドブックみたい!」

レイス

「その意味合いもあるかも。忘れても思い出せる様に。」

香奈美

「どんだけ忘れるんだよ。」

レイス

「記憶に焼き付けるって大事よ?」


香奈美、最後のページを見る。


『いよいよ、サタ2000に行ける。

あの輪っかは一体どうなってるんだろう……。

楽しみ過ぎて眠れない!』


香奈美

「……もしかして土星かな?」

レイス

「土星?」

香奈美

「輪っかの付いたおっきい星。サターンとも言うの。」

レイス

「へー。そうかもね。」

香奈美

「凄いなぁ。レイスの星では土星にも行けるんだぁ。」

レイス

「やっとで行ける様になったの!」

香奈美

「……ドジの所為で。」


香奈美、可哀想な物を見る目でレイスを見る。

レイス、膨れる。


レイス

「でも良いもん!香奈美に会えたから。」

香奈美

「……。」

レイス

「家に戻ったら地球の事も書くよ。」

香奈美

「何て書くの?」

レイス

「……伝説の僻地に辿り着いた。

そこに住む生命体は脆弱でか弱い。

私の様な非力な者でも簡単に潰せてしまう勢いだ。」

香奈美

「これには嘘があるね。」

レイス

「失敬な、全部本当だよ。」

香奈美

「非力な者じゃなくて、力の加減が出来ないドジっ子。」

レイス

「地球人が脆弱なだけだもんねーだ。」

香奈美

「けっ。」


香奈美、大きな欠伸をする。


レイス

「脆弱でー、か弱くてー、寝坊助にしよっと。」

香奈美

「……おかしいんだよね。」

レイス

「ん?」

香奈美

「私、普段こんな眠くならないんだけど……。」


香奈美、横になると直ぐに寝てしまう。


レイス

「脆弱でか弱くて寝坊助だが、とても優しくて愛しい存在だ。」


レイス、優しい笑顔で香奈美を見つめる。

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