第4話

ベットに転がり、ボーッとしている二人。


レイス

「……暇だねぇ。」

香奈美

「暇だな。」

レイス

「……何か、香奈美の事、教えてよ。」

香奈美

「何にもないよ、つまんない人生。」

レイス

「宇宙人の話ってだけでロマンがあるからさー。」

香奈美

「宇宙人にもそんな感覚あるんだ。」

レイス

「そりゃあ、思考生命体だからね。」

香奈美

「……そっか。」

レイス

「何か話してよぉ。暇潰しがてら。」



レイス、香奈美を思い切り揺さぶる。

香奈美、レイスの身体をタップする。


香奈美

「分かった!分かったから、止めてくれ!」

レイス

「……宜しい。」


香奈美、ぽつりと話し始める。


香奈美

「私さぁ、十年来の友達が居たんだけど。」

レイス

「うん。」

香奈美

「十年を境に連絡付かなくなっちゃった。」

レイス

「喧嘩でもしたの?」

香奈美

「ううん、特に。」

レイス

「じゃあ、直ぐに連絡来るよ。」

香奈美

「もう来ないでしょ。」

レイス

「十年なんて一瞬じゃん。」

香奈美

「……え?」

レイス

「え?」

香奈美

「レイス、今何歳?」

レイス

「えーっとねぇ、十万一千二百二歳。」

香奈美

「……閣下だ。」

レイス

「ん?」

香奈美

「ものすっごく歳取ってたんだね。」

レイス

「そんなぁ!まだ成人して千年しか経ってないよぉ……。」

香奈美

「誕生日とかどうしてんのよ……?」

レイス

「誕生日?あー過ぎたなぁーって感じ。」

香奈美

「……。」

レイス

「最期はお祝いするかな。」

香奈美

「お祝い!?」

レイス

「星に貢献しましたねって。」

香奈美

「……怖くない?死ぬの。」

レイス

「ん?特には。」

香奈美

「そっか……。」


暫くの沈黙。


レイス

「んで、続きは?」

香奈美

「へ?」

レイス

「十年来の友達。」

香奈美

「あー。」

レイス

「何かあったの?」

香奈美

「それだけ。」

レイス

「え?」

香奈美

「それだけだよ。地球の十年は長いのよ。」

レイス

「長いなら、それだけ交流も深まるでしょ?」

香奈美

「そうだね……。」

レイス

「あっさりし過ぎじゃない?」

香奈美

「そんなもんなんだ、と思う。」

レイス

「その子に聞いてみた?何が嫌なのか。」

香奈美

「聞けないよ。新年の挨拶さえ読んでもらえてないもん。」

レイス

「結構、頻繁に会ってたんじゃないの?」

香奈美

「一年に一回、お互いの誕生日の間の日だけ一緒にお祝いするの。

でも、あんまり会うと胃もたれしちゃうんだって。」

レイス

「……。」

香奈美

「私はさ、その一回をとても大事にしてたし、とても楽しみにしてたんだよ?」

レイス

「香奈美にとって、とても特別な個体だったんだね。」

香奈美

「胃もたれしてもね、会ってくれるのが有り難かったんだぁ……。」

レイス

「私なら胃もたれなんてしないのに。」


香奈美、寂しく笑う。


レイス

「泣かないで。私が居るから。」

香奈美

「暇潰しの相手でしょ?」

レイス

「友達は友達だもん。」


香奈美、レイスに背中を向ける。


香奈美

「……もう居ないんだね。」


レイス、何とも言えない優しい表情を香奈美に向けている。


香奈美

「あ、ごめ……」


振り向くとレイスは居ない。


香奈美

「そんなもんなんだよね。」


香奈美、布団に蹲る。

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