第4話

夕方

女の部屋

静まり返る室内。

星と女、並んでソファーに座っている。


通帳を両手で持っている女。

ひたすらに、開く・見る・閉じる を繰り返している。


「……身に覚えが、、ありません。」

「くじ、当てたのー。」


女、宝くじのページを開く。

高額当選の文字。

クリックすると1等10億円の表示。


「願い、叶ったぁ?」

「……多分。」

「足りない?」

「ううん。」

「ほし、触って!」

「?」

「ムニムニして良いよぉー。」


女、星を摘んでみる。


「硬い……?」


星の目が煌めく。


「カチカチ?」

「ではない。」


萎びる星。


「固まりたいの?」

「ほし、ふわふわ。」

「うん。」

「風でふわふわ。落っこちた。」

「綿毛、みたいな?」

「ほし、願い、叶える。カチカチ!」

「じゃないと戻れないの?」

「うん。」

「……石。」


女、エコバッグをひっくり返して石を出す。

星、石を手にして口に入れる。

顔が萎む。


「不味い?」

「カチカチ、なりたい。ほし、頑張る!」

「……そっか。」


星、女に手を差し伸べる。

女、星の手を握る。


「ふにふに。」

「……。」

「もっと食べたら?」

「ほし、死ぬ。」

「そうなの?」

「……ううん。」

「無理すんな。」


星、ずっと苦い顔をしている。

女、星に水を渡してみる。

グビグビ飲む星。

落ち着いた表情を見せる。


「まだ、叶ってない?」

「……どうだろう。」


女、電話を掛ける。

星、女の様子をじっと見ている。

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