第6話 原作最強の魔法使いノータ・アルヘディ(原作作者公認)

 なぜ、そこにいるっ!


 っと周りのみんなは思っただろう。


 なぜなら、俺が炎に飲み込まれるところをしっかりと見ていたからだ。


 なら、なぜ俺が無傷で少女の後ろに立っていたのか。


 そのタネは簡単だ。


 俺は魔力で体全体を守ったからだ。


 スペックの高いライン・シノケスハットは魔力量も勇者並みにあるため、魔力で体全体を覆うことが普通にできてしまう。


 こうして、ノータの魔法を防ぎ、相手の視線が一転に集中しているうちに素早く回り込み、背後をとったってわけ。


 簡単だろ?


「わ、私から離れてぇぇぇぇぇぇ!!」


 怯えながら魔法を打とうする少女の腕をわしづかみ、地面にたたきつける。


「大人しくしようか、ちびっこ」


「うぅ、ご、ごめんなさい」


 泣きながら怯える表情を浮かべる少女。


 あの魔法を打ったとは思えないほどかよわかった。


「くそっ!こんなはずじゃあ…………」


 ガングが慌てた様子を見せる。


「…………アルル、もうやっていいぞ」


「はい」


「くそっ!まだだ、まだボスを呼べばぁ!!」


 グキっ!


 アルルはガングの背後に素早く立ち、首を180度回し、バタッと倒れた。


 さすが、元暗殺者だな。手際がいい。


 ただ、そんな殺し方はないんじゃないかな、あははは。普通にグロい。


「じゃあ、ちょっとお話ししようぜ、ちびっこ」


 怯えているがそんなことを気にせずフードを外した。


「…………」


「ご主人様?」


「あはははははは、やっぱりか!」


「うん?」


 アルルは全くピントきていないようだが、それは当たり前だ。


 呪われた青髪に、エメラルドグリーンのように輝く瞳。


 この子は原作最強の魔法使いノータで、間違いない。


 正確にはその子供時代だが。


「見つけたぞ」


「殴らないでください。何でも言うことを聞きますから」


「ご主人様…………」


 目を細めながら、じ~と見つめてくるアルル。


「泣かせてないぞ…………」


 とはいえ、少し引っかかる部分がある、そう思った。


 ノータは子供の時代に母親をバエルのボス、リーガーに殺され、人間に憎しみを持つようになる。


 それをきっかけに魔族側につき、原作最強の魔法使いとして主人公の前に立ちふさがるんだが。


 今のノータはあまりにも心が貧弱だ。


 とても、復讐に燃えているようには見えない。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………」


 怯えて丸まっているノータは急に意識が混濁こんだくし、そのまま意識を失った。


「ひとまず、アルル、この子のそばにいろ。俺は先に進む」


「それはできません。この先はもっと危険なはず、私も一緒に」


「ダメだ」


「なぜですか!」


「…………目覚めた時に誰かがいたほうが少しは安らぐからだ」


「ご主人様、この子を心配しているのですか?」


「…………そう思うのか?」


「…………わかりました。お気を付けて」


「ああ」


 先に進むと、大きな広い部屋にたどり着いた。


 散らばっている資料や本、中央には大きなソファーが置かれている。


「やっぱり、誰もいないか」


 バエルのボス、リーガーは繊細かつ慎重な男として描かれている人物だ。


 だから、基本的に本拠地に姿を見せず、誰も知らない場所に身を隠すことが多い。


「ガングを置いてたことを見ると、ここはすでに本拠地として機能していないのかもな」


 だが、ガングが殺されたとなれば、必ず動くはずだ。それに俺の手中にはノータだっている。


 動かないはずがない。


 ある程度、確認した後、アルルとノータの場所に戻ってきた。


「ご主人様、どうでしたか?」


「誰もいなかった」


「いなかった?」


「まぁ、予想できたことだったがな。とりあえず、その子を連れて宿に行くぞ」


「わ、わかりました」


 俺たちはノータをつれて、その場から離れた。


□■□


「ここが、泊まる宿ですか?」


「そうだ」


 都市アルキナの外周部にある宿。


 そこで、ベット二つの部屋で俺たち3人が泊まることになった。


「それにしても、わかりません。どうして、その子を保護したのですか?」


 気絶しているノータはベットの上で眠っている。


「アルル、お前も見ただろ。あの子の魔法を。あれはまれにみる天才だ。使えないものなら殺すが使えるものは生かし、手中に収める。違うか?」


「いえ、理解はできますが…………」


「とはいえだ。バエルをつぶすことに変わりはない。それにむしろあの子を保護したことでより潰しやすくなった」


「潰しやすく?」


「アルル、世の中の魔法使いの人口はどれくらいだと思う?」


「だいたい、全体の3割もいないと思います。教育や才能にも偏りある時代ですから」


「そうだ。そこであの子をみろ。貧相でやせ細った体に精神への異常。これはあきらかに不遇な環境で育ってきたことを証明している。つまりだ、この子はそんな環境で魔法を体得たいとくしているんだ。その意味、わかるだろ?」


「たしかに、この環境であれほどの強力な魔法を打てれば、かなりの才能です。ですが、それとバエルをつぶしやすくなる理由と結びつかないような…………」


「バカかお前は。言ったじゃないか、魔法使いは全体の3割もいないと。つまり、リーガーにとって、この子はかなり希少な魔法使いのはずだ。みすみす見逃すとは思えない」


「たしかに、つまりご主人様はこの子をおとりにバエルのボスであるリーガーをおびきだすと?」


「そういうことだ。まぁそう簡単におびき出せるとは思ってないけどな」


 まぁほとんどが、今さっき考えたこじつけだけどな。


 俺の目的であるノータをとらえることには成功した。あとは仲間になってもらうだけだ。


 だが、どうも引っかかるんだよな。


 すると。


「うぅ…………こ、ここは、へぇ!?」


 ノータが目を覚めると、周りをきょろきょろと見渡した。


 こちらに気づくと、壁の隅で体を小刻みに震わせた。


「起きたか」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


「またか…………うるさいっ!」


 ベシっ!


 っとノータのほほを容赦なくたたく。


「ふぇ?」


「同じ言葉を何度も言わんくていい。少しは落ち着け」


「…………ご主人様、いくらなんでも女の子をたたくのは」


「こ、これも必要なことだ」


 ノータはたたかれたほほを手で押さえながら俺のほうへと視線を向けて、初めてまともな言葉を口にした。


「ご、ごめんなさい」


「ふん」


 少し下を見つめた後、ぐぅ~とお腹がなった。


「アルル、こいつのご飯を持ってこい」


「わ、わかりました」


 アルルがご飯を持ってくると、ノータはご飯を黙々と素直に食べた。


 俺はノータの近くにある椅子に座り、しゃべりかける。


「さてと、まず、名前を教えろ」


「ノ、ノータ・アルヘディ…………です」


「それじゃあ、ノータ。早速だが、あの盗賊たちに復讐したくないか?」


「え…………」


「ノータには自覚がないかもしれないが、お前には魔法使いの才能がある。その力があれば、お前を苦しめてきた盗賊を懲らしめることができる。本当は憎んでいるんだろ?身勝手に道具として扱ってきた、あいつらを…………」


「…………私は…………わからない。わからない。わかんないっ!!」


 何とも言えない表情で、また何度も同じ言葉を繰り返しながら、両手で頭を押さえ、震えていた。


 まるで、現実逃避しているかのように。


 これはダメだな。


 マシになったかと思えば、逆戻り。


 一体、バエルの盗賊たちに何をされたら、こうなるんだよ。


 ノータの精神への異常さ、情緒不安定、人がしていいことじゃない。


 にじみ出る怒りを抑えた。


 あと、一応、あれも確認しておくか。


「ノータ、母親は元気か?」


 すると、その質問に対して、口を閉ざし、パッとこちらに真顔で振り向いた。


「…………


 死んだような魚の目に、俺は溜息を吐きながら、立ち上がる。


「そうか。アルル、ノータのそばにいてやれ。俺は少し外に出る」


「おひとりでですか?」


「そうだ」


「わかりました」


「それじゃあ、ノータ。ゆっくりな」


「…………」


 無言で下を見つめるノータの瞳は少しよどんでいて、いまだに何か怯えているようだった。


ーーーーーーーーーーー

あとがき


原作最強っていいですよね。

ラインも結構スペックはチートなんですけど、それを活かそうとしないあたり、頼りっぱなしで情けないなって書きながら思ってます。


目指せ週間100位以内っ!


もし面白い、続きが気になると思っていただければ、★やフォローをしてくださると、興奮します。


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