第17話 おいしい豆腐料理
その日の夕食は、私が作った。
昼のうちに作っておいた豆腐を利用して、ダイエットに効果的な豆腐料理をラウル様に披露する。
「ラウル様。本日から食事量を減らしてもらうと同時に、“置き換えダイエット”をしていただきますわ」
「置き換えダイエット? それはどんな減量方法なんだ?」
「日々のお食事の中でも、脂質・糖質が多いメニューを低脂質・低糖質・高タンパクなメニューに置き換えていただくのです。とはいえ人間の体には必要な栄養素がありますし、突然節制ばかりの生活になるとストレスが溜まってしまいます。ですので、まずは夕食と間食の内容を見直していきますね」
「分かった、いいだろう」
ラウル様が頷くのを見て、私は食堂の脇に控えるレノアさんとリリに合図をする。
二人は一旦厨房に戻る。もう一度戻ってきた時には料理が入ったクローシュを運んできた。
「どうぞ、ラウル様。こちらは私が作った『豆腐ステーキ』でございます」
「豆腐……ステーキ?」
「はい。豆腐とは、ブルーフォレスト領の作物である大豆を原料とした食品です。低脂質・低糖質・高タンパクを実現した食品で、減量に向いているのですわ」
「ふむ、大豆か。……芋に続いて大豆料理とは、エルシーには驚かされるばかりだな」
どちらもブルーフォレスト領、ひいてはエラルド王国ではあまり食されていなかった食材だ。
けれど、私がいた前世の日本ではどちらもよく食べられていた。
大豆は加工されていることが多かったけど。
私はクローシュを取る。お皿の上には表面がキツネ色に焼かれた豆腐ステーキが載っている。
ジャガイモから抽出した片栗粉を豆腐にまぶして、焼き色が付くまでしっかり焼いた。
ステーキソースの材料はひき肉と玉ねぎで、塩と胡椒とソースで味付けした。
付け合わせはキノコのソテーとベビーリーフのサラダ。
名付けて『豆腐のステーキ キノコソテー添え』だ。
「ほう、これは美味そうだな。早速いただくとしよう」
ラウル様はフォークを手に取り、ナイフで切り分けた豆腐にソースを絡めて口に運ぶ。
すると、ラウル様は目を見開いた。
「美味い……! 豆腐とはこのような食感なのか。それにソースの甘辛さが食欲をそそる……!」
「気に入っていただけて何よりですわ」
私は微笑む。
その後もラウル様は黙々とフォークを口に運ぶ。夢中になって食べてくれている。
「……ご馳走様。素晴らしい食事だった。大豆がこれほどおいしい料理になるとは。エルシーは作るものには驚かされてばかりだな」
「ありがとうございます。恐縮でございます」
「それにしても、これだけの量しか食べていないのに不思議と満たされているな。何故だろう」
「大豆はタンパク質が豊富だから、満腹感を得やすいという特徴があるのです。さらに消化スピードが遅いので、満腹感が持続してお腹の持ちが良くなるんですよ」
「なんと、大豆にはそんな効果があったのか! 素晴らしいじゃないか!」
「はい。今後は大豆を使用した料理やお菓子に置き換えていただければ、満腹感を得ながら痩せることが可能となるのです」
「これほど素晴らしい食材が目の前にあったのに、気付かなかったとは……感謝する、エルシー」
「いえ、そんな……」
「あまり価値を見出されていなかったものの真価を引きだして変身させてしまう。君はまるで魔法使いのようだな。もちろん悪い魔女ではなく、良い魔法使いだ」
私はラウル様の感謝の言葉に恐縮する。
これらは元々私の発明というわけじゃない。
前世の世界にて得た知識を、この世界で再現しているだけだから……。
でも、もちろん転生のことは言えない。
とても信じてもらえないだろうし、最悪正気を疑われてしまうから。
「君のお陰で、痩せることができそうだ。ブルーフォレスト領の繁栄のために励むとしよう」
そう言ってラウル様は微笑んだ。
よかったわ、ちゃんと分かってもらえて。
あとは頑張ってダイエットを継続してもらうだけだわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます