第二章

第11話 お弁当を作ろう

 その日は、朝早くからラウル様が鉱山の視察に出かけた。


 ラウル様を見送った私は、ふと思いついて厨房に向かう。



「レノアさん、リリ、いる?」


「はい、こちらに。エルシー様」


「どうなさったんですか?」


「実は……ラウル様にお弁当を作って、持って行って差し上げたいと思うの。この領地を支える鉱山のことも、一度この目で見ておきたいから」


「まあ、それは素敵なお考えですね。ラウル様もきっとお喜びになりますわ」


「私も賛成です! エルシー様、早速作りましょう!」


「ありがとう、二人とも」



 私はレノアさんとリリに手伝ってもらいながらお弁当を作る。


 ラウル様はブルーフォレスト領の領主で、領民たちから慕われる素晴らしい方だ。


 そんな素晴らしい旦那様のお役に立ちたい。その一心でお弁当を作る。



「エルシー様、何を作るのですか?」


「そうね……」



 メニューを考える。ラウル様は鉱山の視察に向かった。


 労働をするわけじゃないけど、場所が場所だし疲れそうよね。


 お腹にたまるものがいいかしら。



「よし、決めたわ!」



 お芋を薄切りにして、熱湯でゆでる。


 その間に玉ねぎを刻んで、油をひいたフライパンでひき肉と一緒に炒める。



「次は……」



 卵四個を溶きほぐして、塩とコショウで味付けをする。


 フライパンにお芋を投入してさっと炒めてから、卵を流し入れて、蓋をして焼く。


 五分ほど時間が経ったら、卵をひっくり返してもう一度焼く。



「さあ、これでボリュームたっぷりポテトオムレツの完成よ」



 これだけでは足りないだろうから、キノコと野菜のマリネと、フライドポテトと、焼き立てパンも用意する。


 これだけあれば、きっと十分よね。



「素晴らしい出来映えです、エルシー様」


「早速ラウル様にお届けしましょう! きっと喜ばれますよ」


「ええ」



 私は作ったお弁当をバスケットに詰めて、馬車に乗り込む。


 お天気は快晴で、絶好の視察日和だ。少し肌寒いけど、運動すれば温まるだろう。


 私は御者の人にお願いして、ラウル様が向かった鉱山地区に出発した。

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