第二章 胡散臭い村と古の悪魔

第023話 第一村人は『女騎士様』。

※一章の改稿作業により、『話数』がズレておりますm(_ _)m

(二章の改稿時に修正いたしますm(_ _)m)



『なぁ兄やん、わい、このまま帰ったらまた変な玉に延々と愚痴られるんやけど……やから、せめて今日だけでもここに泊めてもらえん?むしろずっとここで養ってくれてもええんやで?ほら、カーくん可愛いやろ?』などとごねるカワウソを仕方なく風呂場で一泊だけさせ、迷宮に送り届けたあとそのまま旅に出る俺と葵ちゃん。土産の果物を迷宮の入り口に積み上げてやったんだけど、あれでスタンピードが起こったらちょっと笑うよな。


そしてカーくん、コロニーメンバーに出来ないかと思って確認だけはしたんだけど……葵ちゃんと同じで『別システムに所属』してるらしく今は無理らしい。

葵ちゃん曰く『ダンジョンマスター』みたいだから仕方ないね?

一応人里の話も尋ねてみたんだけど、元野生動物が人間と一緒に住んでいたはずも無く。あとヤツは本当に動物という括りでいいのだろうか?

いや、数百年単位の引きこもりらしいから村や街の情報があったとしても信憑性に欠けるんだけどさ。


「まぁそんなことより、再びの女子高生とのドライブデート!エアコンの風にあおられて車内に広がる葵ちゃんの体臭のなんと心地よいことか」

「鳥肌が立ちそうなほどの気持ちの悪い発言は控えてもらっていいですかね?うう、相変わらずの揺れまくりで出発一時間たらずですでにめげそうです……」

「大丈夫だよ?そもそも揺れるようなモノが葵ちゃんには無」

「隣からアクセルベタ踏みして無理心中してやりましょうか?」

「ごめんて」


それはそれで幸せな死に方かもしれないけどな!


前回の『拠点を中心にした全方位満遍のない探索』ではなく、今回は『方向を決めて一点突破』の探索を予定している俺たち。

二人で食べてもひと月くらいは持たせられるだけの料理だけではなく、食材も燃料も大量に葵ちゃんのインベントリに入れてもらってるし、それなりの燃料及び米や水などある程度日持ちするものはトラックの荷台にも積んでおいたので多少のトラブルなら問題なく対応できる……はずである。

もちろんイザという時の為に建材とか工具も持ってきたぞ!


東西南北、まず最初はどの方面に向かう?って話になったんだけど葵ちゃんが、

『もしもこの星が地球型の惑星だと考えれば『東と西』はどれほど進んでもこことそれほど気温が変わらない、つまり『人が住んでいない荒れ地が続く』可能性が高いのではないでしょうか?いえ、異世界ですし、そもそも球状の惑星かどうかすら不明なんですけどね?魔法的な何かでこの辺りだけが暑いということも考えられますし』

と、難しそうなことをいいだしたので考えるのを放棄、実質南北の二択となった。

そして、その二択から『なんとなく日本列島の感覚でいうならば、南より北の方が涼しそう』ってことで、北に向かうことにしたんわけだな!


マップの確定地域を抜けて黒い雲の中、未確定領域に突入するも相変わらず目の前に広がるのは灰色の世界。

東から昇った太陽が頭の上を通り過ぎて西に赤く沈むまで進んでも進んでも荒れ地は荒れ地。


「……マジで景色に変化がなさすぎて、マップ画面が無ければ同じところをぐるぐると回らせられている錯覚に陥りそう。あと走れそうな道……いや、道ですら無いんだけど、平地が少ないから結構な遠回りしないといけないのもつらいよな」

「右を向いても左を向いても岩山ばっかりですし、そもそもの見晴らしがよくありませんもんね」


てかこんな道なき道を延々と走らされたらトラックのタイヤなんてアッという間にすり減ってパンクしそうなんだけど……。

(この乗り物はあなたの所有物としてスターワールドシステムに登録されていますので『パンクというデバフ』は存在しませんし『車体が破壊されるような攻撃』を受けない限りは故障もしません)

何その無敵のトラック!?い○ゞもビックリだよ!!

もちろんパンクしないという、行動範囲が劇的に広がるチートをもらったとしても、車内で寝るようなスペースが確保されたわけではなく。

今日はこの惑星に来て初日に掘ったような、小さな洞穴を掘って扉を付け、気化熱クーラーを設置しての就寝である。

その作業だけで数時間かかったんだけど、たぶん帰り道でも使うことになるから問題はないだろう。

ああ、もちろん『人工物』とひと目でわかる扉は外してから出発するんだけどね?

そんな、二時間くらい噛んだ後のガムのような味気ない旅行に、変化が訪れたのは翌日の昼過ぎ。


「不毛の荒れ地から少し草の生える荒れ地って感じになってきましたね?」

「まぁ荒れ地は荒れ地なんだけどな」


土の色もちょっと明るくなった気がするし、向かうべき方向は間違えてなかったかな?と少し安心。気温も少しだけ下がった……ような気もするしね?

エンジン音を響かせる車の近くに寄ってくるような野生動物はいないみたいで目視できる範囲に生き物はいないけど、マップ上にはちらほらと小型の草食獣の姿なども……いや、多いな!?おそらく小型の昆虫であろうアイコンでマップが埋め尽くされて何が何やら分からなくなりそうなんだけど!?

(危険のない小型生物及び人型生物以外のアイコン表示を指示があるまで削除いたしますか?)

是非ともそれでお願いします。もちろんアラートの方も鳴りっぱなしになっちゃってるので一緒に設定を変更してもらった。


そして……残念ながらその日も動物その他の生き物以外。村や街及び人間の発見はできず、適当な岩山に穴を掘って休んだ。


拠点を出発して三日目。

洞穴を出てから、小型の草食獣を食べる魔物(もしかしたらただの大型肉食獣かも?)を数体退治しながらも進むことさらに数時間。

もちろん倒した魔物の死骸は葵ちゃんが保管している。この子、お嬢様なのに案外貧乏性なんだよな。

不毛の惑星を思わせるような突き立った岩山はなりを潜め、見慣れたサバンナ……ではないが、所々に低木が生える草原が目の前いっぱいに広がる……遠くには木の生えた山も見えるよ!

なんとか走れるギリギリの、四輪駆動以外ならタイヤが滑って進まないような草むらを機嫌よく、颯爽と駆け抜ける四トントラッ(ビー、ビー、ビー、ビー)……設定を変更したのに鳴り響くアラート音。どうやら結構な強さの魔物が確認されたらしい。

運転中の俺に代わり、マップから詳細を確認してくれた葵ちゃんの報告では、


「これはケンタウルス?いえ、違います!……水玄さん!人間です!馬に乗った人間が大型の魔物に追いかけられてるみたいです!」

「ほーん……てか人間!?ほんとうの意味での人?カーくんみたいなのじゃなくて真の第一村人発見ってこと?」

「いえ、私では画面から個人情報までは読み取れないのでなんとも言えないですけど!アイコンの形は私達と同じ感じです!それが魔物に追いかけられて……あ……一人跳ねられました。どうしましょう、このまま直進すれば接触はしませんけど……見捨てます?それとも助けます?」

「選択肢として『見捨てる』が先にくるところがさすが葵ちゃんって感じだな!うーん……助かるかどうかは運次第だけど接触はしてみようか?その時の交渉しだいで後のことは考える感じで」

「貴方もそれなりの確率で見捨てるんじゃないですか……まぁ私を放置しようとした水玄さんですもの仕方ありませんよね」


遮蔽物が多いので全く目視できないけど、マップによれば目標までの距離は400グリッド(800メートル)ほど。

少しでも射線が通るようにトラックの屋根に飛び乗ってから荷台の上に移り、マップ画面から対象のアイコンをタップしたあとはトリガーを引いてライフルを数十連射。


「魔物のアイコンが動かなくなったから目標沈黙でいいよね?」

「ホンっとにでたらめな攻撃方法ですよね……」


怪我人もいる、というよりもほぼ全員怪我人でうち一人はそこそこの重傷なので、急いで車に乗り込み現地まで向かうことに。

まぁ数百メートルだからすぐにその姿、馬に乗ったまま唖然と立ち尽くしている、胸に揃いのシンボルが入った全身鎧を身に着けた、


「葵ちゃん!騎士!それも女騎士様だよっ!葵ちゃんのエロコスプレじゃない、まともな女騎士様が一杯だよっ!」

「まったく露出もしてなかったのにどうしてエロコスプレ呼ばわりなんですかね!コスプレまでは仕方ないとしてもエロ要素は無かったですよね?」

「露出してないからエロくないというのは素人の考え方だからなっ!玄人はボディラインにピッタリと沿った板金のカーブに……なんかむっちゃ警戒されてるな?」

「意味の分からない逆ギレ止めてもらってもいいですかね?というか、いきなり追いかけてきていた魔物が謎の光線で吹き飛ばされて、その光線が飛んできた方向から得体のしれない白い乗り物が現れたら普通はあんな反応になると思いますよ?」


言われてみれば確かにその通りかも?

相手も女性なので俺が話しかけるとさらに警戒されるかもしれないので、少しでも警戒を解こうと葵ちゃんに話しかけてもらう。


「追いかけられてたみたいなので追跡者はこちらで処理させてもらいました!あまり大丈夫にも見えませんけど……皆さんご無事ですか?」


助手席の窓から顔をだして大きな声で呼びかける葵ちゃんの姿に少しだけ緊張の解けた女騎士様たちの中から赤毛の女性が一人前に進み出てきた。


「かたじけない!加勢のおかげで、我々は大怪我をせずにすんだようだ!ちゃんとした礼をしたいところではあるのだが、身内が一人先程のアーマーライノザウラスに跳ね飛ばされてしまったみたいでな!すぐにそちらの救援に向かいたいのだ!」

「葵ちゃん葵ちゃん!よかったら手助けしてあげるって伝えて!!」

「えっ?さっきと言ってることが違うんですけど」

「だって女騎士様だよ!?それも筋肉質な感じのお姉さん!俺、大好物なんだよ!」

「気持ち悪いので興奮してまくし立てるの止めてもらえます?とりあえず○ねばいいのに……」


凍りついたような無表情と、聞いたことのないような低い声でそう告げる葵ちゃん。

友好度がマイナス圏まで下がった気がしないでもないけどそんなことはどうでもいいのだ!なぜなら女騎士とお近づきになれるチャンスかもしれないのだから!


―・―・―・―・―


大怪我をした女騎士様……その正体はいったい!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る