第024話 『カワウソ』? いいえ、たぶんダンジョンマスターです。
「まぁあれだ、いきなり込み入った話をするのもなんだし?俺たちは軽めの朝めし「私は重めのお昼ごはんが希望です!」お、おう、そんな感じの食事を取るけどオバちゃんはどうする?」
「もちろんえんりょのうよばれますがな!お野菜かくだもんでたのんますわ!やなくて、誰がオバちゃんやねんな!うち、これでもアウソー族きっての美少女やっちゅうねん!名前はカーいいますんで、気軽にカーくんって呼んだってもうてかまへんよ?」
「確かに声は女の子だけど……見た目も可愛いと言えなくもないけど……」
なんだこの納得のいかなさは……。
風呂場で食事をとるのも何なのでリビングに場所を移し、テーブルの上に食事とカワウソ妖怪を並べて二人+一匹で食事を始める。
「……いや、これ、どんなボケやねんな!確かに野菜、できればくだもんが食べたいって言うたけれどもっ!丸まま!これ、丸ままやんかいさ!切ってもらわな食べられへんがな!」
「丸齧りどころか丸呑みしそうな外見のくせに、面倒くさいヌメヌメですね」
「キューーッ!ヌメヌメとかしてないっちゅうねん!全身サラサラヘアやっちゅねん!サラッサラのサラカーくんやっちゅうねん!てかこれうまっ!?なんやのんさこれ!?こんな甘い瓜初めて食べたんやけど!」
「まぁ品種改良された高級メロンだからな。俺に感謝しながらありがたく食するといい。あと無駄にテンション高いからちょっと煩い」
いつもよりも賑やかに昼食を取りながらもカワウソ妖怪……改め、カーくんの話が始まる。
関西人特有の無駄に長い、横道に反れまくる話が続いたので簡潔にまとめると、
『迷宮の入り口を塞ぐ不届き者を探してる』
ってことらしいんだけどね?
いや、こいつ関西人じゃなく異世界人だった。てか人ですら無かった。
「もしかしてなんやけど、まさか兄やんと姉やんの仕業やないよな?」
「……さて、どうだったかなぁ」
「……さあ、どうでしたでしょうか」
「もうこれ完全に二人が犯人やがな!!」
「だってほら、穴が開いてたら埋めるか入れるのが普通の反応だろ?つまり俺は悪くない」
「いや、普通は埋めても一回だけやん?その埋めた穴から魔物が大量に出てきよったら二度と埋めようとは思わへんもんやん?そもそも穴ぐら(ダンジョン)は近辺の魔素を集めて浄化する場所なんは常識やん?それを埋めるなんてとんでもないやん?」
「やんやんうるせぇな……。そんな常識、俺は知らない。ちなみにそっちの娘さんは知ってて追加で三回埋めたんだけどな!」
「たちの悪い姉やんやな!?いや、マジで危ないからやめてな?フリやないで?まったく、おかげで変な玉に苦情は言われるわ、せっつかれて穴ぐらから追い出されるわ、うち、えらいさいなんなんやで……」
「てか何度か会話に出てきてたその『変な玉』って何なんだ?」
「何やって言われても、昔、まだあの穴ぐらが生まれたすぐくらいのときからの付き合いの……玉?」
穴って掘るものだと思ってたんだけど生まれるものなんだ?
「ダンジョンが生まれた時から存在する球形の物体……それって、もしかしなくても『ダンジョンコア』じゃないですかね?」
「なんやねんなそれ?」
「……ということは、もしかして、このヌタウナギモドキは『ダンジョンマスター』ということになるのでは?」
「人の言うこと聞かん姉やんやな……やからなんやねんなそれ?……ああ、そういうたら昔、変な玉に『旦さんまたなー』みたいなこと言われたような気もせんでもないけど、もしかしたらソレのことかいな?」
旦さんって何だよ旦さんって。そんな呼び方『あっちこっち○稚』以外で聞いたことねぇよ。
「……よし、水玄さん、世界の平和と私の経験値確保のためにコア共々その邪悪なダンジョンマスターを殲滅しましょう!」
と、とてもいい笑顔で剣を抜き放つ葵ちゃんと、
「いきなりなんやのんさ!?物騒な姉やんやな!」
慌てて俺の背後に逃げ込むカーくん。
「どうどう。まずは話をちゃんと聞こうな?てか迷宮は魔素とかってのを集めてるんだよな?どうしてソレを集めてるんだ?あと、もしも迷宮を潰しらたどうなるんだ?」
「集める理由は……なんやこう『旦さんぽいの』を集めて、穴ぐらを広げて強なるために使うとかなんとか聞いたような?穴ぐらを潰すとか……そんなもん、穴ぐらがなくなってもうたら魔素が地上で勝手に寄り集まってしもて、なんやこうえげつない強さの魔物が現れるにきまっとるやないかいさ!」
「その『何が現れるのか』が一番大事なんだからもっと具体的に教えろよ……」
そもそも『旦さんぽいの』ってなんだよ、旦さんですらないのかよ、勝手に屋敷に上がり込んでる旦さんぽいやつ……それもう『ぬらりひょん』じゃねぇかよ。
そう言われたらこいつもぬらりひょんっぽい気がしてきたわ。勝手に他人家で寛いでるし。もしかしてこいつ、『異世界ぬらりひょん』の曾孫とか玄孫なのか?
「そうですね……たぶんですけど『旦さんぽいの』とは、おそらくダンジョンポイント。DPって呼ばれるモノを集めているのではないでしょうか?そして、そのポイントを消費してダンジョンを拡張したり、魔物を配置したり、アイテムを購入する……もしかして殲滅ではなく制圧する方が有用?」
「あの伝言ゲームみたいな説明だけでそんなことまで分かるんだ?さすが『異世界マニア葵』。それで、迷宮が魔素ってのを集めて成長するモノだってことは理解したけど、それとスタンピードを起こさないで欲しいってのはどう繋がるんだ?」
「そりゃもちろんせっかく溜まった旦さんが減るからに決まってまんがな!この四回のスタンピードで、ここ数百年で貯めた旦さんが九割ちこう減ったんでっせ!せっかく地底湖とか作ってもろたのに差し押さえくろうて全部埋め立てられていくとかもうわややがな……」
「なるほど、つまりスタンピードを繰り返せばどんな広いダンジョンでも攻略できるということですか」
迷宮って差し押さえとかくらうもんなんだ?
その融通の利かない役所みたいな対応してる奴は誰なんだよ……。
(おそらくは私のようなシステム管理者だと思われます)
なるほど、なんとなく納得。
あと葵ちゃんが裏技を見つけたゲーマーみたいになってるんだけど?
「いや、さすがに『よく分からない強い魔物』が発生するのは困るから迷宮の攻略、破壊は止めておいたほうがいいんじゃないかな?……あくまでもカーくんの話を全部鵜呑みにしての話だけどさ」
「うち、嘘なんかついてやしまへんで?兄やんの言う通り!無体な真似反対!」
「嘘をついてなくとも全部話してるとは限らないんですけどね?DPを全部吐き出したところで、ダンジョンコアを潰さない限りは問題ないと思いますよ?」
「ふぐっ!?いや、そんなんされたらわしの住処がやな……」
「確かにそうかもしれないけど、自分家の近くで実験するにはリスクが高いんだよなぁ」
「それもそうですね。まずは離れた所で違うダンジョンを見つけて試してみましょう!てことで、今から出発します?」
「他所でもスタンピード発生させちゃうつもりなのかよ!とんだアポカリプス娘だな……いや、まだ迷宮の話以外なんにも聞いてないからね?ちゃんと情報収集してからにしようね?」
「なんやろこれ、うち、助かった気ぃがせぇへんのやけど……」
結局その日は夜遅くまで不安そうな顔をする――もともとタレ目だからそんなに表情は変わってないけど――カーくんから事情聴取して一日が終わった。
この惑星にも地球人とほとんど同じ外見の人型生物が存在するらしいことがわかったことは大きな収穫だな!
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