第016話 『迷宮探索がしたいんだよね?』
「まぁ古いパン……古着に関しては後で回収するとして」
「渡しませんけどね?」
「服のサイズは着るだけで調整されるから測る必要はないんだけど、とりあえず確認のために一度脱いでもらえないかな?」
「脱ぎませんけどね?というか、先に『着るだけで調整される』って言われた上で脱ぐのはただの痴女ではないでしょうか?あと、もし本当に私が脱ぎだしたらどうするつもりなんですかね?」
「全力で止めるけど?」
「面倒くさい人だなー……」
「まぁ冗談はこれくらいにして、一応葵ちゃんの候補として、外套の代わりに『薄ビンク色の袖の長いカーディガン』、その中に『セーラー服(冬服・スカート長め)』、下着の代わりに『スクール水着(旧)』、予備の下着としてブラはAカップでパンツは……玉パン、ヒモパン、ふんどしのどれにする?作るパンツによっては新しく『セクシーすぎる下着デザイナー(うしじ○いい○く)』のMODを入れないといけないんだけど?俺が洗濯しやすいのは玉パンなんだけどそれでいい?」
「どうしましょう、ツッコミどころが多すぎて思考がまとまらないんですけど……まずカーデガンは暑くなるだけなのでいらないです。というか、今着ているのはブレザーなのにどうしてセーラー服を選択したんですか?いえ、とくにブレザーに拘ってるわけでもないですし、別に新しいブレザーは必要ないんですけどね?できれば動きやすそうなパンツスーツにしてもらえればありがたいです。というかサイズが自動調整されるって言いいましたよね?それなのにブラのサイズがAってどういうことなんです?貴方は一週間耐久焼き土下座とかしたい人なんですか?パンツに関しても選択肢があるようでエグいものばかりってどういうことなんです?普通のでいいんですよ普通ので!そして下着の洗濯は自分でしますのでお気遣い無用です!」
「なるほど……つまりまとめると『動きやすそうなブルマ』、『B寄りのAカップ』、『玉パン』でファイナルアンサー?」
「何一つ合ってませんよっ!とりあえず玉パンから離れてください!」
「まぁこのクソ暑い地域で活動しようと思ったら下着以外は『ウエスタン系』か『砂漠の民系』の衣装になっちゃうんだけどさ」
「なら今までの会話は一体なんだったんですかねぇ……」
とりあえず普段着の『カウボーイ(カウガール)』と、よそ行き衣装の『砂の民(王子様・お姫様)』を作っておいた。
「えっと、服に高温耐性が有るとか言われてもイマイチ理解し難いんですけど……この服を着ると涼しくなるっていうことなんですか?」
「んー、半分だけ合ってる感じかな?例えば『砂の民衣装』をフルセットで装備すると『高温耐性が-30℃』まで下げられるんだけど、これってエアコンみたいに温度を下げるわけじゃなく、体調に悪影響が出ないギリギリの『34℃』まで体感温度を下げるだけなんだよね。気温35℃でも34℃、50℃でも34℃」
「いえ、それだけでも、十分に凄いことだと思いますけど……34℃って普通に暑いですよね……」
「そうそう、だから何にしてもエアコンは必須!室内最高!」
「現状の私がまさにそのような感じの生活を送っているので非常に心苦しいんですけど……。あの……水玄さん。寝具も整えていただいて、着替えまで用意していただいて、その上で図々しいお願いだとは分かっているんですが……美しくも可愛らしい私からお願いがあるんですけど」
「うん、確かにダブルで図々しい……こともない外見なのが微妙に腹立たしくもあり嬉しくもあり。あー……まぁいつかは言い出すだろうなとは思ってたけどさ。確かにもう半月以上も我慢させてたもんね?」
「わかっていただけます?そうなんですよ、もうずっとウズウズしたままで……」
改まって、真剣な顔でこちらを見つめる葵ちゃん。
うん、言われなくても気づいてるよ?なんたってこれだけ一緒に生活してるもんね?
『ステイタスオープン!』と叫んだあの日のように、ここは二人で声を揃えて、
「迷宮探索がしたいんだよね?」
「私、お風呂に入りたいです!」
「……えっ?」
「……えっ?」
そもそも俺、あの時も『ステイタスオープン!』なんて叫んで無かったわー……。
うん、相変わらず何も通じ合ってない二人なのである。
「いや、異世界大好き異世界オタクの葵ちゃん、剣も入手したことだし、初日に発見してからずっと我慢して体を火照らせていた迷宮に潜って逃げ惑う魔物を千切っては投げ、千切っては投げ……って話じゃないの?」
「違いますよ?せっかく新しい下着と綺麗なシーツ、柔らかお布団で寝られるようになったんですから、汗と埃をちゃんと洗い流したいんです。あと貴方の中で私はどれほどの異世界フェチの戦闘狂だと思われてるんですか……」
「えっ?中学生男子が教育実習に来た女子大生に向ける欲望くらい異世界好きだよね?なるほど……確かにお風呂は欲しいかも。ていうか俺も次回の増築で作ろうとは思ってたんだよ。お風呂……『初歩的な衛生管理』はもう取ってあるし、とくに新しい技術も必要ないから水風呂で良ければ今日中に用意できるよ?さすがに穴掘りする時間はなさそうだから、外の小屋に湯船を設置するだけになるけど。ああ、二人で入るにはちょっと狭いかもしれないけど我慢してね?」
「例えが悪すぎますからね!?そんなドロドロした若い慾望ではなく、もっとこう……純粋な異世界愛です!というか、どうして二人一緒にお風呂に入る前提なんですか!そこは順番に決まってるでしょう!もしも、どうしても一緒にお風呂をしたいというのならまずは告白から!どうぞ!」
「やだよ、振られるってわかってるのに……」
なんとなく竈門小屋ではなく鍛冶小屋の空いてるスペースで湯船を作る俺。相変わらず石材を積んでコンコンするだけの簡単なお仕事である。
完成したお風呂に先に入るのはもちろん葵ちゃん。
一応は、心ここにあらずな、ソワソワとした感じで『お先にどうぞ?』と一番風呂を譲られたんだけどさ。
久々のお風呂に一秒でも早く入浴したい葵ちゃんと、なんとなく女子高生の後のお風呂に入りたい俺の思惑が一致したわけだな!
……決して変な意味合いは無いからね?
「ふう……すごくスッキリしました。井戸から湯船にお水を汲むのが少し大変ですし、水風呂ではありましたけど。お風呂に入れるってこんなにも贅沢で幸せなことだったんですね」
「井戸からの水汲みは全部俺がやったんだけどね?てか、水を汲むのが大変だって分かってるなら、葵ちゃんの入浴後に排水しないでそのまま置いておいてくれると嬉しかったんだけどな?ああ、もしかして湯船に毛がいっぱい浮いて」
「そんなものはありません!」
「えっ?ここにきてまさかの無毛宣言!?君の魅力が倍増なんだけど!?」
「そういう意味でもありませんよっ!お巡りさん、この人です!」
「ああ、そうそう、湯船の横に置いておいた脱衣籠に洗濯物が無かったんだけど、今日の分も預かっておこうか?」
「いきなり話を変えてきましたね……でも、『はい、じゃあお願いします!』ってならないですからね?どうして貴方は『いつも俺が洗濯してるのに何で急に?』みたいな、キョトンとした顔をしてるんですかね……」
「ああ、そうか。今日着けていた下着は長期熟成されたモノだったからか……うん、でもそれは仕方ないと思うよ?大丈夫、俺は気にしないからさ」
「何を納得したのかは分かりませんし、心の広さアピールがやたらと鼻に付いてイラッとしますのでとりあえず助走付けて殴っていいですかね?」
このご時世に暴力系ヒロインは良くないと思います!
『能力値変化』
・採掘:2→6
(拠点洞窟拡張により)
・工作:4→7
(石材加工、衣服生産、その他により)
・知識:1→13(ミッション報酬:12点追加)→0
研究:『和の木人』(1点消費)
MOD追加:『皇帝の仕立て屋(姫様の耳はネコ耳!)』、『料理の木人(ウッディ・シェフ)』、『富士山・桜家具(親子喧嘩はしない)』、『近代的な寝具(きょうとやまかわ)』
『瓜売りが瓜売りに来て瓜売れ残り売り売り帰る瓜売りの声(スイカはギリギリ果物!)』、『サラァデの国のトメィト姫(スイカは野菜です!)』(合計12点消費)
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