第013話 野いちごと『初恋』と『創造』。

「というか、本当にトウモロコシが三日と掛からずに育つんですね……まぁ見た目的にはその向こうに生えているポツンと取り残されたような小さなサボテンの方が意味が分からないですが。あと野いちご畑を今の10倍に増やしてください」

「それもこれもすべてMODのおかげ、つまりシスティナさんのおかげなんだけどね?1グリッド、4平方メートルの敷地の真ん中に『小さなサボテンが一本だけ生えてる姿』はなかなかにシュールな光景だけれども。野いちごはなぁ、日本で食べたことあるのと比べるのもおこがましいくらいむっちゃ甘酸っぱくて美味しいけど、収穫量が少ないから畑を増やすどころか他のモノと植え替えようかと」

「絶対に替えちゃダメですからねっ!?そんなことしたら私から貴方への友好度がダダ下がりしますよっ!!」

「そもそもその『友好度』というのが下がるほどあるのかどうかすら疑問なんだけどなぁ。あと『好感度』ではなく『友好度』なんだ?」


「この数日でそれなりに上がってますので安心してください!まだまだマイナス圏ですが。ふふっ、私はお高い女の子なので、まずは友好度が最大まで上がらないと好感度は上がりません!」

「安心要素がいっさい無ぇ……そしてお高いの使い方たぶん間違えてると思うよ?」

「ていうかですね、私って可愛い清楚系黒髪生徒会副会長女子高生じゃないですか?」

「なんかもう肩書が長すぎてパッと見お経みたいになってるんだけど?もう少し頑張れば寿限無に追いつきそう」


「そんな私が……ここ数日間、貴方の隣で寝てるわけじゃないですか?そんな恵まれすぎた環境にいるはずの貴方はどうして普通に寝ちゃえるんですか?」

「うん?そりゃこの数日で多少は葵ちゃんのことも理解できてきたし?いきなり殺しにかかってくることは無いって思って……無いよね?大丈夫だよね?」

「当たり前です!私の今の楽しみは毎日少しずつ野いちごを食べることだけなんですからね?そして『水玄さん=野いちご生産者』ですからね?それを害するなんてとんでもない!……じゃなくてですね。言いたいこと、分かってて誤魔化してますよね?」

「まさか野いちごに命綱を握られる日が来るとは日本にいたころは思いもしなかったよ……いや、別に誤魔化してるわけじゃないんだけどね?てか、俺って女の子を見れば誰彼構わず襲いかかるような人間だと思われてたりするのかな?」


「そこまでは思ってませんけどね?でもほら、貴方の隣りにいるのって私じゃないですか?言い寄る男は数しれず、振った男も数しれず、いつの間にやら付いた二つ名は『桜凛学園の断頭台』。そんな私が貴方の隣で無防備に寝てるんですよ?いきなり襲うとかはなくとも普通なら玉砕覚悟で口説こうとくらいはするものじゃないですか?」

「物騒な二つ名だな!?もちろん君が可愛い女の子だとは思うけどね?これでも年相応には大人だからさ、当たり前のレベルのリスクマネジメントくらいはできるさ。こんな右も左もわからないような状況で、たった一人の頼りにしなきゃいけないパートナーと気まずくなるようなことはしないよ」

「……大人なんですね?いつも私のことを気持ち悪い目で見ていた男子生徒や担任教師とは違うということですか」


「男子生徒は仕方ないけど何やってんだよ担任教師……。まぁ初対面でおじさんって呼ばれるくらいには大人だからな!てことで、これからも俺が君を口説くことも手を出すことも絶対にないから安心……は出来ないだろうけど、多少は信用してもらって大丈夫だよ?あ、でもたまに後ろからお尻を見つめることだけは許容してもらえるとありがたいかな?」

「最後のがなければちょっとはキュンとしたかもしれないのに、本当に残念な人ですね……でも、口説かないと言われるのは、それはそれでなんとなくムカつきます!いいでしょう、近々で私に告白させた上で振って差し上げましょう」

「いや、マジで気まずくなるから妙な真似はやめてね?」


 さて、トウモロコシもジャガイモも二日で収穫可能だと確認できた&収穫して再度の種まきも完了したからには味見もしておきたいと思うのは当然のこと。

 ……野いちごは葵ちゃんが早朝から味見してたんだけどね?この惑星――異世界にきてから早5日、当然甘いものなんて何もない場所だからね?よっぽど楽しみにしてたんだろうなぁ。

『収穫ならお手伝い出来ますよ!』と、胸の前で両手で握りこぶしを作った葵ちゃんにトウモロコシの収穫をしてもらったんだけど……葵ちゃんが収穫した後の畑がさ、最初の荒れ地に戻っちゃったという……。『私、お邪魔しか出来ない人間なんですね……』などと演技じゃないガチ凹みをされたという。

 そんな彼女のためにも!ここはトウモロコシさんとジャガイモさんの出番ではないだろうか?


「この世界でも農作物が収穫できることがわかりましたので、本日より!お昼ごはんを解禁したいと思います!」

「ふっ……私みたいな役立たずは一日に、いえ、二日に一食でももったいないです……」


 おい、思ったよりも面倒くさいことになってるぞこの娘……。


「あれ?いいのかな?本当にいいのかな?野いちごであの味だったんだよ?てことは、このトウモロコシ、間違いなくスイートスイートなコーンのはずだよ?」

「うっ……確かに……尋常じゃない糖度の野いちご生産者の水玄さんが育てたトウモロコシとジャガイモ……いいでしょう!その挑戦状、この私が受け取って差し上げましょう!」

「いったい葵ちゃんがどんなキャラを目指してるのかわからない……軽くお塩を振ってからお食べよ」


 湯気を立てるトウモロコシをお皿からそっと持ち上げて、言われた通りにお塩を指でひとつまみ。

 あれだな、トウモロコシにかぶりつく女子高生。中々に良い物を見せて


「てか旨っ!?何だこれ?甘いだけじゃなくすっごい味が濃いんだけど?」

「私、トウモロコシのポテンシャルというモノを見誤ってました……これは確かにスイートスイートコーン……いいでしょう、これからは『初恋』と品名を名乗ることを許しましょう」

「大層な名前のトウモロコシが誕生したな。てか、ジャガイモの方も焼いただけでこれだけのホクホク、そしてしっとりとした食感」

「ジャガイモ本来の味と香り、そしてくどくない安心感のある甘みまで加わり新しい焼きジャガの誕生……ああ……バター……バターが欲しいです……あ、この子は『創生』で」

「信○の野望シリーズか!」


 ご飯はもう暫く我慢してもらわないとならないけど、トウモロコシとジャガイモ(ついでに野いちごも)気に入ってもらえたみたいだし、なにより一日三食食べれるようにもなったことは大きな前進だと思いたい。

 まぁまだまだ農地は広げないといけないんだけどね?

 木材の採集方法がここでは『サボテン』の植林しかない上に、衣類その他の生産に使う『木綿』も植えないとならないしさ。


 それからさらに六日間続けて農作業は続く。

 前半3日は毎日8グリッド、後半三日は9グリッドずつの追加で植えられている作物は『トウモロコシ、ジャガイモ、野いちご、サボテン、木綿、薬草』。

 木綿とサボテンだけじゃなく『薬草』が増えてる?だってほら、医薬品がそんなにないからさ……軽い傷なら薬草で十分だし。

 木綿と薬草があるからあとは『抗生物質』があれば医薬品も作れるようになるんだけどな。そちらもMODで追加が必要なのでしばらくは放置なのだ。


「なんだかんだで10日間農作業ばっかりしてたな……」

「最初の頃と比べると目に見えて作業も早くなってましたよね」

「農業のレベルが『12』まで上がったから単純計算で効率30%アップしてるからな!まぁ農業以外で上がったのは調理(レベル3)だけなんだけどさ」

「というか、サボテンがまさか木材になるなんて思ってもいませんでしたよ……私の中ではサボテンといえば食べ物のイメージでしたから」


「あー、それむっちゃわかる!あれだよね?サボテンステーキ!」

「見た目緑色ですし、味は青臭いだけですし、美味しいものではなかったですけどね」

「食べたこと有るんだ!?俺は写真でしかみたことないけどヌルヌルネバネバした巨大なオクラみたいな感じだった記憶しかねぇや」

「私が食べたのはそこまでネバネバはしてませんでしたよ?」


 現在の農地面積は80グリッド。形でいうと正方形『4×4(16)グリッドの畑』が5面だな。

 植えられているのは内訳としてはは『トウモロコシ(5グリッド)、ジャガイモ(5グリッド)、野いちご(6グリッド)』が1面、綿花が1面、薬草が1面、サボテンが2面となっている。


 今さらだけど『MOD無し』で植えられる作物は、

 レベル1から植えられる『ジャガイモ、トウモロコシ』。

 レベル3から植えられる『小麦、野いちご』。

 レベル5から植えられる『木綿、牧草、薔薇』。

 レベル8から植えられる『薬草、煙草、ホップ』。

 他にも『タンポポ』もレベル1から植えられるんだけどね?

 生きるか死ぬかの砂漠地帯で刺し身に乗せるお仕事も無いのに草生やしてる場合じゃないからね?


 ついでに『植林』技術の獲得で植えられる樹木のほうは、

 レベル5で『竹』、『サボテン』。

 レベル8で『松』、『杉』。

 レベル10で『チーク』、『マホガニー』。

 と、なっている。

 竹は木材じゃなくて『竹材』になるので微妙に別物なんだけど、その他の五種類に関しては生息地とか成長速度とか伐採時に手に入る木材の量の違いしかないんだ。

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