第010話 初めての『ミッションクリア報酬』!

「長かった、非常に長かった……ですがとうとう!二人の初めての共同作業の成果が出ました!」

「まぁ作業してたのはほとんど水玄さんで、私は初日以外はなかば見学してただけなんですけどね?」

「スターワールドだと石塊は一つずつしか運べなかったから移動時間がやたらと掛かったけど、葵ちゃんはインベントリがあるからまとめて回収出来たからね?いや、それでも一日中岩拾いだもんね。中腰にもならないといけないし、お努めご苦労様」

「ふふっ、それは言わない約束でしょう?ではなくてですね!石塊って一個5キロ~10キロくらい……結構まばらなサイズの岩でしたよね?それなのにどれを加工しても20個の石材が出来ていましたよね?」


「ん?別におかしくはないだろ?石塊1から石材20は決定された結果だから当たり前じゃん?」

「まぁそちらはそういうモノだと受け入れましょう……しかし石壁!あれはさすがにありえないでしょう!まず組み方!石垣の野積みじゃないんですから乗せていくだけでは壁にはなりませんよね?煉瓦とかと一緒で漆喰とかコンクリートとかの練り物を間に挟まないと崩れますよね?」

「まず漆喰もコンクリも『練り物』とは呼ばないんじゃないかな?なんかこう……宮大工さんの技術的な感じの力が働いてるんじゃね?」

「まぁ崩れてこないのもそういうモノだと……受け入れましょう。でもですね、あの壁のサイズっていくつでしたっけ?」


「8立方メートルだな」

「使った石材の数は?」

「20個だけど?」

「どうして煉瓦サイズの石が20個で8立方メートルの壁が作れるんですか!こうやって表面上の数だけを数えても20どころの騒ぎではないですよね?あと石材のサイズ!絶対に大きくなってますよね?まったく意味がわからないです!」


「だってそういうモノなんだもの……『石材1個』っていうのは『石材が1個』という意味ではなく、あくまでも『石材1個』という単位なんだよ?」

「ちょっと何を言ってるのかわからない……こともないですね。なるほど、木材にせよ石材にせよ見た目は『薪みたいな丸太一本』と『煉瓦サイズの石が一個』ですけど各々が圧縮されたアイテムだと考えればいいということですね?」

「おお!なるほど……そういう考え方をすれば確かにおかしくないのか!」

「どうして説明していた貴方が私の説明を聞いて目から鱗が落ちたみたいな反応してるんですか……」


 いや、だってもの凄く納得のできる説明だったんだもん。

 俺的には石壁よりも『石の天井葺き作業』のほうが『どうなってんだこれ?』な作業だったんだけどね?

『原始的な炉』と『原始的な竈門』?そっちも石材を積むだけの作業だったけど、見た目的には普通だったからツッコミは入らなかった。


「まぁ……貴方の行動といいますか、スターワールドが非常識なのは今に始まったことではないので諦めましょう。そんなことよりも完成した竈門です!さあ、私にお米を食べさせてください!」

「そこそこ理に適ったシステムだと思うんだけどなぁ……おう!任せろ!俺の『調理:1』の技術力が火を吹くぜっ!!」

「あっ!……そういえばそうでしたね……『家庭科:1』とか心配しか無いんですけど……」


 家庭科じゃねぇよ……大丈夫、料理に失敗しても食中毒を起こす程度だから!失敗した料理も確認さえしておけば見分けはつくから!

 てことでここからが本番!いよいよお楽しみのクッキングタイムである!

 早くもソワソワとワクワクの止まらない葵ちゃんが『誕生日当日の幼女』みたいでちょっとだけ愛くるしく感じてしまい、少し悔しい思いをしている俺。

 もちろん『原始的な竈門』なんてものを普通に使えるわけもないのでオートで『調理』することになるんだけど……レベルが1しかないから『簡単な料理』しか作れないんだよなぁ。

 何が完成するのかまったく分からないけど、体が動くに身を任せてそのまま様子を見ることに。


 フム、まずは米を100グラムほど取り出すのか。

 それをそのまま、火を付けた竈門の平になった石の上に乗せて炒(いた)める……というか炒(い)る?

 なんか『ジャージャー』って感じのSE(効果音)が入ってるんだけど違和感しかねぇなコレ。

 そのまま数分、何処から出てきたのか分からない『木のシャモジ』で炒り米を混ぜ続けて、こちらも何処から出てきたのか分からない『木の皿』に盛り付けたら、


「完成です!」

「正気ですか?」


「いや、どんなモノが出来上がるのか凄く興味があったから流れに身を任せてみたんだけどさ、ほら、炒飯、おあがりよ!」

「いいですか水玄さん、確かに貴方はお米を炒(チャー)してました。しかしですね、何の手も加えずに生米を炒ったものは、女子高生の間では炒飯とは言わないんですよっ!」

「チャーするってなんだよ……もちろんお兄さんの間でもそれを炒飯とは呼ばないんだけどね?何この見た目、完全に粒状のプラステックなんだけど?おそらく食感も粒状のプラスティックだとおもうし、味もきっと粒状のプラスティックなはず?」

「それが分かってるのにどうして私の前に差し出したんですか!?アレですよ?貴方が思ってる100倍くらい私、今日のこの日を待ち望んでいたんですよ?それなのに、それなのに出て来た料理がぬいぐるみの手足に、重しの代わりに入ってそうなザラザラだなんて……うっ、うううっ……いえ、何もしない私がこんな文句を言うなんておこがましいですよね。貴方は一生懸命に頑張ってくださってるのに……ごめんなさい、私、文句ばっかり言う嫌な女ですよね……頂きます……」

「冗談だから!食べなくてもいい……というか、それはたぶんスズメさんくらいしか食べられないヤツだから!」


 ちょっと!?バニラ版のままでどんな料理ができるのか、軽い実験のつもりだったのに、葵ちゃんがマジ泣きしたと思ったら反省し始めちゃったんだけど!?

 いや、確かに俺の中では実験だったけど彼女から見ればこれしか作れないようにも見えなくもないもんな……泣きながら生米(生ではない)を食べる女子高生の姿とか、俺の心に渦巻く罪悪感がすげぇわ!


 料理、料理……確かMODにソレ系のが大量にあったと思うけど……知識ポイントが残り1しかないから取れるモノが無い

(達成されたミッションがありますので加算されてはいかがでしょうか?)

 えっ?とくに何かをしたわけでもないから今まで確認もしてなかったけどミッションクリアとかしてたんだ!?


 システィナさんに画面を開いてもらい、初めてのミッション画面の確認をしてみると、


『初めての工作:1ポイント』

『初めての採掘:1ポイント』

『初めての建設:1ポイント』

『初めてのレベルアップ:1ポイント』

『初めての技術獲得:1ポイント』

『初めての料理:1ポイント』

『拠点確保:5ポイント』

『拠点範囲10突破:3ポイント』

『拠点範囲30突破:3ポイント』


 思ったよりたくさんクリアしてた。

 知識ポイント、最初は5点しかなかったからもっと入手し辛いモノだと思ってたんだけど……案外手に入るモノなのかな?


「えっと、私のことをいきなり放置してまた何やら画面を開いてるみたいですけど……どうかしましたか?」

「ん?ああ、ごめんごめん!てかさっきまで泣いてたのにいきなり素の状態に戻ってて怖いんだけど」

「こんな可愛い私をつかまえて怖いってどういうことですか!ほら、私って中学高校と演劇部じゃないですか?」

「それは……つまり嘘泣きだったと?」


「いえ、涙は出てましたので嘘泣きではないですよ?」

「何にしても演技じゃん……怖ぇな高スペック女子高生……俺の心に渦巻いた感情の起伏に謝って?」

「まぁそれはソレとして、初めて見る画面みたいですけど……ミッション画面ですか?まだこちらの世界に来てからそれほど経ってませんのに思ったよりもたくさんミッションクリアしているのですね……というか、クリアしていないモノは表示もされてませんけど、これってもしかして自分で探してクリアしないといけないんですかね?それってそこそこの無茶振りじゃないです?」

「もっと気にして欲しいんだけどね?まぁボーナスみたいなモノだし、偶に確認して達成してればラッキー!くらいに思っておけば……いや、コロニーの人数が増やせない現状では唯一の『知識ポイント獲得コンテンツ』なんだから獲得方法が曖昧だとかなり不便なのはたしかだな」


「ここに一人、今すぐにでも増やせそうな仲間がいるんですけど無視ですかそうですか」

「葵ちゃんはほら、そういうシステマチックな関係じゃなくもっとこうスピリチュアルな何か?って感じのアレだから」

「精神論とかいらないんですよ!そもそもそれ、ただの思いこみじゃないですか!あと『アレ』とかいう人はだいたい何かを誤魔化している人だと思います!」


 とくに隠し事はないんだけどなぁ。

 そもそも嘘とか隠し事って相手に対する思いやりなところも無きにしもあらずだから悪い意味合いだけってわけでもないじゃん?

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