第005話 彼女の名前は『システィナ』さん。
今日一の面白い顔で『黒髪ロング太ももムチムチ系生徒会副会長』が大きく目と口を開いて唖然とする。
もちろん『第一回未知の惑星変顔大会』なんてものを開催しているわけではない。
ではどうしてなのか?それはもちろん、
「えっ?いや、なんなんですあれは!?なんかこう……光線的なモノが飛んでいって岩壁を焦がしたんですけど!?」
「最初からレーザーライフルだって伝えてあったよね?てか、もっとこう……爆発したりする感じかと思ったんだけど、思ったより絵面が地味だったな」
「全然地味じゃないですけど!?そもそもレーザーって貫通するもので爆発するものじゃないと思いますけど?いえ、そうじゃなくてですね!そんな危険物、いったいどこで手に入れたんです?携帯できる光線銃とか、世界のどこを探してもありえないと思うんですけど?……そういえば初期配置がどうとかこうとか言ってましたね。もしかしてそれが貴方に与えられた祝福……ちょっと私にも貸してもらっていいですかね?」
「目が座ってる人に武器を持たせるとか危険しか感じないから当然貸さないけどね?ていうよりも、初期装備だから『使用者権限』が俺に固定されてるんだよ。だから葵ちゃんには撃てないと思うよ?」
俺の言うことを信用しないどころか小馬鹿にした小娘を『わからせる』ためである。
まぁ運転席から降りて長銃の試し打ちをしただけなんだけどさ。
思っていた通りの武器(レーザーライフル)であること、命中率は置いておくとして、問題なく撃てることもわかったので、詳しい性能を確認するためにマップから個人ログを経由して装備画面を開く。
結構めんどくさいなこれ
(音声入力により直接『ログ』及び『装備』に飛ぶことも可能です)
「いきなり喋った!?」
「何ですかいきなり大きな声をだして……」
「あれ?何も聞こえなかったの?えっと、もしかしだけど葵ちゃんって腹話術が得意な女子高生だったりしちゃう?」
「どうして私がそんな一発芸を持っていると思ったんです?そうですね、私の特技は……天使の微笑みのようなウインクですかね?」
「あざとい」
だったら一体誰が声を……?
(もちろん私、スターワールドシステムですが?)
こいつ、直接脳内に……。ハ、ハロー?
(日本語音声入力が可能です)
了解いたしました。
……ってそんなこと出来るんだ!?凄いなシステムさん。
(……もしかすると『システムさん』という胡乱な呼び方は私、スターワールドシステムの愛称のおつもりでしょうか?)
えっ?そうだけど……呼び名を付けると何か内部的に問題が発生するのかな?
(内部的にではなく私の気持ち的に喜ばしくありません。正確には可愛くありません)
気持ちなんだ……えっと、システムさんはAI的な何かだと勝手に思っちゃったんだけど……もしかして精霊さん的な何かだった?
(そのどちらでもありません。そしてその件に関する返答は出来ません。あっ、『禁則事項です』。そして次『システムさん』と呼んだ場合は)
『あっ、』て何だよ『あっ、』て。別に言い直さなくてもいいんだけどね?てか呼んだ場合はどうなるのかな……?
(爆発します)
「何がっ!?」
「いえ、ですからビックリするのでいきなり隣で奇声を発しないでもらえます?というよりいきなりボーッとしたかと思ったら叫んだり……精霊さんとでもお話してるんですか?」
「いきなり本質を見抜いてる葵ちゃんすげぇな!?いや、精霊さんじゃなくてシステ……シス……シス……システィナさんでどうかな?」
(了解いたしました。現時点を持ちまして私、スターワールドシステムは名称を『システィナ』と変更いたします)
「どうかなって聞かれましても困るんですけど。いや、誰なんですかその人……。いきなり不思議ちゃんキャラとか始められても不安になるだけ、それにプラスしてただただ不気味なので控えてもらってもいいですかね?」
「おっさんの不思議ちゃんとか確かにどこにも需要はないだろうけれども!いや、ほら、俺のマップ画面とか出してくれる人!っていうか機能?その人がシスティナさんなんだけど、話せるらしいんだよ!」
「混乱していて何を言ってるのか半分くらいしか理解できませんが……貴方……正気ですか?」
葵ちゃんのその反応、とても正しいと思います。
てか、確かに傍から見たら結構な不審人物だな、俺。
「……いえ、でもここは異世界ですもんね。その程度の不可解な現実があっても何らおかしくないのかもしれません」
「葵ちゃんの順応性高いな!即落ち2コマレベルのスピードですんなりと信じちゃったよ!」
「つまり私もステイタスさんに話し掛ければ……いえ、そもそも話しかける方法がわからないんですけど……その銃といい、このトラックといい……水玄さん、ちょっと優遇されすぎじゃないですかね?」
「『今のところ』葵ちゃんもそのおこぼれに与れてるんだけどね?」
「『これからも』貴方のその力には大いに期待していますね!」
「清楚系の外見に似合わずいい性格してるんだよなぁこの子……あとあざとい」
こっちを向いてとてもいい笑顔で天使のウインクをする彼女だった。
まぁその後、葵ちゃんから小姑のように色々な質問をシスティナさんにさせられたんだけどさ。
俺が使える能力について、つまり『スターワールドのシステム面での質問』以外はまったく何も答えてもらえなかったんだよなぁ。
「てか、主にドライブ……近辺の地形の確認をしてたからなんだけど、そろそろ結構良い時間になってきてるんだよな。具体的にはもう数時間で日が沈みそう」
「そうですね。朝ごはんから何も食べてませんし、お腹もすいてきました……。あえての質問なんですけど、トラックの座席って寝転べるようなリクライニングって出来ます?」
「見てもらった通りそんなスペースないよね?このトラックがトランス◯ォーマーでもなければ無理だってわかるよね?荷台にはそこそこ荷物が積んであるから後ろで寝るのもキツイ、いや、葵ちゃんに荷物を全部……インベントリだっけ?荷物を放り込める異次元空間ってのにしまってもらえばいいのか?でも、仮に寝る場所がそれで出来たとしても、サウナレベルの暑さの荷台で寝たりしたら翌朝には脱水状態で死んでそうだもんな……。何にしても、活動拠点が必要なのは間違いないか。クーラーを付けておくだけでもトラックの燃料が減っていくし」
てことで、まずは『拠点』を整えるために建設用の資材を回収しないといけないんだけど、そのへんはほら、葵ちゃんのインベントリが使えるからさ。
てか何その『運搬作業』を圧倒的に効率化出来る機能、俺もむっちゃ欲しい!
システィナさん、どうにかならないかな?
(そちらは私とは別系統のワールドアビリティですので不可能です)
マジかー……。
てか、やっぱり葵ちゃんが持ってるのは俺とは別方面の力なのか。
もちろんソレ、葵ちゃんの能力が、何処の誰から貰ったモノなのかをシスティナさんに質問しても教えてはもらえなかったんだけどね?
まぁ細かいことはどうでもいいか、今は拠点、涼しい寝床の確保をしないと明日以降どうなるかわからないしね?
しかしリアルだと過酷すぎだなスターワールド……今のところは絶望感よりもワクワク感が強かったりするけど。
だって数千時間やり込んだゲームが実体験出来るんだよ?これに歓喜しないゲーマーが存在するだろうか?否、いない。
問題があるとしたら賭け札が『自分の命』ってところだけだな!
……そこそこの大問題である。
「てなわけなんで、マップ上に点在する物資、木材とか鉄とか機械部品とか保存食……ああ、石塊もそれなりに必要だな。それらの回収を手伝ってもらっていいかな?」
「私自身の生き死ににも関わってくるのでもちろんお手伝いしますけど、また聞きなれない言葉が……機械部品って何なんです?」
「んー……一言でいえば、機械を作るための部品?」
「そのままですか」
だってそのままなんだからしょうがないじゃん!!
小一時間ほどトラックで近辺を走り回って落ちていたそれらを回収――というか、葵ちゃんに収納してもらった。
異次元空間半端ねぇな!てか最大でどのくらい入るんだろう?
「保存食を拾うっていうから『落ちている干し肉』でも集めるのかと思ったら、まさかの見慣れた『カロ◯ーメイト』だったんですけど……荒れ地に点在する黄色い箱、なかなかシュールな光景でした」
「ふふっ、なんてったって総合栄養食だからな!ちなみにパッケージをよく見てごらん?カロ◯ーメイトじゃなくロンリーメイトって書いてるから」
「……ほんとだ!?って商品名がほぼほぼシモネタじゃないですか!」
「その発想はなかった。いや、『ロンリー(孤独な)メイト(友達)』っていうほどシモネタか?女子高生の感性がイマイチ理解できん……」
おそらくは『女子高生』ではなくて『葵ちゃん独特の』感性だからだと思うんだけどね?
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