第14話エピローグ
俺は気がつくと魔王の間で倒れていた。
スプライトを倒したあとから記憶がない、ゆっくりと立ち上がり周りを見渡す。
『聖剣が砕け散っている……魔王と相打ちになったはず…』
俺は魔王との戦の時、聖剣に命の殆どを注ぎ込んだんだ。なぜ、生きている?
とにかくここを離れないと……
足元にスキットルボトルが落ちている、マーシャから貰った物だ、スキットルボトルは割れていた。
手に取るとマーシャの魔力の残滓を感じる。
『マーシャに命を救われたのか……』
彼女は愛用のスキットルボトルに生命という意味の呪文を込めていた、彼の命を救うために…。
モニカとマーシャの遺体は見つからなかった。
一度、死にかけたせいか全てを思い出せた、あの夜、モニカの手を見てから記憶が曖昧になり、神殿でされたことを……
神殿の一室で、手袋以外何も身に着けず自分に跨がるモニカ、自分には愛する人が居るというのに抗えなかった。
記憶を改竄され、魔王討伐に駆り出された。
マーシャ……自分を好きだと言ってくれた女性、助けられた、無事逃げられただろうか。
遺体が見つからなかったのは生存していると信じたい。
足が重い、今故郷の村に一人で向かっている、勇者として勝利の凱旋をするなどそんな気になれない、モニカが生きて居れば利用されただうが、女神の信仰集めに協力する気はない。
自分には女神に人生を狂わされたのだ、最愛の人スプーンと殺し合った。
彼女がなぜ四天王スプライトなのかはわからない。
「勇者を辞めて逃げなさい」
彼女はそう言いたかったんだ、俺が女神に利用され使い潰される事を知っていたんだ。
「ようやく着いた…」
村は廃墟に成っていた、魔物に襲われたと言うが本当の所はわからない。
魔物がやったのか、女神の指示なのかどうでもいい、ただ、今は彼女の両親の墓に詫びを入れたかった。
スプーンと殺し合った事を……
村の墓地にたどり着く、違和感を覚えた。
「花が供えてある…」
スプーンと自分の親の墓にのに咲く可憐な花が供えてあった。
「――ディーノ……」
自分を呼ぶ声が聞こえた、随分懐かしく感じる。
「スプーン…」
彼女はいた、間違いない、腕にはスプライトに負わせた傷跡があった。
彼女は今にも泣き出しそうだ。
「ごめんなさい……私…勇者である貴方を籠絡するために人間に転生したの……」
震える声で彼女が言う。
――ああ、気の利いた言葉が浮かばない。
俺は彼女を抱きしめる、彼女体が小さく感じた。
「私は四天王スプライトなの……貴方に愛される資格は……」
「――関係ない」
強く彼女を抱きしめる、もう、二度とこの人を失いたくない。
「一緒にいて欲しい…愛してる」
彼女は大粒の涙を流しながら頷いた。
もう、二人が引き裂かれることはないだろう。
魔王は倒されたが、女神の思惑通りにはいかなかった、勇者が姿を消したため、魔王と相打ちという事に成ったからだ。
しかも、モニカが死んだのが致命的だった、彼女は美しい手モニカ呼ばれ信徒達に慕われていた。
その信徒たちの信仰心が減ってしまったのだ、もう、勇者などど言う神造兵器は作れない、もしも、次に勇者が現れたならは唯の勇気ある人だろう。
次回エピローグマーシャ
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