第13話勇者

魔王間、その目前で四天王スプライトが立ちはだかる、彼女を一目見ると心がざわついた。

以前会った気がしたが、すぐ思考を切り替える魔王を倒す為には全て障害を排除する、そうしなければならない。

『何故……彼女を斬らなければならない?』

疑問が浮かんだ、あり得ない事だ、女とはいえ相手は四天王考えるまでもないはず。

聖剣で機雷と化した周囲の泡を斬り伏せる、ダメージを無視して彼女に正面から挑む。

彼女は自らの泡で作った槍をつかう。

聖剣と槍が打つかる。

『力はこちらが上だが……さすが四天王』

彼女とは幾度となく打ち合った、聖剣と激突しているのに槍は折れない。

無数の泡からなるこの槍は、スプライトの魔力がつきぬ限り再生する、聖剣との接触の瞬間、敢えて泡を破裂させ威力を殺し、新たな泡を構築する。

『かつて竜の鱗すら貫いた、この槍が通じないなんて』

私は焦りを感じていた、生成出来る泡は魔力以外にも条件があったからだ。

空気中の水分から泡を生成している、空気が乾いて着た、空気中の湿度が下ればそれだけ魔力効率は落ちる。

私は勝負にでる、一旦勇者との距離をとり槍に魔力を廻す、より高密度により強固に泡を生成した。

勇者は聖剣に闘気を集中させている、迎え撃つきだ。

「これで終わりだ、勇者!」

私は渾身の力で槍を繰り出す、聖剣が槍を削り取っていく。

泡の生成が追いつかない。

ついに槍は折れ、聖剣は私の体を斬った。

私は仰向け倒れる、命はまだあった、全力を込めた槍が聖剣の威力を半減させたのだ。

「勇者……私の首を……」

彼は首を横に振る、最期の力を振り絞り言葉を続ける。

「……逃げなさい……勇者など…やめ…」

「――どうして気遣う? 君は…」

何が引っかかる、この人は四天王スプライト……


――魔王を倒しに行くのだ

――突然声が響いた

――二人は声の方に目をやる

――二つの手が浮いていた


次の瞬間、勇者の両耳を塞ぐ形で手が頭を抑えた。

「がぁぁぁ」

勇者は絶叫する、何者かの意識が流れ込む


――リミットを解放し魔王を倒せ


『あの手は――美しい手ってまさか…』


――モニカに与えた手が役に立った


――モニカは上質の信仰を捧げる故


――期待したが所詮は益虫止まりか


イシュタルが直接彼を操ろうとしてる、私は何もできず意識をうしなった。


女神の手により神造兵器勇者は起動する

魔王を殺す為に魔王間に進んで行ったのだった。





次回エピローグ


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