第12話女神の手

私は奴隷だった、見た目は良かったので当時の主人に愛玩動物代わりに可愛がられた。

いつしか飽きられ戯れに純潔を奪われると、男どもの玩具にされた、下の者に下げ渡されたのだ。

私は平気だった、女神様を信仰していたから、火であぶられても耐えれた。

ある日、私は両手を縄で縛られバンザイの格好で釣られた。

――剣の試し斬りをするらしい

――私で……私の両手が手首から斬られた。

――体が地面に叩きつけられる、痛みは感じない

――私はこわれたのだろうか?


『信仰心が肉体を凌駕したのですよ』


――ああ……ついに祈りが女神様にとどいたの?

――貴方に加護を授けましょう


私の両手首が光輝く、新しい手が姿を現す。

私は感涙した、力が漲る、何と言う幸福感。


――ここにいる者を殺しなさい


「承りました、女神様」

私は女神様から貰った手で、その場にいる者たちを全て殺した、意味がわからない、何で泣いてるの?何で命乞するの?

「女神様が死を望まれたのなら、にっこり笑顔で死なないと?助けてじゃなくて、ありがとうございますでしょ?」

このあとモニカ・グローブと名づけられ、修行を積み神官となった。


「美しい女神の手だって?大きく出たな」 

目の前のコーラという魔族は信じてない様だ。

「神罰対象者で――この手を見て生きている者はいなわ」

私はゆっくり神罰対象者に近づく、人も魔もイシュタル様を信仰しないものは死ねばいい。

それが女神様との共通の認識だった。

「くらいやがれ!」

魔力強化と魔族特有の強靭な肉体から放たれる、右ストレート、私は右手で受け止め、無造作に投げ飛ばした。

神の力による身体強化とそれを活かす為の修行の賜物、私は投げ捨てた相手を見る。

「ちゃんと着地するとはやりますね」

「ステゴロ出来るみたいだな!」

「お恥ずかしい話――結界術や回復より……荒事の方が得意なんですよ……」

私は彼女の問に照れながら答えた。

「そうかよ!!」


殴り合いがつづく、鬼女コーラは情報通り格闘が得意だった、手袋を外した私とでここまで戦えた者は居ない。

「お前化け物か?痛覚ないのか?」

失礼な女だ、痛みなどいくらでも我慢できる、心に信仰があれば。

「これで終わりです」

私は右手に神力を込める、彼女は両手をクロスさせ魔力と闘気で防御を固める。

無駄なことだ、私はインパクトの瞬間に力を解き放つ。

「極光―」



――おめでとう!コーラ。

――なんだスプライトか

――子供ができたんだって?

――六人目だな、次こそ女の子が欲しいな〜

――あのね、避妊しろって言ったよね?

――………

――コーラが仕事休むと、私の仕事が増えるのよ!!

――すまないとは思ってる出来てしまったんだ!

――冗談よ、いつか纏めて借りを返してね、親友!!


『夢…そうだ借り返してないな…』

スプライトには私が産休の度に迷惑をかけていたな、私は体の状態を確認する、両腕は骨が砕け、筋組織も破壊されて動かなない。

全身に激痛が走るが構わす立ち上がる。

「モニカ!決着はついてないぞ!」

「正直――貴方の生き死に価値はない、見逃して上げますよ」

魔王さえ倒せれば信仰は確保できる、コーラに勝っても信仰は誤差程度にしか増えない。

イシュタルは信仰の効率をもっとも気にする、モニカを聖女と名乗らせないのも聖女と女神で信仰の分散を恐れての事、他の神であれはモニカは聖女を名乗れていただろう。

「ダチに借りを返せてないんだな、付き合ってもらうぜ!」

両腕は使えねえ、最期の手段だ、コーラは頭部の一角に魔力と生命力を集中させる。

モニカ向かって私は魔獣のように突進する。

「消えろ!!」

モニカが掌打を放つと、光の壁が出現する飛び越えられる高さではない。

私は光の壁と真っ向勝負をする、衝撃で両腕が千切れる、構わないこの頭と角さえ奴に届けば!! 

「モニカー!!」

光の壁を抜けモニカ突進する、お前なら慢心せず迎え撃つと思っていたよ!

モニカは正確に私の顔に拳を当てた、下顎が砕け散る、だが、私はとまらない。

角に全ての力を回し、角を剣の様に伸ばした。

総出外の事に反応出来ないモニカ、角は左肩から心臓に向かう。

「こんな角などに」

モニカは左手で角を掴む。

『それでいい…角が折れば…』

角にヒビが入る、そこから集められた魔力がこぼれだした。

バキィ、角が完全にへし折られ、魔力が一気に放出され、爆破する。

コーラはモニカに自爆覚悟の特攻をし成功させたのだ。

二人遺体は何も残らなかった、女神の手を除いて……





次回勇者

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