第9話禁呪
「ディーノ様どうしました?」
作戦当日の朝マーシャのテントを訪ねた、彼女は笑顔で迎えてくれる、こうしてみると十七歳の普通の女の子に見える、彼女の魔法力は充分理解してるつもりだった。
「考えは変わらない?今からでも作戦の変更を――」
彼女は首を横にふる。
「どうしてそこまで?命を削るなら勇者である俺の役目だよ?」
「貴方に死んで欲しくない―好きなんですよディーノが…」
ディーノと呼ばれて女性の姿が浮かんだ、死んだという婚約者だろうか胸が苦しい。
「俺は――」
彼女の気持に応える事は出来なかった、未だに亡くなった婚約者の死が割り切れてない。
「これをお守り変わりに持っていてくだい」
彼女は愛用のスキットルボトルを手渡してきた。
魔術師でない自分にも解る、強い魔力感じた。
「樹海消滅後、二人は直ぐに魔王城に突入して、辺りは高温になるけど、モニカが防護膜全開で張れば行けるわ」
彼女は禁呪発動後、ここに残る事になってる、反動にもよるが暫くは全力が出せないらしい。
彼女の魔力が上がっている、人の身で耐えられるものなのか?彼女を信じ見守る。
「死の手よ!我が呼びかけに応えよ!破滅の十光!今解き放つ――システマ・ペリメトル!」
天空に十個の魔法陣が表れる、魔方陣から地上に向かい光の柱が降臨する。
周囲が眩い光に包まれる―――
光が消えたあと、そこにあったのは炭化した樹海だったものだった。
「マーシャ」
俺はマーシャに駆け寄る。
彼女は呪文の反動で頭から血をながしてる。
「私は良いからモニカ!早くディーノ様を!!」
「マーシャの言う通り、先を急ぎましょう」
「―マーシャ回復したら、迷わす逃げて」
勇者達は魔王城に向かった。
樹海の地下深くに彼女の貯蔵庫があった、四天王ユーカが各地より集めた、植物の種、塊茎、種芋、それらを長期保存するための彼女自らが設計したものだった。
「何が―起こったのかしら…あの衝撃はいったい?」
私は勇者達との戦闘に備える為地下に種を取りに来たはず。
私は壁に手を当て魔力を送り、植物の状態を確認する、え?、私は何かの間違いだと思い再び魔力を送る。
『地上部の異常な高温……地下茎まで全滅!?』
私の樹海は例え地上を焼き尽くしても、地下茎さえ無事なら私の魔力でいくらでも再生できるはずだった。
「彼奴等何をしたの!!」
私は思わず叫んだ、土壌の状態を確認するが汚染されていた、感覚でしかわからないが成分の数値がおかしい、呪い?いや、汚染?
「ちっ」
私は舌打ちする、おそらく数十年草も生えない、私は装備を整え地上に向かった。
断熱は完璧の筈なのに、階段を一段上がる度に異常な温度の上昇を感じる。
嫌な予感がする、私は簡易結界を自分周りに展開する、やがて出口の扉が見えた。
「ぐっ、開かない」
魔族である私の力ですら扉は開かない、私は魔力放出で扉を破壊する。
「――――」
私は言葉を失った。
私の捕食植物が樹海ごと焼き尽くされていた、かつての樹海は汚染され、命あるもの自分しか居ない。
『簡易結界も長くは持たない――これしかない…』
私は地下から持ち出した、強化肥料と種子を自身の腹に挿した。
『……ディーノの元に行かないと…』
私は薬物で無理やり回復させると立ち上がる、モニカは女神の下僕であって、奴にとって勇者は備品、魔王を倒したあと何をするかわからないわ。
追いつく手段ならある、彼に渡したスキットルボトル、これが目印となり転移スクロールで合流できるはず。
「なっ!!」
私の目の前に突如として大木が出現する、大木は私を取り囲んだ。
「見つけたわ…魔術師……」
地面から何が這い出てきた。
ユーカ!?禁呪を耐えきった!?違う!運良く範囲外にいたのね?
「殺す前に一つ、いえ二つ答えてくれないかしら?これ禁呪よね?威力が有り過ぎる上に土地が汚染され戦利品の価値が無くなる、戦争にすら使えない、本来であれば脅しにしか使わない呪文のはずよね?」
「―そうよ―禁呪システマ・ペリメトルを使ったのは私…」
私はあえて本当の事を言った、ユーカの注意を引くために。
ユーカの姿が変質している、以前から会った時は完全な人型だったけど、いまは所々植物と混じり合っている。
「私は四天王の役目を果たすため、覚悟を持って自分自身を苗床に使ったわ、生き残ったとしても完全には戻れない、でも、貴方は何なの?同じ人間に改造され、生体魔力融合炉、魔導兵器にされた、それなのに何故ここまでしたの?」
ユーカの質問に思考を巡らす、彼女質問は最もだ、私の過去だけ見るなら理由はわからないだろう。
「そうね――自分でもらしくないと思うのだけどね――彼、勇者を愛してしまったのよ、ようは惚れた男を長生きさせたい、只それだけのことなのよ」
次回決着
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