第8話マーシャの過去
私は代々魔術師の家系ヘリカルに生を受けた、母も魔術師だったが母は私を娘として愛してくれた。
十歳の時母が亡くなり私の人生は狂った、父が生体魔力融合炉の実験体に私を売ったのだ、あの男は言った魔術師として大成するこそお前の幸せなのだと……。
投薬、改造手術、死と隣り合わせの修行、ただ魔力を上げ制御出来るようになるよう調整された、
そこでは私は人ではなく魔導兵器だった。
「生殖能力の欠如――お前は母体として使えない失敗作だ」
十五歳の時父親だと思っていた男に告げられた。
私は絶望し、父親だった男を殺した、私の改造に関わった魔術達も殺してやった!存分に彼らが望んだ魔術を行使してやった!、心が晴れることはなかった。
それからは魔術師としての力を切り売りして生きていた、魔道具の制作、魔物退治、護衛、何でもやった。
私が十七歳の時転機が訪れた、モニカ・グローブからの勇者パーティーへの勧誘、私は断った、世界を救う?勇者と?馬鹿らしい。
「子供を産める体に成りたいのではありません
か?」
何故それを知って?私の改造に関わった奴らは皆死んだはず。
「貴方の願いは届きましたよ、イシュタル、お前が神だと言うなら私に子を授けてみろ、体を治してみせろ――傲慢な物言いですが、女神イシュタル様はお許しになりました、魔王討伐成功後貴方の体を直すと……」
確かに祈りとは言えない、暴言を心の中で言った覚えがあった。
あんなのでも女神に届くものなのか?
子を産める体になり家庭をもつ、それが叶う?
もし嘘だったら―――
「わかったわ仲間になる――だけど約束を違えた時は多くの信徒が女神の元に旅立つ事になる」
約束が果たされなければ、私は信徒を虐殺するだろう。
勇者パーティーに入ってディーノ様にあった、柄にもなく異国の王子様では?と戸惑ってしまった。
モニカの話しでは彼は女神の作った神造兵器だと言う、私達はその兵器を魔王の所まで警備すること、酷い話しだ、十五歳で成人とは言え使い捨ての兵器扱い、始めは同情だったのかもしれない。
『ここまでするつもりは無かったわ』
夜テントの中で呟く、私は愛用のミスリル製のスキットルボトルボトルに魔力を込め「ジーズニ」呪文を唱える。
よし、お守り代わりと言って彼に渡そう、これで少しは魔王戦後生き残れる可能性があがるはず。
願いを叶える事を優先するなら、彼に聖剣を使わせるべきだ、禁呪自体は発動する、そのあとはわからない。
今の私は彼が一番大事、私が本気で勇者に惚れるなどモニカも予想しなかっただろう。
『モニカ――用済みの兵器で良ければ下賜するといったわね?彼を兵器扱いする奴らには渡さない――』
次回禁呪
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