第5話勇者パーティー

私は四天王ハガを倒した報奨金を手に町外れの孤児院を訪ねた。

「姉ちゃん、アル中ー」

「マーシャお姉ちゃん、遊んでー」

「今日はお土産あるの?」

三人子供たちが私を囲む、愛しい、可愛いというより若い命は愛しいと思う、自分はここの子供たちに比べると歪だ、だからこそ輝いて見える。

「クッキーを買ってきた、皆で食べなさい」

クッキーの入った袋を手渡した。

「お姐ちゃんありがとう」

三人同時にお礼を言う、子供達の笑顔に私は喜びを感じる。

「マーシャ様」

「マーサか、金を持ってきた、子供達の為に使って」

マーサはこの孤児院の責任者だ、ここは女神イシュタルを主神とする団体が運営している。

彼女に金の入った袋を渡すと、私は皮肉を口にする。

「女神様が全能であれば、孤児など出ないでしょうにね」

「マーシャ様!如何に勇者パーティーに選ばれし貴方様でも不敬ですよ、子供達を憐れんでの御言葉でしょうが……」

「そうね、私は良いから子供達をお願い…」

マーサは一礼して子供達の元に向かう。

マーシャはため息をつくと、ポケットからミスリル製のスキットルボトルを取り出す。

彼女の特注品である、中身は当然酒。

「マーシャ・ヘリカルさんですか?」

自分を呼ぶ若い男の声がした、私は声の方を向く、男の姿を見た瞬間、思考が停止した。

い、異国の王子か!?心の中で叫んでしまった、黒髪で黒い瞳の端正な顔立ちの男、美少年と言っても差し支えないだろう。

「そうですが、君は?」

「ディーノです、こちらにいると聞いたので挨拶に来ました」

「勇者ディーノ……」

こんな少年が女神イシュタルが選んだ勇者、いや兵器か、私は驚いた、もっとゴツい姿を想像していたからだ。

「マーシャ、待たせてしまいましたね」

私がディーノ様がに見惚れていると、後ろからモニカが表れる。

「魔王討伐は3日後になりました、短いですがディーノ様はマーシャと過し、親睦を深めてくださいね」

「いきなりね、前もって連絡欲しかったわ」

私が抗議するとモニカは私に耳打ちする。

「勇者様の精神の洗浄に時間がかかりました」

精神の洗浄?こいつは何を言って?

「いま、彼は婚約者と故郷を失って傷ついています、頑張って口説けば抱けると思いますよ?」

そういうとモニカは私達を置いてさっていった。

ちょっと見惚れてはいたが、いきなり抱くとか、そもそも私が抱かれる方だと思うのだけど。

「ディーノ様はお酒はのまれますか?」

嗜むと言うので、町を案内してまわった、私一人ならば昼から飲むありだね。

たが勇者様の品位を落とす訳にはいかない、夕方になってから雰囲気のよい店にお連れした。

思い切って個室を借りた、勇者様と静かに話したかったからだ。

向かい合って座り、彼に酒の好み聞く。

「香りが良くて、サッパリとした物が良いですね」

なるほど、私は店員を呼ぶ。

「このウイスキーの十二年物をソーダアップで二つ……彼の方は1対3、私は一対一の割合でたのむ…」

割合については店員に耳打ちした、私は濃いのが好きなのだが、彼に引かれるかもしれないとこっそり頼んだ、自分らしくないと苦笑する。




次回叶えたい願い

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