第6話叶えたい願い
「ディーノ様がどうですか?」
「美味しいです」
彼は微笑みながら答えた、良かった気に入ってもらえたようだ。
私も酒を口にする、うん、私はこのぐらいの濃いほうがいい。
「マーシャさんはどうして、魔王討伐に?」
「―――叶えたい願いがあります、討伐の報酬で願いが叶うのです」
私には全てに優先する願いがあった、それは女神イシュタルなら可能だとモニカから告げられている。
ようは報酬に釣られての参加だ、魔族に恨みはない、避けられる戦闘なら避けようとも思う。
「ディーノ様はどうして勇者に?」
女神に誘導されてるのはわかってはいたが、彼の心情が知りたかった。
「故郷の村が魔族に襲われて…それで決意しました…」
彼はどこか他人事の様に言う、モニカが精神の洗浄といったが、洗脳の事だったの?
「村が襲われた時に婚約者も殺されて、その時頭を撃った制で一部記憶がないんです、婚約者の顔も思い出せない…」
その婚約者は魔王討伐を躊躇わせる存在だったのだろう、モニカに命も記憶も奪われたのか…。
「一緒に仇を取りましょ!」
私は嘘をついた、村が襲われたのもおそらくは女神のシナリオ、私に出来ることはないだろう。
「今日は沢山飲んで食べましょう、次は白の泡ボトルでいきますよ!!あと何食べます?」
任せると言われたので、発泡白ワインと料理を適当に頼んだ、こんなに樂しく飲んだのは久しぶりだ。
翌日私は絶句した、締めにコーヒーを頼んだまでは覚えている、ウイスキーが入った奴を…。
何で私の部屋で勇者様寝てるの?
『――ディーノ様を手籠めにした!?』
必死に思い出す、うん、同意はあった、私の方から誘った、良かった、抱かせろ!!とか言ってたら女として終わってたわ。
私は彼を起こさないように身支度をする、今日の昼は孤児院の子供達に料理を使ってやる約束をしていたの。
市場で材料を調達し孤児院に向かう、すぐに子供達が迎えてくれた。
「アル中こんちわー」
「昨日のお兄さんは?一緒じゃないの?」
「飲みすぎると良くないよ?」
「はは、私は特別な改造を受けているから平気なんだ」
私は調理場に向かい料理を作り始める、子供のころ母がよく作ってくれた、ピーツを使ったシチューだ、野菜、肉を切り煮込んでいく。
さて、私は一息入れる事にする、グラスを準備し、魔法で凍結させた苺を入れ、そしてキンキンに冷えたトロっとしたウオッカをそそぐ。
一口口にする、苺の薫がウオッカにうつり美味しい…。
「そろそろかな?」
私はシチューを味見した、うん、母程ではないがうまくできた。
「マーシャさん、こんにちわ」
「ディーノ様!?どうして?」
声の方を向くとディーノ様が来ていた、私は酔って覚えてなかったのだ、「明日の昼孤児院で料理振る舞うので良ければ来てくだい」と調子のいいこと言っていたのを。
「何か手伝う事ありませんか?」
「じゃあ、食器をならべてください」
「わかりました」
彼に食器を並べてもらい、子供達にシチューを振る舞う。
「おかわり」
「はや、もう食べのか!」
「美味しいです」
子供達の笑顔も嬉しかったけど、ディーノ様が上手だと褒めてくれて嬉しかった。
子供の若い命は愛しい……
私には産み出せない宝
絶大な魔力と引き換えに私は子を産めなくなった。
私はお母さんになりたかった、魔術師よりも……
次回樹海と悪魔の植物
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