第3話マーシャ・ヘリカル
女は城の庭園で花を見ながら何かを呑んでいた、昼からビールである、しかもアルコール度数9%のポップを大量に使った、現代におけるインディアペールエールに相当するとても苦い代物。
(モニカ遅いな…まさか、勇者の抱き心地が良いからあそんでるの?)
モニカが勇者と合流してから一月が過ぎようとしていた。
女は魔術師と言った装いで、頭にはとんがり帽子、髪型はふんわりとした茶髪を2つ編みにしていた。
彼女はマーシャ・ヘリカル、勇者パーティーのメンバーである。
イシュタルの神殿で勇者を鍛えるため、その間マーシャは王都の城で待機している。
(十五歳の少年を特攻兵器にするなんてね、イシュタルも酷い事をする)
マーシャは勇者に選ばれた少年に同情していた、彼女はモニカとは違う、イシュタルに選ばれはしたが信徒ではない。
(女神に願いを叶えさせるまでは逆らえないからね、せめて少年を生き残らせてやりたい…)
業腹だが女神に従うしかない、彼女の願いを叶えられるのはイシュタルしかいないのだから。
「また酒ですか?御身体にさわりますよ?」
「酒?…私の国ではエールは酒じゃないわ、子供でも飲んでるわ?」
怠そうに話かけてきた騎士に答える、騎士は呆れ顔だ、彼女の言葉を信じていないようだ。
「はあ…」
「それで何か御用かしら?」
「穀倉地帯が魔物に襲われていて、加勢をお願いにあがりました」
「そう、案内なさい」
穀倉地帯には黒い靄のようなものにおおわれている、それは意思持つ一つの生命体の様に辺りを飲み込み、作物を暴食している。
「四天王ハガの昆虫軍団…」
マーシャは視力を魔力で強化し、靄の詳細を把握したイナゴやバッタに近い虫の群体。
「兵は下がって、私は攻めることしかできないから」
彼女は魔術を行使する、頭上に無数の魔法陣が表れる。
「アゴーニ!」
マーシャの言葉と同時に魔法陣から光弾が発射される、それは流星の如く、群体とかした虫を消し飛ばした。
「ハガ様申しあげます、先鋒のレギオンが全滅しました」
赤い帽子をかぶったダンゴ虫の様なモンスターが告げる。
魔蟲のハガ、四天王唯一の男、身長は二メートルを超え、体は甲殻類のような外骨格で覆われている。
「目的は達成した撤退する」
ハガの判断は早かった、この被害では兵糧が確保できず、人間は軍を動かせない。
(何だこの魔力は?)
ハガは自分向かってくる強い魔力を感じた、強く歪な魔力、その魔力源に大型の蛾のモンスターを差し向ける。
「プラーミァ!」
マーシャの声が響く。
次の瞬間無数の炎の柱が発生し、瞬く間に蛾は焼き付くされた。
炎の柱の間にからマーシャが姿を表す、自分の周りに夥しい虫が飛び回っている、本来であればハガが指示をださずとも虫は人間に喰らいつき、瞬く間に骨に成るはず。
「虫除けの魔術でも使っているのか?」
「ああ…私が不味そうなんでしょ?虫は野菜は食べても草は食べないから」
マーシャは呆れ顔でいう。
「四天王ハガね、私はマーシャ・ヘリカル、殺しにきたわ」
「冥土の土産はくれないのか?」
顎に手をやりながら尋ねる。
「私達初対面でしょ?あげるわけないでしょ」
「そうか!」
ハガが叫ぶ、次の瞬間マーシャの足元から大量のミミズが間欠泉の様に湧き上がる。
彼女の姿は一瞬で虫に飲まれる、生きたまま喰われ骨になる。
彼女がプレーンな人間であれば。
夥しい虫に体を包まれながら彼女は術式を発動する。
ハガを中心に球状のプラズマが発生する。
マーシャは口の中に入り込む虫を噛み砕きながら、呪文を唱えた。
「トカマク!!」
プラズマ内に超高熱が発生し、強烈な光が辺りをつつみこんだ。
備考マーシャの魔法はロシア語です。
マーシャはマリアのロシア語愛称
ヘリカルは螺旋
次回神造兵器
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