第2話泡沫の夢

私は夢を見ていた…

人間に産まれ落ちる前の夢を…


私は魔王スカーレットノヴァに呼び出されていた。

「スプライト参上いたしました」

魔王軍四天王 泡沫のスプライト 

前世の私の肩書…魔族だった。

「スプライトよ頼みがある、五年後勇者が生まれると予知があった」

「勇者…ですか?」

「そなたを転生術により、勇者の近くに人として転生させる、勇者を籠絡して欲しい」 

スプライトは不思議に思う、何故そんな事を?、生まれる前に殺せばいいのでは?

「女神イシュタルの加護により、誕生の時期以外は全くわからないのだ」

「人間に転生したとして、私は使命を覚えているでしょうか?」

「勇者運命を操作し、二人が魅かれあうようにする、籠絡が不可能になれば記憶が戻る、その時は勇者を亡き者にするのだ」

「使命を果たしたら記憶は戻らないのですか?」

「その時は人として人生を終える事になる、勇者が覚醒しなけば殺さずともよい」

「わかりました、お受けします」


私は魔王様の転生術で一度死んだのだ。


「ぐっ…」

スプライトは痛みで目を覚ました、辺りを見廻すと谷底で、身体の下に無数の泡が存在していた。

(そうか…咄嗟に泡を出して落下の衝撃を相殺したのね…)

泡沫と呼ばれた、彼女は様々な泡を出すことができ、魔力を込めれば重騎士の鎧すら切り裂く。

(力を取り戻したのに傷の治りが遅い…)

辺りは明るい、人間のそれも女に殴られた傷が一晩たっても回復しない、魔族である自分がだ。

モニカは何らかの加護持ちなのだろう、とにかく魔王軍に連絡を取らなければ。

スプライトは人差し指を噛み血を流すと、地面に魔法陣描く。

(四天王専用の緊急信号…誰か気づいて…)

ここは辺境、魔族の領土からは遠い。



スプライトは泡の応用で空気中の水分を集め凌ぐ

3日間水だけで過ごす、意識が朦朧とする中

不意に女の声が聞こえる。


「あらスプライト、こんな所で寝るなんて淑女としてどうかのかしら?」


日傘を持った赤い目の女、デビルプランツの異名を持つ。

「ユーカ…」

スプライトは差し伸ばされたユーカの手をとったのだった。


目が覚めると見覚えがある天井だった。

「スプライト様お加減はいかがでしょうか?」

メイド服を着た魔族が尋ねる、スプライトはベットに寝かされてた。

「問題ない、私は何日ぐらい寝ていた?」

「五日ほど」

ユーカが転移スクロールを使い、魔王城で治療を受けさせてくれたとのこと。 


「魔王様とお目通りしたいのだけど、魔王様はどこに?」

「スプライト様が目覚め次第、呼ぶよう仰せつかっています、こちらへ」





次回マーシャ・ヘリカル

もう飲んでるの?


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