龍の末裔 第一巻

@Tatsuya_Ohgro

第1話

プロローグ

 数時間前に横須賀を出発した豪華クルーザの甲板では、プールサイトでトップグラビアアイドルをモデルとした撮影会が行われていた。時刻は午前十時を過ぎた頃だ。

 

 太平洋はこの時期には珍しく凪いでいた。季節は七月であり夏の真っ盛りであるが、穏やかな海風が心地よかった。

 照りつける太陽の下、日本を代表する十数人のトップグラビアアイドル達が、ビキニ姿で白い素肌を露出させ、十数名のカメラマン達が彼女達の全身をカメラに収めていた。

 

 プールサイドの一角にあるテラスには、ひとりの若い女性がビールを飲みながら、撮影会の様子をぼんやりと眺めていた。

本庄里奈。それが彼女の名前だった。職業は自衛官。階級は二尉であった。

 年齢二十四歳。容姿はトップモデルも及ばぬ程に美しかった。細面の愛くるしい顔に二重瞼の大きな瞳が印象的だ。彼女は、十日間の長期休暇を取り、この豪華クルーザの旅を楽しんでいたところだ。船のオーナーが里奈の親類であり、乗船に費用はかからなかった。 防衛大学を主席で卒業し、海上自衛隊に入隊し二年で二尉まで昇進していた。

 

 突然クルーザの進路に全長二百メートル余りの潜水艦が浮上した。潜水艦の甲板には一門の砲塔が設置されていた。船長はクルーザの進路を変更させたが、潜水艦もまた進路を塞ぐように移動した。

 

 潜水艦は十ノットの速度でクルーザに向けて直進してきた。クルーザの側面に船体を擦り付けるようにして停止した。

 

 すぐに潜水艦の船橋にあるハッチが開けられ、木製ストックで旧式に見える小銃で武装した兵士達が飛び出してきた。クルーザの甲板に伸ばされたロープを伝い、次々と乗り込んできた。

 

 国籍不明の兵士達は、顔面に防弾用のプロテクターをしているので表情は見えない。皆身長が二メートル近くあり屈強な体躯の持ち主だ。

 

 プールサイドで酔いつぶれていた白髪で肥え太った中年の男が、千鳥足で近つきながら、何かを話しかけたとき、兵士のひとりが銃剣で、男の顔面を貫いた。それを目撃した乗客達にパニックが広がった。女達の泣き叫ぶ声が甲板上に弾けた。

 

 兵士達は、若い女以外の乗客やクルー達を銃剣で機械的に刺殺していく。海に逃れたクルーのひとりは小銃で撃ち殺された。甲板は血塗れの惨殺死体が横たわり、女達の上げる阿鼻叫喚で溢れていた。

 

 プールサイドで一塊になって泣き叫び震え喚いていたビキニ姿の女達に、国籍不明の兵士達が殺到した。十二人の女達は国内でトップクラスのグラビアアイドルであった。

 

 兵士達は、女達の髪を鷲掴みにして身に着けていたビキニを紙のように引き千切った。盛り上がった白い乳房や美尻がむき出しにされた。

 

 

 女達を抱きしめるように拘束した兵士達が一斉に鉄製のマスクを外した。皆、少し緑がかった青白い顔で両目が異常なほどに大きかった。異常に感じられたのは、真ん丸な目には白目がほとんどなく黒目がほとんどだったことだ。唇は薄く鼻筋が通っていた。


 兵士達は一様に淫らに見える笑みを浮かべ、女達の乳房に喰らいつき乳首を激しい勢いで吸った。ある女は、逆さまに両足を吊り上げられ股間を舐め回された。女達の絶叫がプールサイドに満ち溢れた。

 


 里奈もふたりの兵士達に捕らえられていた。全裸にむかれ、前後から股間と深い尻の割れ目に顔を押し込まれ、膣とアヌスを同時に舐られていた。容赦の無い嬲りであった。

 

 兵士の信じられないほどの長い舌が体内に侵入していた。激しい恐怖と屈辱を感じながら、余りの快感に意識が飛びそうになっていた。激しい尿意を抑えられなかった。


 白い背筋を仰け反らせ鋭い喘ぎ声を発しながら、兵士達の顔に放尿した。兵士達は里奈の尿を喜々とした表情で喉を鳴らしながら飲み干した。

 

 女達が兵士達に凌辱されていた時、遥か彼方から航空機のエンジン音が聞こえてきた。 

 兵士達は凌辱の手を止め、上空を伺った。

 航空自衛隊のPー一哨戒機がクルーザーめがけて直進してきた。

 

 兵士達は、意味不明の言葉を発し、凌辱していた女達をそれぞれが担ぎ上げ、デッキを走り、海へとジャンプした。

 その下には国籍不明の潜水艦がクルーザに横付けされており、次々と甲板に着地した。高さは五メートルほどもあった。女を担いでいるにも関わらず、着地の衝撃で倒れ込むこともなかった。恐るべき身体能力の持ち主達であった。

 潜水艦は甲板上に設置された艦砲をPー一哨戒機に向けた。同時にPー一哨戒機は進路を変更した。艦砲が発射され砲弾が間一髪でPー一哨戒機の近傍で爆発した。

 

 直撃を免れたが、砲弾の破片によりエンジン一基が破損していた。Pー一哨戒機は、残るエンジン三基を使用して旋回を開始し、日本本土に向けて進み始めた。作戦を一旦中止し、日本本土に向かったのだ。潜水艦が急速潜航を開始した。

 

 兵士達により拉致された女達は、まず、艦内の調理場に運び込まれた。ひとりづつ巨大なシンクに入れられ洗剤で全身を洗い清められた。

 特に股間は丹念に洗われた。最後には、カミソリで陰毛を剃られた。女達は羞恥のあまりすすり泣いた。大声で泣き叫ぶ女は、兵士により激しく叩かれた。

 

 その後、食堂に引き立てられテーブルの上に横たえられた。将校と思われる兵士達が、女達の両足を押し開き、股間を覗き込み、口を付けて舐め回した。女達の啜り泣きが食堂内に満ち溢れた。うつ伏せにされた女は、尻を両手で大きく広げられ、アヌスを舐られていた。

 

 丁度食事時のようで、兵士達はシチューのような料理を食べながら、彼女達の裸身を弄んでいた。キュウリに似た野菜を膣やアヌスに差し込まれ、嗚咽を漏らす女もいた。

 男達の凌辱は執拗だった。異様なほど女達の肉体に執着した。女達が逝っても逝っても舌や手による嬲りは止まらなかった。不思議なことに本番に及ぶものはいなかった。

 

 失神した女は、食堂横の厨房にある巨大なシンクで再び洗い清められ、別の男に全身を嬲られた。

 

 将校達による激しい凌辱の後に女達は狭い潜水艦の一室に閉じ込められた。全員が全裸のまま、天井から下げられた鎖に両手を拘束され、つま先が床に着く程度に吊り下げられていた。

 

 まるで家畜のような扱いだった。二日に一度、調理服のような衣服を着た男が現れた。男は満面の笑みを浮かべながら、吊り下げられた女達の全身を舐るように見詰め、乳房や尻を鷲掴みにして感触を確認した。それをされる女は一様にすすり泣いた。

 

 今日はグラビアアイドルの中で最近売り出し中の優亜が、犠牲となった。男は優亜の全身の肉を鷲掴みにし感触を確かめた後で、背後に周り片膝をついて、すすり泣く優亜の白く盛り上がった尻の割れ目に顔を押し込み、アヌスの匂いを嗅いでから舌で激しく吸い舐り始めた。

 優亜の啜り泣きが喘ぎ声に変わるまで止めなかった。最後には前にまわり膣を存分に舐めた。ぐったりとした優亜を肩に担ぎあげ、監禁室を出て行った。鋼鉄製の扉から男が出る際、優亜の盛り上がった白い尻が震え戦いているのが見えた。

 

 優亜が運び出されたすぐ後に、長く鋭い女の悲鳴が聞こえ、すぐに静かになった。さらに暫くすると鼻孔を刺激する調理の匂いがしてきた。残された女達は、言い知れぬ不安にすすり泣いた。

 

 連れ出された女は決して戻ることはなかった。拉致されてから既に四日が経過しており、二人の女達が連れ去られていた。里奈は女達の運命に思いを巡らせていた。

 

 狭い艦内で別の部屋に監禁する理由が見当たらなかった。女が連れ去られてすぐに聞こえてくる悲鳴はまさに断末魔と言えた。理由は不明であるが殺害された可能性が高かった。自分も殺されるイメージが脳裏を横切った。里奈はそれ以上考えるのを止めた。

 女達の心は死に対する恐怖のために崩壊寸前だった。

 

 また、女達は一日に一度、艦内にある調理場に運び込まれ巨大なシンクで全身を洗い清められた。その後で、士官室に運び込まれ、士官達に激しい凌辱を受けた。

 

 士官達は皆、女の裸身を舌で味合うのが好きだった。無言で足の裏を含め、全身のすべてを舐られた。特に乳房や膣やアヌスは時間をかけて丹念に舐めた。


 ひとりの士官が女の膣に指を入れたとき、大きな歓声を上げた。周りの士官達がその男に対し何かを言った。非難しているような顔つきだった。

 

 潜水艦内では大きな音を発することは厳禁であった。

 

 男を非難した士官達も一斉に女の膣に指を入れた。士官達の顔に歓喜の表情が浮かんだ。

 皆、先を争うようにして女達をテーブルの上に仰向けや、腹這いにさせて細長い男根で貫いた。女が声を上げないように口を片手で塞いで、激しく突いた。

 

 女達を嬲る士官達の肌は異様に青白かった。その青白い肌が興奮の余り赤みがさしていた。

 

 女の膣に精液を放った士官は、激しい快楽を感じているのか白目の無い大きな瞳は見開かれ、視線は宙を漂っていた。椅子に深く腰掛け、余韻に浸っていた。

 少し休んでから再び女を貫いた。他の士官達も一様に女達の裸身に激しく欲情しているようだった。声を出さないように女だけでなく自分の口にタオルを巻いて、女を犯す士官もいた。

 

 食堂は異様な雰囲気に包まれていた。女達も皆、感じていた。何度も逝かされた。死の恐怖も士官達のテクニックの前には無力だった。女達は若くて美しく白い裸身をくねらせ、絶頂に導かれた。

 

 里奈も凌辱の犠牲となっていたが、他の女達と異なるのは艦長と思われる男が常に抱くことだった。凌辱の場も艦長室であった。男は里奈の美しい裸身を見るたび、満面の笑みを浮かべ、狂ったように全身を舐め回した。

 艦長をはじめすべての兵士達の欲望に限りは無かった。

 

 与えられる食事は、これまでに目にしたことのない果物だけだった。いつも来る調理服の男が、バナナやリンゴに似た果物が山盛りに入れられた大鍋を持ってきた。

 食事のときは戒めを外された。果物の味は悪くは無かった。調理服の男は彼女達が食事をする間も膣や尻を触ってきた。

 トイレも監視の前で用を足さなければならなかった。若い女性にとって、それは耐え難い苦痛だった。監視の兵士は、用を足したばかりの下半身を喜々とした表情で、バケツの水とタオルを使い拭き清めた。


 里奈は、潜水艦が航行中に何度か水面に向けて上昇するのを感じていた。バッテリー充電のためであるのは確かだろう。明らかに原潜では無かった。艦内の設備もかなり旧式に見えた。

 コンピュータの類は見られなかった。艦内の連絡には通信機ではなく、旧式の伝声菅を使用していた。

 

 艦長室で艦長によりいつもの凌辱を受けた後で、思い切って話しかけてみた。まず日本語を理解できるか試してみた。

「あなた達はいったい何者なの?国はどこ?」

 後技の後で艦長は里奈をうつ伏せにしてシミひとつない白い尻を無心に舐めていた。

 艦長は里奈の愛液にまみれた顔を上げた。里奈を仰向けにして顔をじっと見詰めてきた。

「……」

 艦長の口から出た言葉は、やはり一度も聞いたことのない言語であった。英語圏のものでもない。アラブ圏でも聞いたことがなかった。声の感じはハスキーな印象だった。

「どうして私達を捉えたの?」

 今度は英語で話しかけてみた。

「……」

 やはり、聞いたことがない言葉が返ってきた。艦長は里奈の瞳をじっと見ながら両腿を大きく押し広げ、膣に口を付けてきた。ざらついた舌が膣周辺を這い回っていた。

 すぐに耐え切れぬ程の快感が背筋を走り抜けた。

 あまりの巧みな舌技に思わず喘ぎ声を漏らしていた。

 艦長は淫らな笑みを浮かべながら、里奈の腰を片腕で軽々と持ち上げ、宙に浮かせた状態で膣とアヌスを交互に舐めてきた。

  驚くほどに長く細い舌がアヌスに侵入してきた。あまりの快感に里奈は我を忘れかけた。連日の凌辱に恐怖感は薄れていた。

 

 

 

第一章 初戦

「大臣。日本国籍のクルーザーが、国籍不明の潜水艦に攻撃を受け、乗客と乗務員が殺害され、十三名の女性が拉致されました。防衛出動の許可を願います」

 東京都新宿区市谷にある防衛省本部の一室。海上自衛隊の自衛艦隊司令官である沖田海将が、防衛大臣である露木の前に立ち、事件の概要を報告した。額には微かに汗が滲んでいた。

「犠牲者は何人だ?」

 露木はデスクの上に置かれたモニターに映し出される惨劇を見詰めながら呻くように言った。しきりに指先で机を軽く叩いていた。

 画像はクルーザーの救援信号を受信し、現場に駆け付けた哨戒活動中のP一哨戒機が撮影したものだった。クルーザーの甲板上は血の海となっていた。

 大勢の男女が折り重なるように倒れ、その近くで十三名名の若い女達が全裸にされ、兵士達に凌辱されている様子を映し出していた。


「現在、海上保安庁の巡視艇が、クルーザーに横付けして、調査中です。数十名の死者が出ています。乗船名簿から若い女性ばかり十三名が連れ去られたようです。乗員名簿から海上自衛隊の本庄二尉も乗船していたことが確認されています」

「自衛官も乗っていたのか?それで無事なのか?」

「はい。本庄二尉の遺体は発見されていません。恐らく他の女性達と一緒に拉致されたものと考えられます」

「本庄二尉は女性隊員なのか?」

「はい。彼女は……」

 

 沖田海将は、彼女の容姿を口にするところであったが、場違いと考え言葉を呑み込んだ。

「どうした。続けたまえ」 

「彼女は海上自衛隊きっての美貌の持ち主であり、さらに優秀な自衛官です」

「女性自衛官が一緒に拉致されたのか......。拉致されたのは、すべて若くて美しい女性ばかりか。金品の類は強奪されなかったのか?」

「何も盗まれていません。Pー一が現場に駆け付けたので時間が無かったのかも知れませんが......。殺された乗客の中には世界的にも有名な政財界の著名人も含まれます。金品が目的なら彼等も誘拐し、身代金を要求する筈です。」

沖田は額の汗をハンカチで拭った。


「人身売買が目的なのかも知れないが、潜水艦を使用して実行する等、あり得ない話だ。クルーザを襲った目的が若い女性だけとは考えられん。それに他の乗員を残虐な方法で殺戮している。何か他に目的があった筈だ」

露木は腕組をして虚空を見詰めた。

「付近に我が方の艦船はいないのか?」

露木は話題を変えた。

「クルーザから約十海里の洋上に護衛艦あきづきが待機しております」

「あきづきなら、対潜水艦作戦が可能だな」

 露木はモニターを見ながら、独り言のように呟いた。

「対潜装備を完了したPー一哨戒機も出動を待って厚木基地にて待機中です」

 最初に国籍不明の潜水艦を発見したPー一哨戒機は、通常の巡回飛行中であったので対潜装備をしていなかった。

「中国やロシアへの情報確認はどうなっている?」

「数時間前から両国政府との通信は途絶えています。ただ、北方領土や樺太の極東ロシア軍や韓国軍とは連絡が取れています。国籍不明の軍隊と交戦中とのことです」

「北方領土や樺太や韓国か?米国はどうだ?どうなっている?」

「米国も同じ状況です。まったく連絡が取れません」

「ふむ……」

 露木は深いため息を漏らした。数分間、押し黙った。数時間前から海外との通信は一部の地域を除いてすべて不通となっていた。衛星通信やインターネットも同じであった。

「あきづきに現場に急行するように伝えてくれ。Pー一哨戒機にも出動命令を出してくれ。総理には私が報告する」

 やっと露木が自らの沈黙を破った。自衛艦隊司令官が小走りに部屋を出て行く姿を目で追いながら、受話器を手にした。

「総理官邸に繋いでくれ」

 厚木基地から発進したPー一哨戒機は、巡回飛行中のPー一哨戒機と交代し、離陸後一時間でクルーザが攻撃された海域に到達した。

 海中にソノブイを投下し、すぐに国籍不明の潜水艦を捉えた。潜水艦は太平洋を東に向かい水深十メートルを時速五ノットの速度で進んでいた。

 Pー一哨戒機は、最低速度まで減速し、潜水艦の上空を旋回しながら進んでいた。

 海面に波はなく、驚くほどに静かだった。いつの間にか深い海霧が発生していた。

 追跡を始めて一時間くらいで海霧が消え始めた。Pー一のレーダーが潜水艦の進路方向に複数の船影を捉えていた。

「あきづき艦。応答願います。こちら厚木基地第三航空隊所属Pー一哨戒機。我が機から三十キロ東方に複数の船影を捉える。目標の潜水艦はそちらに十ノットの速度で進行中」Pー一哨戒機の航法・通信員があきづき艦に無線連絡を行った。

「こちら、あきづき艦。本艦もC四一データリンクにて確認。敵潜水艦への誘導を願う」「了解」

 海霧が消えた水平線に二十隻の軍用艦が確認された。それらはこれまで見たことのない巨大な船体であった。全長は二百五十メートル以上あり、甲板上に無数の砲塔が設置されていた。

 

 Pー一哨戒機の乗員十五名の脳裏には、第二次世界大戦中の巨大軍艦である戦艦大和の姿が一瞬過った。巨大戦艦の中心には、さらに巨大な空母一隻を確認することができた。甲板上には百機余りの艦載機が見えた。信じられないことにすべてレシプロエンジンのプロペラ機であった。

「何だ。あれは……」

 Pー一哨戒機の乗員達は皆、唖然とした表情で眼下に見える艦隊を見詰めていた。

 突然、艦隊の中の一隻が砲塔を向けてくるのが確認された。

「正操縦士。緊急旋回だ!急げ!」

 ガクンという衝撃を感じ、機器は急激に旋回を開始した。砲塔に光が見え、砲弾がPー一哨戒機の数十メートル横を通り過ぎた。

「高度一万三千まで上昇せよ!」

 今度は、急上昇を始めた。その後を追うように幾筋もの砲弾の光跡が通り過ぎていく。「こちら第三航空隊所属一号哨戒機。敵艦による艦砲攻撃を受けている。至急、支援部隊の応援を求む!」

 

 Pー一哨戒機は、旋回しながら砲弾を避けるように急上昇していく。実用上昇限度の高度一万三千メートル上昇後、水平飛行に遷移した。Pー一を狙う砲弾は、数千メートル下方までしか到達せず落下していく。

「敵空母の艦載機が発進しています!」

 副操縦士が叫ぶように言った。艦隊の中央に位置する空母からレシプロエンジン式の戦闘機が次々に発艦していく様子が見えた。

 短時間で数十機が飛び立ち、急上昇してきた。

「落ち着け。プロペラ機でこの高度まで上昇するのは困難な筈だ。しかも敵は誘導弾は持っていないようだ。機銃だけであれば、有効射程は一キロ程度だ」

 正操縦士がレーダー画像と眼下の敵戦闘機を交互に身ながら、落ち着いた口調で言った。

「通信士。本部に応援を要請せよ」

「了解しました」

 

 

 その頃、厚木基地から十機のFー十五J近代化改修機と早期警戒管制機のEー七六七が、Pー一哨戒機の支援要請を受けて発進し、太平洋を南西の方向に向けて飛び立って行った。

 

 

 国籍不明の潜水艦に拉致された里奈達女性十三人の内、十名が全裸で、数名の兵士達により監禁室から連れ出され、ハッチから外に引き上げられた。残る三名は連れ去られたまま戻らなかった。

 潜水艦の甲板に並べられた女達の目の前に巨大な軍艦が覆いかぶさるようにして聳え立っていた。久しぶりに強烈な日差しを浴び女達は掌で顔を隠した。


 軍艦の甲板から無数の顔が女達の裸身に向けられていた。すぐに縄梯子が下ろされ、屈強な体躯の兵士達が降りてきて、女達を軽々と肩に担ぎあげ、縄梯子を登り始めた。

 里奈もひとりの兵士に担がれ、縄梯子を使って軍艦の甲板まで運び上げられた。途中で兵士は縄梯子を登りながら里奈の尻や膣を舐めてきた。すぐに甲板上に運び上げられた。 

 

 甲板には数百人の兵士達が、皆淫らな笑みを浮かべ口元に唾液をたたえて、ひしめく様にしていた。里奈の裸身に何本もの手がかけられ、裸身を抱き寄せようとした。

 股間や乳房も触られ、膣やアヌスに指が侵入してきた。他の女達も同様だった。ある女は恐怖の余り、表情は凍り付き、またある女は、尻を舐められ泣き叫んだ。

 全員が甲板上に仰向けやうつ伏せに横たえられ、周囲にいた兵士達が女達の裸身を手や口で狂ったように嬲り始めた。それは容赦の無い凌辱であった。

 その時、一発の銃声が甲板上に響き渡った。周囲の兵士達が一瞬で凍り付くのを里奈は感じた。兵士達は甲板上の一点を蒼白な表情で見詰めていた。

 

 そこには、初老に見える将校の制服を着た男が自動拳銃を頭上に向けていた。里奈が将校の制服と感じたのは、潜水艦の艦長が着ていた服に似ていたからだ。

 その男が何かを叫んだ。周囲の男達が一斉に女達から遠ざかった。男の背後から、小銃で武装した十人の兵士達が小走りに女達に近寄り、肩に担ぎあげた。

 里奈は兵士に担ぎ上げられながら、上空を見上げた。一筋の飛行機雲が高高度を横切って行くのが見えた。微かなジェットエンジン音も聞こえていた。里奈にはそれがPー一哨戒機のエンジン音であることが分かった。

 

 甲板上の兵士達も上空を見上げ、口々に何かを叫びながら、散り散りになった。サイレン音が鳴り響き、女達を担ぎ上げた兵士達が、艦橋に向けて一斉に走り出した。

 里奈は兵士に運ばれながら、二十メートルくらい離れた砲塔の砲身がPー一哨戒機に向けられるのを見た。艦橋の入り口に運び込まれ、背後のハッチが閉められた瞬間、凄まじい轟音が船体を揺るがせた。その後、何発も発射音が響いた。

 

 女達は兵士達の肩に担がれ、艦内の通路を運ばれていく。兵士達は、彼女達の膣やアヌスに指を入れかき回したり、舐め回したりしながら歩いていた。

 彼女達は皆、虚ろな表情をしていた。兵士達の嬲りにもあまり反応を示さなかった。

 

 女達は、兵士の肩に担がれた状態で、艦内の浴場施設に運び込まれた。兵士達は女達をタイル製の床に下ろし軍服と下着を脱いだ。全員の股間から細長い男根が突き出していた。

 女達は全員がここで犯されるものと確信した。しかし、兵士達は、予想に反して、女達を壁際のシャワーまで引きずり、大量の湯で女達の裸身を清め始めた。特に股間は洗剤を付けて丹念に洗われた。女達はただ、茫然とした表情で兵士達に身を委ねていた。

 

 女達は浴場では、裸身を清められただけで、凌辱はされなかった。再び肩に担がれ艦内を移動した。浴場から数十メートル離れた広さ二十畳ほどの一室に運び込まれた。

 そこに、先ほど拳銃を発砲した初老の将校が直立不動の姿勢で一点を見詰めていた。

 視線の先には、将校の服装をした若い女が、ソファに深々と腰かけていた。

 女達は床に下ろされ、一塊になって震え始めた。

 若い女がソファから立ち上がった。ゆっくりとした足取りで女達に近付いていく。

 

 女の目は他の男達と同じく、白目がなく瞳が青く輝いていた。女達の前で立ち止まり、兵士達に何かを命じた。兵士達は、女達を後ろ向きに抱え上げ、両足を両手で大きく広げた。女達の股間がむき出しにされた。女達は度重なる凌辱のために、もはや抵抗する気力もなく茫然自失の状態で兵士達に裸身を預けていた。

 

 女達の前に立ち、ひとりづつ股間に形の良い鼻を押し付け匂いを嗅いだ。里奈も同様に匂いを嗅がれた。里奈の場合、他の女達よりも長く鼻先を膣に押し付けていた。

 

 さらに匂いを嗅ぐだけでなく舌を入れてきた。舌の動きはこれまで味わったことが無いほどに巧みであった。里奈に同性愛の趣向は無かったが、嫌悪感とは裏腹に身体の芯から快感が沸き上がった。

 クリトリスを音を立ててしゃぶられた時、頭の中が真っ白になった。他の女達に見詰められながら、絶頂に達した。女は朦朧とした表情の里奈の髪を優しい手付きで撫で、盛り上がった乳房の先端を口に含み乳首を舐め回してから、ゆっくりと離れ隣の女に移動した。

 それからひととおり、女達の匂いを嗅いでから、今度は兵士達に何かを指示した。

 兵士達は、今度は女達を後ろ向きに抱き上げた。女達の桃のように形が良く、シミひとつない美尻が露わになった。両足を大きく広げられているので、尻の割れ目が丸見えだった。

 

 女はゆっくりとした足取りで、女達の背後に移動し、深い尻の割れ目に顔を押し付け、匂いを嗅いだ。里奈の場合は、匂いを嗅ぐだけでなくアヌスを長い舌で舐めてきた。

 呆れるほどに巧みな舌技だった。優しくそして激しくアヌスとその周辺を舐め回された。 

 先ほど逝ったばかりなのに再び快感が身体の芯から湧き上がってくるのを感じた。知らぬ間に尻の割れ目を女の顔に擦り付けていた。余りの快感のため一気に絶頂に達した。

 

 「……」

 里奈が肩で息をしているとき、背後から女の声が聞こえてきた。兵士達に何か指示を出しているようだ。不意な感じで女は里奈の裸身を兵士から受け取り、軽々と抱き抱えた。 兵士達は残る女を肩に担ぎ上げ部屋を後にした。部屋に残されたのは、里奈と幹部クラスと思われる若い女だけであった。

 女は瞳だけの大きな青い目で、里奈の瞳をじっと見詰めてきた。里奈を抱きかかえたままゆっくりとした足取りで部屋の片隅にあるダブルベッドに移動し、里奈の裸身を仰向けに横たえた。


 腕組をして里奈の全身を舐めるように見詰めた。それから里奈の裸身をうつ伏せにしてから下半身に顔を近付け、尻の割れ目を食い入るように見詰めた。

 すぐに手を伸ばしてきた。柔らかく冷たい手が里奈の尻を這い回っていた。不意な感じでアヌスに息を吹きかけられた。それだけで逝きそうになった。

 

 突然、舌先をアヌスに押し付けられ、一気に挿入された。信じられないほどの長い舌が直腸内を蠢いていた。耐えられない程の快感だった。一瞬で里奈は四肢を突っ張り、白目をむいて意識を失った。

 女は意識を失った里奈の盛り上がった美尻を存分に舐め回した。満足げな笑みを浮かべると、立ち上がり窓に近付き遥か上空を眺めた。

 

 数十機のレシプロエンジン製戦闘機が急上昇していく様子をじっと見詰めていた。

 自らの制服を整え、里奈の盛り上がった白い尻に軽くキスをしてから部屋を出て行った。扉が閉じられ、施錠される音が聞こえてきた。

 

 

 その頃、艦隊上空では、Pー一哨戒機が高度一万三千メートルを旋回していた。

 Pー一哨戒機は、敵戦艦の一隻に敵潜水艦が横付けし、乗員が拉致された女達を乗せているのを確認していた。

 

 その二千メートルほど下方にレシプロエンジンを搭載した敵戦闘機十数機が、追走していた。

 限界高度らしく、それ以上は上昇してこなかった。時に機銃掃射をしてくる機もあったが、有効射程外らしく、掠りもしなかった。

 

 その内、遥か水平線上に一隻の護衛艦の艦影が見えた。距離は八十キロほどだった。

 それはあきづき一番艦であった。十数機の敵戦闘機のうち、六機があきづきに気付いたのか、進路変更を行い、あきづきの方向に機首を向けた。

「敵機のうち、六機があきづき艦に向けて、進路を変更しました」

「あきづき艦もデータリンクで確認済だと思われるが、状況を伝達せよ」

「了解しました」

 通信士が無線であきづき艦に連絡を行った。

「空自の支援機が接近中です。距離は本機の南西約百キロメートルです。」

 

 

その頃、あきづき艦とPー一哨戒機の支援に向かった早期警戒管制機のEー七六七が敵戦闘機及び敵戦艦群をレーダーに捉え、データリンク機能にて先を進む十機のFー十五J戦闘機に情報を自動伝達していた。

「こちら、ワンサーティツー。セブンシックスセブン応答願う。Pー一哨戒機と複数の敵戦闘機を確認。敵機まで距離九十二キロ。攻撃許可を求む」

 十機のFー十五J戦闘機を統括する一番機のパイロットが早期警戒管制機に攻撃許可を申請した。

「こちら、セブンシックスセブン。攻撃を許可する。ボギー(敵機)を殲滅せよ!」

「こちら、ワンサーティツー。ウィルコ(了解)。全機AAM四B発射準備せよ!」

「距離八〇キロ。ロックします」

「発射!」

 十機のFー十五J戦闘機から次々とAAM四Bが放たれ、敵機に向かいマッハ三の速度で直進して行った。

 

 数分後、AAM四B全弾が敵機六機に襲い掛かった。全機が為すすべもなく一瞬で四散した。たぶん敵機のパイロットは何が起きたか分らぬまま死を迎えた筈であった。

 敵空母からさらに数十機の敵機が発進し、二群となりPー一哨戒機とあきづき艦に進路を向けた。Pー一哨戒機の進路からFー十五J戦闘機十機が待ち構えていた。

 Pー一哨戒機に向かう敵機数十機も一瞬後は、AAM四Bの餌食となり空中で四散した。

 

「こちら、あきづき一番艦。本部応答願います。Pー一哨戒機より救援要請あり。さらに国籍不明の艦隊及び戦闘機六機が我が国領海への接近を確認。進路変更の警告を発するもすべての応答なし。攻撃の許可を願います」

「本部より。あきづき一番艦。攻撃を許可する。なお、Pー一哨戒機より、拉致された女性達が敵戦艦の一隻に収容された情報を得ている。該当戦艦の情報を送信するので、攻撃対象から外すように設定願う」

「あきづき一番艦より、本部へ。すべて了解しました」

 本部からの攻撃許可を得て、ブリッジ内に一瞬緊張が走った。海上自衛隊創設以来、敵艦との交戦は無く、すべての隊員にとり始めての実戦開始の合図となった。

 ブリッジ内のすべての隊員が、担当する任務に集中した。

「合戦準備よし」

「SPYレーダー。敵戦闘機六機探知。まっすぐ近付く」

 対空担当がレーダー画像を凝視しながら上官への報告を続けた。

「隔壁ロックせよ」

 隔壁ロックとは万が一の被弾に備えての対処であった。

「対空戦闘用意!」

 攻撃指揮官の落ち着いた指令が、発せられた。

「対空戦闘、用意良し」

 即座に各部から攻撃指揮官に報告が寄せられた。

「攻撃します。ESSM攻撃始め!」

 攻撃指揮官の声は深い沈鬱に満ちていた。

「発射用意……撃て!バーズアウェイ(発射!)」

 ミサイル発射担当が鋭い声を発した。

 ESSM 六発がVLSより連射された。上空に向かい白い光跡を描くESSMが突進していくのが見えた。

 

 数分後、レーダーに捉えていた敵機の影がすべて消滅した。

「敵機すべて、迎撃しました」

 対空担当がレーダー画像を見詰めながら、攻撃指揮官に報告を行った。彼の額からは汗の滴が流れ落ちた。

「本部へ敵戦闘機群をすべて撃破しました。警告無線を発するも敵艦隊が依然として、我が国領海に向けて進行中であることを確認。攻撃を開始します」

 あきづき一番艦の甲板上に設置された射程二百キロの九〇式艦対艦誘導弾SSMー一B八発が敵艦隊に向けて発射された。

 八十キロの距離まで迫ってきていた敵艦隊に向けて時速千百五十キロの速度で直進していく。数分で敵艦隊に到達するだろう。

 

 その頃、敵艦隊の上空一万三千メートルを旋回していたPー一哨戒機は、あきづき一番艦が放った九〇式艦対艦誘導弾SSMー一Bが、敵艦隊に向けて直進している状況を確認した。

 敵艦隊はSSMー一Bの接近に気付かないのか、あるいは迎撃手段を有しないためか、まったく動きが無かった。

 

 SSMー一B八発がそれぞれの攻撃目標に向けて、海面ぎりぎりの低高度で接近していた。全弾がすべての攻撃目標に着弾し、閃光を発し続いて轟音と共に爆発した。

 

 艦橋等の上部構造物が粉砕され、さらに燃料タンクや爆薬に引火し、巨大な炎と黒煙を上空に巻き上げた。

 

 敵艦隊の約半数が、着弾により戦闘不能の状態に陥っていた。無事だった戦艦の中の一隻が、巨大な砲塔をあきづき一番艦の方向に向けた。四十センチ以上の口径があると思われる艦載砲が火を噴き轟音を発した。

「艦長。Pー一哨戒機から無線が入りました。全弾が人質が囚われている艦船を除く敵戦艦に命中したとのことです。また、敵艦隊の約半数が炎上し、数隻が沈没したとの連絡が入っています。敵艦隊は進路を変更し我が国領海から遠ざかっていきます」

「そうか。敵艦隊の迎撃地点まで移動し、敵潜水艦の捜索を継続する」

 その時、敵艦隊の方向三十キロの海面上に閃光が走り、続いて巨大なキノコ雲が上がるのを確認した。

「あれは何だ!」

「ガイガーカウンターが異常値を示しています」

「何だと。まさか……。敵は核兵器を使用したのか?」

「Pー一哨戒機からの連絡で敵艦船が我が方に向けて艦載砲を放ったとのことです」

「砲弾型の原爆か……。爆発海域までの距離は?」

「約四十キロです」

「我が艦の被爆状況はどうなっている?」

 艦長である一等海佐の倉田は、額の汗を拭いながら副艦長に確認した。

「我が艦の隔壁は放射線を遮断します。乗員に被害は及びません」

「そうか……。本部に状況を報告せよ」

 

 倉田は、他の隊員に気が付かれぬようそっと、深いため息を漏らした。

 記憶を巡らせたが、砲弾型の核兵器を保有している国は思い当たらなかった。

 米国が一時期配備していたが、すべて廃棄した筈であった。

 

 

 

第二章 凌辱の嵐

 海上自衛隊所属の護衛艦あきづきが、国籍不明の艦隊と交戦を始めた頃、極東ロシアに位置するウラジオストクでは、極東ロシア軍が国籍不明の軍隊と交戦状態にあった。

 都市の様相は昨日とは全く異なっていた。都市の中心を東西に分断するように東側は、いつものウラジオストクの街並みであり、西側は見慣れない風景が広がっていた。

 多くの建物がレンガ造りか木造で、平屋か二階建ての構造だった。

 東側のウラジオストク側に見られるような近代的な建物は皆無だった。


 彼らは朝日とともに突然襲い掛かってきた。西側の街から数十万人の群衆が、棍棒やナイフを手にして、東側のウラジオストク市民に襲い掛かった。

 暴徒達は、見たことが無い生物を伴ってきた。体長三メートルの爬虫類でコモドドラゴンの姿に似ていた。

 それは非常に獰猛であり、市民を見かけると襲い掛かり、生きたまま全身の肉を食い破り殺戮した。

 走る速度も速く、動きも俊敏であり、徒歩で逃れることは困難だった。

 恐ろしい鳴き声を上げながら、人々に襲い掛かり引き倒し食い殺していく。人々は泣き叫びながら、暴徒や凶暴な爬虫類から逃れようと逃げ惑った。

 

 襲い掛かる暴徒達は、平均身長が二メートルほどもあり、ロシア人の平均身長を上回っていた。彼らの目は、ほとんどがブルーの瞳で白目が無かった。

 彼らは、若い女性以外は、棍棒やナイフでほとんど無抵抗の市民を虐殺した。

 警察は出動したが、怒涛のように襲い掛かる数十万の群衆の前には為すすべも無かった。

 

 ウラジオストク市民の中でも一部は、猟銃や鉄パイプで応戦したが、殺戮者達の筋力は通常人を遥かに凌駕していた。抵抗空しく一方的に殺戮された。

 信じられないことに単身で停車中の乗用車をひっくり返し、数人で大型ダンプを横倒しにした。

 路上には手足をもがれ無残に殺された市民の遺体が、放置されていた。

 

 彼らは若い女性を見つけると、我先にと殺到し全裸にむいて、肩に担ぎ仲間を避けるように元来た道を走って引き返していった。

 自宅やオフィスに隠れている若い女性も見つけ出され、問答無用に全裸にむかれ拉致された。

 

 

 街中では、路上やビルの中で、大勢の若い女性達が、全裸にされて激しい凌辱を受けていた。街のいたるところで数千人の若い女性達が激しい凌辱を受け、どこかに連れ去られた。路上には彼女達が身に着けていた衣服や靴が散乱していた。

 

 ウラジオストク港に停泊していた極東ロシア軍の艦船には、国籍不明の兵士達が襲い掛かっていた。数千人の兵士達が、十隻余りの艦船に雪崩のように殺到し、女性以外のロシア軍兵士を小銃で撃ち殺し、銃剣で刺し貫き惨殺した。

 

 極東ロシアに位置するチェルニゴフカ空軍基地やチュグエフカ空軍基地も、数万人の国籍不明兵士や暴徒に襲われていた。基地内にある戦闘機や攻撃機は、一瞬で手榴弾や火炎瓶で破壊された。

 

 突然の攻撃にまったく為すすべが無く、一方的に嬲り殺しにされた。

 奇跡的に襲撃から逃れた市民達数千人は、漁船やヨットで外海に逃れた。ロシア政府に救援要請の無線を送ったが、まったく応答はなく、ロシア政府による救援を断念し日本海を東に向かった。日本の領海に逃れるしか無かった。

 

 

 白石麻友二十歳は、有名女子大に通う学生だった。ミスキャンパスに選ばれるほどの美しい容姿の持ち主だ。夏休みを利用して親友の鈴木杏とロシア国内を旅行中だった。昨夜はウラジオストク郊外にある森林地帯に位置する宿に泊まった。部屋には杏と二人で宿泊していた。広大なダブルベッドに二人で寝た。

 二人は旅行中に深い仲になっていた。毎夜、若く瑞々しい肉体は、同性愛の深い泥沼に落ちていた。昨夜もシャワルームでいちゃついてから、ベッドの上でヘげしく互いを貪り合った。

 

 麻友は、肌を刺すような冷気に起こされた。朝日が眩しかった。

 目を閉じて、手を伸ばし杏の裸身を探し求めた。朝から楽しむつもりであった。

 そこに寝ている筈の杏の裸身は無かった。手が宙を漂った。

 「何……」

 麻友は唖然としてベッドの上に置き上がった。

 目の前に広大な森が広がっていた。部屋はダブルベッドの中央で分断されていた。そこから先は屋外だった。唐突な感じだ。

 宿の本館がある筈の場所には森林が生い茂っていた。麻友は暫し茫然とした表情でベッドに座っていた。

 

 身を刺すような冷気に身震いし裸身を毛布で包んだ。その格好で床に立ち上がった。下着や衣服は今は屋外になっている場所に置いて寝たので毛布以外に身に着ける物は無かった。

 麻友は混乱していた。何が起きているのか理解できなかった。耳を澄ませてみたが聞こえてくるのは野鳥の囀りだけだった。

「杏。どこにいるの?」

 麻友はゆっくりと素足のまま屋外に歩き出した。地面は厚い落ち葉に覆われていたので怪我をすることは無かった。数十歩進んでから振り返った。今までいた部屋が深い森の中に唐突な感じで佇んでいた。

 

 屋根や壁の断面が見えた、まるで何か巨大な力で切断されたようだった。家屋にそのような力が加えられたら凄まじい衝撃を感じた筈だが、何も感じなかった。例え熟睡していたとしても何かは感じた筈だ。

 麻友は超自然の力を感じ、震えが止まらなくなった。少しの間立ち尽くしていた。やっとのことで震えが収まった。麻友は横方向に丸太で組み上げられたログハウスに似た構造の平屋があることに気が付いた。部屋からは死角となっているので気が付かなかったのだ。

 麻友は木製のドアを叩いた。

「誰かいませんか?」

 少しすると屋内から重い足音が聞こえてきた。ドアがゆっくりと内側から開けられた。そこに長身で白人の老婆が立っていた。

 

 老婆は麻製の粗末な感じの衣服を身に着けていた。身長は百七十センチの麻友より長身だった。老婆が無言で麻友の顔を見詰めてきた。白目が無い瞳だけの巨大な目を見て麻友は絶句した。何か異様な感じだった。自然に後ずさりしていた。

 

 老婆はゆっくりとした足取りで近付いてきた、瞳だけの青い目が淫らに輝きだした。

「来ないで……」

 麻友は両手を突き出して老婆の動きを止めようとした。身に着けていた毛布が滑り落ちて白い裸身が露わになった。

 老婆は立ち止まり麻友の白い裸身を舐めるように見た。豊かな乳房や豊かな腰、さらには長い脚を食い入るように見詰めた。

 老婆は唐突な感じで両手を広げ、獣のような唸り声を発した。次の瞬間、麻友に飛びかかった。

 「嫌!」

 麻友は叫び声を上げながら両手で老婆を押えつけようとしたが、老婆の力は信じられないほどに強かった。両手で裸身を軽々と抱き上げられた。目の前に皺だらけの顔が見えた。老婆の口から凄まじい異臭がして吐きそうになった。

 

 老婆は麻友の裸身を軽々と肩に担ぎ上げた。むき卵のようにすべすべで白い尻が無残に震え戦いていた。老婆は勝ち誇った笑顔を浮かべ、ドアを閉めた。

 麻友は老婆によって、石造りの浴場に運ばれた。浴槽には昨夜の残り湯が湯気を立てていた。老婆は麻友を浴槽に入れ、石鹸で裸身を洗い始めた。

 麻友は恐怖のあまり声を出すことすらできなくなった。

「……」

 

 老婆は麻友の裸身を洗い終えてから床に横たえた。麻友は老婆から逃れるために起き上ろうとしたが、肩を掴まれ強い力で押えつけられた。麻友の豊かな乳房を鷲掴みにしてきた。

 麻友は老婆の表情に激しい欲情を感じていた。犯される。麻友はそう確信した。

皺だらけの醜い老婆に犯されると考えただけで怖気が全身を貫いた。逃れようと必死にもがいたが、老婆の強い力には抗しがたかった。老婆は唖然とする麻友の乳房を口に含み、舐め回してきた。暫く舐めた後で起き上り、麻友の足元に座り、白い太腿を押し開き顔を股間に近付けてきた。

「止めて……」

 麻友は杏に陰毛を剃られていたことを思い出した。無毛の膣に老婆の息を感じた。すぐに柔かい舌で舐られた。老婆は荒い息を吐きながら、貪るように舐ってきた。それはこれまで体験をしたことが無い絶妙な舌技だった。

意識が朦朧と仕掛けたとき、うつ伏せに横たえられた。むき卵のようにすべすべで白い尻の深い割れ目に顔を押し付けられ、アヌスを舐られた。

 

 

 麻友は全裸で後ろ手を縛られ、台所の木製テーブルの上に横たえられていた。

 囚われの身となってから、三日が経過していた。その間、絶え間なく老婆に性的凌辱を受けた。この家には老婆以外住んでいないようだった。

 広さ十畳ほどの居間と寝室さらには台所と浴室やトイレは粗末な造りだった。電化製品と呼べるものは、旧式のラジオぐらいだ。ラジオからは意味不明な言語と聞いたことが無い音楽が流れていた。

 

 三日間、起きている間は老婆に全身を舐られた。特に膣とアヌスは丹念に舐められた。何度逝かされたか分からないほどだった。ロシア語や英語や日本語で話しかけてもまったく通じなかった。

 

 醜い老婆による絶え間ない凌辱のために気が狂いそうになっていた。

 

 今日は朝から浴室で大量の水浣腸を強いられた。何度も排泄を強いられ、羞恥のあまりすすり泣いた。

 今は台所で老婆は、大振りの包丁を砥石で研いでいた。時折、振り返り麻友の裸身を舐めるように見詰めてきた。口元には唾液をたたえているのが見えた。

 麻友は老婆が何かの料理を作るのだと考えていた。コンロには水が満たされた大鍋が火にかけられていた。

 

 三日間、与えられた食糧は見たことも無い野菜や果物だけだった。味は悪くは無かった。

 周囲を見渡したが、食材と言えるものは無かった。

 老婆は包丁を研ぎ終えると、麻友の両足首を紐で縛り、天井から下げっている金属製のフックに紐をかけて、引っ張った。麻友の裸身が天井から逆さ吊りにされた。足首の骨が悲鳴をあげているようだった。痛みで意識が遠のきかけた。

 同時に激しい恐怖が背筋を走り抜けた。食材は自分かも知れないという、あり得ない疑念が脳裏を過った。逆さ吊りにされながら、前方に立つ老婆を見上げた。

手には研ぎ澄まされた包丁を握っていた。

「止めて!殺さないで!」

 麻友は必至に懇願した。老婆は淫らな笑みを浮かべていた。麻友の盛り上がった乳房を空いている方の手で鷲掴みにして感触を楽しんだ。背後に周りアヌスを激しい勢いで舐ってきた。

 

 暫くアヌスを舐った後で麻友の髪を片手で掴み、包丁を首筋に当ててきた。

すぐにこれまで感じたことのない激痛に襲われ、一瞬で意識は闇の底に落ちた。再び目覚めることは無かった。

 

 

 自宅でクラッシクを聞きながら風呂に浸かり、一日の疲れを癒していた高級モデルのタチアナは、突然、玄関ドアを打ち破られる音を聞いた。大勢の足音がバスルームに向かってきた。

 

 バスルームのドアが蹴破られナイフを持った身長二メートル近い男女が、意味不明の言語を叫びながら押し入ってきた。恐怖のあまり身が竦み動けない彼女を大男がバスルームから引きあげた。

 タチアナの美しい裸身を抱き上げた男の目には白目が無かった。

 タチアナの美貌をじっと見つめ、卑猥な笑みを浮かべた。タチアナの盛り上がった乳房を口に含み、乳首をざらついた舌で転がした。

 

 不意にアヌスに違和感を覚えた。振り返ると、女がタチアナの背後で腰を屈め、尻の割れ目に顔を押し付けていた。女が上目使いに舌を使いながら淫らな笑みを浮かべタチアナの顔を見た。女の目にも白目がなく、すべてブルーの瞳だった。

 女が立ち上がり、意味不明の言葉を発し、男からタチアナを引き剥がした。男が低い唸り声を上げると女が、タチアナを片腕で抱きながら、男の顔面を殴りつけた。

 男は口元を押えて押し黙った。女はタチアナを抱き抱えながら隣室のベッドルームに向かった。

 

 全裸のタチアナをベッドに押し倒し、衣服を着たまま彼女の下半身の近くに蹲り、タチアナの長い両足を大きく開き淫らな音を立てて膣を舐め回した。タチアナは両手で顔を覆い、泣き叫んだ。

 恐怖に気が狂いそうになりながらも女の巧みな舌技のために次第に快感を覚え始めていた。

 周りで見ていた男女が、タチアナの盛り上がった乳房を口に含み、乳首を舌の先で転がした。

 

 ベッドの周囲では、先ほどの男と別の男女が淫らな笑みを浮かべ、口元に涎をたたえながら見下ろしていた。女は暫くの間、膣を舐めた後で、ぐったりとしたタチアナをうつ伏せに横たえ、今度は深い尻の割れ目に顔を入れアヌスを舐り始めた。

 女はタチアナが逝くまで愛撫を止めなかった。タチアナがうつ伏せの状態で女の顔に尻を擦りつけながら白い背筋を仰け反らせるようにして果てた。

 

 女は、愛液に塗れた顔に満足の笑みを浮かべながら、タチアナの尻をポンと軽く叩き離れた。それを待っていた男が、下半身をむき出しにして細長い男根を片手で扱きながら、タチアナの尻に跨り、一気に挿入した。

 豊かな乳房を鷲掴みにしながら激しく腰を前後に振った。逝ったばかりのタチアナが喘ぎ声を漏らした。数分後、タチアナは再び絶頂に達し、男が膣内に大量の精液を放出した。

 

 その後タチアナは、部屋にいた男女に凌辱の限りを受け、何度も失神と覚醒を繰り返した。

 最初にタチアナを犯した女が、意識が朦朧とするタチアナを軽々と肩に担ぎ上げ、バスルームに向かった。

 シャワーでタチアナの全身を洗い清めた後で、シャワーのヘッドを外し、ホースの先端を緩み切ったアヌスに挿入し、温水を直腸内に注ぎ込んだ。

 すぐに激しい排泄感に襲われた。女が追い打ちをかけるようにタチアナの腹部を手で揉みし抱いた。タチアナは鋭く喘ぎ、背筋を仰け反らせた。可愛いアヌスから排泄物が放出された。

 

 女はぐったりとしたタチアナの尻に付着した汚れをホースの水で洗い流してから先端部分をアヌスに差し込み直腸内を洗浄した。それから腸内が空になるまで何度も排泄と洗浄が繰り返された。

 

 三十分後、タチアナはキッチンに運び込まれた。そこでは先ほどまでタチアナを凌辱していた男女が包丁や鍋を持ち待ち構えていた。タチアナはキッチンテーブルの上に仰向けの姿勢で横たえられた。


 タチアナの長い金髪が鷲掴みにされ、上に持ち上げられた。

 間髪を入れず包丁の切っ先が無造作な感じでタチアナの延髄に打ち込まれた。

 彼女の意識は一瞬で闇に落ち、再び目覚めることは無かった。

 その後、タチアナの美しい裸身は、天井から逆さ吊りにされ、血抜きの後で包丁や彼らの持ち物である鉈で手足を切断され、胴体からも内臓を抜かれ、肉を削りとられた。

 

 謎の襲撃者達はバラバラに刻み込まれたタチアナの肉体を鍋や皮袋に入れて何処かに持ち去った。

 

 同様な惨劇がウラジオストク市内で繰り広げられた。

 

 また、極東ロシア軍が壊滅状態に落ちいった後で、謎の敵軍によりウラジオストク市民から十代後半から二十代後半までの若い女性達数千人がかき集められた。全裸にされ革製の首輪を嵌められ、蒸気機関車の貨物車両に載せられて何処かに連れ去られた。

 

 一方、ウラジオストクから南西に九百二十キロの位置にある韓国の釜山広域市でも同じ状況だった。日の出とともに無数の暴徒が市内に満ち溢れた。皆、巨大なナイフやこん棒で武装しており、非武装で無抵抗の市民を問答無用で殺戮していく。暴徒の多さに警察組織はまったく無力であった。

 行政府は当初、暴徒を市民と判断したために軍隊の出動要請を行わなかった。それが壊滅的な被害の原因ともなった。

 街のいたるところで若い女性が暴徒により、全裸にされ激しい凌辱を受けていた。女性達は激しい凌辱を受けた後に何処かに連れ去られた。

 

 暴徒達が破壊の限りを尽くした後でようやく韓国軍数万人が出動した。時を同じく国籍不明の軍隊数十万人が、怒涛のように市内に押し寄せた。

 アサルトライフルや戦車等近代的な装備の韓国軍に対し、敵兵は小銃や手榴弾で武装していた。装備の上では圧倒的に韓国軍が有利であったが、敵兵の数が圧倒していた。

 街の数十か所に設けられた韓国軍の防衛線には敵兵が次々襲い掛かった。敵兵は勇猛果敢で銃弾をあまり恐れなかった。アサルトライフルの銃弾を数発喰らわなければ倒れなかった。

 防衛線は次々と破られ、韓国軍の被害は増大の一途を辿った。

 

 

 人気女優のアジュンは、市内の路上で暴漢に襲われた。仕事帰りにマネージャーのアリが運転する車で自宅に向かっている途中だった。

 

 幹線道路を走行中に、数人の男女が路上に飛び出してきた。急停止する車を数人の男女が取り囲み一瞬で車両を素手でひっくり返した。マネージャのアリは衝撃で意識を失った。

 アリは有名女子大を卒業したばかりの才女で美貌の持ち主だった。窓ガラスが割られ最初にアリが車から引きずり出された。

 泣き喚くアジュンにも何本もの手が絡みつき、車から引きずり出された。

 

 車外では意識を失ったアリへの凌辱が始まっていた。全裸にされたアリの裸身に数名の男女が纏わりつき、裸身のいたるところを舐め回していた。

 

 アジュンの衣服も引き裂かれた。二十代前半でシミひとつない最高のプロポーションが露わにされた。暴漢達は皆長身で目には白目が無く瞳だけで異様な雰囲気を持っていた。 

 

 アジュンは全裸で路上に引き倒された。その際、頭部を強打して意識を失った。

 その後、うつ伏せにされ、盛り上がった剥き卵のように白くスベスベの尻を舐め回されアヌスに長い舌を入れられた。

 

 目覚めると見知らぬ家の寝室だった。ダブルベッドの上に全裸のアリと一緒に横たえられていた。アリはまだ意識を失っているようだ。

 周囲には粗末な身なりをした十人の男女が彼女達を見下ろしていた。皆一様に口元に淫らな笑みを浮かべていた。最年長に見える男が、聞いたことも無い言語で何かを話した。 それを合図に十人の男女が二人に襲い掛かった。ひとりに五人が張り付いた。アリが意識を戻し、美貌を引き攣らせ泣き叫んでいた。

 二十三歳になる彼女はあまり性的経験は無かった。仰向けにされたアリの下には大男が寝そべり豊かな尻の割れ目に顔を押し込みアヌスを舐めていた。彼女の上には衣服を着た女が張り付き、膣を無心に舐めていた。

 アジョンはうつ伏せにされ、数人の男女が尻を舐め、豊かな乳房を手で揉みしだかれていた。

 

 凌辱は数時間に渡り行われた。二人は何度も逝かされ、疲労困憊の状態であった。

 

 不意な感じでアリが男に抱えられるようにして部屋から連れ出され、すぐに絹を裂くような絶叫が聞こえてきた。続いて、肉を裂き骨を砕く重苦しい音が聞こえた。

 その後、肉を焼く香ばしい匂いがしてきた。

 

 アジョンは残りの男女に犯されながら、アリの事を案じていた。

 

 暫くして、部屋からアリを連れ出した男が大皿を抱えるようにして戻ってきた。

 

 大皿の上には、信じられない物が載せられていた。焼き上げられた人の腕や太腿や尻の一部が湯気を立てていた。

 

 アジョンを犯していた男女が目を輝かせ、歓声を上げて大皿の上の人肉料理を手掴みにして、貪り始めた。

 アジョンは激しい恐怖と胃液が逆流するのを感じた。吐きそうに咽び始めた彼女の口を近くにいた女が何かを叫びながら手で塞いだ。もうひとりの男が彼女の頭部を殴りつけた。一瞬で意識は闇に包まれた。

 

 その後、アジュンは全裸のまま、獣のように金属製の棒に両手両足を縛り付けられ、暴徒達より何処かに連れ去られて行った。

 

 

 韓国軍が壊滅後、釜山広域市内ではウラジオストック市と同様に謎の軍隊により、若い女性数万人が狩りだされ、全裸にされて、蒸気機関車の貨物車両で何処かに連れ去られた。

 

 

 

第三章 敵地へ

 太平洋上の国籍不明艦隊との戦闘から、既に三日が経過していた。

 東北海道に位置する釧路空港の滑走路上には、複座型のFー十五DJが二機と、空中給油機KCー七六七Jが二機が、発進準備を整えていた。

 

 総理大臣の安室は、同盟国である米国の状況確認のためにFー十五DJを派遣することを急遽決定したのだ。米国本土が無事で着陸が可能であれば任意の空港に着陸し、状況確認を実施する計画であった。

 万が一異常事態により、空港への着陸が困難な場合、日本までノンストップで帰還可能なだけの燃料を確保するためKCー七六七Jが並走することになっていた。

 

 日本からの距離ではハワイが最短距離にあったが、在日米軍が偵察機を派遣する計画であったため、偵察先を日本から距離が近い米国西海岸に位置するサンフランシスコ市に定めたのであった。在日米軍とは情報共有をする取り決めとなっていた。

 

 またグアムの方がハワイより近かったが、グアムの米軍基地とは連絡が取れており、異常は発生していなかった。

 KCー七六七Jは、一機のFー十五DJであれば十五回満タン給油が可能であった。

 KCー七六七Jの航続距離は、燃料以外の貨物量が四.五トンの場合、一万四千七十五キロメートルであり、サンフランシスコ市まで飛行し、ノンストップで釧路空港まで帰還可能であった。

 

 また、Fー十五DJは増槽三本の場合、四千六百キロメートルの航続距離があった。

 今回は、偵察任務が主体であったために、武装は自衛用に九十式空対空誘導弾AAMー三を二発とJM六一A二十ミリバルカン砲弾数九百四十発のみであった。

 〇四式空対空誘導弾AAMー五の方が高性能ではあるが、本機が近代化改修機ではなかったので装備できなかった。

 

 さらに不時着等も想定し、パイロットには、自動拳銃のSIG SAUER 二二○一丁と予備弾倉にM二六手榴弾二発が座席背面の収納用袋に収納されていた。

 米国の西海岸にあるサンフランシスコ市付近まで到達し、パイロットが高精度カメラで地上の状況を撮影することが主要任務であった。撮影した画像は、KCー七六七Jにデータ転送される仕組みとなっていた。

 

 本来偵察機としては、RFー四EJ改が存在するが、空中給油可能な機体が空自ではFー十五シリーズとFー二のため使用されることはなかった。

 

 また、三機保有している無人偵察機のグローバルフォークも航続距離が、一万九千キロメートルでありアメリカ西海岸までノンストップで往復できるが、誘導に専用の人工衛星が必要であり、現在は人口衛星が使用不可となっているために使用を断念せざるを得なかった。

 

 Fー十五DJが偵察飛行を行っている間、KCー七六七は旋回飛行を行い、地上撮影画像を受信した後に帰途に就き、もう一機のKCー七六七が、帰路の燃料を満載し、Fー十五DJが偵察飛行を終了するタイミングで駆けつける計画となっていた。

 

 釧路空港が出発地として選ばれたのは、米国のサンフランシスコまで最短距離で到達可能な位置にあったからだ。

 サンフランシスコ市までの飛行は、GPS衛星が使用不可のため自動航法装置に頼るしかなかった。

 Fー十五DJのうち、一機には男性と女性のパイロットが乗り込んでいた。

「本庄二尉。何故この任務を志願したんだ?」

 前席に座っていた頑強な体躯をした自衛官の男が、後部座席に座っている二十代前半の女性自衛官に話しかけた。

「妹が国籍不明の潜水艦に拉致され、行方不明になりました。妹を救いたいんです。太田二佐は?」

 俯き加減に答える女性自衛官は、最高級モデルも敵わぬ程の美貌とスタイルの持ち主だった。

「俺か?俺は実戦経験がしたかったからさ!そうだ。オムツ履いてきたか?」

 太田二佐は振り返り、東京に残してきた両親や国のためという言葉を呑み込み笑みを浮かべた。

「セクハラで訴えますよ!」

 沈みがちな表情が少し明るくなった。サンフランシスコ市まで釧路空港から六千八百キロメートルあり、約七時間の行程だった。当然トイレは無いのでオムツに排尿するしかなかった。それがうら若き女性にとり最大の悩み事であった。

 

 三十分後、太田二佐と本庄二尉が乗るFー十五DJ戦闘機一機と、空中給油機KCー七六七J一機が釧路空港を飛び立った。もう一機のFー十五DJは、計画のバックアップとして空港に留まった。

 

 

 六時間後、Fー十五DJ戦闘機とKCー七六七J一が米国西海岸から一千キロの海洋上に到達していた。両機は米国国防省に対し、無線連絡を行ったが、まったく応答は得られなかった。

 Fー十五DJは二回目の空中給油を受け、単独でサンフランシスコ市が存在している筈の地域上空を目指した。一方、KCー七六七Jは計画通りに帰路に着いた。

 

 一時間後、Fー十五DJはサンフランシスコ市まで数十キロの海域に到達した。敵レーダーを警戒し、高度三十メートルを保っていた。天気は快晴であり、気温は三十度近かった。

 眼下には複数の小型船舶が見えた。船上には多くの人影が見えた。形状は通常の漁船や貨物船と変わらなかった。機関は石炭を使っているようで、煙突からは黒煙を吹き上げていた。

 艦船は確認できなかった。太田が機体を斜めに傾け、本庄が手動で高感度カメラにより、すべてを撮影した。

「妹さん。見つかるといいな」

 太田は前方に見えるアメリカ大陸を凝視しながら、本庄二尉に声をかけた。

「妹は必ず生きています。感じるんですよ。私達一卵性双生児なんです」

「どおりで、ふたりとも絶世の美女に才女でもあったわけだ。俺も出来る限り協力させてくれ」

「美女だとか才女という訳ではありませんが、ありがとうございます。二佐は妹をご存じだったのですか?」

「自衛隊で本庄姉妹の噂を知らない奴はモグリだよ」

 その後、太田二佐と本庄二尉が乗るFー十五DJ戦闘機はサンフランシスコ市上空に到達した。

 

 

 時刻は午前十時頃だった。天気は雲ひとつない快晴で街並みを一望することができた。 周囲に敵機の機影は皆無だった。地上部隊も確認することはできなかった。レーダー波も受信することは無かった。

 太田二佐は、Fー十五DJ戦闘機を高度二百メートルまで下げた。

「……」

 眼下に広がる風景を目にして二人は暫し言葉を失った。

 二人が知るサンフランシスコ市は人口八二五万人以上で、近代的な高層ビルが乱立する大都市の筈であった。

 しかし、眼下に広がる風景は、記憶と大きく異なっていた。ほとんどすべてが、五階建て未満で、レンガ建ての建物だった。コンクリート製と思われる十階建てのビルも数棟見られた。

 路上には無数の車両が走行していたが、二人の記憶にある自動車ではなく、二十世紀前半に走行していたクラッシックカーに似た車体や二頭だての馬車であった。まるでタイムスリップをしてしまったような感覚だった。

 太田二佐が操縦舵を傾けた。

「どうする気ですか!」

 

 本庄二尉が美貌を曇らせ、叫ぶように言った。

「もっと近くで見たい。俺達の任務は情報収集だ。カメラを操作するのを忘れるなよ」

 Fー十五DJ戦闘機は一気に高度を下げた。高度百メートルまで両側に低層ビルが立ち並ぶ、片側四車線の道路に並走し失速寸前の時速三百キロで飛行した。

 爆風でビル群のガラス窓が四散し、市民が逃げ惑い地上は騒乱状態となっていた。

 大勢の歩行者が、低空を飛行するFー十五DJ戦闘機を指差し、大声で何かを叫んでいた。

 

「太田二佐。南西の方角に多数のエコーを捉えました。時速五百キロでこちらに向かってきます。数分でこちらに到達します」

「画像は十分撮影したか?」

「はい。撮影した画像は、待機中のKCー七六七Jに転送済です」

「そうか。では撤退するか」

 Fー十五DJ戦闘機は急激に高度を上げていく。KCー七六七Jが待機する太平洋上に機首を向けた。KCー七六七Jが待機する太平洋上空までの飛行に十分な燃料があった。 

 その時、プロペラ式レシプロエンジンの敵戦闘機が市外の空港から急上昇してくるのを認めた。

 距離は数キロメートルだ。太田二佐は迫りくる敵戦闘機を避けて、機首を南西に向けた。高度は約千メートルに達していた。

 

 突然、爆音がして、機体の近くで爆発が起こり左翼を破片が貫通した。地上の敵勢力が高射砲を撃ってきたのだ。

 Fー十五DJ戦闘機の周囲を何発もの砲弾が、通り過ぎ爆発した。爆発の度に機体が激しく揺れた。

 太田二佐は砲弾を避けるためにFー十五DJ戦闘機を急激に旋回させた。強烈な重力に晒され二人は呼吸が苦しくなった。二人の重苦しい呼吸音が、機内に満ちていた。

 その時、機銃音がして、Fー十五DJ戦闘機の近傍を銃弾が走り抜けた。

 

 先ほどの敵戦闘機が一キロ以内に迫っていた。太田二佐は、失速状態に遷移するギリギリのところで、Fー十五DJ戦闘機を急旋回させた。左翼を損傷はしているが、大きな影響はでていなかった。

 敵機を目前に捉え、二十ミリバルカン砲を発射した。毎秒数千発の機銃弾が敵戦闘機を真っ二つに引き裂いた。

「太田二佐。左翼方向数キロに敵機が迫っています!右翼方向にも敵機です!囲まれました!」

 背後から本庄二尉の悲痛な声が聞こえてきた。

「AAMー三で前方の敵を撃破する。こちらエフフォーサーティワン。敵機に包囲されたフォックスツーを使用したい。攻撃許可を求む。オーバー」

 太田二佐が太平洋上空域で待機するKCー七六七Jに無線連絡を行った。フォックスツーとは赤外線式短距離空対空ミサイルのことだ。

「こちらKナインジェー。エフフォーサーティワンに告ぐ。フォックスツー使用を許可する。敵機を撃破し帰投せよ」

「ウィルコ!」

 太田二佐がウィルコ(了解)と返信し、AAM三の発射ボタンを押下した。一発のAAM三が前方五キロメートルの敵機を瞬時に四散させた。

 Fー十五DJは、アフターバーナーを作動させ時速マッハ二.五の最高速度で四散した敵機がいた場所を突っ切り、数十機の敵機が飛行する中心部分を突破した。敵機群は遥か後方であり、数十キロは離れていた。

「左翼から火災が発生しました!」

 被弾した左翼で火災が発生していた。

「消化装置を作動させよ!」

「駄目です。このままでは燃料に着火します」

「脱出するしかないな。爆破装置をセットしろ」

「爆破装置をセット完了しました。後三十秒で爆破します」

「Kナインジェー。応答せよ。こちら、エフフォーサーティワン。本機火災発生により、乗員二名は脱出し本機を自爆させる」

「こちらKナインジェー。了解した。幸運を祈る」

 Fー十五DJとKCー七六七Jは最後の無線通信を行った。

「死ぬなよ。本庄二尉!」

「お元気で。二佐!」

 二人は脱出レバーを引いた。ガクンという衝撃とともに脱出装置が作動し、二人は座席とともに機体から離脱した。落下傘が作動し、徐々に降下していく。遥か前方でFー十五DJが爆破する閃光が見え、数秒後に爆発音がした。

 当初の作戦どおり、ふたりは敢えて異なる着地点を目指した。一緒だと敵に二人とも捕まる可能性があったからだ。

 

 

 

第四章 異世界

 総理官邸の一室には、閣僚級の議員が顔を揃えていた。中心には、内閣総理大臣の安室が会議机に肘を載せて、隣に座る官房長官の村木と何かを話していた。

「総理。現在我が国が置かれた状況を分析した結果をご報告します」

 安室総理の真迎えの席に着いていた防衛大臣の露木が立ち上がった。安室に一礼し、円卓に付いた議員達の顔をざっと見渡した。それからプロジェクタのスイッチを押した。

 二メートル四方のスクリーンに日本を含む極東地域の衛星写真が映し出された。

衛星写真には、日本を中心に楕円形を描いた赤色の実線が引かれていた。北はカラフトの中心地点、西方は朝鮮半島を南北縦に分割し、南はオーストラリア北部に接していた。

「これは、異変が起きてから、現在までに無線交信が可能であるか、可能であった地域を実線で結んだものです。この楕円形の外の地域とは完全に無線交信が不通となっています」

「監視衛星から何か情報は得られたのかね?」

 安室総理が身を乗り出すようにして露木防衛大臣に尋ねた。

「ほとんどの監視衛星と交信不通となっています。米国のGPS衛星との通信も途絶しています。準天頂衛星システムのみは正常に稼働しています」

「静止衛星のみ使用可能ということなのか?」

 安室総理が、腕組をして一瞬天井に視線を投げかけた。

「総理。本日はT大教授であり、世界的に著名な物理学者の佐原教授に来ていただいております」

 露木防衛大臣の隣に座っていたT大教授の佐原が席を立ち、安室総理に向かって一礼した。

「初めてお目にかかります。T大教授の佐原です。本日は今回の異変に関する私の持論をご説明に伺いました」

「教授のご活躍は、日ごろから耳にしています。単刀直入に言って異変の原因は何なのですか?」

安室総理。

 

「先ほど露木防衛大臣がプロジェクタで説明したように、我が国を囲む楕円形の領域から外とは全く連絡が取れない状況です。ただし、国内の無線局が、発信元が国外と考えられる短波無線を多数受信しています。現在、分析中ですが、これまで受信したことが無い符号体系となっています。さらに海上自衛隊が、楕円形領域の境界付近で国籍不明の艦船と交戦しています。交戦にて敵艦船を破壊し、敵兵の死体を何体か回収しています。死体を調査した結果、驚くべき情報が得られました。……彼等は人類ではありませんでした。これまで確認されたことのない遺伝子を有していました」

 

その時、閣僚達の間にさざ波のようにどよめきが広がった。佐原は説明を一旦止めた。

「続けてください」

 安室がコップの水を一口飲んでから佐原の顔をじっと見詰めた。

「その遺伝子には、人類と爬虫類の遺伝子情報が混在していたのです。詳細は現在分析中です。昨日、米国大陸に向かった偵察隊から、情報が得られました。米国西海岸にて偵察飛行を行ったFー十五DJから送られた画像には、我々が知る米国の風景とはまったく異なった世界が映し出されていました」

「どのような世界だったのですか?」

安室総理。

「これがサンフランシスコ市が存在している筈の地域です」

プロジェクターに新たな画像が映し出された。

そこには近代的な高層ビル群ではなく、多くがレンガ造りの平屋か高くても四階建てのコンクリートで造られたビル群がひしめく様に建っていた。

 建物の間には、蒸気式と思われる濛々とした黒煙を上げる機関車が走っていた。

自動車も見られたが、まるで二十世紀前半に造られたようなクラッシックカーに似たものだった。

 

 閣僚達は身を乗り出すようにしてプロジェクターに映し出される光景を無言でじっと見詰めていた。

「総理は平行宇宙という理論はご存知ですか?」

「聞いたことはあります。まさか……」

「これはあくまで可能性の話です。私の推論では、我が国領土を含む楕円形領域が、何らかの原因により、平行宇宙の別世界と融合したということです。地形は同じ地球ですが、人類ではない知性体が支配する世界です」

室内には一瞬で静寂が訪れた。誰も言葉を発しようとしなかった。

 

 

 機体から脱出して数分後、二人は仮称サンフランシスコ市から西に約六十キロ離れた山脈地帯に着地した。二人の着地地点は十キロほど離れていた。

 

 着地地点は深い森林地帯であり、針葉樹林が繁茂しておりパラシュートが枝にかかり着地を妨げたが、幸運なことに二人に怪我は無かった。

 

 二人は着地してすぐに非常用の荷物を点検した。座席に取り付けられていたリュックには、携帯用無線機一つに超小型デジタルカメラが一台それに武器としては自動機関拳銃一丁に九ミリ拳銃弾百発、手榴弾二発に軍用ナイフが一振りであった。

 非常食として米二合にビスケット二百グラムに塩・コショウさらにはコンソメスープに魚介と牛肉の缶詰とビタミン剤が収納されていた。固形石鹸や歯磨グッズも入っていた

 携帯無線機でお互いの無事を確認しあってから、その場を急いで離れた。遥か地平線に航空機が見えたからだ。二人を探索しているのは明らかであった。

 ふたりとも一緒に行動するつもりは無かった。当初の計画どおり探索活動を開始した。 

 

 太田二佐は、暫く谷川の渓流沿いを歩いた。急な斜面を移動していたので全身汗塗れとなっていた。深さ二メートル程の滝壺があったので、その場所で汗を流すことにした。

 季節は八月で寒くは無かったが、清流の水は身を切るほどに冷たかった。

 所持していた固形石鹸で全身を清めていた。

 滝壺から上がった時、絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた。

 本庄二尉の可憐な姿が脳裏を過った。衣服を身に着けるのもままならず、自動機関拳銃と手榴弾を手にして声のした方に駆けだした。

 滝壺から三十メートルほど離れた地点で太田は、トドワラの大木の根元に身を隠した。 目の前十メートルの地点に巨大な生物が仁王立ちにして背中を見せていた。

 その先には二人の若い女達が蹲り抱き合って悲鳴を上げていた。巨大な生物は体長三.五メートルほどのヒグマに似た生物だった。

 氷河期時代の北アメリカに生息していたショートフェイスベアに酷似していた。最大一トン以上、身長三.五メートルの巨大生物だ。女達がその生物に襲われているのは明らかだった。

 

 太田は助けるべきか一瞬迷ったが、勝手に身体が動いていた。

 揺れ動く巨大な黒い背中に向けて自動機関拳銃を連射した。一瞬でマガジンは空になった。マガジンを交換しようとした時、凄まじいばかりの唸り声が聞こえ、巨大な前足が太田に襲い掛かってきた。

 間一髪で巨木の影に転がり、一撃を避けことができた。巨大ヒグマの一撃は太田が背にしていた大木の幹に巨大なひっかき傷を付けていた。

 

 九ミリ拳銃弾は分厚い毛皮と皮下脂肪の前にはまったく無力であった。

 

 恐ろしい唸り声を聴きながら、手榴弾を取り出し、巨大ヒグマと巨木を挟んで立ち上がった。巨大な口が五十センチほどに迫り、牙を噛み合わせる音を聞きながら、安全ピンを抜いて、口が開けられた瞬間、手榴弾を投げ入れ、背後にジャンプし別の巨木の影に隠れた。背後から爆発音がして巨大ヒグマの血肉が飛び散った。

 

 太田は何とか怪我をすることもなく無事であった。仰向けの状態で荒い息を整えていた時、何者かの視線を感じた。傍らに先ほどの女達が、太田のことを見下ろしていた。

 太田はその時、自分が丸裸であることを思い出した。女達は燃え上がる様な金髪で目には白目が無く、すべて青色の瞳であった。身に着けていた衣装はロリータファッションのようだった。

 確かな年齢は分からないが、かなり若そうだ。二十歳前後だろうか。

 ふたりの視線は太田の股間に集中していた。

 男根が意思に反して勃起し始めた。

 起き上ろうとした時、肩を押さえつけられた。女達は思いがけない程の怪力であった。 

 

 屈強な太田が身動きすらできなかった。女達は、太田の男根をすべすべの掌で握りしめゆっくりと摩った。見つめ合い淫らな笑みを浮かべた。白目の無い青い瞳だけの目を輝かせ意味不明の言葉をしきりに発していた。男根の硬さに興奮しているようだった。

 ひとりが顔を近付けてきた。すぐに男根が暖かいものに包まれた。女が男根を口に含み激しい勢いで吸っていた。

 横向きにされ、もうひとりの女に肛門を舐られた。

 その後、太田はふたりの女達に何度も口腔性交で精液を抜かれた。

 

 太田がやっと解放されたのは、日が沈みかけた頃だった。

 立ち上がり、荷物が置いてある川岸に向かって歩き始めた。ふたりの女達は太田の後に付いてきた。

 太田が迷彩服を着るのを背後からじっと見詰めていた。

 太田は多少混乱していた。見たことも無い巨大なヒグマに襲われ、美しくは思えるが、瞳の感じが人間離れをした容姿を持つ二人の若い女達に好き放題に犯されたのだ。

 正直、二人の女達の扱いに迷っていた。このままこの場所に二人を残し、現地での情報収集という任務を果たすべきであった。

「君達。俺の言葉がわかるか?」

太田は英語で語り掛けてみた。

「……」

 二人の女達は一瞬見つめ合い、満面の笑みを浮かべ何やら意味不明の言語で話しかけてきた。これまで聞いたことのない言語だった。

太田は首を振り虚空を見詰めた。やはり此処は異世界なのだと悟った。

 仕方なく荷物を背負い、彼女達に背を向け、林道を歩き出した。背後に二人が枯葉を踏みしめる音が聞こえていた。立ち止まり振り返ると、やはりそこには二人がいた。何処までも付いて来た。

 

 やがて林道がらアスファルトで舗装された道路に出た。

 道路脇に赤色の車が止まっていた。見たことも無い型式であり、クラッシックカーのような感じだ。

 二人のうち一人が運転席の鍵を開け乗り込んだ。

 もう一人の女が太田の腕を掴み、有無を言わせず後部座席に押し込んだ。

太田は力では敵わないが、銃器を使い二人に抵抗することも出来た。しかし、そうはしなかった。二人は悪人には見えなかった。とにかく暫くは様子を見ることに決めた。

 

 すぐに太田と一緒に後部席に乗り込んだ女が、ズボンのチャックを開け、男根を引きずり出して、口腔性交を始めた。太田は特に逆らうことはしなかった。目を閉じ快感に身を任せることにした。脳裏には、別行動をすることになった本庄二尉の美貌が浮かんでいた。

 

 

 舗装された道路を暫く進むと、太田を乗せた車は急に減速した。前方百メートル先に天井に回転灯を付けた車両が停車していた。

 太田の股間を舐っていた女が、急に太田の上半身を自分の太腿の上に横たえ毛布を被せた。回転灯を付けた車両は、この世界では警察関係と思われた。九ミリ機関拳銃の安全装置を外し銃床を握りしめ、息を潜めた。

 車はさらに減速し、路肩に停車した。男性と思われる甲高い声が聞こえてきた。

 前席のドアが開けられ運転していた女が、外に出る気配を感じた。太田は毛布の隙間から外を見ていた。

 制服を着て腰に大型拳銃をホルスターに装填した若い男が、運転していた女と談笑しているのが見えた。女は長めのスカートの裾を割り、むき出しになった片足を男の足の合間に入れて、何かを話しかけていた。男に媚びている感じだ。男は時折、こちらを見たが、その度に手で自分の方に男の顔を向けさせ、笑いかけた。

 

 男がこちらに向けて何かを言った。後部席にいた女は、車の窓を手動で開けて、何かを答え満面の笑みを浮かべていた。太田は、女達が自分を庇っていることがわかった。

 

 男がこちらに向けて踏み出そうとしたとき、男のズボンに手をかけチャックを降ろして、白く細長い男根を取り出して、数回扱いてから膝間ついて口腔性交を始めた。男は数分と持たなかった。女のような喘ぎ声を漏らして、口内に精液を吐き出した。

 男は脱力した表情で腕時計を見てから、女に何事かを呟くように言って、警察車両に乗り込み去って行った。

 

 女は車が見えなくなってから、道に精液を吐き出し、車が消えた方向に向かい、何かを叫んだ。それから何事も無かったように車に戻り、発進させた。

 

 その後、三十分ほど山道を走行した。運転していた女が、後部座席の女と交代し、今はその女が太田の男根を口に含み激しい勢いで吸っていた。


 急に車は停車した。太田は後部座席を自分で開けて外に出た。

 目の前に、白塗りの外壁を持ち瀟洒な感じの木造三階建て住居が立っていた。周囲は深い山林に囲まれ、近くに深さ三十センチほどの清流が流れていた。別荘風の造りだった。 太田が茫然とした様子で建物を見ていると、二人の女達が太田の手を引き、建物の内部に連れて行った。

 家の内部には、高級な感じの家具や調度品がセンスよく配置されていた。


 家には女達の他に誰もいないようだった。

 二人の女達は、太田の手を引き一階にある広さ数十畳の浴室に連れ込んだ。太田の衣服を脱がせ全裸にしてから二人も全裸になり、シャワーのお湯で太田の全身を洗い始めた。特に股間とアヌスをきれいに清めた。

 太田を浴室の中央に立たせ、前後から男根を口に含み、アヌスに舌を入れてきた。

 太田は逆らわなかった。ただ快感に身を任せていた。女達には自分に対し危害を及ぼす気は無いように見えた。快感を押えながら女達からこの国に関する情報を引き出そうと考えていた。

 

 

 その頃、本庄二尉は、針葉樹林が生い茂る獣道を進んでいた。歩き出して既に半日が経過していた。急な斜面を登り下りしていたので、全身汗だくになっていた。

 鬱蒼とした藪がなくなり、急に視界が開けた。同時に微かな硫黄臭がした。

 

 少し進むと幅五メートル深さ五十センチほどの渓流に行き当たった。川岸に湯気が昇っていた。温泉だ!彩は急に嬉しくなった。汗まみれの身体を湯で清めることができるのだ。ついでに迷彩服の洗濯もしようと考えた。

 彩は湯が立ち昇る川面に慎重な手つきで指先を付けた。自然に笑みが零れた。四十度位で適温だったからだ。周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから急いで迷彩服と下着を脱いで、全裸になった。中肉中背で豊かな乳房と尻を持ち、足が長く驚くほど腰の位置が高かった。

 

 深さ五十センチほどの川に入り仰向けになり、首から下を湯に浸した。

 自然と深いため息が出た。それほどに心地よかったのだ。天候は快晴で目の前に驚くほどに透明な青空が広がっていた。暫くの間、そのまま、じっと横たわっていた。

 強行軍の疲れが、湯に浸かることで徐々に取れていくのが感じた。

 湯から上がり、近くで川沿いにある小岩を使い簡易的なかまどを作成し、焚火を熾した。お湯で衣服を洗濯し、焚火の周囲に広げて乾かした。

 彩は全裸で焚火に枝を追加し、火を絶やさないようにしていた。

 空腹を感じたので、飯盒に米と缶詰の牛肉と近くで採取したタンポポの葉を一緒に炊いた牛肉ご飯に、移動中に渓流で採取したクレソンを混ぜて食べ始めた。空腹のためか、簡単な料理でも驚くほどに美味だった。

 

 その時、周囲の樹海から枝が折れる音が聞こえた。

 彩ははっとして、九ミリ自動拳銃を構え周囲を見渡し、聞き耳を立てた。

 暫くじっとして周囲を伺っていたが異常は見られなかった。

 気のせいかと思い、再び牛肉ご飯を食べ始めた。

 

 食事を終え、衣服の乾き具合を確認したがまだ生渇きだった。焚火で暖を取っていたとは言え、全裸だったので身体の芯まで冷え切ってしまった。

 そこで再びお湯に浸かってから、今夜の野営地を捜そうと決めた。日が西に傾きかけていたからだ。

 再び天然温泉に浸かり、裸身を温めた。

 一日の疲れが一気に出てしまい、少しの間微睡んでしまった。

 不意に誰かの視線を感じた。視線を上げると、すぐ近くに巨大な影が見えた。

 反射的に、すぐ近くに手を伸ばした。九ミリ自動機関拳銃を捜したが無かった。

 青白く無毛の手で片足首を掴まれ一瞬で逆さ吊りにされた。

 逆さ吊りにされた状態で上を見上げると、白目が無く青い瞳だけの目を持った男が、淫らな笑みを浮かべて彩を見下ろしていた。男は片腕の力だけで彩の全体重を吊り下げていた。女とはいえ五十キロ近い体重を片手で軽々と持ち上げる力は並みでは無かった。

 身長は二メートル近くあり、痩せ型で作業着のような服を着ていた。片腕に散弾銃のような銃を持っていた。

 

 男が、散弾銃を離した。銃床が地面の岩にぶつかり暴発した。男は愉快そうに笑った。弾は逸れたので二人に怪我は無かった。

 彩の膣に片手を伸ばしてきた。彩の陰毛は薄い方なので、陰部が丸見えになっていた。 クリトリスをなぞり、彩の反応を試すかのように膣口を優しく撫でてきた。

 それから彩の腰を両手で掴み、顔の位置まで持ち上げて膣に口を付けてきた。ざらついた舌の感触に彩は思わず喘ぎ声を上げた。暫く膣を舐られた後で反対向きにされ、尻の割れ目に顔を押し付けられた。

 男の信じられないような長い舌がアヌスを押し分け直腸を舐ってきた。

 耐えられるものでは無かった。彩は逆さ吊りにされた状態で背筋を仰け反らせ、鋭い喘ぎ声を上げた。暫くアヌスへの責めが続いた。彩の喘ぎ声が樹海に響き渡った。

 男は毛布を地面に敷き、絶頂に達した彩を仰向けに横たえ、ズボンを脱いだ。下着は履いておらず、細長い男根が天を突いていた。

 意識が朦朧とする彩の両足を押し広げ、一気に挿入してきた。

 突然の挿入に彩は、両目を見開き絶叫した。男は意味不明の言葉を発し、淫らな笑みを浮かべながら、激しい勢いで腰を前後させた。男は余程気持ちがいいのか、腰を前後する度に女のような甲高い声を上げた。

 彩は男を両手で押して抵抗したが、まったくの無力であった。そのうち信じられないことに快感が襲ってきた。全身から力が抜けた。両眼に涙を浮かべていた。

 男の動きが一層激しくなった。先ほどとは異なる意味不明の言葉を発した。

 膣内に精液が溢れ、彩も意思に反し、鋭い喘ぎ声を発した。男は彩の裸身に折り重なるように突っ伏した。

 

 彩は意識が混濁する中で、何者かの足音が近付いていることを感じた。

 見上げると身長百八十センチほどで醜く肥え太った男と、同じくらいの身長で美しいプロポーションの若い女が、二人を見下ろしていた。

 太った方の男が、つい今しがた自分を犯していた男の肩を軽く叩き、何かを言った。

 男は彩から離れ、ズボンを履きふたりと何かを話していた。

 

 若い女が彩の手を引き軽々と背負い、温泉が流れる川に向かい、彩の裸身を湯に入れて洗い始めた。特に股間を丁寧に洗い清めた。

 女は彩の裸身を清めた後で、毛布の上に仰向けに横たえ、彩の太腿を両手で押し広げた。男達が近くから覗き込んできた。

 女が唐突な感じで膣に指を入れてきた。女が指先を動かしながら満面の笑みを浮かべ、歓喜の声を上げた。

 男達に向かって何かを叫ぶように言った。それを聞いた男達の顔は興奮した表情で何かを言っていた。

 太った方の男が、女に何かを言った。男は女に代わり、膣に指を入れてきた。

 男の顔は欲情に歪み切っていた。指先を上下させながら、しきりに何かを呟いていた。 

 

 彼等は膣の締まり具合に興奮しているようだった。

 女が彩を毛布の上に横たえ膣を舐め始めた。太った方の男が彩の豊かな乳房に食らいつき、激しい勢いで吸ってきた。

 痩せ型の男は、焚火の傍で何かの飲料を飲みながら、火の番をしていた。

 

 彩は女の巧みな舌による愛撫に何度も絶頂に達した。

 若い女が満足した後で、彩は地面に座ったデブ男に前向きに抱きかかえられ、細長い男根を挿入された。デブ男は彩の裸身を上下に前後させ、激しい勢いで膣を突いてきた。

 激しい凌辱に彩は何が何だか分からなくわからなくなっていた。

 三人の男女は交代で何度も彩の裸身を責め抜いた。男達が彩の膣やアヌスに精液を放出し、若い女が湯で洗い清めた。

 

 女は彩の裸身を洗い清めながら、膣やアヌスを指先で弄んできた。

 彩が疲れのため反応を示さなくなると彩の顔を湯に押し付け、窒息のため手足をばたつかせるのを見て楽しんだ。

 

 時間が経つにつれ凌辱は激しさを増していった。十メートルほど下流に移動し彩を浅瀬で四つん這いにさせて、口に湯を含んだ女が、革袋に湯を満たしその口の部分を彩のアヌスに差し込み湯を直腸内に注ぎ込んだ。腹部がパンパンに膨張するまで湯を注ぎ込まれた。彩は絶叫を上げ、アヌスから排泄物を噴出させた。

 

 ふたりの男達は、ガラス瓶に入った酒のような飲み物を飲みながら、その様子を血走った目で見ていた。

 激しい凌辱のために意識を失った彩は毛布の上に全裸で横たわっていた。

 肥え太った男が、彩をうつ伏せに横たえ、大振りのナイフで彩の延髄を刺し貫こうとした。痩せ型の男が、太った男の手を掴み、激しい勢いで何かを伝えた。若い女も二人に加わり三人で議論を始めた。

 議論は暫く続いた。東の空が明るくなった頃、議論は終わった。

 痩せ型の男が、意識を失った彩を皮袋に入れ軽々と背中に担ぎ、三人でその場を後にした。彩の荷物は、若い女が運んだ。

 

 彩を生け捕りにした男女は、近くの林道に止めてあった幌付きトラックに乗り込んだ。 彩は皮袋に入れられたまま、女が抱えるようにして、荷台に乗った。

 彼らを乗せたトラックは林道を一時間余り走行した。

 トラックは周囲を深い森に囲まれた木造二階建ての家の前に止まった。

 彼等は、大声で何かを話しながら家に入って行った。

 彼らの家では、家族と思われる年老いた男女が待っていた。彩が入れられた皮袋が、無造作な感じで木製の床に置かれた。若い女が、彼女の両親と思われる男女に何かを告げると、二人の表情が明るくなった。

 皮袋の口を開けて、全裸の彩を抱き上げ、部屋の片隅に置かれた木製のタライの近くに運んだ。男達がタライにバケツで水を満たした。年老いた女が、彩の裸身をタライに入れ、全身に水を注ぎかけた。

 

 彩が意識を戻した。目の前で皺だらけの女が淫らな笑みを浮かべていた。

 水に濡らしたタオルで彩の全身を洗い清めていく。股間は特に丹念に洗われた。 

 老婆の指先が容赦なく、膣内やアヌスに忍び込んでくる。

 時折、彩の盛り上がった乳房に吸い付き、乳首を転がしてきた。

 

 周囲には彩を拉致した男女や年老いた男が木製の椅子に腰かけ、アルコールのような液体をコップで飲みながら食い入るように見ていた。彩は裸身を恐怖心を抑え込み、周囲の様子を観察した。

 広さは二十畳ほどの部屋であり、壁は丸太がむき出しになっており、一面にはガラス窓が嵌められていた。また、ガラス窓が無い壁には猟銃や鉈等がかけられていた。また、部屋には木製のドアが二つ造られていた。

 彩の全身を洗浄後、老婆は老人とも思えない力で、中央にある木製のテーブルに横たえた。

 彼等は、彩の太腿を押し広げ顔を股間に押し付け匂いを嗅いだ。すぐに膣を舐る隠微な音が聞こえてきた。

 さらに彩はうつ伏せに横たえられ、深い尻の割れ目に顔を押し込まれ、アヌスを激しい勢いで舐られた。愛撫というか貪られる感じだった。

 それから暫くの間、彩を拉致した男女と老人達により、その部屋の床に敷かれた毛布の上で激しい凌辱を受けた。

 途中で女が、部屋を出て行くのが見えた。すぐにエンジン音が聞こえてきた。

 その後、男達と老人達が順番で彩の裸身を舐め回し、股間を指で弄んだ。

 

 長時間に渡る凌辱の後で、彩は男達により戸外に運び出され、井戸の近くにある洗い場で、四つん這いにされた。老婆が浣腸器に似た器具を持ちだしてきて、井戸水を満たすのが見えた。彩は彼らの意図がわかり、激しい嫌悪感を覚えた。

 老婆が、彩の背後に移動し、深い尻の割れ目に顔を押し込み、アヌスを舐り始めた。

 少しの間、舐ってから浣腸器の先端部分をアヌスに差し込んできた。

「痛い!止めて!」

 彩は、あまりの羞恥に泣き叫んだ。冷たい水が直腸に注ぎ込まれた。

 すぐに激しい排泄感を覚えた。皆の視線が彩のアヌスに注がれていた。老婆が淫らな笑みを浮かべながら彩の下腹部を揉み始めた。排泄感は限界まで高まっていた。彩は背筋を仰け反らせ、次の瞬間、汚物が噴出された。

「嫌!」

 彩の絶叫と男達の高笑いが深い森に響き渡った。

 その後、彩は冷たい井戸水で全身を洗い清められた。半ば意識を失った彩は男達に抱きかかえられる様にして家の中に運び込まれた。

 先ほどとは別の部屋だった。床は石だたみで、片隅には炊事場が造られていた。 

 カマドには木炭がくべられ赤々と燃えていた。壁一面には鉄製の鍋やフライパンや様々な形の包丁類がかけられていた。

 

 彩は部屋の中央に置かれた木製の調理台に仰向けの姿勢で横たえられた。

 老婆が部屋の隅で、刃渡り三十センチほどの包丁を砥石で研ぎ始めた。

 男達はジャガイモに似た根菜の皮を細身のナイフで剥きはじめた。彼等は彩には意味不明の言語で談笑していた。

 長身の男が、テーブルの上で仰向けに横たわる彩の髪を鷲掴みにして、刃渡り二十センチほどのナイフを首筋に当てた。

 他の者達は、テーブルの周りに立ち、その様子を固唾を呑んで見守っていた。

 老婆は、彩の膣に指先を挿入し、ナイフを持つ男の顔を見て何かを語り掛けた。

 彩は静かに目を閉じた。彼らが彩の生命を奪おうとしているのは明らかだった。

 脳裏には日本に残してきた家族や行方不明の妹の笑顔が浮かんでいた。

「里奈ちゃん。御免ね。あなたを助けられなかったわ……」

 彩の目元から一筋の涙が零れ落ちた。

 その時、部屋の木製ドアが乱暴に開けられる音が聞こえた。

 彩は目を開けた。

 

 目の前で、出かけていた若い女と長身の男が口論している様子が見えた。若い女の背後には黒色の背広に似た衣服を着た初老の男が立っていた。黒服の男は、二人と彩を交互に見詰めた。

 黒服の男が二人の間に立ち、強い口調で長身の男に何かを言うと、男は急に大人しくなり、愛そう笑いを浮かべた。

 黒服の男は、懐から財布を取り出し、若い女に数枚の金貨を手渡した。

 家族が若い女を取り囲み、金貨を食い入るように見詰めていた。

 黒服の男は彩に近寄り、唐突な感じで膣に指を入れてきた。強引な感じで内部をかき回した。彩は屈辱と苦痛に美しい顔を歪めた。彩の裸身を食い入るように見詰めながら満面の笑みを浮かべた。

 それから彩を肩に担ぎ、何も言わずに部屋を出て行った。

 家の前には、幌付きトラックが停車していた。彩を肩に担いだ男は、荷台に飛び乗り、彩を荷台に下ろし、赤い首輪を嵌めてから、首輪に繋がった鎖を床の金具に取り付けた。 

 

 幌付きトラックがゆっくりと走り出した。

 男は大型の水筒に入った水で、彩の股間を洗い清めてから、太腿を押し開き膣を舐め始めた。彩は男の禿げ上がった頭部をぼんやりと見詰めていた。

 彩の膣を舐めながら意味不明の言葉を発していた。この世界の住人達が皆性欲が強いことに驚きを感じていた。拉致されてから、これまで絶え間なく凌辱を受けてきた。

 男も女も変わりは無かった。彩は男に凌辱を受けながら、脱出する方法を考えていた。 男が懐から小さな容器を取り出し、中に入っていた白いクリームを彩の膣に塗り込んできた。その瞬間、彩の全身に戦きが走った。股間を中心に全身が熱く感じた。

 続いて、これまで感じたことのない快感を覚えた。クリームは媚薬の一種と思われた。うつ伏せにされ、今度はアヌスを激しい勢いで舐られた。

 媚薬の効果か、狂おしいまでの快感が背筋を走り抜け、鋭い喘ぎ声を漏らした。

 男が後背位で膣を貫いてきた。細長い男根が膣内で暴れまくっている。彩はあまりの快感に揺れる幌付きトラックの荷台で意識を失った。

 

 

 彩は裸電球だけの暗い部屋で目覚めた。部屋の広さは十畳ほどで壁には、全面にシミや汚れが目立っていた。

 周囲には、全裸の若い女達が横たわっていた。皆、白人女性で美しい容姿の持ち主だった。彩は起き上り、隣に寝ていた二十代前半に見える女の肩を揺り動かした。

「……」

 輝くような金髪で美しい顔立ちをした女が、何かを呟くように言い彩の顔をじっと見上げてきた。周りの女達も目覚めたのか、起き上り彩を取り囲むようにして座った。

 女達の首には彩と同様に赤い首輪が嵌められていた。

 彩の流れるような黒髪が珍しいのか、皆が手で触り、匂いを嗅いできた。彩に危害を加える気配は無かった。彩は女達の瞳が、自分と同じ白目を持つことを確認した。自分と同じ人間であることが分かり、安堵感を覚えていた。

 

 その時、鍵を開ける音が室内に響き、ドアが開けられた。黒色をしたスーツを着た中年の男が、部屋に入ってきた。男の次に作業着を着て水を満たしたバケツを持った中年女三人が現れた。男が女達に何かを伝えると、捕らえられた女達の中からひとりづつ部屋の中央に引き出してバケツの水と雑巾で全身を清め始めた。

 彩も同様に全身を洗い清められた。

 その後、女達は一列に横並びにされた。彩は真ん中に立たされた。中年男が女達の前にしゃがみ膣やアヌスの匂いを確認していく。彩の場合は、他の女達より時間が長かった。 男は、匂いを嗅ぐだけではなく、舌先を入れてきた。ピチャピチャと隠微な音が室内に満ちた。男の舌技は絶妙で、彩は立ったまま男の頭部を掴み軽く逝かされた。

 

 男は、彩の裸身を肩に担ぎ、残りの女達を従え、部屋を出て行った。彩の白い尻が無残に震え戦いていた。

 部屋を出た後、長い階段を下り、大きなホールのステージに連れて行かれた。

 広さニ百坪ほどのホールには大勢の男女が、円卓に付いていた。

 ホール内には耳を劈くような重低音の音楽が流れ、息苦しいほどにタバコの煙が充満していた。

 

 円卓の席で酒を飲み歓談していた男女の視線が、一斉にステージ上で横一列に並べられた彩達十人の裸身に注がれた。ホール内にどよめきが広がっていく。

 彩達をステージに連れ込んだ中年男が、マイクを手にしてステージ中央に立ち、女達を指差しながら、何かを声高らかに話し始めた。

 ホール内に一瞬静寂が訪れ、そしてすぐに割れるような拍手の渦が沸き上がった。

 テーブル席にいた大勢の観客達が、一斉に立ち上がり、ステージ前に一列になって並び始めた。

 中年男が最前列のグループをステージ上に導いた。彼等は全裸で茫然と立ち尽くす女達の前に行き、乱暴な手つきで裸身を触り始めた。膣やアヌスにも容赦なく指を突き刺した。女達の上げる喘ぎ声や咽び泣きがステージ上に満ちた。

 

 順番を待っている男達の中には、男根をむき出しにして自慰を始める者もいた。

 彩はステージの上に横たえられ、醜く太った中年女に膣を舐められていた。裕福な身なりをした女の後ろには、順番を待つ男女が列をなしていた。

 ステージ上での凌辱が数時間にも渡って続けられた。女達は何度も逝かされ、疲労のあまり意識を失っているものもいた。

 

 彩も少しの間、気を失っていた。気が付いたのは、円卓の上だった。大の字の姿勢で姿勢で両手、両足を縛り付けられていた。

 先ほどの中年女が席に着き、淫らな笑みを浮かべながら、彩の股間に指を入れていた。「ギャー!」

 近くのテーブルから若い女のものと思われる断末魔が聞こえてきた。

 彩は絶叫がした方に首を回した。首が切断された若い女のものと思われる胴体がテーブルの上に縛り付けられていた。首から大量の血液が噴出していた。

 近くには巨大な包丁を手にし、調理服のような服装の若い男が立っていた。片手で女の髪を握りしめていた。その先には生首が揺れ動いていた。

 周りに席に着いていた若い男女は、それぞれが鋭いナイフで首無し胴体を切り裂き、内臓を手掴みで取り出し、生のまま食らい付き鋭い犬歯で噛み裂いていく。

 別の男が、胴体をうつ伏せにして盛り上がった白い尻に食らい付き、鋭い犬歯で肉を噛み切り、満面の笑みを浮かべて頬張った。

 彩にはそれ以上見ることはできなかった。泣きながら目を背けた。

 彩の脳裏には、首を切断され、全身の肉を貪り食われる光景が過った。

 

 中年の婦人が彩の下腹部に顔を付けて、股間を舐ってきた。同時にアヌスに指を入れられ直腸内をかき回された。別の男に乳房を舐られた。死を前にして快感の波が全身を駆け抜けていくのを感じた。

 一気に絶頂に達した。数秒の間意識を失った。目を開けると先ほど女の首を切断した男が自分を見下ろしているのが見えた。

 男が彩の髪を鷲掴みにして、首筋に巨大な包丁を押し当ててきた。

 彩は目を閉じた。

 その時、会場内に一発の銃声が鳴り響いた。続いて、連続的な発射音が聞こえてきた。 

 

 彩は目を開けた。彩の首を切断しようとしていた男の眉間に穴が開き、鮮血が噴出していた。男はそのままの姿勢で後方に倒れ込んだ。

 

 次に彩は自分の膣を舐めていた中年女が、椅子に座り泣き叫んでいる様子が見えた。

 再び銃声がして、中年女の片目に着弾した。女は彩の下腹部に突っ伏して絶命した。

 会場内には、銃声と絶叫が響き渡り、大勢の男女が我先にと出口に向かって走り出した。 銃声は鳴り止まず、何人も銃弾を受けて、折り重なるように床に倒れた。

 

 やがて銃声が止み、会場内には、数十人の重傷を負った男女が床に倒れ、うめき声を上げていた。

 彩は自分の方に足音が近付いて来るのを感じた。

 すぐに何者かの視線を感じた。手足を拘束していたロープが切断された。

 黒革製の衣服を着た若い女が、ナイフを腰の鞘に納める様子が見えた。女は背中にライフル銃と思われる銃を担いでいた。

 女の目には白目がなく、異世界の住人達と同じであった。長い金髪を無造作な感じで後ろに纏め上げていた。彩の視線に気が付くと、笑みを返してきた。

 女は、無言で彩に近付き両手で軽々と抱き上げ、出口に向かって歩き出した。

 襲撃者は女の他に五人であった。皆若い女達だ。それぞれが拳銃で生き残った者達の止めをさしていた。彩は悲惨な光景を目にしながら、女の腕の中で意識を失った。

 

 

 彩は、柔らかな光が差し込む広さ二十畳ほどの部屋で目覚めた。

 ダブルベッドの上で全裸で眠っていたのだ。人の気配がしたので起き上った。目の前に、彩を助けた若い女が椅子に腰かけ、何かの飲料を飲んでいた。

 彩と目が合い、優しく微笑みかけてきた。

「貴女は誰?何故、私を助けたの?」

「……」

 女は意味がわからないらしく、怪訝な顔で首を横に振った。女が立ち上がり、部屋を出て行った。すぐに水が入ったガラス製の容器を手にして戻ってきた。

 ベッドに腰かけ、彩の裸身を支えるようにして水を飲ませてくれた。

 異世界に来てから、初めて触れる優しさであった。

 

 

 

第五章 地上戦

 航空自衛隊の偵察機が米国に飛び立ってから一日後、樺太の南方に位置するサハリン州ユジノサハリンスク市からの無線連絡により、北海道稚内市にある自衛隊基地に救援要請が発せられた。当基地で救援の判断はできず、防衛省本部に無線内容を伝達するだけであった。

 内容は北方から国籍不明の軍隊に奇襲攻撃を受けたとのことであった。本国との通信は不通であり、止む無く日本への救援要請であった。

 さらに数時間後、一隻の大型漁船が稚内市の漁港にたどり着いた。

 乗員はユジノサハリンスク市の市長を含む関係者達であった。

 彼らは、航空自衛隊の輸送機ですぐさま東京に移送された。

 

「安室総理。我が国は国籍不明の軍隊に攻撃を受けており、本国とは通信が不可能な状況です。サハリン州では死者、行方不明者が多数確認されています。緊急支援を要請いたします」

 内閣総理大臣官邸の一室では、ロシア総領事とユジノサハリンスク市長とその女性秘書が安室総理と対面していた。通訳は二十代前半に見える女性秘書が務めていた。

 人目を惹く素晴らしい容姿を持っていた。

「敵兵の詳細を教えてください」

 安室が輝くような金髪の女性秘書の青い瞳を見詰めた。

「武器は、旧式の小銃と手榴弾くらいです。戦車も何台か見ましたが、第二次世界大戦当時の旧式な形状をしていました。兵力は数万人と思われます」

「旧式な装備でロシア軍を圧倒したのですか?」

「当時、ユジノサハリンスク市の軍隊の大半が、サハリン州北部で軍事練習をしていました。敵兵が攻めてきたとき、軍と連絡を取ろうとしたのですが、無線は通じませんでした。僅かな兵力では一たまりもありません」

「被害の詳細は?」

「……若い女性は、ほとんどが敵兵に捕まり、その場で……」

 女性秘書は一瞬、押し黙った。美貌が青ざめていくのがわかった。市長が彼女の肩を優しく撫でた。

「……全員が全裸にされ、凌辱を受けた後、どこかに連れて行かれました。若い女性以外はすべて、その場で射殺されるか、銃剣で刺殺されました」

 最後は涙声になっていた。

「わかりました。自衛隊を派遣いたします」

 安室総理の回答にロシア側のメンバーは互いに見詰め合った。日本国は憲法第九条により戦争を禁じられていたからであり、同盟国でもないロシアの軍事支援要請を安室総理が即座に承諾したからだ。

「自衛隊を派遣しますが、地理に詳しい協力者が必要です」

「私が行きます。行かせてください。現地に家族を残して来ましたのです」

 女性秘書が総領事や市長に相談もせず即座に回答した。

「わかりました。お名前をお聞きしたい」

 安室は女性秘書に握手を求めながら笑顔を向けた。

「エレナ。エレナ・ストラビーチと申します」

 

 

 首相官邸で安室総理とロシア総領事との会合の間、茨城県の百里基地から第五〇一飛行隊所属の偵察機RFー四EJ 一機が樺太方面を目指して発進した。

 

 一時間後、ロシア領サハリン州上空に差し掛かった。高度九千メートルを維持していた。

「佐藤二佐。眼下にサハリン州ユジノサハリンスク市が望めます。各地で火災が発生しているようです」

 後部座席に座っていた安田三佐が、前部席の佐藤二佐に声をかけた。

「無線は通じないのか?」

 佐藤二佐は、眼下に見えるユジノサハリンスク市を見詰めながら、安田三佐に尋ねた。「まったく、通じません」

「そうか。鮮明な画像が撮れるまで高度を下げてみよう」

 機体は徐々に高度を下げていく。

「戦術偵察ポッドの低高度カメラを動作させろ。市内の状況を撮影させるんだ」

「了解しました」

 RFー四EJ改は低高度を高速度で飛行し、ユジノサハリンスク市内の状況を撮影していく。市内は悲惨な状況だった。路上にはバスやトラックが横転し、炎上していた。

 建物もすべてから火の手が上がり、黒煙を空高く舞い上がらせていた。動くものは皆無であった。

 炎や黒煙は数十メートルも地上から吹き上がり、偵察機はその間を縫うように進んでいく。気流が安定せず、機体はこまめに振動している。瓦礫の合間に無数の死体が見えた。「これは酷いな」

 偵察機は市内の撮影を終え、サハリン州北部の偵察に向かった。

 RFー四EJ改は高度ニ百メートルを時速三百キロメートルの低速度で飛行していた。 眼下には、サハリンのエゾマツやカナマツが繁茂する針葉樹林帯が広がっていた。

「あれは何だ?」

 佐藤二佐が不意に言葉を発した。

 前方数キロにある小高い丘の上に大勢の人影が見えた。偵察機は丘を避けるようにして急上昇を行い丘の上空数十メートルを旋回した。

 灌木に覆われた丘の上では、無数の白い裸身が横たわり、軍服を着た国籍不明の兵士達が纏わりついていた。

 時速二百五十キロ以上の速度であり、はっきりとは確認できなかったが、大勢のロシア人女性が兵士達に凌辱を受けているようだった。

 

 地上には大勢の若いロシア人女性達の泣き叫ぶ声が、響いていた。ホロ付きトラックが十数台停車しており、数台のトラックから大音響の音楽が流れていた。それは、かつて人類が耳にしたことのない不思議な旋律だった。

 女達の白い足が何本も持ち上げられ、股間には兵士達が顔を入れて激しい勢いで舐っていた。彼らの傍らには空瓶が何本も投げ捨てられていた。

 うつ伏せにされ、深い尻の割れ目に顔を押し込まれ、アヌスを舐られている女もいた。 兵士達による女達への凌辱は凄まじかった。狂ったように全身を舐め回し、細長い男根で口や膣やアヌスを犯していた。

 大音響の音楽と女達の泣き叫ぶ声に偵察機の爆音は消し去られ、さらに兵士達は女達の白い裸身に狂っていたため誰も偵察機の接近に気が付かなかった。

 彼等から少し離れた場所には、大型のテントが張られており、内部には美しい容姿をした二十歳くらいのロシア女性十人が木製テーブルの上に全裸で縛り付けられていた。

 女達の裸身が横たわるテーブルの表面は赤黒く変色していた。

 テント内は肉が腐ったような異臭に満ちていた。

 彼女達は激しい凌辱を受けたのか、憔悴しきった顔でぼんやりと天井に視線を向けていた。彼女達を数十人のエプロンを付けた兵士達が、取り囲んでいた。


 兵士達が女達の首筋に口を付けた。女達は一斉に裸身を強張らせ、泣き叫んだ。兵士達の鋭い犬歯が女達の首筋にのめり込み、皮膚を裂き流れ出る鮮血を音を立てて喉に流し込んでいた。

 兵士達は交代しながら女達の生き血を吸い出していた。

 出血多量で女達は次々に絶命した。亡骸となった女達の裸身は兵士達により鋭いナイフで切り裂かれていく。腹部を縦に裂かれ色とりどりの内臓を抜かれ、手足、首を切断された。テント内は息苦しいいほどの血匂に満たされ、女達の骨や筋を断つ重苦しい音が響いていた。

 肉を削られた後の骨は、四方が一メートルほどの木製の箱に投げ入れられた。箱には無数の骨や女達の生首が捨てられていた。

 十人の若い女達がすべて解体され、内臓や捌かれた肉は、テントの外に運ばれた。

 そこには差し渡し二メートルはある大鍋が水を満たされ、焚火で熱せられていた。兵士達は女達の肉をその中に投げ入れ、得体の知れない野菜を一緒に入れた。

 巨大なシャモジで肉鍋をかき回しながら、味見をして塩を足し再びゆっくりとかき回した。

 

 

 一時間後、兵士達は車座となり女達の肉で作った肉鍋を食べながら、酒のような液体を金属製のコップでがぶ飲みしていた。

 兵士達の周りには、激しい凌辱により精魂尽き果てた若い女達が、地面に敷かれた布製のシートの上に置き捨てられていた。誰も逃げようとはしなかった。立つことすら出来ないほどに憔悴しきっていたのだ。

 食欲を満たした兵士は、再び女達に襲い掛かった。兵士達にとり、女達は単に食欲と性欲を満たす対象でしかなかった。

 何人かの兵士が、上空を飛ぶ戦闘機に気が付いた。急いで立ち上がり、小銃を向けてきた。

 偵察機は、銃弾を避けるように急上昇し、北方に向けて一気に加速した。

「酷い状況だな。敵は捕虜にした女達を凌辱しているようだ」

「明らかに国際法違反ですよ」

「すべてを撮影したか?」

「大丈夫です」

 高速度で旋回しながらの画像撮影であるが、問題なく撮れているようだった。

 肉眼では女達が兵士達により凌辱されている詳細は分からず、軍服を着た兵士達により裸身の女達が組み伏せられている様子しかわからなかった。

 兵士達による人肉食は肉眼では確認できなかったが、戦術偵察ポッドの低高度カメラは一部始終を撮影していた。

 数分後、偵察機は、眼下に蒸気機関車が北方に向かい爆走している状況を確認した。

 数十連と連結された貨物車の荷台上に無数の白い物が蠢いている様子が見えた。

 高度を百メートルまで下げた。貨物車の荷台には、全裸にされた若いロシア人女性が数百人が載せられていた。全員の首には黒い革ベルトが嵌められていた。

 

 

 航空自衛隊三沢基地から第三航空団第三飛行隊所属のFー二戦闘機二十機と空中給油機KCー七六七が一機発進した。Fー二戦闘機には、それぞれがJDAM(GPS誘導爆弾)五百ポンド爆弾四発と自衛用に〇四式空対空誘導弾(改)を二発装備していた。


 Fー二戦闘機群は三十分程度でサハリン上空に到達した。

 

 Fー二戦闘機群は、それぞれが前日にFー四偵察機より得た敵軍の高射砲や機関砲の位置に向けて進路を変更した。

 高射砲の射程距離は一万メートル以下と予想し、高度一万二千メートルを飛行した。

 攻撃目標は、数十か所に及んだ。各機は目的の上空一万二千メートルからJDAMを投下した。JDAMはGPS誘導ではあるが、米国のGPS誘導が使用できないため、位置情報の参照には、準天頂衛星システムに切り替えていた。

 JDAMの精度は高く、目標から数メートル以内に着弾し、木っ端微塵に粉砕した。


 兵舎や戦車や高射砲などの目標が次々に粉砕されていく。目立った反撃もなく攻撃は一方的に行われた。全機がすべてのJDAMを投下した時、北方から数十機の敵編隊が迫ってくるのを付近の警戒任務についていた早期警戒機のレーダーが捉えた。


 早期警戒機からの連絡を受けて、全機が敵編隊に機首を向けて、時速マッハ〇.九の速度で飛行した。敵編隊から二十キロの空域まで接近し、続々と〇四式空対空誘導弾(改)を発射していく。

 敵機の武装は機関砲のみで有効射程は一キロと短く、まったく反撃ができなかった。空戦はあっけなく終了した。味方に犠牲はなく、敵機はすべてが撃破されていた。Fー二戦闘機群は任務を終了し、帰途についた。

 

 

 海上自衛隊のイージス艦を含む護衛艦五隻が、サハリンの南方地域を目指し、宗谷海峡を北進していた。

 護衛艦にはヘリ空母の伊勢も含まれていた。伊勢のブリッジでは、艦隊を指揮する一等海佐の望月が指揮をとっていた。

 ブリッジには、ユジノサハリンスク市長の女性秘書であったエレナの顔も見られた。

 彼女に寄り添うようにして一人の女性自衛官が直立不動の姿勢で立っていた。

 彼女の階級は一等陸尉で、柏木結衣という名前だった。昨年、防衛大学を主席クラスの成績で卒業し、陸上自衛隊の北部方面隊に配属されたばかりだ。兵士というより、モデルと言っても通用するくらいの美貌とスタイルの持ち主だった。

 彼女は、エレナの護衛役に任命されていた。伊勢に乗艦してから、一室を割り当てられ、エレナと行動を共にしていた。今ではすっかり意気投合し、親しい関係になっていた。「柏木一等陸尉。上陸の準備は整っているのかね?」

「はい。一等海佐。輸送艦おおすみに北部方面隊の隊員三百三十名と一〇式戦車十両と九六式装輪装甲車ニ十両さらには避難民の輸送用にトラック三十台が搭載され上陸の準備を完了しております」


 柏木一等陸尉は、緊張した顔を望月に向けた。ショートカットがとても似合う美しい顔が緊張のためか少し紅潮していた。また、軍人とは思えないような美しい声だった。

 周りの隊員も結衣の美貌に少し緊張しているかのようだった。

「そうか。本艦隊はサハリン南岸部にて待機し、艦載機の攻撃ヘリAH-六四D十機にて敵機動部隊の殲滅及び上陸部隊の後方支援を行う。また別動隊が沿岸二十キロから艦砲射撃を実施し、君達を支援することになっている。安心して任務を遂行してくれ」

「はい。一等海佐」

 結衣は直立不動の姿勢で親子ほど年の離れた望月に敬礼した。望月は結衣の顔をじっと見詰め大きく頷いた。

 柏木一等陸尉は前戦にではなく、後方にてユジノサハリンスク市等の生存者を救出することが任務であった。

 

 その一時間後、護衛艦隊はサハリン南岸部、ユジノサハリンスクから二十キロ南方にある海岸地域に到達した。海岸線から五キロの地点で停船し、エアクッション艇一号型を二隻使用して、兵員や武器のピストン輸送を開始した。

 先陣は北部方面隊所属の機動部隊が務めた。一○式戦車十台と九六式装輪装甲車二十五台がユジノサハリンスク市内に向けて進軍を開始した。

 敵の主力部隊は、Fー二戦闘機群の空爆により分断され、サハリン北方域に移動中との情報を偵察機RFー四EJより得ていた。

 本隊の目的は残留兵の殲滅であった。ユジノサハリンスク市までの約二十キロの行程で目立った戦闘は生じなかった。

 機動部隊がユジノサハリンスク市内に差し掛かったとき、戦闘は不意な感じで開始された。敵軍は、市内の家屋に潜んでいたのだ。

 一○式戦車よりはるかに貧弱な感じの敵戦車五十両と歩兵約千名が、先頭を進む一○式戦車群に攻撃を加えてきた。敵兵まで約二キロの距離だった。

 敵戦車が放った砲弾が一○式戦車に命中したが、威力不足のため頑丈な装甲が簡単に弾き返した。

 完全武装の自衛隊員二百名を乗せた九六式装輪装甲車二十台は、一○式戦車群の後方で敵戦車の砲弾を回避するためにコンクリート製ビルの背後に避難した。車内の自衛隊員は、車外には出ずに待機していた。

 

 一○式戦車群は、破壊された車両やコンクリート片が、散乱する路上を時速六〇キロで走行しながら、主砲の四十四口径百二十ミリ滑腔砲を連射した。

 敵戦車の砲弾は掠りもしなかった。一○式戦車の移動速度があまりに早すぎるからだ。しかも、移動中には敵戦車は砲撃不可能であり、停止せざる得なかった。

 本来一○式戦車の砲撃精度は驚異的であり、停止した目標に命中させることなど朝飯前のことであった。

 敵戦車群のうち、十両の車体が一気に粉砕された。全弾命中だった。

 敵歩兵約千名が、怒涛のように突進を開始した時、上空から爆音が聞こえてきた。

 攻撃ヘリAHー六四D アパッチボウが五機が、一○式戦車群の上空を飛び越して、敵歩兵部隊に襲い掛かった。

 

 全機が一斉にAGMー一一四ヘルファイア対戦車ミサイルを発射した。

 ミサイルは、様々な螺旋軌道を描き、全弾敵戦車に命中し粉砕した。残る数十両の敵戦車群は一瞬で壊滅した。

 全機がミサイル発射とほぼ同時に敵歩兵の先頭に向けて、M二三〇A一 三十ミリ機関砲を連射した。敵兵の身体に着弾し、粉々に粉砕していく。地面に無数の土煙が舞い上がり、周囲は爆音に呑み込まれた。

 有効な対空兵装を有しない敵歩兵部隊は、為すすべも無く銃弾により殺傷された。

 一瞬で数百名の敵兵が、全身をミンチにされ絶命した。

 一○式戦車の砲塔上面に設置された十二.七ミリ重機関銃M二が一斉に敵歩兵に向けて射撃を開始した。敵歩兵が胴体を真っ二つにされ、頭部をスイカのように砕かればたばたと倒れていく。

 

 後方に待機していた九六式装輪装甲車二十台が一○式戦車の近くに散開し、九六式四十ミリ自動てき弾銃から、四十ミリグラネード弾を敵歩兵めがけて一斉射撃を開始した。

 耳を劈くような爆撃音とともに敵兵の死体が爆風と共に宙に舞い上がった。

 数分のうちに敵兵の八割が死滅した。残る歩兵達は、サハリン北方に向かい逃走を始めた。

 初回の陸戦は、ひとりの戦死者も出さず陸自の圧倒的な勝利に終わった。

 戦場には、敵兵の死体が数百メートルに渡り、折り重なるようにして倒れていた。

 一〇式戦車十台のうち、五台が廃墟と化した市内に進入し、残りが見張りのためにその場に残った。侵入した戦車は、破壊を免れたビルや家屋を四十四口径百二十ミリ滑腔砲で吹き飛ばした。残留兵が潜んでいる可能性があったからだ。

 

 主要な建物を破壊した後で、九六式装輪装甲車に分乗していた陸自の普通科連隊は、車外に出て、市内にあるビルや家屋に敵兵が潜んでいないかを確認した。

 戦闘可能な敵兵士はすべて、逃走したのか、一切の反撃は無く、多くの負傷兵が道路や公園で倒れていた。

 負傷兵は皆、武装した陸自の隊員を見ると、ナイフで自分の首筋を切り裂き自害した。生存者は皆無となった。

 

 一等陸尉である結衣が指揮する陸自隊員により構成された救助隊十二名は、九六式装輪装甲車三台に分乗し陸路でユジノサハリンスクに向かっていた。エレナは結衣と同じ車両に同乗していた。

「ユジノサハリンスク市内で戦闘があったようよ」

 一等陸尉の柏木結衣が、同乗者のエレナに日本語で話しかけた。

「自衛隊は勝ったの?」

エレナ。

「もちろんよ。約二千名の敵歩兵隊をひとりの犠牲者も出さずに撃破したという報告を受けているわ」

「市民の生存者は見つかった?」

「その報告は無いわ。たぶん、市内から避難しているんじゃないかな?」

「心当たりがあるわ」

 

 救援隊は、エレナの指示でユジノサハリンスク市内には入らず、近くにある森に進んだ。

 幅員が三メートルほどで未舗装の林道を暫く進むと、白樺林に囲まれた木造三階建てて広さが二百坪ほどの建物が見えてきた。九六式装輪装甲車は結衣の指示で建物の前庭に進入した。

「ここは、市の保養施設なの。メガホンを貸してくれない」

 エレナは結衣からハンディマイクを借りると、車両上部のハッチから身を乗り出すようにして、家屋に向かいメガホンを使ってロシア語で日本の自衛隊と救出に来たことを叫ぶように言った。

 少しすると家屋の扉が開いて中から、十代後半から二十代前半のロシア人女性が出てきた。皆、不安そうに九六式装輪装甲車の方を見ていた。ハッチから身を乗り出すようにしているエレナの姿を見詰めると、嬉しそうに歓声を上げて、装甲車の方に走り出した。

 施設では若いロシア人女性ばかり三十名が救助された。

「ここで一泊していかない。もう少しで日が暮れるわ。隊員さん達も疲れたでしょう。ここ温泉もあるのよ」

 エレナが結衣に宿泊の提案をした。結衣は沈みゆく西日を見ていた。森の中、夜道を帰るのは危険と判断した。

「そうね。今から帰るのは危険ね。本部に許可を得るわ。通信士。本部にここで一泊する旨の無線を送りなさい」

「了解しました」

 三台の九六式装輪装甲車を、建物の庭で外側に向かい停車させた。見張りの隊員を残し、結衣はエレナやロシア人女性達と建物に入った。

 

 一時間後、建物の周囲は闇に包まれていた。それを待っていたかのように森の奥から敵兵二十人あまりが、足音を潜ませながら、建物に近付いてきた。

「いい温泉でしょう?」

 エレナと結衣は、施設の裏庭にある露天風呂に浸かっていた。空には満点の星が輝いていた。

「そうね。最高の気分だわ。ご馳走してもらったロシア料理も美味しかったわ」

 その時、エレナが結衣の腰に手を回してきた。

「何……」

 何か言おうとした口にエレナの柔らかい唇が押し当てられた。結衣は同性とのキスの経験は無かった。陸上自衛隊一の美貌の持ち主は異性愛者であったが、エレナの美貌とエロティックな雰囲気に惹き込まれていた。

 抵抗する気持ちは一瞬で奪われた。エレナの白魚のような指先が、結衣の乳首を焦らすように触ってきた。それから結衣の柔らかい腹部を優しく触りながら、下腹部へと進んでいく。

 

 エレナが湯船の床に膝をつき、結衣の両足を持ち上げて、クリトリスと膣を舐ってきた。結衣は片手で自身の体重を支えながら、片手で口を塞ぎ、喘ぎ声が漏れないようにしていた。

 うつ伏せにされ、盛り上がったむき卵のような白い尻の割れ目に顔を押し付けられ、アヌスを舐られながら絶頂に達した。

 

 十分後二人は全身を十分に温めてから、露天風呂の岩場に腰かけて、どこまでも続く星空を見詰めていた。結衣はエレナの片腕に抱かれるようにしていた。

「ごめんね。結衣。私は貴女を始めてみてからずっと好きだったの」

「さっきはとても気持ちが良かったわ。ありがとう」

 エレナは再び結衣の肩を抱いて唇にキスをしてきた。結衣は逆らわず、自ら舌を与えた。

 露天風呂から十メートルくらい離れた草藪に敵兵がひとり潜んでいた。偵察兵と思われる男は、露天風呂にいるエレナと結衣の美しい裸身を白目が無い血走った目でじっと見詰めていた。口元には大量の涎をたたえていた。

 露天風呂の近くにある脱衣籠には結衣の制服と九ミリ式拳銃が入っていた。

 男は拳銃を見てから、ゆっくりと背後の森に向かって帰って行った。

 

 

 

第六章 美囚

 翌朝、森は深い霧に包まれていた。結衣が指揮する救援隊十二名は三台の九六式装輪装甲車に分乗し、施設を後にした。九六式装輪装甲車の定員に達したため、一旦本部まで戻り、救出したロシア人女性達を預けてから、他の住民達の救助を行う予定であった。

 救援隊とロシア住民を乗せた九六式装輪装甲車三台は本部に向かい林道を進んでいた。 長さ十メートルほどで石造りの橋を二台が渡り切った時、轟音とともに橋が中央部分で爆発した。結衣とエレナを乗せた最後部部車両は、橋を渡る寸前だったので、落下を辛うじて免れていた。

 間髪を入れずに森から敵戦車一両が飛び出して来て、橋の手前で停車していた九六式装輪装甲車に向けて、戦車砲を一発発射した。九六式装輪装甲車車両の前面部に命中し、爆発した。操縦士と銃士それに車長の三名が、爆発で即死した。彼らのすぐ後ろに座っていた住民のうち、三名も爆発の衝撃を受け絶命していた。

 結衣とエレナは後方の席にいたので無事だった。

「脱出するわよ!」

 結衣がエレナの片腕を掴んで、後方ハッチを開けた。敵戦車が、三十メートルの距離まで迫ってきていた。

 結衣は、車内にあった八十四ミリ無反動砲を取り出し、車外に飛び降り、敵戦車に向けて発射した。装甲が貧弱な敵戦車の砲塔に命中し、爆発炎上した。

 結衣は再び車内に戻り、エレナ達を車外に誘導した。

 残りの九名全員が脱出したとき、燃料に着火したのか、真っ赤な炎を噴き上げた。


 結衣は、八十九式五.五六ミリ小銃を構え、周囲を見渡した。敵兵士の姿は見当たらなかった。続いての攻撃が無いので、敵戦車一両のみの攻撃と考えた。

 「三等陸尉!ご無事ですか?」

 石橋を先に渡っていた九六式装輪装甲車二台は、その場に停車していた。後方車両の上部ハッチから、車長の門田陸曹が結衣の姿を確認し、声をかけてきた。

 結衣は住民達を川岸に誘導した。幅五メートルの川は水深が深く、流れが急だった。飛び込めば流される可能性がある。

「門田陸曹。この川を渡るのは危険だ。我々は救援部隊を待つことにする。本部への無線連絡を頼む」

 結衣は部下に指示を出した。

「了解しました。我々もここで待機します」

「いや。それは認めない。救助した住民の安全を優先すべきだ。私が彼女達を守る」

 結衣は、一緒に装甲車に乗っていたロシア人女性の生存者八名を自分ひとりで守ることに決めた。これ以上、犠牲者を出すことは許されなかった。

「了解しました。本部への連絡は完了しました。我々は帰還します。ご無事で」

 門田陸曹が、結衣に向かい敬礼した。

 二台の九六式装輪装甲車が去ってすぐに、森の中から数十人の敵兵が現れた。装甲車が去るのを待っていたのだ。結衣はこのとき罠だと悟った。

 

 敵兵達はゆっくりと距離を詰めてきた。結衣は八十九式五.五六ミリ小銃を敵兵のひとりに向けて引き金を引き絞った。鋭い銃声が森に響き渡り、撃たれた敵兵士がうめき声を上げて倒れた。他の敵兵達は一斉に茂みに身を隠したが、攻撃はしてこなかった。

 結衣達を生け捕りにするものと考えた。

 一瞬、捕虜となり激しい凌辱を受けた末に、惨殺される悪夢が脳裏を過った。

 すぐに二人の敵兵士が金属製の分厚い盾を弾除けにして、ゆっくりと前進してくるのを確認した。結衣は盾に向けて続けざまに銃弾を放った。しかし、五.五六ミリNATO弾は盾の鉄板に食い込むが貫通することは無かった。五.五六ミリNATO弾の鉄板に対する貫通性能はせいぜい数ミリ程度である。敵兵達は盾の影に隠れながら、こちらにゆっくりと進んでくる。

「逃げるわよ」

 結衣はエレナの腕を掴み、背後の激流に向かって走り始めた。八九式小銃は重いので、川に飛び込む寸前、茂みの中に投げ入れた。

 捕まれば凌辱の末に殺されるのは明らかであった。

 急流に飛び込み、流されたとしても川幅が狭いので対岸にたどり着ける可能性に賭けてみることにした。

 結衣がエレナの腕を掴みながら、冷たい激流に飛び込んだ。残る女達も次々に飛び込んでいった。女達も捕まった後、どうなるか理解していた。

 流れは想像した以上に急だった。対岸には進めず、すぐに流された。あまりに激しい流れのため、掴んでいたエレナの腕を離してしまった。

 他の女達も下流に流されているのが見えた。

 その時、敵兵達が水しぶきを上げて、飛び込んでくるのが見えた。

 次々と女達は捕らえられ、川岸に引き上げられていくのが見えた。引き上げられた女はその場で全裸に剥かれ押し倒された。兵士達が纏わりつき狂ったように女達の裸身を貪った。乳房だけでなく膣やアヌスを舐られ、泣き叫ぶ声が森の静寂を引き裂いた。

 

 結衣は最下流にいたので、何とか捕まらずに済んだ。緊張が少し緩み、あらためて水温の低さに気が付いた。全身の熱が一気に奪われていく。激流にもまれながら数百メートル下流に流された。流れが穏やかになったところで対岸に泳ぎ着いた。

 川岸に腹ばいになり、周囲を見渡した。敵兵の姿は見えなかった。目の前には切り立った崖が見えた。登るのは困難に見えた。急いで冷え切った身体を温める必要があった。

「あったわ」

 結衣は思わず独り言を言った。三十メートルほど下流に崖にできた割れ目を二つ見つけた。割れ目と割れ目の間隔は、十メートルほどだった。ひとつの裂け目からは小川が流れ出していた。

 

 何とか立ち上がり近付いた。最初に小川が流れ出していない方の洞窟に向かった。自然にできたと思われる入り口の高さがニメートル、深さ五メートルほどの洞窟だった。中に入って見た。砂と小石が満たされた地面は乾いていた。

 入り口の高さは二メートルほどだが、天井の高さは十メートル以上あった。微かな光が天井から差し込んで来ていた。洞窟の天井部分に穴が開いており、そこから光が差し込んでいたのだ。

 結衣は思い出したように戦闘服のポケットに手を入れ、ブラストマッチファイヤースターターを取り出した。支給品のひとつだ。嵐の中でも使用可能な着火装置であった。

 

 その後、小川が流れ出している方の洞窟に向かった。内部の広さは同じくらいだったが、天井に穴は無く薄暗かった。小川の深さは数センチほどで、洞窟から出て激流に合流していた。小川は洞窟の奥にある高さ二メートルほどの岩の裂け目から湧き出していた。

 流れに指を触れて舐めていた。激流の水より飲料水として安全に思われた。

 飯盒と水筒に湧き水を満たした。

 横穴の近くには、乾いた流木が転がっていた。残された体力を使って、それらを拾い集め、小川が流れ出していない方の洞窟の奥へと運んだ。

 小岩を直径五十センチのサークル状に配置して中心部分に流木を置き、その上に乾いた小枝を盛り、ブラストマッチで着火した。一瞬で火が付いた。大きく燃え上がらないように流木の量を調整した。煙は僅かに発生するだけで、敵兵に見つかる危険性は少なかった。

 

 天井の穴と入り口から排気されるので、一酸化炭素中毒になる心配は無かった。

 結衣は暫くの間、焚火の前に座り暖をとった。暖かさのおかげで生き返る思いだった。 一息ついてから、持ち物のチェックを行った。武器は九ミリ自動拳銃一丁と銃弾三十発に軍用ナイフ一丁であった。

 それに九六式装輪装甲車から持ってきた背嚢には生存キットが入っていた。生存キットには、カミソリ、ナイフ、罠線、食塩、ヨードチンキ、釣具等の山野で自給自足するために必要な最低限の道具が詰め込まれていた。他には、飯盒と水筒それにレーションが二日分と防水シートが入っていた。

 荷物を確認してから、焚火から少し離れた場所に洞窟近くに生えていた大量の雑草を敷き詰め、その上に防水シートを広げて簡易的なベッドを作った。

 

 作業を終えてから洞窟の外に出て三十メートルほど離れた川岸に向かった。激流が穏やかな流れに変わるポイントに澱みがあったので、足音を忍ばせ近付き川面を覗き込んだ。三十センチほどのサクラマスやカラフトマスが群れを成して泳いでいた。

 食糧はレーションが二日分あるが、救援部隊が来るまでどれだけかかるかわからなかったので、食糧の調達が必要と考えた。

 結衣はその場を離れ、洞窟の近くに生えていた太さ二センチほどの柳の木を軍用ナイフで切り倒し、長さ二メートルほどの長さに成型した。

 洞窟に戻り、生存キットから釣り針と釣り糸を取り出した。柳の木に釣り針と重りの小石を結んだ釣り糸を付け簡易的な釣竿を作成した。

 釣竿を持って再び川岸に向かった。途中で一抱え程もある岩をひっくり返してみた。数匹のミミズを見つけた。それを釣り針に付けて先ほどの澱みに向かった。

 ミミズの餌が付いた釣り針を垂らすと、すぐに反応があった。三十センチほどのサクラマスがかかっていた。それから先は入れ食い状態だった。

 

 十分ほどで同じサイズのサクラマスやカラフトマス七匹を吊り上げた。

 日が沈み周囲は薄暗くなっていた。

 夏というのに肌冷えするほどの冷気を感じた。

 洞窟に戻り、岩の上で釣ってきた魚の内臓を抜き、塩を振り、小枝に刺して焚火の周囲に立てかけた。すぐに香ばしい匂いがしてきた。

 魚が焼きあがるまで少し時間があった。思い出したように懐中電灯を持って小川が流れ出している洞窟に向かった。


 洞窟に入り迷彩服と下着を脱いで全裸となった。岩場から流れ出している冷たい湧き水でそれらを手洗いした。手が痺れるほどに水は冷たかった。

 洗濯に続いて湧き水で全身を清めた。眩暈がするほど冷たかったが、汗に汚れた身体を清潔にしなければならなかった。

 焚火がある洞窟洞窟に戻り、迷彩服と下着を柳の木で作った簡易的な物干し竿にかけた。

 それから全裸のまま焼きあがったサクラマスに齧り付いた。思わずため息が出るほど美味しかった。

 

 

 翌朝、七時に眼覚めた。焚火は消えておらず、熾火になっていたので洞窟内は適温に保たれていた。

 焚火に流木を追加して、レーションの缶詰を取り出し、缶切りで開けてみた。中には鳥飯が入っていた。それを焚火で温めた。

 焚火を見詰めながら、洞窟の外を見詰めた。朝霧が立ち込めているようだった。

 視界が悪く、行動するには最適に思えた。敵兵に捕らえられたエレナ達の安否が気がかりだった。

 湧き水で作ったお茶を飲みながら、温まった鳥飯を食べた。レーションの鳥飯は何度も食べたが、何故かこれまで食べた中で一番美味しく感じられた。昨日串焼きにしたサクラマスが残っていたので、焚火で温めなおして食べた。

 

 朝食を終えてから、偵察に出かけることにした。九ミリ自動拳銃や軍用ナイフを身に着けて、昨日襲撃を受けた上流に向かった。食糧等は洞窟に置いてきた。

 少し進むと太さ一メートルの倒木が、川面から一メートルの高さで対岸まで倒れていた。昨日流された時には気が付かなかった。

 結衣は、倒木の上を枝に掴まりながら、対岸に渡った。

 それから針葉樹が生い茂る川岸を二百メートルほど先に進むと、何かが燃える匂いがしてきた。木々の間にある茂みに身を潜め、周囲の様子を伺ったが、敵兵の気配は感じなかった。再び茂みの中を移動し始めた。

 川岸に迫っていた森が開け、広さ二百坪ほどの草地に出た。中央に焚火をした後があった。

 焚火の近くに何かが転がっていた。周囲を再度確認し、敵兵がいないことを確認し近くに移動した。

「う……」

 結衣は突然、蹲り胃の内容物を吐き始めた。結衣が見た者は救出したロシア女性の生首だった。生きていたときの美貌は、激しい恐怖のためか引き攣っているように見えた。

 焚火の周囲には、遺体の一部と思われる手足や胴体が落ちていた。手足や胴体は焼かれており、肉を削り取られ骨が見えていた。足首には、噛み裂かれた痕があった。

 焚火近くの大岩には、この女性のものと思われる肉片や骨が載せられた陶器製の皿が置かれていた。周辺に散らばっている血肉が付いた骨にも歯形が刻み付けられていた。

 結衣には敵兵達がこの若いロシア人女性を殺害し、その肉を食べたことがわかった。

 信じられないことであるが、まぎれもない食人行為だった。結衣の心に激しい恐怖が芽生えた。

 結衣は何とか気を取り直してその場を後にした。遺体を埋葬する時間は無かった。

 結衣は昨日、敵兵に襲撃された地点を目指していた。

 一キロほど進んだ時、爆薬により倒壊した橋が見えた。

 真っ先に川岸の藪に入った。八九式小銃の銃身を見たときは、思わず笑みがこぼれた。小銃を手にしたとき、安堵感が沸々と沸き上がった。

 

 結衣は、茂みの中に身を潜め、周囲を伺っていた。暫くすると銃声と若い女の悲鳴が微かに聞こえてきた。結衣は声のする方に向かい茂みの中をゆっくりと進み始めた。

 移動を始めて数分後、森が途切れた。牧草地と思われる場所に到達した。

 そこでは、敵兵による捕虜となった女達への凌辱が始まっていた。結衣が護送を行っていた住民達であった。皆、全裸にされ後ろ手に縛られ、猿轡を嵌められていた。

 エレナの姿もあった。エレナは二人の敵兵により、激しい凌辱を受けていた。

 全裸にされたエレナの長い両足が大きく広げられ、兵士のひとりが股間に口を付け、音を立てて舐り始めた。もうひとりの兵士は、豊かな乳房に食らい付き乳首を吸っていた。 エレナの視線は宙を漂い、猿轡を嵌められた口からは、喘ぎ声が漏れていた。

 膣を舐めていた兵士が起き上り、もうひとりの兵士に何事かを話しかけ、エレナをうつ伏せに横たえ、今度は深い尻の割れ目に顔を押し込み、アヌスを舐り始めた。

 エレナの低い啜り泣きが聞こえてきた。

 周囲も同じような状況だった。八人の若いロシア人女性が兵士達により散々に凌辱されていた。


 激しい怒りを覚えながらも結衣は冷静に敵兵の戦力を分析していた。敵兵は十名であり、武装はほとんどが旧式の小銃のみだった。将校と思われる一名が拳銃を所持していた。 小銃は無造作な感じで男達の近くに置かれていた。

 一方、結衣の武装は、装弾数二十発の八九式五.五六ミリ小銃一丁に装弾数九発の九ミリ拳銃一丁であり、どちらもフルに銃弾は込められていた。

 十対一では分が悪いが敵兵達の意識は女達への凌辱に注がれており、さらに単発式の小銃と連射式の自動銃では戦力の差は明らかであった。

 自衛官としての自覚が、敵兵達への恐怖心を上回った。エレナ達を捨て置いてこの場から逃げ去ることなど到底できなかった。

 結衣は自動小銃を構えて立ち上がった。女に射精したばかりで、少し離れて休憩していた兵士の頭部に向けて引き金を引き絞った。鋭い銃声がして、兵士の頭頂部が砕け散った。

 兵士は前のめりに倒れ込んだ。兵士達が一斉に結衣の方を見た。皆、小銃に手を伸ばそうとした。結衣が一番近くにいた兵士の頭部を銃弾で貫いた。兵士達はその場に凍り付いた。

 躊躇は無かった。臆すればエレナ達や自分も兵士達に激しい凌辱を受け、最後にはその肉を貪り食われるのは分かっていた。

 その時、結衣は後頭部に硬い物を押し付けられるのを感じた。ゆっくりと振り向いた。 ひとりの敵兵が結衣の頭部に拳銃の銃口を向けていた。結衣はこれが罠であったことを悟った。もうひとりが近くの茂みに隠れていたのだ。これは結衣をおびき出すために仕組まれたものだった。数人の敵兵が近寄ってきた。

 

 

 持っていた自動小銃を奪われた。すぐに迷彩服を紙のように引き裂かれた。

 シミひとつない極上の白い裸身がむき出しにされた。乱暴な手つきで乳房を鷲掴みにされ、股間を触られた。

 全裸で立ち尽くす結衣の背後に士官と思われる兵士が膝間付き、尻の割れ目に顔を押し込んできた。ざらついた舌がアヌスに深く突き刺さってきた。

 結衣は屈辱の余り、目には涙を浮かべ嗚咽を漏らしていた。

 アヌスを舐めていた兵士が、結衣を草地に仰向けの姿勢で横たえ、むっちりとした太腿を押し広げ、膣やクリトリスを舐め回した。結衣は両手で顔を押え咽び泣いた。白い尻が鷲掴みにされ、長い舌が股間を這い回っていた。容赦の無い嬲りであった。

 結衣の脳裏には、焚火で焼かれ貪り食われたロシア人女性の切り裂かれた死体が蘇った。恐怖のあまり、白い尻が無残に震え戦いていた。

 その後、何人もの敵兵が結衣の全身を舐め、最後は細長い陰茎で貫いた。兵士達の責めには容赦は無かった。

 最後に結衣は意識を失い人形のように犯された。 

 

 

 

第七章 食肉奴隷

 結衣が目覚めたのは暗い鋼鉄製の部屋だった。微かにモータ音が聞こえていた。

 すぐに潜水艦の艦内であることに気が付いた。裸電球ひとつのみの部屋には、一緒に捕らえられたロシア人の若い女達が全裸で横たわっていた。エレナの姿も見えた。意識を失っているようだった。

 結衣は床を這ってエレナに近付き耳元で囁いた。

「エレナ。大丈夫?」

 小声で語り掛けながら、静かにエレナの肩を叩いた。

「……」

 エレナが目を覚ました。ぼんやりとした視線を周囲に向けていた。

 鉄製の廊下を歩く音が聞こえてきた。鋼鉄製のドアが開けられた。入り口に軍服を着た若い男が立っていた。髪を短く刈り上げ、瞳には白目が無かった。

 男はリンゴに似た果物がいっぱいに入ったバケツを持っていた。男は入り口に立ち、暗い目つきで女達の裸身を舐めるように見ていた。ズボンの前が大きく膨らんでいた。

 意味不明の言葉を呟いてからバケツを置いて、床に横たわっている女達に近い付いた。 最初に結衣の前でしゃがみ込み結衣の片足を持ち上げ、股間を食い入るように見詰めた。

 顔を近付け匂いを嗅ぎ、長い舌で舐め始めた。暫く舐めた後で結衣をうつ伏せに寝かせて、盛り上がった白い尻の割れ目に顔を入れて、アヌスを舐り始めた。結衣は羞恥のあまり、嗚咽を漏らした。

 男は十分に楽しんだ後で、アヌスに指を根本まで突っ込んでかき回した。

 結衣は直腸を抉られる痛みと異物感に手足を震わせ泣き叫んだ。盛り上がった美尻がブルブルと震えていた。

 まるで家畜並みの扱いだった。男にとり結衣の裸身は単なる肉に過ぎないようだ。ロシア女性達は一塊になり、結衣が凌辱される様子を泣きながら見ていた。

 結衣の凌辱後、他の女達にも同様な責めが加えられた。

 

 彼女達を乗せた潜水艦は、約一週間後入り組んだ入り江にある大きな軍港に到着した。 群港には、長さ二百メートルはある巨大な戦艦やプロペラ式戦闘機を満載した空母が何隻も停泊していた。

 軍港の上にはどんよりとした黒雲が広がっていた。気温は二十度くらいで少し肌寒いくらいだ。

 結衣を含む十人の若い女達は全裸のまま兵士達に担がれ潜水艦から港に下ろされた。そこに待っていた幌付きトラックの荷台に乗せられ軍港を後にした。

 

 十分ほど、舗装された道路を進み、蒸気機関車が停車していた駅に到着した。

 レンガ造りの駅舎には、洋服を着た大勢の人間がいた。彼等も結衣達を拉致した兵士と同じく、白目がない瞳だけの目を持ち、一様に背が高かった。

 彼等は立ち止まり、全裸の結衣達を食い入るように見詰めていた。兵士に片腕を掴まれ歩かされていた結衣達が、彼等の近くを通るとき手を伸ばして裸身を触ろうとする者がいたが、その度に兵士達に銃床でしたたかに殴られ悲鳴を上げた。

 結衣は歩きながら何度も尻や乳房を触られた。

 女達は、蒸気機関車の荷台に乗せられ、天井から垂れ下がる鎖についた腕輪で両手を拘束された。

 結衣とロシア人女性達を乗せた蒸気機関車は、煙突から黒煙を濛々と吹上、ロシアの森林地帯を西方に向けて進んでいく。

 

 数百キロ進んでから、周囲を針葉樹林に覆われた駅舎に止まった。そこで一人の若いロシア女性が下ろされた。彼女は二十歳になったばかりで、燃え上がる様な金髪と妖精のように美しい容姿の持ち主だった。彼女の名はサーシャといい、ユジノサハリスク大に通う女子大生だ。

 彼女はレンガで作られた駅舎の前に停車していた幌付きトラックの荷台に乗せられた。 トラックの幌には、彼女の他に三人の若い女達が、手錠と猿轡を嵌められ、床に横たわっていた。

 トラックはすぐに発進した。三十分ほど走り停車した。

 兵士達二人が荷台に乗ってきて、サーシャ達四人を片手で一人づつ抱き上げ、車外に運び出した。

 サーシャは兵士の肩に担がれながら、周囲を見渡した。目の前には、石造りの巨大な城が聳え立っていた。

 中世ヨーロッパに建てられた古城の外観に似ていた。建物の周囲には、広大な牧草地が広がっており、その周囲にはレンガ造りと思われる建物が点在している様子が見えた。

 兵士がゆっくりと城に向かって歩き出した。縦横三メートルはある金属製の扉が外側に開き、女達を担いだ兵士達が、中に入って行った。

 扉の向こう側は広三百坪ほどの中庭となっていた。そこには、兵士達よりも首一つほど背が高く、勲章のような物が軍服を着た男が待っていた。男の髪は白く、額には深い皺が刻まれていた。

 兵士達は、女達を石畳の上に下ろし、白髪の男に向かって左手を胸に押し当て頭部を下げた。男もそれに答えた。

 兵士達が女達を指差し、何かを男に話しかけた。男が懐から何かが入った革袋を取り出し兵士のひとりに手渡した。その兵士は革袋を開け、中から黄金に輝く硬貨を取り出した。

 皮袋の中には、金貨がぎっしりと詰まっているようだった。兵士達の顔に笑顔が広がった。

 

 その後、サーシャを含む四人の女達は、使用人と思われる男達によって中庭に面した部屋に運ばれた。百畳ほどの部屋の半分には鉄格子で仕切られた四つの部屋が作られており、三部屋には、それぞれ四人の二十代前後の若くて美しい女達が入れられていた。

 皆、全裸で首に黒色の革ベルトが嵌められていた。鉄格子で仕切られていない側には、洗い場が作られていた。中央には簡易ベッドが四床並べられていた。

 サーシャを含む四人は空いている部屋に押し込められた。

「サーシャ」

 自分の名を呼ぶ声にサーシャは驚いた。隣の部屋には同じ大学に通っていた友人のナターシャが閉じ込められていた。ナターシャは、ユジノサハリンスク市が最初に国籍不明の兵士達に襲われた際に行方不明になっていた。

「ナターシャ!貴女なのね」

 二人は鉄格子越しに抱き合い、互いの無事を確認し合った。

「ここは何処なの?」

「わからないわ。酷い場所なのは確かよ」

「どんな風に?」

「今にわかるわ」

「彼女達は?」

 サーシャは同じように囚われの身となっている女達の方を見詰めた。

「わからないわ。ロシア語が通じないのよ。英語も通じなかったわ。これまで聞いたことのない言葉を話すの」

 その時、部屋の扉が開けられ、白髪の男が使用人と思われる五人の男達を伴い、部屋に入ってきた。サーシャの腕の中でナターシャが震え出した。

 使用人の男がサーシャが入れられてる檻の扉を開け、サーシャひとりを外に運び出した。

 

 使用人によって洗い場のシャワーで全身を丹念に洗い清められ、簡易ベッドの上に荒々しく横たえられた。

 白髪の男がベッドの近くに片膝を付いて、サーシャの長い両足を持ち上げ股間をむき出しにさせて、膣とアヌスを長い舌で舐め始めた。サーシャは両手で顔を隠し泣き叫んだ。 暴力をふるわれるのを恐れて、とても抵抗する気にはなれなかった。

 男は、無抵抗の裸身を存分に舐めてから、うつ伏せに横たえ細長い男根を背後から突き立てた。男の両手はサーシャの盛り上がった乳房を鷲掴みにしていた。

 射精後、周りで見ていた使用人の男達が、サーシャの裸身に群がった。

 男達の性欲は強烈で、サーシャが逝っても逝っても解放することは無かった。

 執拗に膣やアヌスを犯した。激しい凌辱はサーシャが意識を失っても続けられた。

 

 

 一週間後、城の前には大勢の成人男女が、サーシャが捕らえられている城に向かい歩いてきた。皆、液体が入ったガラス瓶を入れた籠や野菜を手にしていた。

  彼等は城の中庭に入り、あらかじめ用意されていた木製のテーブル席について持参した酒と思われる飲料を飲み始めた。

 中庭にはテーブルと椅子以外に四か所、巨大なコンロが作られ、薪がくべられ赤々と燃えていた。コンロの両側には先端が笹又となった鉄製の棒が立てられていた。

 巨大コンロ以外には、直径二メートルぐらいの水が満たされた大鍋が火にかけられていた。

 数百人の男女が席に着いた頃、中庭の端に作られた仮設ステージ上に囚われの身となっていたサーシャやナターシャと他に二人の若い女達が全裸で立たされた。

 彼女達が現れると、テブル席に着いていた男女が一斉に歓声を上げた。ステージ上に横一列で並ばされた女達の裸身を食い入るように見詰めてきた。

 「私達どうなるの?」

  サーシャが隣に立つナターシャの手を握り締めた。

 「わからない。でも何だか、不気味な感じがするわ」

  緊張した面持ちのナターシャが強く握り返してきた。

 その時、仮設ステージ下に四人の若い女達が集まり、サーシャが見たことも無い弦楽器を奏で始めた。これまで聞いたことのない不思議な音色だった。


 演奏が始まると、テーブル席にいた数人の男女が、ステージ下に集まり、見たことのないダンスを踊り始めた。

 「お祭り?」

 サーシャはダンスを踊る男女をぼんやりとした目で見ていた。

 「そうかも知れないわね?でも、料理が無いわね」

 「これから料理するんじゃない。コンロや大鍋があるし」

 「食材はどうするのかしら……」


 その時、城の主である白髪の男がステージに上がった。音楽が止み踊っていた男女がテーブル席に戻った。

 白髪の男はテーブル席に向けて何かを話し出した。テーブル席の男女が皆、一斉に歓声を上げた。白髪の男は数分間、ステージで話続けて、最後にステージ下に待機していた使用人の男達に何かを指示した。

 使用人達は一斉にステージ上に上がり、四人の女達を抱え上げ、ステージから降りた。 

 

 サーシャとナターシャは、巨大コンロが置かれている場所に運ばれ、近くに置かれていた木製のテーブルに四つん這いの姿勢をとらされた。近くのテーブル席にいた中年の男女二人が立ち上がりふたりの近くにきて両手両足を押えつけた。

 彼らの顔は何かを期待するかのような笑みを浮かべていた。

 サーシャとナターシャは、使用人の男達が長さ二メートル以上ある先端が鋭く研ぎ澄まされた鉄串を持ち近付いてくるのを見た。

 その時、若い女の叫び声が中庭に響いた。続いてガツンという衝撃音が聞こえ、割れるような歓声が沸き上がった。

 サーシャとナターシャは、一緒に捕らえられていた若くて美しい女が、テーブルの上で首を斧で切断される光景を目の当たりした。真っ白な腹部を大振りの肉切り包丁で縦に引き裂かれ、内臓を掻き出されていた。

 二人は全身を震わせ声を限りに泣き叫んだ。

 テーブル席に着いていた老若男女が総立ちになり、満面の笑みを浮かべ、両手を空に突き上げるようにして歓声を上げていた。

 サーシャは恐怖のあまり失禁した。近くにいた中年女性が、サーシャの下半身にホースを向けて冷水で尿を洗い流した。

 首を切断され内臓をすべて掻き出された女の胴体と手足は、使用人の男達により、肉切り包丁や斧で切り裂かれ、内臓や筋肉が鉄串に刺され巨大コンロの上に敷かれた鉄網に載せられた。

 すぐに肉が焼ける香ばしい匂いが、中庭に広がった。

 使用人が、人肉の焼き串に塩を振りかけていた。

「嫌!」

 サーシャは叫びながら、自分達が食材であることを思い知らされた。ナターシャも背筋を仰け反らせながら泣き喚いていた。

 再び絶叫が聞こえてきた。四人のうち残るひとりの女が使用人により、ぐらぐらと沸き立つ大鍋に放り込まれたところだった。

 女は声を限りに泣き叫んでいた。大鍋の熱湯から首を出し、口を大きく開き断末魔のような叫び声を上げてから、熱湯の中に没した。

 使用人達は、野菜を両手で大鍋の中に放り込んでいく。

 サーシャは、鉄串を持った使用人の男が、自分の背後に回るのを憑かれたような視線で追っていた。額からは汗が流れ落ちていた。手足を押えている男女は、サーシャの豊かな乳房や尻を触ってきた。

「嫌!殺さないで!」

 突然に肛門にこれまで感じたことがないような激痛が襲ってきた。痛みのあまり意識を失いそうだった。すぐに喉もとに激痛を感じた。息苦しさのあまり涙が溢れ出した。

 信じられないことに自分の口から鉄串の先が飛び出してきた。

 サーシャは肛門から口までを串刺しにされ、息も絶え絶えだった。すぐに死を覚悟した。

 串刺しにされた状態で巨大コンロまで運ばれ、鉄串の両端を支柱の上に固定された。

 全身を鉄串で貫かれた激痛とともに全身を焼かれる痛みが襲ってきた。

 薄れゆく意識の中で、大勢の男女が自分を取り囲み、刷毛で身体中に油を塗ってくるのを見詰めていた。 

 

 一時間後、全身をキツネ色に焼かれたサーシャとナターシャの肉体はテーブルに載せられた巨大な俎板の上で切り分けられ、大勢の男女達にふるまわられた。

 祭りはピークを迎え、広場にいたすべての者達が、女肉を喰らい、酒を飲みながら全裸になり乱交を始めた。

 

 

 

第八章 異人種

 海上保安庁の巡視船「あそ」が、南九州から二十キロの太平洋上で巨大な戦艦一隻を発見した。戦艦は時速五ノットという低速で九州南岸を目指し進んでいた。

 戦艦の甲板や船橋から黒煙が上がっていた。火災が発生してるようであった。

 艦砲も根本からへし折れ、デッキの上に転がっていた。デッキ上に人影は見られなかった。目視による観察では、戦艦の損傷は甚だしく、戦闘能力はほとんど無いと判断された。

 巡視船「あそ」から海上自衛隊に戦艦に関する無線連絡を行った。

 

 一時間後、哨戒ヘリコプターのSHー六〇Kが、戦艦の上空百メートルに接近し、上空に滞空し戦艦の動きを監視した。

 戦艦の動きに変化は無く、暫くの間、小康状態が続いた。

 SHー六〇Kは、徐々に高度を下げ、二十メートル上空で再び滞空した。機内からサブマシンガンで完全武装した海上自衛隊所属特別警備隊SBUの隊員七名が、ロープを使い戦艦の甲板に降り立った。戦艦の動きは変わらず、デッキ上に動くものは無かった。

 デッキ上には、船橋から剥がれ落ちた鉄板や機銃の残骸が無造作な感じで散乱していた。残骸の下に多くの乗員の死骸が横たわっていた。

 隊員達は周囲を確認しながら、艦橋へと向かった。そこに戦艦を操船する生存者がいる筈だった。

 檣楼の鉄扉は開け放たれていた。周囲を警戒しながら階段を登り艦橋を目指した。階段にも死体が散乱しており、異様な臭気が漂っていた。

 

 数分後、隊員達が艦橋の入り口に到達した。隊員のひとりが、サブマシンガンのトリガーに指をかけ、開いている方の手で静かに鋼鉄製のドアを押し開けた。

 広さ二十畳ほどの艦橋も死体が四散していた。

 艦橋の中央にある舵輪にひとりの男が、全身を凭れかけていた。男は白い制服を身に着けていた。背中の数か所に傷を負っているようで、血が滲んでいた。息をしているようだが、大きな動きは無かった。

 隊員のひとりが銃口で背中を突いた時、男の上半身が揺れそして床に倒れ込んだ。

 男は仰向けになった。目を閉じていた。顔面にもいくつかの傷があり、血が滲みだしていた。男の身長は二メートルほどで、痩せ型だった。年齢は見た目ではよくわからない。 腰のフォルスターには口径五〇口径程の自動拳銃が差し込まれていた。

 隊員達は、男を後ろ手にして手錠で拘束し、所持していた銃器を取り去った。

 体重百キロ以上ある男の両手両足を四人がかりで持ち上げ、艦橋を後にした。

 南九州沖合を漂流していた国籍不明の戦艦で保護された意識不明の兵士は、厚木にある国立病院に移送されICUで集中治療を受けた。

 

 兵士は満身創痍の状態であり、傷口も化膿していたので、治療には多くの時間が必要だった。治療と同時に遺伝子検査も行われた。結果は驚くべきものであった。

 人類の遺伝子とは大きく異なっていた。爬虫類の遺伝子形態に酷似していたのだ。

 生存兵だけでなく戦艦で発見された死体に対しても遺伝子検査を行ったが同じ結果だった。ウィルス感染の有無については徹底的な検査が行われた。悪質なウィルスは発見されなかった。


 治療と検査が一週間以上続いた。懸命な治療の効果は出ていた。全身の傷は癒え始め、意識も多少混濁しているようだが戻っていた。全身を拘束ベルトにより固定されているので動くことはできなかったが、周囲の風景にぼんやりとした視線を向けたり、意味不明の言葉を発することがあった。

 

 二週間後、全身の傷が癒え、検査もひととおり終わったので、ICUから一般病棟にある個室に移された。手首や足首には拘束具が嵌められ、自由に移動することはできなかったが、ベッドの上で起き上ることはできた。

 男の世話係兼情報収集係として、陸上自衛隊所属で二等陸尉の片桐愛理が配属された。 愛理は防衛大学を主席で卒業するほどの才女で、ミス防衛大に選ばれるほどの美女だった。身長百七十センチで長い手足に豊かな乳房の持ち主だ。語学にも秀でており五か国語を話すことができた。

 愛理はいつものように看護師姿で、男の病室に足を運んだ。男に排尿をさせる時間だった。この任務に就いてから、三日目になるが、愛理が訪れる時に男は眠っている状態だった。その日は男は起きていた。ベッドに横になった状態で、ぼんやりと地上十階の窓外を眺めていた。

 愛理に気付き顔を向けてきた。愛理の顔を凝視し、それから全身を舐めるように見詰めてきた。特にスカートからはみ出した形の良い太腿を食い入るように見ていた。男が自分の身体に興味を示したのは明らかだった。

 愛理は努めて平静さを保ち、尿瓶をベッドの横に置き、事務的な感じでズボンから男根を引き出し、尿瓶の口に入れた。男根の先から小水が勢いよく噴出した。

 その間、男は愛理の様子をじっと見詰めていた。

 今、男は愛理の盛り上がった胸元を見詰めていた。愛理は男の顔を見ることができなかった。寝ているときに見ていた顔は、鼻が高く短髪で身長は二メートル位の大男という印象しかなかった。目の前で排尿する男の目は、黒目だけで白目が無かった。日に焼けた顔は引き締まり、鋭く精悍な感じだった。

 男根の先をティシュで拭き、ズボンに仕舞い込んでから、男の顔をじっと見詰めた。

「私の名前は片桐愛理です」

 愛理は、男が日本語を解さないと担当の医師から伝えられていたが、好奇心には勝てず、男に自分の名前を伝えていた。男と親しくなり情報を聞き取ることも任務のひつであった。

「……」

 男が愛理の顔をじっと見詰め、何かを呟いた。

「愛理……」 愛理は自分の顔を指差し、再び名乗った。

「クローム」 

 男は拘束具が付いた手を上げ自分の顔を指差し、言葉を発した。意思が通じたのは明らかだった。

 

 それから毎日、愛理は男の病室に通い詰め、男の世話をしながら、男の言語を学習した。男も日本語に強い好奇心を感じており愛理から日本語を学ぼうとした。

 僅かではあるが、互いの言語で意思の疎通ができるようになっていた。

 病室の出口には、自動小銃で武装した自衛官二人が常に警戒任務に就いていた。クロームは脱出の兆候は見せなかった。

 愛理は、食事の世話も行っていた。クロームの食事は、牛肉や魚介類や果物がメインだった。生野菜は口に合わないようで、火を通した物を好んだ。

 拘束具のため自由に手を動かせないので、愛理がスプーンや箸で食べさせた。

「片桐二等陸尉。君はクロームと仲がいいようだね」

 愛理は病院の地下に造られた臨時の作戦本部への招集を受けていた。目の前に作戦本部の最高司令官である沖田一佐が、執務机の椅子に腰かけていた。愛理は直立不動の姿勢だ。

「彼の面倒を任されておりますので、毎日顔を合わせております」

 愛理の声は、緊張のためか少し上擦っていた。

「もっと親密な関係になって貰いたい」

「……」

「我が国は建国以来、最大の危機に瀕している。クロームは異世界の住人であり、我が国が欲する貴重な情報を有している筈だ。だから、彼とは何でも話せる関係になって欲しいのだ。この意味は分かるだろう?」

「……ご命令とあれば、従います」

 沖田が男女の関係を命じていることは明らかだった。日本が平行宇宙と合体する以前であれば、そのような人権無視の指令は考えられなかった。愛理は、一等陸尉という兵士であり、情報を得るために身体を使うスパイではないのだ。自衛隊の変貌が伺えた。ただし、クロームには、異人種であっても異性としての興味を持っていた。それに毎日、下の世話で男根を触っているのだ。

「自白剤を使用する方法も考えられる。しかし、異人種にどういう作用をするか、予測は難しい。最悪死に至るかもしれない」

「自白剤の使用は反対です……」

毎日接しているうちに逞しいクロームに対し、情が移りかけていた。

「室内には盗撮用カメラと盗聴マイクを仕掛けてある。それでも引き受けてくれるかね?」

「はい……」

 蚊の鳴くような小さな声だった。自衛官や研究員にすべてを見られるのは正直とても辛かったが、非常事態ということで割り切るしかなかった。

 

 翌日、愛理は定時刻に病室を訪れた。いつものように笑顔で挨拶をしてから、尿瓶をベッドのサイドテーブルに置きベッドに横たわるクロームのズボンとパンツを降ろした。既に勃起していた。片手で長大な男根を掴み、尿瓶の口に入れた。

 クロームは、男根を握る愛理の手をじっと見詰めていた。

 怒張しているため、中々尿が出なかった。

「出ないの?」

「……」

クロームはゆっくりと大きく頷いた。多少の言葉は覚えたようだ。

「仕方が無いわね」

 愛理は笑みを浮かべてから、尿瓶から男根を取り出し、少しの間、掌で擦ってから、徐に呑み込んだ。

「……」

 クロームが低い喘ぎ声を漏らし、驚いたような表情で口腔性交を凝視していた。

 少しして、クロームの全身が微かに震えているのが感じた。

 クロームの額には汗が滲んでいた。射精を必死に堪えているようだった。

 愛理は口の中で果てさせるつもりであった。男性経験は普通並みにはあった。精液を呑んだこともある。愛理の脳裏では異人種に犯される妄想が生まれていた。男根をしゃぶりながら低い喘ぎ声を漏らしていた。盗撮用カメラのことは脳裏から消えていた。

「う……」

 クロームの喘ぎ声とともに男根が口内で弾けた。愛理は一滴も漏らすまいと激しく吸引した。嫌いな味では無かった。すべてを飲み下した。

 少しの間、クロームは目を閉じて余韻に浸っていた。

「美味しかったわ」

 愛理が話しかけると、クロームは身を起こし、愛理の看護服に手をかけボタンを外そうとした。拘束具のせいでうまく外せなかった。

「脱いで欲しいの?」

「愛理……。裸……。見たい」

「いいわ。見せて上げる」

 愛理は、クロームが見ている前ですべての衣類を脱ぎ去った。二十代の眩いばかりの白い裸身が露わになった。クロームの右手がゆっくりと動いて、愛理の盛り上がった乳房を優しく触った。愛理は、クロームの左手を引き寄せて股間に導いた。指先が膣内に進入してきた。それだけで逝きそうだった。

 クロームは指先の感触を楽しんでいるようだった。愛理は立っていることが辛くなっていた。

「隣に横になっていい?」

 愛理はベッドを指差した。

「愛理。顔の上……。乗る」

 クロームは仰向けに横たわり、自分の口を指差した。顔の上に跨れと言っているようだった。愛理は、ベッドに上がり、クロームの顔を後ろ向きに跨いで腰を下ろした。

 すぐに膣やアヌスを長い舌で舐られた。

「いい……」

 愛理は眉間に美しい皺を寄せて、大きく喘いだ。目の前の男根が再び勃起してきた。

 上半身を前向きに倒し、男根を頬張った。膣内ではクロームの長い舌が動き回っていた。愛理は豊かな白い尻をクロームの顔に擦り付けていた。

 クロームが起き上り、愛理をうつ伏せに横たえた。

 盛り上がった白い尻が露わになった。尻の深い割れ目に顔を押し込み、長い舌でアヌスを舐り始めた。

 

 

「思ったとおりだ。クロームは、異世界では日本と同じ場所に位置していた国の住人のようだ」

 沖田一佐は、壁に掛けられたスクリーンに映し出された画像をじっと見詰めていた。

 画像は愛理とクロームが行為の後で、ベッドに横たわり、寝物語をしている場面が映し出されていた。愛理は自然な感じでクロームに母国のことを聞いていた。クロームは愛理を信用仕切っているのか、どんな問いにも答えた。

「はい。彼は本当のことを話していると思います」

 そこは、作戦本部内の会議室だった。室内には沖田の他には、赤面し俯き加減の愛理だけが、会議机の椅子に腰かけていた、

「素晴らしい。君のお蔭で大変貴重な情報を入手することができた。彼は我が国にとり、救世主となるかも知れない。これからも情報収集に協力して欲しい」

 

 

 

第九章 囚われの女達

 拉致された里奈やグラビアアイドル達は戦艦によって、里奈達の世界ではアメリカ大陸の西海岸にあるロサンジェルスが位置する場所に移送された。

 ロサンジェルスのような近代的なビルが立ち並ぶ都市の景観は無かった。

 レンガ造りの建造物がほとんどであり、一部にコンクリート製のビルも見受けられた。 そこは里奈達が知っているアメリカでは無かった。

 里奈達は、港に接岸した戦艦から蒸気機関車で都市の中心部まで移送された。

 彼女達は全裸のまま、首に革製のベルトを巻かれた状態で、ひとりづつ木箱に収められて運ばれた。中心部に位置する駅舎からは、幌付きトラックで市内中心部に位置する地上十階建てのビルに運ばれた。

 

 里奈はビルの地下三階にある一室に運び込まれた。そこには医療器具のような機器が整然と並んでいた。コンピュータに相当するような機器は見当たらなかった。中央に置かれた医療用ベッドに全裸で両手両足を黒革ベルトで拘束された状態で仰向けに横たえられた。

 白衣を着てマスクを着用しゴム製の手袋をした男女が、里奈の周囲を取り囲んだ。ひとりが里奈の盛り上がった乳房を鷲掴みにした。それを合図に他の男女が様々な器具を使い里奈の全身を調べ始めた。

 最初に太腿を大きく押し広げられ、膣部を調べられた。クスコに似た機器を膣内に挿入され、ひとりが覗き込み意味不明の言語で何かを言うと数人が熱心にメモを取っていた。 その後、膀胱内に管を入れられ、強制的に小水を採取された。

 膣部の調査が終わると今度はうつ伏せにされ、アヌスにワセリンを塗られてから棒状の筒を入れられ、腸内に残っていた便を採取された。

 さらに肛門鏡を挿入され、直腸内を念入りに調べられた。

 その後も苦痛は与えられなかったが、身体の隅々まで調べられ、激しい屈辱感を覚えていた。

 性的拷問のような検査はその後、長時間にわたり続けられた。

 最後には全身の部位をカメラのような機材で撮影された。

 身体検査の後で、シャワールームに連れて行かれた。そこには水着を着た若い女達が三人いて、里奈の裸身を洗剤とシャワーを使い洗い清めた。

 

 それから、全裸のまま、そのビルの一室に連れ込まれた。そこは広さが百畳ほどで、中央に二十名は席に着くことができる巨大な机が鎮座していた。白衣を着た様々な年齢の男女が席に着いていた。

 部屋の壁一面にカラーの世界地図が貼られていた。日本やアメリカが描かれているが、意味不明の文字が地域の上に印字されていた。

 部屋の片側は高さ五十センチほどの段になっており、そこには里奈と一緒に拉致された女達が全裸で立たされていた。

 里奈も女達と一緒に立たされた。

 その時、部屋のドアが開いて、調理服のような衣服を着た二人の男女が、上に白いシーツを被せられたキャスター付テーブルを押して入ってきた。室内は肉料理の香ばしい香りに満たされた。彼等はテーブルを会議机の横に止め、白いシーツを取り除いた。

 テーブルの上には、首を切断された女の胴体が横たえられ、周りには野菜や果物が盛り付けられていた。死体はきれいなキツネ色に焼き上げられていた。死体の横に大皿が置かれその上に若く美しい女の生首が載せられていた。腹部は縦に切り裂かれ内臓が抜かれているように見えた。

「キャー!」

 里奈を除く女達が一斉に悲鳴を上げ、泣き叫んだ。その場で失神し床に倒れ込む女もいた。里奈は吐きそうになりながらも生首を見た。その顔には見覚えがあった。一緒に拉致されたグラビアアイドルのひとりであった。

 テーブルを押してきた男が、肉切り包丁に似た刃物で女の豊かな片乳房を切り取り、皿に載せると、女がそれを会議机の上に置いた。

 最年長者に見える軍服を着た痩せ型の男が、最初に乳房からナイフで一口大の肉を切り取り口に入れた。目を閉じて肉を味合うように噛みしめ呑み込んだ。乳房が載せられた皿を片手で隣席に移動させた。

 隣には中年と思われる太った男だった。その男も同様に乳房の肉を食べた。

 里奈は恐怖に怯えながらも目を逸らすことはできなかった。

 目の前で行われている行為が信じらえなかった。

 彼らは人間の肉を調理し平然とした表情で食しているのだ。里奈の脳裏に潜水艦での出来事が蘇った。拉致された女が連れ去られ、その後その女の断末魔と思われる声が聞こえてきたことを。彼女も目の前の女と同じように調理され食されていたのだろう。里奈は自分の運命を思い描き、背筋に戦きが走り抜けた。

 キャスター付テーブルでは、調理副を着た男が、黙々と女の胴体を切り刻んでいた。残る乳房を切り取り、裏返しにた胴体の尻に包丁を入れ、ステーキ大の肉を切り取った。

 切り分けられた肉は、調理服を着た若い女により、次々と会議席に運ばれた。

 

 人肉食は約一時間にわたり続けられた。調理された女の主要な部位は粗方平らげられていた。テーブルの上には、肉がこびり付いた骨がバラバラにされ載せられていた。

 最年長に見える男が立ち上がり、他のメンバーに向けて何事かを話しかけた。

 彼らは熱心な様子で聞いていた。メモを取る者もいた。

 男の話が終わるとメンバー達はナプキンで口を拭き一斉に立ち上がった。

 それから壇上に立つ女達の前に集まった。

 彼らは一斉に女達を引き寄せた。床に押し倒される女や前屈みにされる女もいた。

 膣やアヌスを覗き込まれ、匂いを嗅がれ長い舌で舐られた。

 里奈は最年長の男に全身を隈なく調べられていた。四つん這いにされ、股間を覗き込まれ、膣に指を入れられかき回された。アヌスにも鼻を押し付けられ匂いを嗅がれた。仰向けにされ乳房を揉みしだかれた。家畜の扱いと変わらなかった。いや家畜同然だった。

 女達は彼らにとり、性行奴隷かつ食肉と同じなのだ。

 気丈な里奈も執拗な愛撫に心が砕けそうになっていた。自然に嗚咽が漏れた。

 他の女達も同様に咽び泣いていた。

 室内には膣やアヌスを舐る音と女達の嗚咽と喘ぎ声で満ちていた。隠微な匂いが部屋中に漂っていた。

 

 

 性的な凌辱は半日にも及んだ。最後には、女達に凌辱を加えた男女が、女達を肩に担ぎ上げ、部屋から運び出そうとした。その時トラブルが発生した。

 里奈を肩に担ぎ上げた最年長の男は、自分の進路を塞ぐ若い女を睨み付けた。

 その女も同様に女達のうちのひとりを肩に担いでいた。 

 白目が無い瞳だけの目を除けば、女は美しい容姿の持ち主だった。身長は百八十センチ以上あった。女は、里奈を指差し何かを男に言っていた。

 男は、激しい口調で答えていた。暫くの間、二人は睨み合った。

 里奈は二人が自分のことで争っていると感じていた。

 そのうち、女が肩に担いでいたグラビアアイドルのひとりを床に置いて、里奈を男から引き離そうとした。男が空いている方の手で女を張り飛ばした。

 女は頬を押え、床に座った状態で男を睨み付けた。

 その時、鋼鉄製のドアが吹き飛び怒涛のような黒い疾風が室内を走り抜けた。

 二人の間に巨大な影が割って入った。身長が四メートル近くもある巨大な男だった。天井に背中がつかえていた。頭部が異常に大きく五頭身程だった。男の顔には多数の醜い傷跡が刻まれ、顔半分に火傷の痕があった。

 口元が大きく裂け、耳元に達していた。全身巨大な筋肉に包まれており、黒革製のジャンパーの胸元や肩から上腕にかけて力瘤で大きく盛り上がっていた。

 床に倒れていた女が大男の背中に向けて何かを話しかけた。大男は女の方に顔を向け、大きく頷いた。

 大男は里奈を茫然と立ち尽くす男の肩から引き剥がし、頭上に持ち上げた。里奈の股を大きく広げ、長い舌で舐め上げた。里奈は恐怖のあまり、声を限りに泣き叫んだ。生きたまま貪り食われると思ったのだ。

 その時、小銃で武装した屈強な体つきの兵士達が部屋に雪崩れ込んで来て、大男の膝を銃床で力任せに殴りつけた。

 堪らず大男は里奈を片腕に抱えたまま、床に片膝を付いた。大男の頭部に銃床が叩き付けられた。大男は低い呻き声を漏らし、床に片手を付いた。何度も銃床が頭部に叩き付けられた。

 

 気を取り直した軍服の男が、里奈の裸身を大男の片腕から引き剥がし、顔を蹴りあげた。大男が怨嗟に満ちた両眼を軍服の男に向けて、襲い掛かろうとした。四方から銃床が男の顔面に叩き付けられた。

 大男は床に両手を付き、崩れ落ちるように横たわった。

 床に倒れていた女が大男を庇うように、大男の巨大な背中に抱き付いた。

 兵士達は、銃床による打撃攻撃を止めた。

 軍服の男は何かを女に告げ、里奈を肩に担いで部屋を後にした。

 

 

 一時間後、里奈は男の部下が運転する車で市の郊外に連れて行かれた。車の外観は旧式のロールスロイスに似ており、車内は広々としていた。

 里奈は車両の後部に男と共に乗せられていた。相変わらず全裸であり、鎖のついた首輪を嵌められていた。里奈は男に下半身を弄られながら窓外を流れる風景を見ていた。

 建物はほとんどがレンガ造りであり、高さは五階建て未満だった。道を往く歩行者は皆、驚くほど背が高かった。二メートルが平均くらいで三メートル近くもある者もいた。

 十字路で車は一旦停止をした。十字路には信号のような装置があった。

 その時、近くの建物に人だかりができているのが見えた。

 その建物は、食料品店のようで店先に野菜や果物が並べられていた。

 人だかりの中心に、若くて美しい容姿をしたひとりの白人女性が、全裸で立たされ、鎖のついた首輪を嵌められていた。彼女の目には、里奈達と同じ白目があった。

 里奈はこの世界に拉致されて来て以来、自分達と同じ目を持つ人間を見たのは初めての事だった。理由は不明であるが、住人の異なる瞳、聞いたこともない言語等から里奈が拉致されて連れて来られた場所は異世界であると感じていた。

 ここで同じ人間を見るのは、驚くべきことに思えた。

 彼女の表情は強張り、何かに怯えているようだった。

 鎖の先を、調理服を着た男が掴んでおり、男は周囲の者達にしきりと何かを話しかけていた。人だかりから、一人の中年女性が前に出てきて調理服の男に紙幣のような物を手渡すのが見えた。

 男が彼女にて鎖の端を持たせた。彼女は男に何かを言い、白人女性を軽々と肩に担いでその場を離れた。女に担がれた美しい白人女性の盛り上がった尻が震え戦いている様子が垣間見えた。

 信号が変わり、里奈を乗せた車が発進しようとした瞬間、里奈はその店の奥にある光景を目撃して、全身に鳥肌が立った。

 手足と首を切断され、腹部を縦に切り裂かれ、内臓を抜かれた白人女性と思われる死体が何体も天井から吊り下げられていたのだ。

 里奈はその店が、人肉を販売していることを確信した。

 先ほどの人肉食宴会といい、この得体の知れない国は、人肉を不通に食肉として扱っているのだ。その事実に愕然とした。自分の運命を垣間見た思いがした。

 身体の震えが止まらなくなった。ここは、里奈達が生きていた世界とはまったく異なる場所であることを改めて確信した。

 里奈達を乗せた車両は、郊外に位置する城のような建物の敷地内に進入した。その建物は周囲を深い森に囲まれ、境界線には高さ五メートルほどの石で造られた壁により外界と隔てられていた。

 

 車は、幅五メートル程の石畳の道を数百メートル進んだ。

 里奈は男に鎖を引かれて車外に出された。

 目の前に苔むした岩で造られた城風の建物が聳えていた。

 夏といっても全裸なので里奈は両手で豊かな胸を抱きかかえるようにして震えていた。 目の前の木製扉が、音もなく開いた。

 男は鎖を引き、里奈を建物内に引き入れた。

 広さ百畳ほどもある広大な玄関ホールでは、古風な衣服を身に着けた二人の男女が待っていた。

 男は中年くらいに見える中肉中背の男で、もう一人は若く美しい女だった。白目が無い円らな瞳を持ち、髪は燃え上がる様な金髪だった。里奈の目から見ても美しく感じられた。

 里奈の鎖を持つ男は、鎖を若い女に手渡し、二人に意味不明の言葉をかけた。

 ふたりは男の言葉に深く何度も頷いた。

 暫く男は、二人に何かを伝えてから、里奈の尻を鷲掴みにして意味不明の笑みを浮かべ建物を後にした。

 

 残された里奈は、若い女により建物内にある広大な浴場に連れて行かれた。

 大理石で造られた広さ百畳ほどの浴場には、全裸の若い女三人が、二人を待っていた。 三人の女達は、里奈の手を引く若い女に深々と頭を下げ、意味不明の言葉を話した。

 里奈は三人の女達が、自分と同じ白目がある目を持っていることに気が付いた。見た目は、里奈が知っている白人女性の特徴を持っていた。高い鼻、大きな瞳に金髪の髪を持っていた。

 里奈を連れてきた女は、三人の女達に里奈を引き渡した。

 彼女達は、里奈の全身に適温の湯を手桶で注ぎかけ、洗剤が沁み込んだたわしで優しく洗い始めた。若い女は浴場の壁に背中を凭れ、腕組をしてその様子をじっと見詰めていた。

 少しすると、その女は着ていた服をすべて脱ぎ捨て全裸になった。

 女は、女達に全身を洗われている里奈に近付いた。

 女達は一礼をして、さっと二人から離れた。

「イーブ」

 女は里奈の瞳をじっと見つめ、自分の顔を指差した。

 里奈は女が自分の名を告げているのだと理解した。このような接触の仕方は初めてだった。この世界の誰もが里奈を家畜のように扱ってきたからだ。

「里奈」

 里奈も自分の顔を指差した。里奈は初めてイーブと名乗る女の顔をまじまじと見詰めた。 

 年齢は自分と同じくらいだろうか。目には白目が無く濃いブルーの瞳だった。鼻筋は通っており形は良かった。燃え上がる様な金髪の持ち主で、里奈の目から見ても美人の部類と言えた。

 身長は百八十センチくらいあり、里奈より十センチほど長身だった。手足が長く抜群のプロポーションであるが、乳房は小振りだった。

 彼女は明らかに自分とは異なる異種の生物なのだ。

 イーブは優しい手付きで里奈の黒髪を掴み、珍しそうな物を見るようにじっと見詰めた。

 それから、里奈の盛り上がった片乳房を鷲掴みにして、食い入るように見詰めてきた。 もう一方の乳房を口に含み、乳首を転がしてきた。上目使いで里奈の顔を見上げてきた。

 里奈はこの世界に拉致されてから、数え切れないほど性的な凌辱を受けていたため、それほどの屈辱は感じなかった。

 イーブは、里奈を浴場の床に横たえ、太腿を大きく広げ、膣を食い入るように見詰めてきた。次にしなやかな指先を膣に忍び込ませてきた。次に口を付けて膣周辺を舐め回した。

 快感が背筋を走り抜け、小さな喘ぎ声を漏らした。イーブがクンニを続けながら里奈の顔を見て、笑みを漏らした。里奈は逆らわなかった。この女は自分に危害を加えるようには感じなかった。

 今は快感に身を任せることにした。

「里奈……」

 イーブが里奈の名前を呼び、四つん這いになるように促した。里奈はイーブに剥き卵のようにすべすべの尻を向けた。すぐにアヌスに生暖かい舌を感じた。美尻を抱きかかえられ、存分にアヌスを舐られた。

 浴場で全身を洗われ、イーブによる凌辱を受けてから赤色の首輪を付けられ、三階にある一室に連れ込まれた。そこは広さ三十畳ほどもある個室であり、中央には巨大なダブルベッドが鎮座し、高級感溢れる家具が配置されていた。

 部屋にはトイレやシャワールームが隣接していた。

 イーブは里奈をベッドに横たえ、クロークから真紅のビキニを取り出し、里奈の裸身に着せた。少し離れた位置に立ち、ベッドに横たわるビキニ姿の里奈をじっと見詰め、首をかしげてから、黒のビキニを取り出し、真紅のビキニと取り換えた。

 満足そうな笑みを浮かべてから、里奈をベッドサイドに立たせ、今度は絹製のパーティドレスに似た衣装を着させた。

 ドレスを何着も着せ替えさせ、最後に花柄をデザインした最も華やかな感じの衣装を選んだ。

 衣装を着せられた里奈を三面鏡の前に置かれた椅子に座らせ、真紅の口紅やアイライナーのような化粧道具を使い化粧を施していく。

 里奈はまるでイーブの着せ替え人形のようであった。

 タンスには、幾つもの着せ替え人形が飾られていた。どの人形にも目には白目があった。この世界では性行奴隷兼食肉とされている白人女性に似せて作られているようだ。

 イーブは自分を使い、着せ替えを楽しんでいるのだ。

 

 一日に三回の食事は果物や野菜がメインであった。量は少ないがパンに似た触感の穀物で作られらた食物も与えられた。食事の際も全裸でいなければならなかった。身に着けているものと言えば、赤色の首輪だけだった。

 寝室はイーブの部屋に隣接した広さ六畳ほどの小部屋だった。寝る前にはイーブにより性的な凌辱を受けた。イーブの愛撫は巧みで最後には必ず絶頂に達した。

 広間は、この家の家主と思われる中年の男によって、地下にある広大な広さの研究室で全身の検査や血液検査を受けた。男の名は、プサイという名前だった。

 後にイーブから聞いたのだが彼女はプサイの一人娘であった。プサイはこの国で生物学者として第一人者ということだった。彼は性欲があまり強くないのか、里奈を抱くのは一週間に一度程度の間隔だった。

 

 

 

第十章 未来への希望

「大臣。敵の航空兵力は侮れません。監視衛星が滑走路に配置された数千の戦闘機を確認しました」

 航空自衛隊幕僚長の八田が、新たに打ち上げた偵察衛星の観測結果を報告した。

「我が方は、空自の戦闘機が三百五十機。在日米軍が百機程度を有しているのみか?」

 防衛大臣の露木が、腕組をして苛立たし気に天井を見上げた。

「太平洋上における敵艦隊との戦闘において、敵国が旧式と思われる核兵器を有していることが確認されております。敵国の総攻撃を受けた場合、我が軍も無傷という訳にはいかないでしょう。核砲弾の有効射程距離は四十キロと推定されます。敵艦を接近させないためにも、我が国周辺の制空権は何としても確保する必要があります」

「何か手があるというのか?」

 防衛大臣の露木は幕僚長の真剣な顔をじっと見詰め、身を乗り出すようにして言った。「ございます。練習機のTー四を戦闘機に改造すれば、かなりの増強が期待できます。旧式な敵戦闘機に対しては十分な戦力になります」

「具体的な案を説明してくれ」

 防衛大臣経験者の安室総理が身を出すようにして言った。

「レーダーにはFー二戦闘機用のAESAレーダーであるJ/APGー2を装備します。これで三百キロ程度から敵戦闘機を検知可能になります。

エンジンには、XF五ー一、アフターバーナー時五トンの推力がありますが、二機装備します。XF五ー一には推力偏向装置がついていますので、ドッグファイトにおいて無敵になるでしょう」

「武装はどうなる?」

「中距離空対空AAM四Bミサイルを四発に、単距離空対空ミサイルAAM五を二発装備します。さらに機体フレームを強化し、二十ミリバルカン砲を装備します」

「練習機だが、改造によりかなりの戦力になりそうだな」

「Tー四 練習機の他にPー一哨戒機の改造も進めています。中距離空対空AAM四Bミサイル四十発を装備可能に機体改造が進んでいます」

「一機当たり四十発か?それは強力だな」

「Pー一哨戒機に中距離空対空ミサイルを装備する計画は以前からありましたので、計画はスムーズに進められております」

「空中巡洋艦構想なら聞いたことがある」

「AAM四Bは強力なミサイルです。敵機が近接している場合、複数を一発で撃破可能です」

「他には、Fー十五Jの全機近代化改修計画です。PREーMIPS機の改修はコストがかかるということで、実施されませんでしたが、今回全機を対象にレーダーをJ/APGー二にエンジンを開発が終了した十五トン級エンジンを搭載する予定です。もちろん推力偏向装置付きです。さらに中距離空対空AAM四Bミサイルを四発から十六発搭載可能に改修する予定です」

 内閣総理大臣の安室は、閣僚会議のメンバーを首相官邸の一室に召集していた。

 閣僚メンバーが集う会議机の中央席に座り、官房長官の村木と会話していた安室首相が立ち上がった。

「本日の会議では、日本の運命を左右するであろうテーマについて、討議し決定します。 今我が国は建国以来最大の危機を迎えています。今、決めなければならないことは、この世界が、すべて我が国の敵である事実からして、防衛が最重要課題となります。次に我が国はエネルギーの大半を他国に依存しており、それを早急に確保しなければなりません。

さらに食糧自給率四十%という現実があります。我が国民一億二千万人の食糧を確保しなければなりません。防衛、エネルギーそして食糧自給について皆様と議論したいと考えています。それでは官房長官進めてください」

 官房長官の村木が、立ち上がると同時にプロジェクター用のスクリーンが天井から降りてきた。

 村木はプロジェクターを使用しながら、最初に国防強化に関する説明を行った。

 Tー4練習機やFー十五戦闘機の改修計画等について熱心に説明したが、閣僚に国防経験者がいなかったので、質問もほとんどなく終了した。

 十分ほどの休憩の後に今度はエネルギー政策について説明を開始した。

「我が国における石油備蓄量は、国家と民間を合わせると半年ほどと言われています。備蓄量は十年前から変化はしていません。実際には、日本海沖のメタンハイドレードの採掘が軌道に乗り、さらに電気自動車等の脱ガソリン化等により、石油への依存度は低下しており、現在では一年程度の備蓄量と言えます」

 官房長官の村木はそこで一旦説明を止め、一呼吸おいてから水を飲んだ。

「一年後には石油がなくなってしまうのね?戦闘機はどうやって飛ばすのですか?」

 財務大臣であり、女性議員である東峰議員が、ややヒステリーな声で尋ねた。

「大臣は、藻から油を作る技術はご存知ですか?」

「もちろん。知っていますよ。オーランチオキトリウムって言うのでしょう?」

「よくご存じですね。他の皆様も同様のようです。この研究も進み、既に実用段階となっています。昨年から休耕放棄地を使い大規模培養する試験を開始しています。

二万ヘクタールの培養面積で我が国の年間消費量を賄えると言われています。

 我が国には四〇万ヘクタールほどの休耕放棄地がありますから、これが起動に乗れば、十分な石油量を確保することが可能です」

 官房長官の村木は自信に満ちた笑顔を浮かべ説明を続けた。

「石油製造の主役は藻だけではありません。我が国の石炭埋蔵量は年間輸入量の百年分以上と言われています。さらに石炭を液化して石油を作る技術が既に実用化し、生産を始めています。エネルギーは石油だけではありません。海水からウランを抽出する技術も確立し経済的にも十分に採算性がとれるということが確認されています。このウランを使用すれば、すべての原子力発電所を稼働させることが可能です」

「原発は危険ですよ。それに生成されるプルトニウムの処分はどうするのですか?」

 女性議員の東峰が質問した。

「良い質問です。その問題も解決の見込みがつきました。トリウム原発でプルトニウムを燃やし、より安定した物質に変えることができます。この物質の半減期は百年余りであり、数万年とも言われるプルトニウムより処理が容易です」

「そんなに素晴らしい方式があるのなら、何故今まで積極的に推進しなかったのですか?」

 再び東峰議員が問いかけた。

「石油利権です。それにこれまでは安価な海外資源を手に入れることができましたので、必要に迫られなかったのです。以前の世界から孤立した今、採算性さえ取れれば、どのような技術であっても推進しなければならないのです」

「計画が目白押しだが、後一年で何とかなるのかね」

 それまで無言で村木の説明を聞いていた長老格の桜木農林水産大臣が尋ねた。

「仰るように、すべてが順調に推移してもエネルギー供給が安定化するまで数年はかかります。保険は考えています。この世界は、我々が元いた地球と地理的な条件はほとんど同じです。そして現在も北方には石油資源を有する樺太や南方にはインドネシアやパプアニューギニアが存在します」

「樺太……?そうか、サハリンか!」

 運輸大臣の城田が叫ぶように言った。

「そのとおりです。我が国には最先端の石油掘削技術があります。樺太には数十億バレル以上の油田が存在する筈です。我が国の需要量の数年分です。インドネシアで油田が発見できれば数十年は何とかなるでしょう」

「そこに先住民がいたらどうするの?侵略をするんですか?」

 再び東峰財務大臣が口を開いた。

「我が国には、他に選択肢がないのです」

 先ほどから沈黙を守っていた安室総理が口を開いた。東峰大臣の顔を一瞬見詰め、天井に視線を移した。誰もが見たことのない陰鬱な表情だった。誰もそれ以上、発言することは無かった。

 最後に食糧自給についての説明となった。桜木農林水産大臣が立ち上がり、背広の胸ポケットからメモ張を取り出し、数頁を捲ってからプロジェクターのスイッチを操作した。「我が国の食糧自給率は四十%程度であることは周知の事実です。食糧輸入がストップした場合の食事内容をプロジェクターに投影します」

「やはり、毎日イモばかりか。肉は当然食べれなくなるな」

「これじゃ。今の国民は納得しない。肉を何とか確保できないのか」

 大臣達は、口々に不平を漏らした。

 プロジェクターには、一日三食にジャガイモやサツマイモが添えられる映像が映し出されていた。後は一口サイズの焼き魚や僅かばかりの漬物だけだった。

「説明を続けてよろしいですか?皆さまもご存じのように我が国の近海では、大量のクジラが確認されています。新世界のクジラが我が国近海に押し寄せているのです。クジラだけではありません。全国の河川には、大量の鮭やウナギが遡上しています」

「鯨肉や魚肉は大量に採れるということですね。子供の頃、クジラはよく食べていました」

 東峰財務大臣が独り言のように言った。

「米は皆様ご存知のように、百パーセント自給可能です。市場に流通している以外に国民二か月分の備蓄もあります。野菜もほぼ百パーセント自給可能です」

「それは、農耕機械を動かす燃料や肥料があっての話ですよね」

 東峰財務大臣。

「東峰先生は、経済だけでなく、農業にもお詳しいようですね?」

 桜木農林水産大臣が皮肉めいた口調で言った。

「それぐらい。当然ですわ」

「石油備蓄分を農産物の生産に振り向ける必要があります。自家用車による消費を抑えれば、一年程度までは持つかも知れませんね」

 安室総理が二人の会話に分け入った。

「総理の仰る通りです。まず、エネルギー資源の確保が大前提となります」

「仮に米が確保できても、家畜生産は諦めねばならないのですか?」

 安室が説明を続ける桜木農林水産大臣の顔をじっと見詰めた。

「策はあります。失礼ながら総理はイベリコ豚の餌がドングリであることをご存じですか?」

「何かで読んだことがあります。そ、そうか。気が付かなかった!」

 安室が大きな声を出した。閣僚達の視線が安室と桜木の両者に注がれた。

「お気付きですね。我が国は約七十%が森林地帯であり、大幅に農業用地を確保することはできません。ですが、森林地帯には膨大な量のドングリが存在します。野生動物を養ってもあり余るほどです」

「ドングリだって!」

何人かの閣僚達が苦笑いを浮かべていた。

「少し静かにしてください。ドングリにはタンニンが多く含まれ、食用には不向きと聞きましたが」

「総理。お詳しいですね。タンニンは人間にとって害があっても豚は平気で食べます。それにタンニンは水に溶けるので、あく抜きなど適当な処理をすることで、食糧にすることも可能です。実際、縄文人の貴重な食糧源でした」

「タンニンが含まれないドングリもありますね。マテバシイのような」

「そうです。本州や九州、四国の温暖な地域に繁殖しています。小麦と混ぜてパンやパスタも作れます」

「我が国は、食糧自給率が四十%と言われています。何も手を打たなければ国民が飢えることになります。至急、代替え食品の検討を行ってください」

「了解しました。家畜飼料として、飼料米も有望ですので、そちらも検討してみます」

「確か、飼料米は不味くて食用に適さないものでしたね?」

「家畜は喜んで食べますよ。休耕地を活用し飼料米を作り、無尽蔵に採れるドングリと合わせて使用すれば、我が国の畜産業は維持できるでしょう」

 

 

 里奈が新世界に拉致されてから三か月が経過していた。

 毎日のようにイーブに性的な悪戯を受けていたが、危害は加えられなかった。

 朝昼晩と一日に三回はイーブに抱かれた。イーブは完全な同性愛者であった。

 それ以外は、イーブやプサイからこの国の言語を教えられていた。理由は不明であるが二人は積極的だった。今は簡単な日常用語であれば、会話が可能になっていた。

 セックスの際に、イーブはいつも里奈の肉を食べたいと淫らな笑みを浮かべながら言ってきた。イーブは里奈が快感に悶える姿を見ることが好みのようで、自分への愛撫を強要することは稀であった。

 里奈は膣やアヌスを舐られながらイーブに食い殺される光景を思い描きながら絶頂に達した。

 

 また暇さえあれば、この国の軍隊を描いた映画を見せられた。イーブは熱心に戦艦や戦闘機の名称を里奈に覚えさせた。自衛官である里奈には非常に興味深い内容だった。

 里奈はこの国の軍事力を理解することができた。

 ただし、敵国人と言える里奈に軍事情報を教えることが不思議でならなかった。

 里奈を自国に返す意思が無いことだけは理解できた。

 

 ある時、里奈は家主であり生物学者であるプサイの研究室に呼ばれた。

 そこは地下一階に作られた広さ百畳ほどの部屋であった。

 部屋の壁は書棚となっており、無数の書籍が整然と並べられていた。

 中央には研究机が置かれ、ビーカやフラスコ等の研究器具が並べられていた。

 片面が広さ三十畳ほどのドライエリアになっているので、採光は十分であり、暗い印象は無かった。

 里奈は全裸で一人掛けの椅子に座らされ、プサイから渡されたオレンジジュースのような液体の入ったグラスを渡された。匂いはまさにオレンジの果汁と同じだった。

「これは何ですか?」

 里奈はこの国の言語で尋ねた。

「ただのオレンジジュースだよ。さあ飲みなさい」

 里奈の前に立つプサイは、穏やかな笑みを浮かべながら瞳をじっと見詰めてきた。

 里奈は素直に従った。毒が入っているとは思わなかった。いずれにしろ彼等は里奈の生殺与奪を握っているのだ。

 すぐに耐えられない睡魔に襲われた。

「さあ。これから聞くことに素直で答えなない」

 意識を失った里奈の横で、一人掛けの椅子に腰かけたプサイが穏やかな口調で話しかけていた。

 研究室にはイーブもいて、研究机の上に置かれた巨大なテープレコーダを操作していた。

 プサイが里奈に一枚の白黒写真を見せた。

「この写真に写っている物は何だ?」

 プサイが興奮した面持ちで里奈の顔をじっと見詰めた。

「SUー二七。ロシア製戦闘機です」

 里奈のぼんやりとした視線が写真に注がれていた。薬物による催眠状態でも視力は失われていないようだ。薬物には、自白剤が含まれていたようだ。

「ロシアとは?」

「我が国の西方に位置する軍事大国です」

「そうか。戦闘機の性能を教えてくれ」

「最高速度マッハ二.三。実用上昇限度一万九千メートル。武装は空対空ミサイル、ロケット弾、爆弾等多数……」

里奈は、詳細な説明を続けた。

「お前の国の戦闘機より、性能は優れているのか?」

「格闘能力は同程度だと思いますが、アビオニクスが劣っています。明らかに我が国が保有するFー十五J近代化改修機に劣ります。勝負にならないと思います」

「アビニオクスとは何だ?」

「敵の戦闘機を遠方から察知するセンサーやレーダー等です」

「そうか……」

 プサイは腕組をして、天井を見上げた。

「パパ。その写真はどうしたの?」

 イーブが割り込んできた。

「グリム国が確保したものだ。我が国はそのうちの一機を領土の一部と交換したばかりだ。科学者による分析が始まっている。我が国の技術力を遥かに凌駕しているということだ。それが、里奈の話によると、それをも凌ぐ高性能の戦闘機が存在するらしい」

 グリム国とは、ベード国と同盟国であり、日本の西方、ロシアと同じ場所に位置していた。プサイは里奈の国に言い知れぬ恐怖を感じ始めた。

「今度は里奈の国のことを教えてほしい。軍隊の規模は?能力はどうなっている?」

「戦闘機が三百五十機。護衛艦が五十五隻。戦車が三百両あまり……」

「大した兵力ではないわね。我が軍の規模の十分の一に満たないわ」

 イーブが独り言のように言った。

「戦闘機は、百キロ以上の距離から敵戦闘機にミサイル攻撃が可能。護衛艦も百キロ以上の距離から敵艦隊を攻撃可能。核武装能力はプルトニウム型原爆三千発以上であるが、現在は核武装はしていない」

 オレンジジュースに含まれていた薬物により、里奈は無意識の中で、質問に答えていく。

「何だって!我が軍もミサイルを開発しているが、百キロも遠方の敵機に命中させる技術等、あり得ない。どうやって敵機に誘導しているのだ……それに我が軍戦闘機の機関砲はせいぜい一キロ程度の距離しか攻撃できない。戦艦も百キロの距離での攻撃など不可能だ……到底太刀打ちできない」

 二人は険しい表情で同時に立ち上がった。

「至急、大統領に知らせなければならない。我が艦隊が総攻撃の準備中だ。攻撃を中止させなければ、大変な被害を被ることになる……」

「お父様。情報は聞けたわ。里奈の肉を食べていいでしょう?」

 イーブがナイフを手にして、里奈の盛り上がった乳房を開いている手で鷲掴みにした。「駄目だ。里奈から聞きたい情報はいくらでもあるんだ。代わりに奴隷を何匹でも買っていいよ」

「……わかったわ。我慢する」

 プサイは里奈との会話を録音したテープを取り外し、小走りで研究室を出て行った。

 

 イーブは椅子に座り意識を失ったままの里奈の前に立ち、里奈の乳房を鷲掴みにして、根元にナイフを押し当てた。そのまま暫くの間、里奈の裸身を見下ろしていた。

 口元から垂れ落ちた唾液を手の甲で拭い、大きく首を横に振った。

「貴女の肉は私の物よ。いつか食べてあげるわね」

 イーブは独り言を呟いてから、椅子の前に膝間付き、里奈の股間に顔を入れて下腹部を淫らな音を立てて舐り始めた。

 

 

 その頃、太田二佐は広さ二十畳ほどの地下室でモールス信号器の操作方法を知るために思考錯誤を繰り返していた。地下室は二人の美少女に連れてこられた屋敷にあった。

 異国の美少女達はルナとミラという名前であった。ふたりは一卵性双生児ということだった。

 この三か月間、太田は情報収集のためにこの国の言語を熱心に学んでいた。何とか日常会話が可能なレベルまで達していた。

 モールス信号器はふたりに買わせたものだ。二人は太田の言うことは何でも素直に従った。彼女達の親が、この国ではかなりの資産家であることを教えられていた。

 

 熱心にモールス信号器の操作を行う太田の股間には、ミラが膝間付き男根を舐めていた。  

 彼女達は暇さえあれば太田の男根を舐めたり手で扱いたりして楽しんだ。

 太田の男根は非常に硬くて、最高とのことだった。

 操作方法の習得に目途が付いた時、ドアが勢いよく開けられた。

「隆一。拳銃を買ってきたわよ。あっ。ミラったら一人で何やっているのよ。隆一は二人のものでしょう」 

 回転式の大型拳銃と自動拳銃を両手に持ったルナが、戸口に立っていた。

「御免。ルナ。我慢できなかったのよ」

「仕方が無いわね」

 ルナが拳銃を作業机の上に置いて、ミラとともに隆一の男根を弄り始めた。

 

 太田は二人の美少女を満足させてから、ルナが買ってきた拳銃を手にした。

 回転式拳銃は、六十口径位あった。重量は二キロくらいだ。

 自動式拳銃は、装弾数十発で口径は五十口径ほどだった。

 二人の少女達は簡易ベッドの上で安らかな寝息を立てていた。

 太田は回転式拳銃を片手で構えてみた。ずっしりと重い感じだ。バランスは悪くは無かった。自動拳銃の方も構えてみた。こちらも手にしっくりと馴染んだ感じだ。

 

 隆一はベッドの端に腰かけふたりの寝顔をじっと見詰めた。いつしか太田は二人を愛し始めていた。

 

 二人からこの国の名称はベード国ということを聞いていた。

 さらに彼女達の父親が政財界で一、二の実力者であることを聞かされていた。

 彼女達から太田と父親を会わせたいと聞かされていた。

 彼の裏の顔も聞かされていた。

 影では反政府勢力の最高指揮者であるとのことだった。その組織は、人族を性行奴隷及び食肉としていることに対し大きな不満を持っているとのことだった。

 人族の解放を最終目標としていた。

 現に彼女達は人肉を食することは無かった。肉よりもエビや貝類などの魚類を好んで食していた。

 

 太田は、彼女達の頬に軽くキスしてから、モールス信号器の操作にとり掛かった。

 日本の自衛隊基地に現在状況を伝え、救助要請をすることが目的だった。

 

 時刻は十八時を過ぎていた。

 この世界の太陽活動は活発であり、太陽から大量の放射線が地球上に注がれており、電離層の電波反射強度が高くなっており、短波の適当な周波数を使えば、自衛隊基地との通信も可能と考えた。太田は盗聴を恐れて、自衛隊組織で使用されている暗号で無線を送信した。無線送信を数分で終えてから、二人が眠るベッドに潜り込んだ。

 

 

 翌朝、太田が潜伏する別荘の前に一台の高級車が止まった。

 運転手が出てきて、後部扉を開けた。後部席から黒色の高級スーツを着た痩せ型の中年男が出てきた。髪は金髪で白目の無い瞳は濃いブルーだった。

 男は運転手を残し、一人で別荘のドアを開け中に入った。

 居間では太田と少女二人がパンや野菜それに卵焼き等の朝食をとっていた。

 ドアが開けられる音を聞いて、ルナとミラが立ち上がった。

 居間に入って来た男を認めると満面の笑みを浮かべて抱き付いた。

「パパ!来てくれたの?」

「ああ。この人が太田さんなの?」

「隆一。父のグリフよ。貴方に折り入って話がしたいんだって」

 太田はナプキンで口元を拭きながら立ち上がった。グリフが太田に対し右手を差し出してきた。この世界でも握手の仕方は同じだった。

 太田は、笑顔を浮かべて握手を返した。

 その後、太田はグリフと二人で一階にある応接室に入った。

 二人はテーブルの両側に向き合って座った。ルナがお茶を運んで来て、すぐに出て行った。

「娘達から貴方が命の恩人であることを聞いています。心から感謝します」

「あれは偶然でして……」

 太田は頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「政府関係者から、太田さんの国のことは聞いています。軍事力が我が国より遥かに進んでいるのですよね?」

「どこまで調査したのですか?情報源はまさか……」

「そうです。貴方の想像どおり、里奈さんは生きています」

「どこにいるのですか!」

 太田は立ち上がり、グリフの顔をじっと見詰めた。

「落ち着いて下さい。私は彼女がどこにいるか、今後どうなる運命なのかという情報を持っています。太田さん。私は貴方と取引がしたい」

「取引?」

「……貴方の国と我が国が全面戦争になれば、我が国は滅ばされる可能性がある。娘達の命だけは救って欲しい。娘達は貴方のことを心から愛している」

「私にできる限りのことはします。彼女達を死なせはしません。貴方はどうされるのですか?」

「私はこの国の人間です。裏では反政府組織を運営していますが、この国を愛してもいます。この国と運命を共にするつもりです」

 太田は立ち上がり、グリフに対し握手を求めた。自国を愛する気持ちに変わりは無かった。グリフの実直さが痛いほどに伝わったのだ。

「里奈さんは、西海岸に位置するゲーテ市で、ある学者の家に幽閉されています。時間はあまりありません。彼等は情報を引き出した後で彼女を殺害するつもりです」

「正確な場所を教えてください」

「ここから三百キロ程の距離です。里奈さんが捕らえられている場所の詳細は娘達に伝えておきます。それと、私の部下が救出に向かっています。彩さんという女性も一緒です」 

 

「彩……」

「どういったご関係ですか?」

「この国に一緒に潜入した者です」

「娘達も一緒に連れて行って下さい。三日後にゲーテ市の港にクルーザーを停泊させています。脱出にはそれを使用してください。外洋を航行する性能があります」

 

 

その晩、太田はルナ、ミラの父親であるグリフと四人で夕食をとった。

テーブルの上には、チキンの丸焼きやエビや貝類などの海鮮料理や様々な野菜料理が並んでいた。

グリフは太田と並んで座っていた。

「酒はいける口かね?」

 グリフが、葡萄で作られたワインのような酒を太田のグラスに注ぎ、笑いかけた。

「はい。好きですね」

 太田がグリフの空いたグラスに酒を注いだ。ルナとミラが食事をしながら二人の会話に聞き耳を立てていた。

「君の国、日本とはどういう国なんだ?」

「一言で言うと民主主義国家です。国としての歴史は二千年と言われています」

「平和なのかね?」

「はい。今回の事象が起きるまでは、戦争をせず、平和に暮らしていました。この世界はどうなのですか?」

「大戦の最中だったよ。君の国が存在する場所には、我々の宿敵であるアグナス国が存在し、五年間も戦争を続けていた。我々が勝利寸前というところで君達の国と遭遇してしまったわけだ」

 食事はその後和やかに進んだ。

 ルナとミラが食器の方付けに席を立った。

「君に折り入って頼みがある」

 グリフが先ほどとはうって変わって真剣な眼差しになった。

「何でしょうか?」

「これは二人が三歳の頃の写真だ」

グリフは幼少の頃のルナとミラの白黒写真を見せた。瞳が大きくまるで天使のように愛くるしかった。

「可愛いですね」

「ルナとミラは私の宝だ。自分の命よりも尊い存在なのだよ。私は政府関係者でありながら反政府組織の長でもある。今、政府は私に疑いを抱き始めている。このままでは破滅だ。彼女達を守ってやれなくなる。お願いだ。二人を一緒に連れて行ってくれ」

 グリフはグラスを置いて、太田に深々と頭を下げた。人に物事を頼む方法は、この世界も変わらなかった。

「貴方も一緒に来たらいいでしょう」

「いけたらいいね。しかし私には、二人を安全にこの国から脱出させるという使命がある」

 グリフは席を立ち、キッチンへと向かった。皿洗いをする二人の間に割り込み、一緒に皿を洗い始めた。キッチンから三人の笑い声が聞こえてきた。

 

 

 

 翌日、朝霧の中、太田二佐はルナとミラを伴い、グリフが用意した特殊仕様のキャンピングカーで里奈が捕らえられているゲーテ市に旅立った。

 グリフとは、ゲーテ市の港で落ち合うことになっていた。

 

 この世界でも自然を愛し、自然の中に安らぎを求める習慣があった。キャンピングカーも存在した。全長八メートル程の車体には、簡易トイレやシャワー室さらには小型キッチンやベッドが作られていた。

 穀物や野菜や牛に似た哺乳類の肉や魚介類などの食糧も十分に積まれていた。

 武器は、様々な種類の拳銃や自動小銃さらには、手榴弾も含まれていた。

 太田は、キャンピングカーに自分で取り付けたモールス信号器で、走行中に自衛隊本部に状況報告を行った。

 

 

 

 彩はベード国の東海岸部に位置するベルナム市へと通じる片側四車線の高速道路を改造トラックで進んでいた。

 改造トラックは長さ十メートルで、金属製の荷台は居住エリアに改造されていた。

 後部扉を開けると荷物を満載した木箱が、カモフラージュとして積み重ねられていた。 八畳ほどの広さがある居住エリアの壁一面には、自動小銃や拳銃等の武器が壁のフックに固定されていた。

 簡易トイレやシャワーそれに小型キッチンも装備していた。

 トラックを運転するのは、彩の命を救った人族解放戦線という反体制組織に属する女兵士のグエンだった。グエンは彩の命を救った若い女性兵士であった。

 鍛え上げられた肉体と燃え上がる様な美しい金髪で美貌の持ち主だった。

 人族解放戦線の構成メンバーは竜人族の若い女が多かった。

 グエンはメンバーの中で彩に最も優しかった。食事の世話やこの国の言語を彩に教えた。まるで姉妹に接するような優しさだった。

 

 三か月前、彩は人肉と性交奴隷を格安の価格で提供する店舗を組織が襲撃した際に偶然助けられた。他の人族の女性達は、襲撃時には殺害されていたとのことであった。


 彩は居住エリアのベッドで同じ人族解放戦線の女兵士であるアリムとダナンに抱かれていた。

 彩は兵士達に命を救われた恩を感じ、彼女達に抱かれることを承諾していた。

 しかし、性行奴隷という扱いでは無かった。それは組織の目標に反することになるからだ。気が乗らない場合は拒絶することもできた。

 今、彩は、ベッドの上で仰向けになったアリムの顔に尻を乗せて仰向けになり、アヌスを舐られていた。

 ダナンは彩の股間に顔を押し付け、音を立てて膣を舐っていた。既に数回絶頂に達していた。彩は二人に愛撫されながら、この三か月を振り返っていた。

 彩はこの世界の女はほとんどすべてが、バイセクシャルの性格を持つことを教えられた。

 成人に達する二年前に人族の女奴隷を与えられ、強すぎる性欲を解消しているとのことだった。

 成人式には、その女奴隷を自らの手で殺害し、その肉を喰らうという風習が残っていた。彼女達はその残虐性に耐え切れず、組織に加入することになった。

 竜人族のすべてが、残虐な訳ではなく、彼女達のように心優しい者達もいるということが理解できた。

 彩は三か月間で彼女達からこの世界の言語と歴史を学んでいた。

 この国の住人が異人類であり、伝説では恐竜と人類の混合種であることを伝えられていた。彼女達は自らを竜人族と呼んでいた。

 さらにこの地球には、六千五百五十万年前に恐竜絶滅は起こらなかった教えられた。

 伝説によると竜人族は約二百万年前に生まれたとのことだ。

 彼らの神話によると、当時恐竜の生存不適領域である北方地域に哺乳類から進化した人族が存在しており、恐竜の進化系である竜族と長年に渡り、戦争を繰り返していたとのことであった。

 尚、恐竜が生き延びたのにも関わらず古代の哺乳類が進化し、人族がいかにして生まれたかは、謎のままとのことだった。

 

 竜族はその強力な身体能力により、石器で武装していた人族を凌駕していた。

 竜族は、次ぎ次に版図を広げ、戦争により捕虜にした人族を食糧としていた。

 そのような中で原因は不明であるが、ある日、竜族と人族の混血種が生まれた。

 混血種は竜族の身体能力と人族の知力を併せ持っていた。

 混合種は自らを竜人族と呼び、竜族と人族に対し、戦争を仕掛けた。

 数百年にわたる戦争の後に石器で武装し、身体能力で竜族に引けを取らない竜人族が竜族を滅ぼし、人族を奴隷にした。

 

 竜人族は異常に性欲が強く、同族の女を守るために外見が酷似している人族の女を性交奴隷とした。

 さらに竜族と同様に人族の若い女を食糧とした。人族の女以外にも現存する恐竜や哺乳類の肉も食糧とするが、二十歳前後の女が、脂がのり肉も柔らかく最も美味であるということだった。ベード国では年間数百万人の女達が食肉として消費されているとのことだった。

 性交奴隷兼食肉用として人族の女を確保するために、容貌容姿が美しい人族の男女を交配させるシステムを百万年に渡り維持してきた。

 飼育コストを抑えるために、人族専用の居住エリアを設け、最低のコミュニケーション能力のために竜人族の言語のみは教えていた。

 また食糧は田畑を与え自給自足させていた。人族の食糧は肉質を高めるために米や麦などの穀類や野菜や最低限のタンパク源として魚類を与え厳密に管理していた。

 人族の女は十八歳に達した時点で性交奴隷として売買され、二十代前半までに食肉として、屠殺される運命だった。

 竜人族の社会には、人族の女を売買する施設や屠殺場が各地に建設されていた。

 竜人族は雑食性であり、魚類や麦や野菜や果物も食した。人族解放戦線の構成メンバーは当然ながら人肉は食さなかった。

 

 

 

第十一章 脱出

 ミラが運転するキャンピングカーは、片側四車線の高速道路を時速百キロの速度で、彩が同乗する組織の偽装トラックとの合流地点に向かっていた。

 居住スペースでは、太田が側面や背面の窓から周囲の様子を監視していた。ルナが床に膝間付いて太田に口腔性交を行っていた。それが日課なので太田は気にしなくなっていた。

 不意に太田はルナの頭部を股間から引き離した。

「何よ!気持ちよくないの!」

 ルナが非難を込めた目で太田を見上げた。

「背後から怪しい車両が近付いてくる」

 太田が、後方三十メートルを走行するトラックを指差した。ルナが立ち上がってその車両を見詰めた。

 運転手は若い女のようであり、荷台に巨大な体躯を持ち、顔面に醜くい火傷の痕がある男が座っていた。荷台に座っているにも関わらず、腰から上の部分が二メートル以上はあった。

「来るぞ!」

 背後のトラックが急加速してきた。衝撃音がしてトラックがキャンピングカーに激突した。二台は繋がったまま、高速道路を走り続けた。

 キャンピングカーの屋根が内側に経込んだ。トラックの荷台にいた大男が、飛び乗ってきたのだ。大男は雄たけびを上げながら、キャンピングカーの屋根に拳を叩き付けた。

 屋根が裂け、大男の醜い顔が見えた。

 太田は、回転式の大型拳銃を向けて引き金を絞った。大男は直前に身を仰け反らせ銃弾を躱した。太田は屋根に向かって連射した。大男はたまらず元の荷台に飛び乗った。

 何箇所か被弾したようで、手足から出血していた。

 ミラがトラックを引き剥がすためにキャンピングカーを大きく蛇行させた。トラックが引き離され、キャンピングカーが急加速した。

 再びトラックが加速し、追突しようとした時、ルナが大型のショットガンの銃身で後部ガラスを叩き割り、トラックの運転席に向けて発砲した。

 運転していた若い女が、直前に身を隠した。全面ガラスが粉砕し、トラックは蛇行を始め、路肩から飛び出し、巨木に激突し停止した。エンジンに着火し、爆発炎上する寸前、近くに投げ出され倒れていた大男が、立ち上がり運転席の女を引っ張り出して、近くに流れていた川に飛び込んだ。

 キャンピングカーはそのまま走り続けた。

「奴らは何者なんだ?」

 太田は背後で黒煙を上げるトラックの残骸をじっと見詰めていた。ルナもミラも攻撃者の正体を知らなかった。

 言い知れぬ不安を感じながらも、里奈を救出するという作戦を続行するしかなかった。 

 

 数時間後、太田達が乗るキャンピングカーは、彩が同乗する組織の偽装トラックが待機する駐車エリアに到着した。

 キャンピングカーは偽装トラックに横付けした。キャンピングカーの扉が開き、ミラとルナ、最後にサングラスをかけた太田が車外に降り立った。

 太田は一瞬、サングラス越しに強烈な陽光を見上げた。それから、偽装トラックの後部扉から内部に乗り込んだ。

 突然、太田にライフル銃の銃身が突き付けられた。迷彩服を着た若い女二人が太田の様子を伺っていた。

「太田二佐!私です!」

 二人の女達をかき分けるようにして、迷彩服姿の彩が太田の首に抱き付いてきた。

「本当に二尉なのだね?無事で良かった」

 太田は彩の背中を強く抱きしめた。背後ではルナとミラが悲しそうな視線を二人に向けていた。

「そうだ。本庄二尉。君に紹介したい女性がいるんだ」

 太田は振り返り、ルナとミラを手招きした。ふたりはぎこちない足取りで彩の前に立った。明るい性格のふたりの顔には困惑の色が浮かんでいた。

「こちらはルナとミラ。二人は姉妹なんだ。不時着した時に知り合ったんだが、お蔭で二尉と再び出会うことができた」

「初めまして。彩です。太田二佐の部下です」

 彩は二人に笑顔を向け、右手を差し出した。

「部下?彼氏ではないの?」

 ルナが彩が差し出した右手を握った。二人の顔に笑顔が戻った。

 その後、偽装トラック内で太田と彩それに反体制組織のメンバーと里奈救出のための作戦を練り上げた。

 里奈を幽閉してるのは軍隊ではなく、この国の化学者の中で最高権威がある男という情報は得ていた。

 相手が軍隊でなければ、武装した太田達にとり、救出は困難なことでは無かった。

 また、打ち合わせの中で、太田は若い女と巨人の襲撃者について、組織のメンバーに質問した。彼女達の回答では、若い女と巨人の組み合わせから、秘密警察の幹部ではないかとのことだった。何故、幹部自らが出てきたかは、謎であるとのことだった。

 あるいは、ルナとミラの父親であり、反政府組織の長であるグリフは、秘密警察にマークされているかも知れなかった。

 

 

 その頃、太田達が乗る偽装トラックから数十メートル離れた地点に大型トラックが停車した。トラックの運転席には、頭部に包帯を巻いた若い女が乗っていた。数時間前に太田達が乗るキャンピングカーを襲撃した女だった。頭部の傷が痛むのか、不機嫌な表情だった。

 女は、運転席から偽装トラックの方をじっと見詰めていた。助手席には、銃身を切り詰めた大口径の散弾銃が置かれていた。

 荷台には、もう一人の襲撃者である大男が、乗っていた。大男も二の腕や太腿に包帯を巻いていた。大男の近くには、無残に引き裂かれた若い白人女性の遺体が転がっていた。 大男は、片手に持った女の太腿に食らい付き肉を貪っていた。

 

 

 その頃、ゲーテ市内にある里奈が幽閉されている屋敷の一室では、イーブが張形で四つん這いにさせた里奈を背後から犯していた。

 朝から三時間ほどの間、イーブは里奈を手や舌や張形を使用して犯し続けた。里奈は何度も絶頂に導かれ、消耗のあまり眠りに落ちようとしていた。

 イーブはぐったりとした里奈を仰向けにさせて、頬を数回殴りつけた。いつになく乱暴なふるまいだった。

「起きるんだよ。里奈!」

「……」

 里奈は虚ろな視線をイーブに向けた。イーブの激しい責めで下半身に力が入らない。

「いいかい。よく聞くんだ。政府からお前の殺害許可が下りたんだ」

「殺害?」

 里奈の表情から血の色が一気に引いた。昨日までのイーブとは別人のようだった。

「そうさ。この私がお前を殺して、この美味しそうな肉を食べるんだよ。明日にはお前は肉になるんだ」

 里奈の盛り上がった乳房を鷲掴みにした。

「……」

「何て美味しそうな身体なんだろうね。ずっと我慢してきたんだ。美味しい果物だけで育てたから、肉質も最上級だよ」

 口元から一滴の唾液が零れ落ちた。イーブの白目がない瞳が妖しく輝いていた。

 里奈は言い知れぬ恐怖を感じた。いつかはこの日が来るものと恐れていた。

 こんなところで死にたくは無かった。生きて日本に帰りたかった。両親や兄弟の顔が一瞬、脳裏を過った。毎日のようにイーブに犯され、性行奴隷に落とされ、自衛官という意識は無くなっていた。

 不意にうつ伏せにひっくり返された。両太腿を掴まれ、尻の割れ目に顔を押し込まれた。

 激しい勢いでアヌスを舐られた。

「こ……殺さないで下さい。何でも言うことを聞きますから……」

「お前は、ただの食肉なんだよ。何でも言うことをきくだって?いったい、何をしてくれるというんだい」

 イーブは美しい顔を欲情に歪ませた。

 里奈は、イーブが嬲りやすいように尻の割れ目を両手で広げた。

「お許しください。イーブ様。命だけは奪わないでください……」

「いい眺めだね。お前の肛門は本当にきれいだよ。味も最高だね」

 長い舌がアヌスに差し込まれた。それだけで逝きそうだった。里奈は尻の割れ目をイーブの顔に擦り付け、鋭い喘ぎ声をあげた。死の恐怖に怯えながら背筋を仰け反らせるようにして果てた。

「誰が逝っていいと言ったんだい!」

 里奈は仰向けにされ、下腹部を鷲掴みにされた。

「す……済みません。お許しください!」

 里奈は黒髪を鷲掴みにされて、立たされた。頬を平手打ちにされた。イーブが本来の凶暴な性格をあらわしていた。

 里奈はイーブの前に膝間付かされた。里奈の顔に張形が擦りつけられた。

「舐めるんだよ!」

 里奈は突き出された張形を可愛い口で呑み込んだ。眉間に可愛い皺を寄せながら懸命に舌を使った。

 イーブは腰を前後に動かし、里奈の口を犯した。喉を激しく突かれ、里奈は窒息のために涙を流し大きく喘いだ。それでもイーブは止めなかった。里奈は苦しさのあまり失禁した。

 イーブは張形を抜いて、里奈をベッドの上に押し倒した。荒々しい手付きで、息も絶え絶えな里奈の太腿を押し広げ、尿で汚れた膣を舌で舐め回した。

 むっちりとした長い太腿を押し広げ、一気に張形を膣に突き込んだ。欲望に歪み切った顔で里奈の乳房を舐りながら激しく腰を動かした。容赦の無い嬲りであった。

 里奈は両手で顔を覆い、咽び泣いていた。

 

 

 翌朝、里奈はイーブにより、激しい凌辱を受け、トイレで大量の浣腸を施された。

便器に排泄させられ、その後大浴場で全身を洗い清められた。

里奈は全裸のまま、イーブにより広さ二百坪ほどもある中庭に担ぎ込まれた。

長さ二十メートル程のプールには、透明な水がたたえられていた。プールサイドには、炭がくべられた巨大なコンロが据えられ、近くには、長さ二メートルほどの俎板が白い木製テーブルの上に置かれていた。俎板の上には肉切り包丁や斧それに鋸が載せられていた。イーブが里奈を立たせ、手を引いて歩き始めた。里奈の視線が俎板の上に載せられた肉切り包丁に注がれていた。里奈は改めて今日が最後であると感じた。

ここで切り裂かれ、肉をイーブに貪り食われるのだ。

こんな場所で死にたくは無かった。日本に残してきた家族のことが脳裏を過った。白く剥き卵のような尻が震え戦いた。

 近くのテーブルには、様々な野菜が皿に盛り付けられ、イーブの父親であるプサイが椅子に腰かけ雑誌を読んでいた。

全裸姿の里奈がイーブに手を引かれ、目の前を通り過ぎようとしたとき、雑誌に目を通しながら、裸の尻を触った。

「パパはどこを食べたい?」

「そうだな。脂がのった尻肉のステーキがいいな」

そう言う間も雑誌から目を逸らさなかった。

「いいわ。レアにする?」

「ああ。頼むよ」

 プサイは雑誌をテーブルの上に置いて、里奈を手招いた。イーブが里奈の手を引いて、プサイの前に立たせた。

「お前には色々と世話になったな」

 プサイは里奈の尻を両手で引き寄せ、膣に口を付け音を立てて舐った。里奈の盛り上がった白い尻がブルブルと震え戦いていた。長い舌が体内に侵入してきた。

 里奈は死の淵にありながら、プサイの舌技に快感を感じ始めていた。尻が淫らに動き始めた。

 反対向きにされ、今度は尻の割れ目に顔を入れられた。アヌスに長い舌を入れてきた。同時に指先でクリトリスを弄られた。

「嫌!」

 里奈の鋭い喘ぎ声が中庭に響き渡った。

 イーブが腕組をして近くに立ち、淫らな視線を向けていた。我慢できなくなったのか、里奈の前で片膝をついて、膣を舐め始めた。

 ふたりによる死を前提とした嬲りが暫く続いた。最後に里奈は鋭い喘ぎ声を上げ、イーブの肩に突っ伏した。

 ぐったりとして、意識が朦朧とする里奈は、俎板の上に横たえられた。イーブが肉切り包丁を首筋に当ててきた。

「美味しく料理してやるわね」

里奈は静かに目を閉じた。

 

 その時、中庭の入り口付近で喧騒が起きた。使用人の女達が、中庭に進入しようとする大男を止めようとしていた。大男は片手を緩慢に動かした。使用人の女達が吹き飛び地面に倒れた。

「プサイ博士。貴方に逮捕状が出ています」

 大男の背後から、若い女が歩み出てきた。大男と女は太田達を襲った襲撃者だった。

「これは、これは。リンネ長官。貴女自ら出動ですか?で、何の罪ですか?」

 プサイはゆっくりと立ち上がった。

「国家機密の抹消罪です」

 リンネ長官と呼ばれた若い女が、調理台に横たわる里奈の裸身を指差した。

「大統領の許可は得ています。何の問題もない」

 プサイは穏やかな笑みを浮かべた。

「議会が承認していません。大統領命令は無効となります」

 リンネはゆっくりと里奈の方に歩き出した。イーブが肉切り包丁の柄を握り締め、リンネを睨み付けた。

「あら、イーブ。久しぶりね。その包丁で私を刺すつもり?公務執行妨害で貴女も逮捕されたいの?」

 イーブとリンネは大学時代の同級生だった。リンネはイーブから包丁を取り上げ、腰に手を回した。

「貴女。相変わらず可愛いわね」

 リンネが、無表情なイーブの耳元で囁くように呟き、耳たぶを舐めた。

「止めてよ!」

 イーブがリンネを両手で突き飛ばした。リンネは衝撃で床に倒れた。近くで見ていた大男がリンネに掴みかかろうとした。

「いいのよ。ゴア。貴方は博士を見ていて」

 リンネはゆっくりと立ち上がった。

「公務執行妨害で、貴女を処罰しなくちゃね」

「……」

 震え戦く、イーブの腹部に包丁を根本まで突き刺した。包丁の先端が背中から飛び出した。イーブは驚きの表情を浮かべ、腹部に突き刺さった包丁の柄を握り締めながら、床に倒れ伏した。

「イーブ!何てことを……」

 イーブの元に走り出そうとしたプサイの胴体がゴアに掴みあげられた。ゴアの片手がプサイの頭部に掛けられ、一気に捻った。骨が砕ける音がして、プサイの全身が一瞬、大きく震えすぐに動かなくなった。

 ゴアは、プサイの胴体を中庭の芝生に放り投げた。

 その時、イーブも出血多量によるショックを起こし絶命した。

 リンネは何事も無かったような顔をして、里奈の下半身に顔を近付けた。

 里奈は何が起きたかを理解できなかった。ただ、自分を殺そうとしたイーブとプサイが殺害されたことは分かった。

 さらにリンネという女とゴアという醜い大男のことを思い出していた。

 この屋敷に連れて来られる前に、グラビアアイドル達と一緒に竜人達に品定めをされた場所で、目撃していた。大男に生きたまま喰われそうになったことを思い出した。

 味方であるとは考えられなかった。

 

 リンネの舌が膣の周りを這い回っていた。うつ伏せにされ、アヌスを舐られた。

 リンネの舌技は絶妙だった。死を前提とした愛撫であるのに身体は反応していた。低い喘ぎ声をあげながらリンネの顔に尻の割れ目を擦りつけた。

 

 その時、里奈はゴアが中庭から屋敷に入るのを見た。ゴアは両手に二人の若く美しい白人女性の足首を持ち逆さ摺りにして運んできた。二人は性交奴隷兼食肉として飼われていた人族の女達だった。全裸姿の二人は恐怖のあまり泣き叫んでいた。

 ゴアはプールサイドの地面に直に座り、ひとりを脹脛で押えつけ、もうひとりの両足を両手に持ち一気に引き裂いた。引き裂かれた胴体の断面から血しぶきが吹き出し、女の絶叫が一瞬で途絶えた。

 ゴアは絶命した女の太腿に喰らい付き鋭い牙で肉を引き裂き、生のまま食べ始めた。

 太腿肉を食べつくし、大腿骨を噛み砕き髄液を啜っていた。次に尻肉に齧り付き柔肉を貪った。内臓も残さず平らげた。あっという間にひとりの女を食べ尽くした。

 それでも満腹感は得られなく、脹脛で押えていた女を抱え上げ、盛り上がった片乳房を口に含み一気に噛み取った。女の断末魔が中庭に響き渡った。残る片乳房も噛み千切り呑み込んだ。

 意識を失った女を逆さ吊りにして盛り上がった尻に噛み付いた。悪鬼のような形相で柔肉を掻き切った。

 

 一方、リンネは里奈のアヌスを舐りながらクリトリスを指先で弄っていた。

 里奈は忘我の域を漂っていた。最後にはマングリ返しの体制で泣き叫びながら絶頂に達し、意識を失った。

その時、若い女の絶叫がが聞こえてきた。中庭の入り口に屋敷の使用人と思われる若い女が、プサイとイーブの死体を交互に見詰め、泣き叫んでいた。

「屋敷にいる者はすべて始末しなさい」

 リンネは、里奈の尻の割れ目から愛液に塗れた顔を上げた。楽しみを奪われた怒りの表情で使用人の女を見た。

 食事を終えたゴアが無言で立ち上がり、怒涛のような走りで使用人に走り寄った。

 恐怖の余り腰が抜けて動けないでいる使用人の頭部を右手で払った。

 血しぶきが上がり、首から上が吹き飛んだ。

 ゴアはそのまま、屋敷内に進入した。続いて、複数の男女の断末魔が屋敷内から聞こえてきた。

 リンネは何事も無かったような表情で尻の割れ目に顔を押し付け、アヌスを舐り始めた。

 すぐに、頭部に硬い物が押し付けられるのを感じた。

「久しぶりね。リンネ長官」

「お前はグ…グエンなの……」

「そうよ。お前に姉を殺されたグ・エ・ンよ」

 グエンはサイレンサー付き自動拳の銃口をリンネの唇に押し付けた。リンネの赤毛を片手で鷲掴みにして立たせた。

 グエンがリンネの乳房に銃口を押し付けながら、両手に手錠を嵌めた。太田がリンネの背後に周り、腰のフォルスターから自動拳銃を奪った。

「お前は……。人族の男……」

 リンネは太田を見て驚きの表情を浮かべた。

「庭にいた警察は皆、始末したわ」

 サイレンサー付ライフル銃を持ったダナンが中庭の入り口から入って来た。

「大男も殺ったの?」

グエンが背後からリンネの首を絞めながら訪ねた。リンネが苦しそうな息をしていた。

「そいつは見なかったわ。あら、悪名高いリンネ長官じゃない。ここで殺すの?」

「簡単には殺さないわ。人質として連れて行く。脱出できたら拷問して殺すつもりよ」

「いいオッパイしているじゃない」

 ダナンがリンネのシャツを引き裂いた。豊かな白い乳房が零れた。

「本庄……二尉……」

 太田は調理台の上で失神している里奈の頬を軽く叩いた。

「……貴方は誰ですか?」

里奈は茫然とした表情で太田の顔を見た。日本語を聞くのは久しぶりだった。自分と同じ目をしていた。太田は着ていたジャンパーで里奈の上半身を覆った。

「俺は航空自衛隊所属の太田二佐だ。君を助けに来たんだよ。彩君も一緒だ」

「彩も来ているのですか?」

 里奈は驚きの表情を浮かべながら、調理台の上に起き上った。

「歩けるか?」

「大丈夫です」

 その時、ダナンが里奈を軽々と抱き上げた。

「こっちの方が断然早いわ」

「そうね。アタイはリンネを運ぶわ。太田は援護して」

 

 グエンがリンネの腹部を拳で強打した。意識を失ったリンネを軽々と肩に担ぎ上げた。 その時、中庭の扉が内側に弾け飛んだ。大男のゴアが仁王立ちになっていた。

 太田が九ミリ自動拳銃を向けると、怒涛のように突進してきた。

 連射音がして、ゴアの金属製の胸当てに火花が散った。二の腕や足にも数発被弾した。 グエンやダナンもサイレンサー付き拳銃を連射した。

 ゴアは顔を苦痛に歪め、九十度方向転換して、プールに飛び込んだ。

 太田もプールに走った。水深五メートルの底にゴアが張り付いているのが見えた。

 九ミリ自動拳銃をゴアに向けて連射したが、水深五メートルには届かなかった。

 太田は手榴弾の安全ピンを抜いて、プールに投げ込んだ。

「行くわよ」

 失神したリンネを肩に担いだグエンが、中庭の入り口に向かって走り始めた。

 太田とダナンも走り出した。

 

 

 一方プールの底では、ゴアの目の前に手榴弾が落ちてきた。ゴアは白めの無い黒目だけの目を大きく見開き、大量の空気を吐きながら、プールの底を蹴った。

 水面に到達寸前に爆発した。衝撃でゴアの巨体がプールから飛び出し、プールサイドに仰向けの姿勢で叩き付けられ意識を失った。

 数分後、ゴアは息を吹き返した。全身に傷を負いながら何とか立ち上がり、太田達の後を追った。

 プサイの屋敷前に停車していた太田達が乗ってきた偽装トラックが停車していた。

 偽装オラックの後部扉には、警察庁長官のリンネが両手両足を紐に縛り付けられ張り付けられていた。

 ゴアが正門から飛び出してきた。間一髪で偽装トラックがタイヤを軋らせながら発進した。ゴアは全身に傷を負いながら、偽装トラックに追走した。

 

 数キロ以上追いすがったが体力が限界に達し、ゴアは立ち止まった。偽装トラックの後部に縛り付けられたリンネの姿を凝視し、雄叫びを上げた。

 偽装トラックは時速七十キロで市街地を爆走していた。信号もすべて無視した。

 前面部を強化した偽装トラックは、信号で飛び出してきた乗用車を跳ね飛ばしていく。 市内を数ブロックを進んだところで、背後から警察車両数十台が爆走してきた。

 偽装トラックの後部にリンネ長官が縛り付けられているため、発砲はして来なかった。 

 

「パーティを始めるわよ!」

 助手席に座っていたグエンが満面の笑みを浮かべながら、ダッシュボードにあるボタンのひとつを押した。

 偽装トラックの床下に取り付けられたタンクから軽油が噴出した。

 後方を走る警察車両のタイヤが、軽油でスリップし蛇行を始め、車両同士で接触し、数台がスピンして周囲の電信柱や街路樹に激突し炎上した。

 十数台の警察車両が、爆発炎上し市内は戦場さながらの様相を呈した。

 ダナンが運転する偽装トラックは、タイヤを軋らせ、対向車を吹き飛ばしながら、港に向けてメインストリートを右折した。

 再び先ほどとは別動隊の警察車両数十台が後方に迫ってきた。

 速度に勝る警察車両は、急速に間隔を詰めてきた。

 ダナンがダッシュボードにある先ほどと別のボタンを押し、窓から上半身を出して、後方の警察車両に向かって、中指を突き出た。

 太田が教えた屈辱のポーズだった。

 偽装トラックの床下に固定されていた一トン爆弾が、路面に落下し転がった。

 警察車両の運転手が一斉に急ブレーキを踏んだが間に合わなかった。長さ五メートルはある一トン爆弾が転がりながら、警察車両の中央に到達し爆発した。

 警察車両が粉々に粉砕された。衝撃で近くにあった五階建てのビルが倒壊した。

 太田達が乗る偽装トラックはゲーテ市の港湾地域に向かって、市内を爆走した。

 その後、警察車両による追跡は無かった。

 二十分程で、広大な面積を有する港湾地帯に到着した。

 無数の蒸気式船舶が停泊していた。その中に数隻の軍艦も見えた。偽装トラックはルナトミラの父親であり、反政府組織のリーダであるグリフに指示された場所に到着した。

 近くの船着き場には二隻のクルーザが停泊していた。

 

 グリフの姿を認め、ルナとミラが走り寄った。

「パパ!」

 二人はグリフに抱き付いた。緊張の糸が解けたのか二人は笑みを浮かべながらも、涙を浮かべ、グリフを強く抱きしめた。

「無事で何よりだよ。お前たちの顔を見れてパパは幸せだ」

「グリフさん。こちらは里奈です」

 太田が里奈をグリフに紹介した。

「美しい方ですね。彩さんに瓜二つだ」

 グリフが里奈に握手を求めた。

「太田から聞きました。ご協力感謝いたします」

 里奈はグリフに満面の笑みを見せた。

 

 その時、彼等から数百メートルのところに数十台の警察車両が爆走してくるのが見えた。

「時間が無い。太田さん。娘達を頼む」

「貴方はどうするのですか?」

「奴らを足止めする。グエン。君は太田さんと一緒に娘達を守ってくれ」

「パパも一緒に来てよ!」

 ルナとミラが目に涙を浮かべながらグリフに抱き付いた。グリフは一瞬娘達の髪に顔を埋め目を閉じた。

「行きなさい。パパは大丈夫だよ。奴らを撃退したら、すぐ後を追うから」

「本当?本当なのね」

「当たり前だろう。お前達は私の宝物だ。いつまでも一緒にいるよ」

 太田はグリフに促され、ルナとミラの手を引いて、グエンの後に続いた。

 リンネは人質として連れて行くことにした。

 太田達は、大型のクルーザーに乗船した。グエンが操船し、船着き場から離れた。ルナとミラが、船上からグリフの姿を見守っていた。

 

 敵が百メートルまで迫ってきていた。

 グリフは娘達に手を振ってから、もう一艘の小型クルーザーに乗り込んだ。船上で何かを覆っていた布製のシートを剥がした。

 五十口径の重機関銃が現れた。グリフは、不敵な笑みを浮かべながら、向かって来る銃口を警察車両に向けた。重低音の射撃音が響き渡り、先頭車両に着弾した。

 その車両は数十メートルを蛇行し、横方向に回転し横転した。後方車両が巻き込まれ、大音響とともにクラッシュした。

 数十台の警察車両が、火の海の中で燃料に着火し爆発炎上した。

燃え上がる炎の中から巨大な装甲車両が一台現れた。炎が噴き出す警察車両を引き潰しながら進んでくる。装甲車の上部に固定された重機関銃が火を噴いた。

クルーザーの船体を貫いていく。一発がグリフが操作する重機関銃の機関部に被弾した。衝撃でグリフは後方に吹き飛ばされた。

その頃、太田達が乗る大型クルーザーは沖合数百メートルに達していた。

ルナとミラが甲板に寄り添うように佇み、グリフが乗るクルーザを見詰めていた。

太田と彩は、港に停泊している軍艦一隻の様子を伺っていた。

 

「動き出すわ!」

 

 彩が叫ぶと同時にグエンが舵を操作し、ダナンが甲板に設置され、シートに覆われた機材に走った。軍艦が港を離れ、巨大な砲塔がゆっくりとこちらに向けて回転を始めた。

 

「太田!手伝って!」

ダナンが叫びながら、シートを引き剥がそうとしていた。太田が一緒にシートを引き剥がした。シートに覆われた機材は短魚雷三発だった。

ダナンが慌ただしい手付きで、魚雷を戦艦に向けて発射レバーを引いた。

 

短魚雷が甲板から発射され、海面に一筋の筋を描いて軍艦に向けて疾走していく。

 

敵戦艦は、魚雷攻撃を察知したのか、大きく舵を取り、旋回を始めた。敵戦艦までの距離は数百メートルあり躱される可能性があった。

太田が、ダナンの肩を掴んだ。

 

「何?」

 

「代わってくれ」

 

太田は、ダナンに代わり、残る魚雷の向きを変更し、発射レバーを引いた。さらに進路を変更し最後の魚雷を発射した。敵戦艦の動きを予想して魚雷を発射したのだった。

少しづつ進路が異なる三発の魚雷は、敵戦艦方向に向かって、疾走していく。

 

「グレン。着弾に備えろ。面舵一杯だ!」

太田の指示に従いクルーザーを転回させたとき、敵戦艦の艦載砲が火を噴いた。クルーザーから十メートルの海面に着弾して、大きな水柱が上がった。甲板上が大量の水しぶきを受けて、水浸しになった。

 

敵戦艦の方向から、爆音が聞こえてきた。魚雷の一発が命中していた。威力は絶大で、側面の中央が大きく裂けていた。ゆっくりと海中に没していくのが見えた。

 

攻撃の最中でもルナとミラは甲板の縁に立ち、グリフの乗るクルーザーを見詰めていた。周囲に海霧が立ち込め始めた。

グリフは一瞬意識を失っていた。左胸部に裂傷ができて激しく出血していた。傷口を手で押えながら、何とか立ち上がった。激痛のために意識が再び遠のきかけた。歯を食いしばり、激痛に耐えた。

 

クルーザから数十メートルの地点に停車した大型装甲車の後部扉から、ゴアが飛び出してきた。グリフを睨み付けながらゆっくりと大股で歩いてくる。

ゴアの背後から、爆発炎上を逃れた数十台の警察車両がサイレンを鳴らしながら近付いて来た。

 

グリフは、よろめきながら船室に入り、鋼鉄製のドアをロックした。

 

その時、小型クルーザーが大きく揺れた。ゴアが飛び乗って来たのだ。続いて大勢の武装警官達がクルーザーの甲板に進入してきた。

 

グリフは、船室の奥にある一人掛けの椅子に座った。

左胸の傷から出血は止まっていなかった。寒さと眠気が同時に襲ってきた。

ズボンのポケットからルナとミラが写っている写真を取り出した。

写真を見詰め、指先で二人の顔の部分をなぞった。

それから近くにある机の引き出しから、ひとつのスイッチが付いた金属製の小箱を取り出した。

その時、鋼鉄製のドアを打ち叩く音が聞こえてきた。けたたましい破壊音が聞こえ、大勢の足音が聞こえてきた。

 

ゴアが天井に頭部があたらないように前屈みの姿勢でゆっくりと船室に入ってきた。背後には、数十人の武装警官を伴っていた。

 

「令状は持ってきたのか?」

 

 グリフは椅子に腰かけたまま、落ち着いた口調で言った。

 

「現行犯だ。裏切者はこの俺が処刑する」

 

 ゴアが不気味な笑みを浮かべながら、グリフを見下ろしていた。

 

「これが何かわかるか?」

 

 先ほどのスイッチがついた小箱を見せつけた。

 

 ゴアと武装警官達の間に、衝撃が走った。誰もがその場に凍り付いた。

 

 グリフは、ゴアのハンマーのような巨大な手が降り下ろされるのを見ながらスイッチを押した。

 

 閃光が走り抜け、クルーザーに仕掛けられていた大量の爆薬が爆発した。船体は粉々に砕け散った。

 

「パパ!」

 

 沖合でグリフの無事を祈っていたルナとミラが絶叫を上げた。グリフが乗るクルーザーが爆発し、粉々に粉砕する様子を目撃したのだ。

二人は、手摺を越え海に飛び込もうとした。太田とダナンが彼女達を背後から必死に押えつけた。

太田達が乗るウルーザーは深い海霧の中、コンパスを頼りに太平洋を西に向かって進んでいた。

ルナとミラが泣きはらした顔で、故郷であるベード国の方角を向いて、何かの歌を歌い始めた。それは、聞いたこともない悲しい旋律だった。

彼女達の歌を聴く太田も彩も里奈も涙を抑えることができなかった。

悲しく甘美な歌声が魂を揺さぶった。

 

 

第十二章 総力戦

 Fー十五J近代化改修機七十機と早期警戒管制機Eー七六七 一機が、南太平洋に向けて飛行を続けていた。編隊から数十キロ後続には、空中給油機二機が続いていた。

 

 Eー七六七は、一時間前から日本に向かってくる数百機の敵飛行編隊を補足していた。 

 

 Eー七六七に先行するFー十五Jのディスプレイには、データリンク機能により敵編隊の機数から速度、進路方向等の情報が表示されていた。

 

 敵機数百機は、時速五百キロの速度で真っすぐ向かってくる。距離は約五十キロだ。

 

 敵機の空対空攻撃兵器が射程一キロ程度の重機関銃であることはわかっていた。

 

 Eー七六七は、敵機の射程外から中距離空対空ミサイルのAAMー四Bにより攻撃を加えるように僚機に指示を出していた。敵機から距離三十キロまで接近し、Fー十五Jが一斉にAAM四Bを発射した。

 数十秒後、AAMー四Bが敵編隊に襲い掛かった。AAMー四Bの命中精度は高く、次々と命中していく。


 胴体が真っ二つになったり、翼が吹き飛ばされ火炎に包まれながら、太平洋に墜落した。

 

 威力も凄まじく、爆発時、敵機の機体が近接している場合、数機が爆風で破損し、墜落した。

 

 敵編隊のほとんどが、AAMー四Bにより撃墜された。脱出行動に移った敵機に対し、Fー十五Jの先頭部隊が追跡し、距離十キロから短距離空対空ミサイルAAMー五により攻撃を加えた。

 

 戦闘は、空自の圧勝であっけなく終了した。近代装備の前に数百機の敵機は一発の銃弾を発射することもなく撃墜された。

 

 敵機が全滅してすぐにFー二支援戦闘機三十機が、空対艦ミサイルの九三式空対艦誘導弾(B)ASMー二B 四発を装備し、敵機の母艦である空母軍を目指して、マッハ〇.九で飛翔していく。Fー十五J編隊のうち三十機が、Fー二支援戦闘機の護衛役として付き従った。

 

 

 十分後、Fー二支援戦闘機編隊のASEAレーダーは、南太平洋上を西進する敵艦隊を捉えていた。空母十隻に戦艦や巡洋艦が五十隻の大艦隊であった。

 

 通常であれば、敵レーダーを警戒し海面すれすれの高度に移るのであるが敵艦隊は、高性能レーダーや艦隊空迎撃システムを持たないことを確認済であるので、通常の飛行高度を保っていた。


 Fー二支援戦闘機群から、各機が装備するASMー二B 四発が次々と発射されていく。

 

 レーダーには敵艦隊に向けて一直線に突進していくASMー二B群のエコーが映し出されていた。

 

 全弾を発射したFー二支援戦闘機群は戦線離脱飛行に移った。日本本国を目指して、帰還飛行を開始した。

 

 その頃、ASMー二B 百二十発が敵艦隊に襲い掛かっていた。小型の軍艦は一発で大破して、次々と海中に没していく。戦艦も数発のASMー二B受けて、甲板上の構造物は大破炎上していた。

 

 敵空母もそれぞれが数発のASMー二B受けて戦闘不能の状態に陥っていた。

 

 敵艦隊は全滅の危機に瀕していた。無傷の艦船は皆無であった。

 

 海上には無数のゴムボートが漂っていた。周囲には大勢の敵兵がゴムボートにしがみ付いていた。

 

 

 南太平洋での竜人族との総力戦の最中に、総攻撃北海道積丹岬から北西二百キロの海域をパトロール中のPー一対潜哨戒機が、本州方面に向けて進行中の敵艦隊を発見した。

 

 戦艦五隻、巡洋艦十隻、駆逐艦五隻の艦隊が、黒煙を濛々と上げながら、時速二十ノットで眼下を進んでいくのが見えた。


 Pー一対潜哨戒機は、海上自衛隊本部に無線連絡を行ったが、ほとんどの艦船と攻撃機は南太平洋や東シナ海の交戦海域に出払っており、敵艦隊を迎撃する部隊の編成が困難であることがわかった。

 

しかし、同海域には海上自衛隊所属の最新鋭潜水艦黒龍が潜航中であることが、本部との無線連絡で明らかになった。

 

 黒龍二番艦は、二千二十二年に実戦配備されたばかりのそうりゅう型の新造艦であった。動力にはAIPを廃止し、リチウムイオン電池のみを使用しており、日本の潜水艦基地で充電し、一か月以上の連続潜航が可能であった。さらに水中を二十ノットの高速度で連続航行も可能であった。

 

 武装は、最大水深九百メートルにおいても稼働可能な八九式魚雷を多数装備していた。 

 他に潜対艦ミサイル、ハープーンブロック二を搭載していた。

 

 黒龍二番艦は敵艦隊の前方五キロの地点で潜望鏡のみ海面上に突き出し、目視と対水上捜索用ZPS-六Fレーダーにより、敵艦隊の戦力を確認していた。

 

「水深六百メートルまで急速潜航開始!」

 

 艦内に艦長の指令が伝達されていく。黒龍は速度を上げながら、水深六百メートルまで一気に潜航した。ZQQー七ソナーが、六百メートル上方の海面を進む敵艦隊を捉えていた。

 

 指令所では空調が効いていたが、艦長以下の隊員全員が額に汗を滲ませていた。

 

「敵艦隊に向けて魚雷を発射せよ!」

 

 艦長の指令が重苦しい沈黙の時間を破った。

 

「一番から六番までの全魚雷発射用意……発射!」

 

 掌水雷長の緊張に満ちた声が指令所内に響いた。

 

 低い擦過音が聞こえた。六発の八九式魚雷が敵艦に向けて一斉に発射された。隊員すべての視線が、ソナーに映る敵艦のエコーに向けられていた。エコーのひとつが消え、続いて複数のエコーが消えた。

 

「全弾命中!」

 

 艦船のエコーが四散していく。魚雷攻撃から逃れるためだろう。ソナー画面に無数のエコーが現れた。敵駆逐艦が爆雷を投下してきたのだ。それらのエコーもすぐに消えた。

 

 敵艦は水深六百メートルの水圧に耐えられる機雷を保有していないのは明らかだ。

 

「残る敵艦に向け、全魚雷発射せよ!」

 

 次々に擦過音がして、魚雷が発射されていく。ソナーに映るエコーは次々に消滅した。 

 

 三十分後、黒龍二番艦が海面に浮上し、戦果の確認を行っていた。艦橋上の甲板に二人の人影が見えた。

 

「艦長。敵は壊滅したようです……」

 

 副長が艦長の前で双眼鏡を使用して戦果を確認していた。

 

 二人の眼前には、無数の残骸が海面上を漂っていた。横転し今も激しい炎を噴き上げる艦船が沈没寸前の状態で目の前を通り過ぎていく。船体が真っ二つに折れた艦船が黒煙を上げながら沈んでいくのが見えた。

 

「あまりに一方的な戦闘でした。敵兵は全滅です……」

「それ以上言うな。副長。君の気持はわかる。だが、これは戦争なのだ。我々が敵を殲滅しなければ、多くの国民が犠牲となっただろう。男達はその場で虐殺され、女達は凌辱され、食糧にされるのだ。私は、すべての敵を可能な限り殲滅するつもりだ」

 

 艦長は副長に語り掛けながら振り返った。

 

「もし、我々の行為が、この世界にとって悪であり、いつか罰を受けるなら、甘んじて受けようと思う」

 

 艦長は静かな口調でそう付け加えた。

 

 

 

エピローグ

 

 結衣とエレナはロシア人の若い女性達と一緒に、敵国の蒸気機関車で千キロ以上ユーラシア大陸の奥部まで運ばれた。二人はすぐに貨物車両から別車両に載せられた。

 

 最初にロシア人の若い女性達と乗せられた貨物車両とは違い、ゴシック風の椅子やベッドがある豪華車両であった。トイレ付きのバスルームまで完備されていた。

 

 その車両には、将校と思われる男三人女二人の兵士が乗っていた。

 

 二人は、その車両でも衣服を着ることは許されなかった。下着も無く全裸だった。薪ストーブで適温に保たれているので寒さは感じなかった。

 

 すぐに兵士達に嬲られた。男も女も二人の裸身に群がった。眠るときも兵士達に抱かれたままだ。食事やトイレ以外は、兵士達に嬲られた。

 

 兵士達は、乱暴なことはしなかった。膣が濡れるまで、口や指を使った前技に十分な時間かけてくれたので性交には痛みは伴わなかった。

 日に何度もシャワーを浴びせられた。

 

 野菜や果物がメインの食事も十分に与えられた。食事には媚薬が含まれているのか食後二人は異様に性欲が向上した。兵士達の責めを積極的に受け入れた。

 

 蒸気機関車に乗せられてから三日目に広大な面積を持つ都市に到着した。

 建物はほとんどが五階以内の高さで、石やレンガで組まれた物がほとんどだった。

 

 レンガ建ての広壮な駅舎から、黒塗りの高級乗用車に乗せられた。車内でも二人は全裸のままだった。車両は五十キロ程の速度で石畳で片側三車線の道路を市内中心方向に向かった。

 

 その通りには、多くの乗用車やトラックが往来していた。

 沿線には、食品売り場や日用雑貨品を扱っていると思われる店舗や何かの工場が立ち並んでいた。

 

 二人は、車窓から大型トラックがゆっくりと横を追い越して行くのを見た。

 荷台には、数十人の若い女達が乗せられていた。皆、全裸だった。

 彼女達の何人かには見覚えがあった。蒸気機関車の貨物車両に一緒に乗せられていた女達であった。

  

 そのトラックが、沿線に建つ工場と思われる巨大な建物の敷地内に進入していくのを目撃した。

 敷地の入り口には巨大な立て看板が立てられていた。看板には、生肉やハムのような食物が描かれていた。それを見て二人の背筋に戦きが走った。すぐに目を逸らした。二人の脳裏にはユジノサハリンスクの山野で目撃した敵兵達による食人行為が過っていた。二人は手を繋ぎ合い強く握り締めた。

 

 すぐに車窓から大理石で作られた巨大な三角形の建造物が見えてきた。それはまるで西欧の巨城のようだった。黒雲が広がる空には稲光が走り、その度に巨城の全景が浮き上がった。

 

車両はそこに向かっていた。

 

 

 南九州沖合を漂流していた戦艦で救助された竜人のクロームは厚木の国立病院から防衛省本部の地下に位置する研究施設に移されていた。看護役の愛理も一緒だった。施設には居住区があり、二人は一緒の部屋を与えられていた。

 

 居室には液晶テレビやDVDプレーヤや冷蔵庫等の家電製品が供えられ、寝室には広大なダブルベッドが置かれていた。寝室には浴室やトイレが隣接していた。

 

 クロームは日に数時間、研究施設内にある一室で愛理から日本語のトレーニングを受けていた。

 愛理は日本語の他に、地理も教えていた。愛理は講義を進めるうちにクロームが数学や物理学の知識を有していることを知った。数学の知識はかなりのレベルだった。

 

 また、研究室内には体育施設もあり、そこではクロームの体力測定が行われた。 

 結果は驚くべきものであった。握力や背筋力は成人男性の約十倍だった。数メートル高さまでの垂直飛びも可能だった。

 

 クロームには研究室から出ることは許されなかったが自由時間は与えられていた。愛理と二人で居室にこもり、SEXに没頭した。それ以外は、多くの時間、液晶テレビの前に座り熱心にニュース番組や映画等を鑑賞していた。

 

 

 九州山地に位置する温泉街に某女子大の学生が卒業旅行で訪れていた。瀟洒な宿には天然の露天風呂があり、十数名の女子学生達は、夕食前に貸し切りで入浴していた。


 二十歳過ぎの眩いばかりの裸身が露天風呂にあふれていた。


 時刻は夕刻で西日が差し始めた頃、ひとりの女子大生が空を指差し叫んだ。


「何?あれ?」


「飛行機じゃない……」


「……違うよ。羽ばたいているじゃない」


「鳥にしては大きすぎない。こっちに向かって来るわよ!」


「キャー!」


 巨大な鳥に見えたのは、白亜紀に栄えた翼竜のケツァルコアトルスに似ていたが大きさが倍程もあった。翼開長は二十メートル以上に及んでいた。

 翼竜に似た生物が数匹、女性学生達が入浴中の露天風呂上空を旋回し始めた。


 女子学生達が悲鳴を上げながら一斉に露天風呂から逃げ出そうとした。


 その時、一匹が露天風呂に舞い降りて、女子学生のひとりを鋭い鉤爪で掴み、激しく羽ばたいて上昇を開始した。残る翼竜達も露天風呂に着水し、逃げ惑う女子大生を鉤爪で捕まえ、再び空に舞い上がった。



 女子学生達が襲われてから約十分後に陸上自衛隊所属の攻撃ヘリが、現場に急行した。 

 露天風呂の上空には、まだ数匹の翼竜が上空を旋回していた。

 

 攻撃ヘリが翼竜に襲い掛かった。三十ミリバルカン砲が火を噴き、翼竜をバラバラに引き裂いた。

 

 

 翼竜に捕まった女子学生は生きていた。美貌を恐怖に歪ませ泣き叫んでいた。両肩には鋭い鉤爪が喰い込み出血していた。


 入浴中を襲われたので一糸も身に着けていなかった。豊かな乳房や盛り上がった尻が震え戦いていた。


 彼女は、大田みなみという名前であり、女子大の新体操部に所属していた。


 翼竜は地上数百メートルを飛行していた。みなみは生きた心地がしなかった。翼竜がみなみを離せば地上に叩き付けられ即死であろう。


 十数分後、翼竜はみなみを捕まえた状態で標高千メートルの山の山頂に降り立った。


 そこは翼竜の巣だった。みなみより巨大なヒナが数羽枯草の上で動いていた。みなみは無造作な感じで巣の上に落された。


 みなみは見た。自分の裸身を食い入るように見詰めながらにじり寄ってくるヒナ達を。

「キャー!」


 声を限りに絶叫した。ヒナ達から逃れようとして四つん這いになり、巣の端に向かおうとした。

 不意な感じで肛門に耐え切れない激痛が走った。振り返ると一羽のヒナが尻の割れ目に顔を押し込んで来ていた。鋭い嘴が肛門を引き裂き、直腸に侵入し、内臓を引き出そうとしていた。


 別のヒナがみなみの太腿に噛み付き、肉を噛み裂こうとしていた。


 最初に肛門に嘴の先を入れてきたヒナが内臓の一部を引っ張り出し貪り始めた。


 瀕死状態のみなみは仰向けにされ、盛り上がった乳房を鋭い嘴で噛み裂かれ、柔らかい腹部も縦に噛み裂かれた。ヒナが頭部を裂け目に押し込み直に内臓を貪り始めた。

  

  

  

  

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龍の末裔 第一巻 @Tatsuya_Ohgro

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