第16話

次の日俺はティターンを連れて村の外側の堀を眺めていた。


その中ではピチピチと魚が泳いでいるが数が足りないように思える。


魚を村人に食わせてみたところ結構みんな好きな味らしくて消費スピードが爆速だったのだ。


そこで、供給を早めるためにあることをしようと思う。


「ティターン、この堀の時間を加速させたいんだけど、そういうことって出来るよね?」

「もちろんですとも」

「よかった。そこでなにか専用の装置のようなものを作りたいんだけど、どうしたらいいかな?エルフってこういう魔法関係は得意だよね?」


って聞いてみるとすぐに案を出してくれた。


「【時間加速装置】と呼ばれるものがありますね。それ作りこの堀につければ時間は勝手に加速するでしょう」

「どうやったら作れる?」

「時空結晶という素材がとりあえず必要になってしまいますね。それを取りに行きましょうか、と言いたいところですけど」

「ですけど?」


俺は期待の眼差しをティターンに向けていた。


するとティターンはゴソゴソとアイテムボックスの中から何かを取り出す。


それはきらりと光る鉱石だった。


「ここにあるんですねぇ。今回はこれを使ってしまいましょう」

(まるでソシャゲのチュートリアルみたいだぁ!)


とか思いながら【時間加速装置】の作り方を教えてもらう。


そして装置が完成した!


ボチャン。

装置本体の方を堀の中に沈めるティターン。


それからティターンは俺にリモコンを渡してくれた。

テレビのリモコンみたいだった。


「それを使えば時間の加速を行うことができます」

「おー。待ってました!」


よし、早速時を加速させてみよう。


ということで時を加速させた。


1秒で1年経過するくらい加速させたら


「おわっ!」


釣り堀の中に魚が溢れた!


それを見て俺はすぐに加速を止めた。


「すごいなぁこの装置。魚がいっぱい増えちゃった」


近くにあった網を釣り堀に突っ込むと適当に動かすだけで沢山の魚が入ってくる。


「これで魚に困ることはなくなるな」


ぶっちゃけ村人全員で食べても中々なくならない量だと思う。


時を加速させることができるとやっぱ便利だよなぁ。


それから俺は村の中に入りオークと農場についても装置を作ることにした。


こうやって時を加速させてしまえばのんびりと実るのを待つ必要がなくていいことだ。


全部終わってから俺はティターンにお礼を言った。


「ありがとう。君のおかげでいろいろな問題が解決したよ」

「こちらこそですよルイス殿。私の知識が役に立ったようでなにより」


ティターンとそうやって話している時だった。


ミーシャが駆け寄ってきた。


「ルイス様お客様が見えています」

「え?誰?今日は誰かくるなんて言う話聞いてないけど」


獣人の人には3日後くるように伝えてもらったはずだし、となると魔王がまた遊びに来たとかかな?とか思いながら俺は客人の対応に向かうことにした。


実は最近は客がよく来るので客に対応するためだけの建物を用意してある。


で、ミーシャいわく、そこに通したらしいので向かってみるとそこにいたのは


「あれ?獣人の人?」


聞くと犬耳の女の子が口を開いた。


「そうだにゃ!」

「ティターンからは3日後にくるように伝えてもらってたはずなんだけど」

「待ちきれなくて来ちゃったにゃ!迷惑だったにゃ?」


そう聞かれて俺はチッチと指を横に振った。


「そうでもないよ。実はもう客人を迎える準備は終わってるよ」

「おぉ!本当ニャン?!」

「うん」

「おぉっ?!なんと有能な少年なのにゃ!ティターンから聞いた通りの有能さなのにゃ!元々3日かかる予定のものを一日で終わらせてしまうなんてにゃ!」


逆なんだよねぇ。

一日で終わるものを三日と言っておけば向こうは三日かかるものなんだなって思ってるから、一日で終わらせたら評価があがるって言う。


そんなことを考えながら俺は獣人に聞いた。


「ところで目当ては魚、でいいのかな?」

「にゃ!お金はいっぱい払うにゃ!早く食べさせて欲しいにゃ!」


どうやら肯定したらしい。


「分かった。ちょっと待っててくれる?」

「にゃにゃー!」


俺はさっき捕ったばかりの魚を取り出してそれを獣人の目の前で捌いていく。


そこで獣人が名乗ってきた。


「にゃーの名前はシルフィーって言うにゃ。よろしくにゃ」


ふーん。

シルフィーか、覚えておこう。


俺は魚の準備を終えると昨日ティターンにしたようにシルフィーの前に出した。


パクっ。

食いつくシルフィー。


それから立てていた犬耳をペタンと落として嬉しそうな顔をする。


「おいしいにゃ!すごいにゃ!この世界にこんな美味いものがあったにゃんて!」


それでシルフィーは刺身をパクパク食べてから、満足して言った。


「これだとみんな喜ぶにゃ。いくつか持ち帰りたいにゃ。【5000万ドラ】くらいで足りるにゃ?」


5000万ドラ?!


ドラはこの世界の通貨で円みたいなものだ。


つまり俺は魚を捌いただけで5000万稼いでしまったようなものらしい。


そんなに貰ってもいいのかなぁ?


とか思ったけど、貰えるものは貰っておくことにする。


だって、こんなにあれば金持ちだもん!

金持ちになりたいかなりたくないかって聞かれたら俺は金持ちになりたい。


だから俺はこの取引に応じることにした。


そしてこれがこの村がやがて後世に伝わるほどの大きな国へと至る一歩目だった。


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