第13話 勇者がゴブリンを食べてる

門のところにユージンが到着したので出迎えてやることにした。


「あれ?お前ルイスじゃん」


俺を見てにやけるユージン。


俺はそんなこと無視して用件を聞いた。


「こんな辺境に何の用だ?」

「いや。エルフを探してるだけなんだが、ここに来なかったか?」

「いないよ」

「嘘じゃないだろうな?」

「嘘をついてどうなるのさ」


俺がそう言うとユージンは性格悪そうな笑顔をうかべた。


「あーそうだよな。お前が俺に逆らった結果が今だもんな」


そう言って村を見たユージン。


「俺を殴ったせいでこんなド田舎の辺境に来たんだもんな。もうこれ以上の失礼は出来ないよなぁ、まともな頭してたら」


どうやら俺がここに来たことを後悔してることにしたいそうだ。


俺としては割と居心地がいいのでどうでもいいんだけど。


「とっとと帰ってくれないか?邪魔だよ」


そう言ってやるとユージンは切れた。


「おい、お前今なんて言いやがった」

「邪魔だよって言ったんだよ」

「俺が邪魔?」


そう言ってきて俺の胸ぐらを掴もうとしたので手を弾いた。


「俺に触るなよ」


そう言ってやるとユージンはこう言った。


「いいぜ、おいお前俺と決闘しろ。どっちが偉いかは決闘で決める」


(この手のヤツはひねり潰さないと黙らないよな)


俺はそう思って頷いた。

ユージンはさらに続ける。


「よし、んじゃ決まりだ。決闘の開始時間だが、明日の正午でどうだ?場所はこの村の広場。お前が盛大に負けるとこを村人に見せてやる!」

「別にいいけど」


俺がそう言うとユージンはこう言った。


「おっしゃ。じゃあお前ら明日の正午まで近くの草原でテントでも張るぞ」


そう言って村を出ていこうとしたユージンだったが勇者パーティ所属の女の子は俺に聞いてきた。


「ねぇ、村に泊めてくれない?野宿なんていやだし」

「いいよ。空き家ならあるからね」

「やった!」


そう言って喜ぶ女の子を見てユージンは切れた。


「おい!メイサ!何を考えてる?!お前はどっちの味方だよ?!」

「えー?そりゃユージンの味方だけどさ。それでも野宿はいやだもん」

「それで敵陣の真ん中で寝るのか?!お前馬鹿じゃねぇの?!」

「え?この人敵なの?あなたが勝手に嫌ってるだけでしょ?」

「うるせぇ!もういい!」


そう言ってユージンは出ていった。


俺はメイサと呼ばれた女の子に目を向けた。


「空き家に案内するよ」

「よろしくー」


俺はメイサを空き家へと案内した。


そこでメイサが話しかけてきた。


「あいつ馬鹿だと思わない?」

「馬鹿だな」


どうやらこの子はマトモな神経を持っているらしい。


勇者パーティの良心ってやつだろう。


「あと、泊めてくれてありがとう。ほんとうに野宿とか嫌だったからさ」

「嫌がる女の子に野宿なんてさせられないしね」

「すてきっ。勇者の馬鹿とは違うね!」


俺は空き家の清掃をしてやることにした。


その時に話しかけてくる。


「なんで君ユージンとあんなに仲悪いの?」

「この前殴ったんだよムカついて」

「えっ?!殴ったの?!すごいね」

「そのせいで俺はこの辺境に追放だよ。縁も切られてね」

「うわ〜かわいそう」


メイサはこう言ってきた。


「明日の決闘も君が勝てばどんな顔するかな?あいつ」

「死にそうな顔するんじゃないかな。今からその顔を見るのが楽しみだよ」



夜になって俺はヤグラに昇って上からユージンたちのことを観察していた。


ここまで声が聞こえてくるくらいバカでかい声で喋っていた。


「おい!お前!なんで今の場面で攻撃しなかったんだよ!」

「したよ?!」

「じゃあなんでモンスターが倒れねぇんだよ?!」

「メイサがいねぇからバフがかかってないんだよ。それのせいだろ」


仲間同士で醜い言い争いをしていた。


どうやらモンスターが狩れなかったせいで、今日の食事にありつけていないらしい。


これからどうするのかと見ていたらとんでもないことを言い出した。


「おい、そこの村から食料盗まねぇか?」


ユージンの言葉に流石に仲間は反対していた。


「お前そこまで人間性捨てるのか?勇者だからって何してもいいわけじゃないんだぞ」

「うるせぇ。今はそれどころじゃねぇよ。なんか口に入れないとやばいんだって」

「お前の人間性よりヤバいもんはねぇよ。分かる?」


そう言って仲間の方は狩りを続ける気になっていた。


そしてそれに感化されたのかユージンも一緒になって再度狩りに戻った。そのときだった。


「ギィ」


ふたりの前に顔色の悪いゴブリンが現れていた。


その顔色の悪さはとんでもない。


この前俺が作った毒薬のように紫色だ。

というよりまんまあの毒薬の色だった。


それで俺は察してしまった。


「あのゴブリン。俺の作った毒肉食べたやつじゃねぇのか。それの生き残りか?悪運の強いやつめ」


そう思っていたらユージンはゴブリンを指さして言った。


「おい、ゴブリンがいるぞ!殺して食おう!」


そう言って手負いのゴブリンを容赦なく襲っていた。


そして肉を手に入れていた。

見るからにやばそうな色をしている。


「これで飯を食えるぜ!やっぱり俺にできないことは無いんだよな!」


そう言ってユージンはゴブリンを食べようとしていた。


あの毒薬を口に入れたゴブリンは殆どが死んだ。


そしてそんな毒薬を食ったゴブリンを食うということは


「あいつ大丈夫なのかね」


死にはしないんじゃないか?とは思うけど、どうなるのかちょっと楽しみだった。


ちなみにゴブリンは毒団子を食べた仲間を食ったら死ぬらしいけど。


あいつはどうなるのかなぁ。

今から結果が出るのが楽しみだ。


さて、これで明日の決闘がより楽しみに思えてきた。

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