第11話 エルフを助ける

翌日。俺は朝のうちに森にやってきた。


そしてゴブリンの巣穴の近くに毒入りのボア肉を置いた。


少し離れたところの木の上に登ってあの肉を持っていくのかを見ていたが。


出てきたゴブリンがしばらく観察してから持っていった。


「良かった良かった。ちゃんと持って行ってくれたな」


ぐふふ。


後はアイツらが勝手にゴキブリ方式で死ぬだけだ。


「あーあ、楽しみだなー。あいつらが全滅した時のこと。ってサイコパスみたいだな、楽しみにするのはやめておこー」


そう言いながら俺は森の中で別のことをすることにした。


散歩でもして時間を潰してからゴブリンの巣穴を見に来ればちょうどいいくらいの時間経過だと思う。


そうして森の中を歩いていたら


「うぐ……」


どこからか声が聞こえた。


女の人の声に思えた。


「誰かいるの?」


声を出してみると女の人の声がまた聞こえた。


「誰かいるのですか?助けてくれませんか?」


声の聞こえる方に向かうことにした。


そうして歩いてると一本の木の下で座り込んでいる女の人が見えた。


「耳が尖ってる、エルフか」


俺はそう言うとエルフは俺を見て言った。


「はい。私はエルフです」

「どうしてこんなところにいるの?」

「それがですね。この近くにとってもおいしい肉を出してくれる村があると聞いたもので。ふへへへ」

「うーん?そんなものこの辺にないと思うけどなぁ。道間違えてない?」


って、そんなこと話してる場合じゃない。


「なんで助けを求めてたわけ?」

「それがですね。足を攻撃されてしまって」

「なにに?」

「ゴブリンですね。この森のゴブリン結構強いですね」

「そうなの?」

「はい。めちゃくちゃ強いですよ。他の場所じゃこんなに強いゴブリンは見ませんから」


俺は他の場所のゴブリンとやらを知らないからなんとも判断に困るところだが、それより先に手当しないとな。


「足だったよね」

「はい。左足ですね」


そう言って左足を見てみるとたしかに怪我をしているように見えた。


結構パックリいってる。


「アックスで攻撃されたのかな」

「よく分かりましたね。傷を見ただけで判断するなんてすごい人ですね」

「実はね。傷からなんの武器か見分けるのはそこそこ得意なんだよ。家で教え込まれたからさ」


そう言いながら俺はアイテムポーチを開いた。


回復効果のある薬草と、殺菌効果のある薬草をいくつか取り出してからそれを傷口に押し当ててから回復魔法を使う。


【ヒール】


淡い光がエルフを包み込んだ。

そしてしばらく経ったそこには足の怪我なんてなかったようなエルフがいた。


「えっ?!あんなにパックリしてた傷が消えてる?!すごいですね!あなたの回復魔法!」

「いいや。俺の回復魔法自体は平凡なものだよ」

「でも平凡ならこんなことできませんよ?!」

「それができるんだよ」


俺はそう言って説明していく。


「薬草と一緒にヒールを使えば回復量が大幅に上がるんだよ」

「そんなことできるんですか?!知りませんでした」


目をぱっちり開けて俺を見ていたエルフ。


まぁこれは原作でもあまり知られていなかった仕様だから 、この世界でも知らない人も多いのかもしれない。


それから俺は名乗ることにした。


「ちなみに俺はルイス。おいしい肉料理が出てくる村ってのは分からないけどとりあえず俺の村まで案内しようか?」


チラッ。


足の傷があった場所を見てから続ける。


「足のことも心配じゃない?」

「そうですね。お世話になってもいいですか?」


エルフがそう言ったときだった。


うしろから大きな足音が聞こえてきた。


ズーン!

ズーン!


振り返るとそこには結構大きめのゴブリンが立っていた。


身体中傷まみれのゴブリン。

3メートルくらいの大きさに見える。


「ゴブリン?」


自信なくなってきた。


疑問形で名前が出てしまった。


「ギィッ」


ゴブリンは棍棒を振り上げた。


どうやら俺たちに危害を加えようとしているらしいので俺は小柄な身体を活かして、スっとゴブリンの体の内側に入っていった。


武器には適切なリーチというものが存在する。

棍棒にもある、だからこれはその適正なリーチを崩してやるという意味合いがある。


「すごっ?!ゴブリンの懐に潜り込んだ?!」


エルフが驚いているのを聞きながら俺はそのまま呟いた。


【ウィンドソード】


風の剣を作り出す。


風というのは極限まで鋭くすれば武器として余裕で扱えるようになる。


そして、ザン!


俺は懐に潜り込んだ勢いのままゴブリンの頭を吹き飛ばした。


コロッ。


トッ。


地面に落ちるゴブリンの首。


そこで死体は淡い光に包まれて消えていった。


討伐完了。


「すごい……こんなに小さな子供がこんなに戦えるなんて!」


そう言ってエルフは近付いてきて、そして名乗ってきた。


「名乗り忘れていましたね。私はエルフのティターンと申します。実はこう見えてエルフ国の第三王女なのです」


「第三王女か。っていうか王女様なのね?!」


「王女と言っても名ばかりってやつですけどね。私は王女らしいことなんてしないので」


舌を出してそう言ってる。


「だからこんなとこまで来れたってこともあるのかな?」


名ばかりじゃないと流石に王女様の身分でこんな森の中に1人でこれないだろうしね。


名ばかりということにそういうところで説得力が出た。


さてと、簡単に自己紹介も終える頃には昼過ぎになっていた。


そろそろ毒作戦の成果が出る頃だろう。


俺はそう思ってもう一度ゴブリンの巣穴に戻ることにした。


遠目から観察してもすぐに結果は分かるようになっていた。


「ゴブリンが倒れてますね」


ティターンが言ったように穴の外にゴブリンの死体が散らばっていた。


毒肉を食って体調の異変に気付いて外に出たが既に時は遅かったらというところだろう。


この様子だと中の様子もだいたい予想が着いた。


「じゃ、村に案内するよ」


俺はそう言ってティターンを村の方に連れていくことにした。

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