第9話ジョウカの森

「ルンルン♪」


ルンルン気分でジョウカの森へやってきたアンリと俺、それから騎士たち。


さっそく森の中に入ったアンリがキノコを見つけていた。


「これはなんですの?」


そう聞かれて俺は答える。


「それは【ワクワクキノコ】だね」

「さすがはルイス様!ほんとうに物知りですわ!」


見るからにヤバそうなキノコだ。


もうカラーリングが『食うな!』って言ってる。


でも


「おいしそうですわー♪」

「やめといた方がいいよ?!一応言っとくけどね?!」

「食べられないのですか?」

「食べたらやばいよ」

「どうなるんですの?」

「頭がワクワクする」

「ワクワクしたいですわ!」

「食べないでね?」


念を押しておくが、ここまで念を押せば逆に食べそうなんだよなぁ。


そんなことを思ってると騎士は言った。


「では私が味見しましょうか?お嬢様」

「いいんですの?!」

「もちろんでございます。では、さっそく」


カプッ。


止める間もなく食べてた。

体を張る人だなぁ。


「うぐ、これは?!」

「どうしたんですの?!」


騎士はしばらくするとテンションがおかしくなった。


「わーはー!!」


そして森の中を走り出していった。


「ど、どこ行くんですの?!」


それを追いかけるアンリ。


俺も追うことにした。

いつものように獣道を追っていたらやがて騎士は止まってしゃがみこんだ。


「わはははは!!!おいしそうな草だー!!!」


バクバク。


道の草を食べ始めて


「うげぇぇぇ!!!にげぇぇぇ」


と叫び出す。


「だから言ったのに」


呆れながら俺が言うと騎士は正気を取り戻していた。


「あ、あれ私はいったいなにを?」


そう言ってる騎士の横で俺はあるものを見つけた。


それは


「なぁ、アンリ。ジョウカソウってこれじゃないのか?」


さっきの騎士が急に正気を取り戻したのは気になっていたがおそらくこれだな。


このジョウカソウを食べたことによってワクワクキノコの成分が抜けたのだ。


ジョウカソウには文字通りあらゆる呪いとかを浄化する効果がある。


「あ、これですわ!ジョウカソウ!さすがルイス様!こんなに簡単に見つけてしまうなんて」

「見つけたの俺じゃないけどね」

「細かいことは気にすんなですのっ!」


そう言ってかき集めるアンリ。


俺もいくつか持っていくことにした。


風邪とか病気にも効くし色々使えるんだよなぁ、この草。


あのクソ勇者も世話になってたんだよなぁ、この草には。


思い出して俺は決意した。


(勇者には売ってあげませーん。がははは、独占してやろう)


あんな生意気なやつにこんなすばらしい草を分けてやる気にはなれない。


「さてと、ジョウカソウも入手したことだし帰る?」

「そうですわね。帰りましょう!」



家に帰ると俺はアンリに言った。


「ジョウカソウも手に入れたし帰るんだよね?」

「そうですね。今回は周りの人達にも無言で出てきたので手早く帰らなくてはなりません。皆さん心配してるでしょうし、ルイス様に迷惑をかけるわけにもいきませんので」


そう言いながら頭を下げた彼女。


「微弱ながらこれからはこの村とルイス様を支援させていただきたいのですが、なにか必要なものはありますか?」


そう聞かれて俺は悩んだ。


「うーん。やっぱり兵士とかが欲しいかなぁ」

「兵士ですか?」

「うん。この村には剣士がいないからさ。やっぱり居ると便利かなぁって思う」

「分かりました。では剣士の方派遣させていただきたいのですが、よろしいですか?」

「ほんとに?!」

「はい。私に二言はありませんわよ!」


そう言ってくれたアンリ。


そのまま彼女たちは家を出て門の方へ向かっていったので俺も見送りにいくことにした。


「それではルイス様」

「うん、またね」


俺はそう言って彼女と別れた。


それから考える。


「剣士ってどんな子がくるんだろうなぁ」


楽しみだ。


俺の知ってる子が来てくれたりしたら熱いかもしないなぁ、とか思う。


そう思いながら俺は家に帰ろうとして歩いてると、ミーシャが話しかけてきた。


「ルイス様。大変です」

「なにが?」

「それがですね。ジョウカの森周辺が浄化されたことによって草木が復活したのはいいんですが、それを目当てにゴブリンなどのモンスターが集まってきているようなんです」

「それがどうかした?元々いた奴らが帰ってきただけだし、放っておけばいいと思うけど。それにこの村は安心安全」


そう言ってみると首を横に振るミーシャ。


「それがですね。ゴブリンたちが森の中で暴れ回っているんです」

「暴れ回ってる?」

「はい。それでなんか進化してるらしいんですよゴブリンたちが」

「進化?」

「はい。ゴブリン→ゴブリンエリートって感じに進化してるみたいです!」


ゴブリンエリートか。


原作でも出てきたはずだけどそこそこの腕前の人でなんとか倒せるくらいのモンスターだったはずだが。


「襲ってきてもウチのウナギやドラゴンが倒すと思うけど」

「それがその、キラービーたちが困っているようでして」


その言葉で思い出す。


うわっ。そういえばキラービー達がいたな。


「今はまだ襲われてないみたいですけど震えて過ごしてるみたいです」


キラービーなんて物騒な奴らが震えてるのを想像したら少しおかしくなったけど。


「分かった。キラービー達の件については少し考えてみよう」

「はい!よろしくお願いします!」


キラービーが倒されてしまってはもう蜂蜜もできない。


それは俺としても困るからな。

俺は人生で大事にしてることがある。


それは毎日の食事にこだわるということだ。

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