5話


「!?」


俺は意識を取り戻し飛び起きた。


「ここは??」


「あら、起きたのね

ここは、私達パーティーの拠点よ」


声が聞こえた方をみるとスズカさんが座っていた。


「ミツルギくんのお陰で私達パーティーは壊滅せずに済んだわ

ありがとう」


「いえ、何とかなって良かったです」


「それよりスキルのことどうして黙っていたの?」


スズカさんは少し疑うような目をしていた。

確かに疑われるのは当然だよな。

俺はスキルが使用できるようになったのが、最近であることハンター登録をしていないからゲートに入る手段がないことを話した。


「ミツルギくん

パーティーはね他人に背中を任せるから信頼関係が大切なの

それは荷物持ちだからってことは関係なくね」


「はい」


リュウジ達のパーティーとは違うな・・・

やっぱり隠してやっていくのは無理だな。


「そこで提案なんだけど、ミツルギくんがハンターになるまで私のパーティーにはいらない?」


「え⁈」


「ミツルギくんは必要な魂(ソウル)を集めてそのついでに攻略に協力してもらうなんてどうかな?」


「いいんですか?」


「ええ、ハンター登録にも時間がかかるだろうから準備が必要でしょ」


「ありがとうございます!!」


「助けてくれたお礼よ」


そういうとスズカさんは部屋から出て行った。

俺は吸収した魂(ソウル)を確認した。


「システム、魂(ソウル)とスキルの確認」


魂(ソウル)80

スキル  影の支配者 Sランク


「魂(ソウル)80かスキルは特にないのか」


「スキル再生はソウルイーターに吸収し再生レベルを上げました」


「再生レベル⁇まさか魂(ソウル)を吸収した時の再生能力が上がったのか?」


「はい」


「そんな機能もあるんだな・・・」


(コンコン)


扉をノックする音が聞こえた。


「ミ、ミツルギくん?起きてる?」


「ミヨリ?」


「う、うん」


部屋の中になにやら申し訳なさそうに入ってきた。


「どうしたんだ?」


「あの、ありがとう・・・私達のために戦ってくれて

身体はだ、大丈夫?」


「ああ!スキルで回復してたから大丈夫だよ」


「よ、良かった」


沈黙が流れる。

ずっともじもじしながらミヨリは立っている。

どうやらミヨリは人と話すのが苦手のようだ。


「もう!!!焦ったいわね!!」


沈黙を破るようにキヨミが今度は部屋に勢いよく入ってきた。


「お、お姉ちゃん!?」


「キヨミちゃん?」


「私もお礼言おうと思って待ってたらいつまでももじもじと」


「ごめん・・・」


「こらあまりミヨリを攻めるなよ

これでも頑張った方だと思うぞ」


キヨミの後ろからイカリも入ってきた。


「要件は終わりなの?」


「う、うん・・・」


何やらミヨリは残念そうな顔をしていた。


「起きてからこんな騒がしかったらミツルギも迷惑だろう

今日はこのくらいにしておこう」


「そうね!助けてくれてありがとうね」


「ミツルギありがとうな」


「いえいえ」


「それじゃあゆっくり休んでくれ!

動けるなら明日からまたゲートに行くからな!」


「ま、またねミツルギくん」


ミヨリが小さく手を振ってくれた。

俺も振り返した。


「ミツルギじゃあな〜」


キヨミとミヨリは顔は似てるけど本当性格が極端に真逆だな。

俺はその後また眠りにつき起きた後ご飯をご馳走になった。

その後は1人で暮らしている家に戻り、翌日のゲート攻略に備えて準備をした。


〜数ヶ月後〜


それから数ヶ月俺たちパーティーは、ダンジョン型のゲートを幾つか攻略して回った。

討伐したモンスターは、分配してもらい俺は素材を回収せずに魂(ソウル)へと変換して行った。


「ある程度貯まったらハンターアカデミーに行くのか?」


「はい!そこでハンターの認定を受けて正式にハンターとしてゲートに入れるようにしようと思ってます」


「何か必要なことがあったらいつでも私達に連絡するのよ」


「いや、なんかあったらじゃないミヨリが寂しがるから連絡しろよ!」


「お、お姉ちゃん!?」


「そうですね!笑」


「ミツルギくん!?」


ミヨリの顔はみるみる赤くなっていき、隠れてしまった。

俺はこのパーティーにいることがとても心地よく感じた。


「さぁ、ラスト少しだけ俺と手合わせだな‼︎」


「でた・・・イカリの後輩いじめ」


「特訓だ!」


「今日は何の素材かけてくれますか?」


「よし!俺に一撃当てられたら今日の報酬はお前にやるよ」


「よっしゃ!!やりましょう‼︎」


俺は立ち上がりダンジョンの中の少し開けた場所に歩いた。

イカリさんには数日間戦い方のトレーニングをしてもらっていたが一度もまともに攻撃を当てられていない。


「かかってこいミツルギ‼︎」


「はい!!」


イカリさんとのトレーニングで一つの戦い方を学べた。

それは、スキルの効率的な運用だ。

今までは常時ソウルイーターを発動してフルで戦っていたが、今は発動と解除を使い分けて緩急のある攻撃を繰り出せるようになった。


俺は短剣を構えて接近していく。

イカリさんはタンク

機動力はないが、反応速度が速い。

普通に攻めても簡単に防がれてしまう。


先ずはスキルを使用していない状態で攻めていく。

荷物持ちで鍛えあげた筋力が多少は使えていた。


「そんな攻撃じゃいつもと同じだぞ」


「・・・・どうですかね」


イカリさんに一撃を与えるには盾が反応できない速度で攻撃を繰り出すか、力でねじ伏せるかの二択だ。

俺は今までただ真っ直ぐイカリさんに力で押し勝とうとしていた。

それじゃあ、単調的な攻撃になってダメだ。

なら、相手の虚をついて攻撃するしかない!


「ソウルイーター‼︎」


「来るか‼︎」


イカリさんはどっしりと盾を構える。

俺は真正面からイカリさんに突っ込む・・・と見せかけて瞬間的に後ろへと回る。


「!?」


「これなら!!」


「残念」


イカリさんは盾から手を離し剣を抜く。

短剣と剣がぶつかる。

反応されてしまったが、まだ終わっていない。

俺は一度距離を取る。


「解除」


「さぁどうする?」


「盾おきましたね?」


イカリさんのでかい体を隠すほどの大きな盾はない。

これなら攻撃手段はまだある!

俺は地面を蹴り接近して攻撃を繰り出していく。

しかし、容易くいなされてしまう。


(いつソウルイーターを発動する?)


イカリさんはきっと警戒してるはずだ。

それが俺の唯一の手段だから

だけど今度こそ‼︎


「ソウルイーター‼︎」


俺は再び瞬間的に速度を上げる。

それによってイカリさんには目の前から消えたように見える。


「何度も同じ手は!」


そう言って振り返るイカリさん

だけど今回は違う。

俺はただしゃがんでイカリさんの視界から消えただけ。

今まで何度も背後を取るとすり込んだ。

だから、たった一度だけどチャンスがきた。


「ぶっ倒れろーーーー!」


イカリさんの脚を蹴りはらい体勢を崩した。

倒れ込むイカリさんに馬乗りするようにして首元に短剣を当てた。


「降参」


「よしゃーーーー‼︎」


「へーまさか本当に勝つなんてね」


「素直だから成長が早いのよ」


「す、すごいね」


「ほら!約束の報酬」


俺は立ち上がりイカリさんが亜空間バックから出した報酬の素材を受け取った。

しかし、思った以上に多くあった。


「こんなに⁈」


「少しだけど勝った時に渡そう思って貯めてたんだよ」


「何1人で貯めたみたいに言ってんの?」


「わ、私達も協力したよ!」


「アカデミーの入学祝いみたいなものだよ」


「みんなありがとう」


嬉しくて涙が出そうになる。

荷物持ちの時はこんなことなかったからな

俺は快く受け取りソウルイーターで吸収した。


「魂(ソウル)500吸収

現在魂(ソウル)1200

スキル習得」


「これでフルでスキルを使っても20分は動けます!」


「明日にはもうアカデミーの試験に行くのか?」


「はい!編入試験みたいなのがあるようなので」


「え!?編入試験って結構難易度高いんじゃなかった?」


「そうね

通常入学よりも基準が高いはずよ

でも、ミツルギなら大丈夫よ」


「うん!ミツルギくんならきっと合格だと思う」


「ダメだった時はまた戻ってきますね笑」


「当たり前だ!俺らはもう仲間だからな」


「失敗した時のこと考えるのは良くないけど、ダメだった時は気にせず戻ってきなさい」


「ミヨリあんた今落ちた方がいいなって思ったでしょ・・・」


「あ、いやいや!そんなこと思わないよ‼︎

お姉ちゃんのバカ‼︎」


「あはは笑

それじゃあ皆んな行ってくるね‼︎」


「ま、待って!これお守りで・・・」


ミヨリは俺にネックレスのアイテムを渡してくれた。

ネックレスアクセサリーに緑色の綺麗な石が嵌め込まれていた。


「これは私のガード魔法が込められてて、身につけてる人が危険な時発動するようになってるから」


「そんな貴重なものいいのか?」


「うん・・・私達ももっと強くなって待ってるね」


「ああ!!ありがとうみんな!」


俺は皆んなに背中を押されアカデミーの試験に向かう。

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