第4話 合体
近くに落ちている棒や石を武器にして戦う姿は、まさに新米冒険者って感じだな。
「俺達もやるか!」
……意気込んでみたものの、この近くはオープニングイベントで人が密集してたからほとんど狩り尽くされてるな。
できれば人が少ない場所の方が効率は良さそうだけど……。
周りを見渡してみると、少し離れた丘の上にほとんど人がいない場所を発見した。遠くてはっきりとは分からないが、10匹くらいのスライムが不規則に跳ねているように見える。
「アカリ、ちょっと遠いけどあそこまで行ってみないか?」
コスプレ用の小さな杖で、一生懸命にスライムを叩いているアカリに声を掛ける。
「ちょっと待ってね、この子を倒してからっ!! もうちょっとだと思うんだけどっ」
俺には表面をペチペチしてるだけに見えるんだけど、効いてるのか?
ペチペチ……ペチペチ……何度か叩いているとスライムが弾けた。
「ふぅ、これで3匹目っと、私って冒険者の才能があるかも! ドロップアイテムは……何も無しか、残念」
いつもの大人しい姿からは想像できないくらい、表情がコロコロ変わって面白い。
ていうか3匹目?! いつの間にそんなに倒したんだ?!
「やばい、完全に出遅れた……アカリ終わったか? 早く行こう!」
焦りから自然と小走りになる。丘に近づくにつれてぼやけていたスライムの姿がはっきりと見えてくる。
「思ったより多いな、20匹はいるか? まぁ所詮スライムだし大丈夫だろう」
ダンジョンが出現してから1年、心のどこかでこういう展開を期待していた。ついに俺の冒険が始まるんだ、そう思うとワクワクが止まらない。
すぐ近くにいた1匹に狙いを定め、背中にある勇者の剣を引き抜こうとする。
その瞬間、頭にノイズが走る――
条件が達成されました。フロアボスが召喚されます――
聞き覚えのある無機質な音声。
フロアボス……?
条件って何のことだ?
次々に疑問が浮かんでくる。条件は、ゲームならスライムの討伐数か重要アイテムの発見ってところか……?
一周年記念イベントの参加人数を考えると、短時間で討伐数を達成してもおかしくない気もする。いずれにせよ俺が全く貢献できていないことは確かだな。
フロアボスっていうのも気になるな、どこにどう現れるのか……。
なんだ? スライム達が中央の桜の木と丘の中間にある広い場所に向かってゾロゾロと集まっていく……。
丘にいた約20匹のスライム達も気がつくと居なくなっていた。
「まさか、合体してるのか……?」
スライムは素早い動きで吸収を繰り返し、徐々に大きく成長していく。集まった数百匹のスライムを吸収し終わる頃には、5メートル程の巨大な塊になっていた。
勇気のある男が棒で思いっきり殴ってみるが、表面が少し凹むだけでそのまま跳ね返される。
こんなのどうやって……。
言葉には出さないが誰もがそう思ったのだろう。その場の全員が動く事ができずにいた。
そして、ついに巨大なスライムが動き始めた――
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