夢に至る悪夢
(おれはいつからこの夢を見ている)
――暮れゆく夢の
薄れていく過去の足跡
遠ざかっていく若き
萎びてゆく希望の芽
(おれはいつからここにいる)
――遠からず相まみえたであろう限界
絶望に頭を押さえつけられて
喉に詰まった諦観で呼吸もままならないまま
視力を失った
(おれはいつから目を背けていた)
――後悔が幸福の仮面を装って
積み重ねてきた努力を二束三文で常識に売り渡す
影だけが独りでに
背中を灼かれる肉体は
液体化した脳は甘い幻想に身を焦がして
淡く 足先をほころばせる
(おれは おれは おれは おれはおれはおれは――)
――我に返る自縛の
鎖でつながれた両足のまま 一体どれだけの日々を歩いてきたのか
夢見た幻想郷は未だにその姿を見せず
ただ己の足跡に乾いた血の、永遠にこびりつくのが窺えるのみ
それが涙であると分かっていながら
地平線に夢が沈んだまま 夜の明けない世界を
足裏の骨を削りながら歩きつづけている
そして、ああ 誰もがその時になってようやく知るのだ
夢を思い描くとしても いかにその夢が甘美な救済を孕んでいても
その道中は、否が応でも、悪夢と化すと
夢に至る悪夢なのだと ああ、悪夢なのだと!
されども今さら、歩む足を止められるわけもなく
永遠に悟り 永遠に呻き 永遠に歩くのだ
しかし苦痛に耐えかね ふたたび意識の糸が切れて
聞こえるのは あの、 錆びついた心の声
――おれはいつからこの夢を見ている?
――おれはいつからこの夢を見ている――
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