第6話

 暗い顔をした小柄な少女が下を向きながらもキョロキョロと車両の中の様子を窺っていた。なにかを探すように。

 目当てのものが見当たらず落胆した顔で顔を下げ、また期待したような顔で目線を泳がす。その繰り返しを続ける。

 数十度も繰り返した後、少女は小さなため息を吐いて、俯いた。この行為を始めてからすでに路線を二周してしまっている。これ以上続けてももう望みはないのだと認めたのだ。

「……」

 少女は泣き出しそうな顔をして立ち上がった。トボトボと扉の前に歩いていく。

「…………あ」

 扉が開いて、その先の景色に誰かが立っていることに気づいた。少女が一日の間ずっと探し続けていた少年。

 少年は八年間探し続けた少女を目の前に曖昧な表情をした。ここに来るまでの道中どんな顔をすればいいか考えていたが最後まで決まらなかった。長い間一度も連絡を取らなかったことに怒ればいいのか、なにかあったのかと心配そうな表情をすればいいのか、再会を祝して満面の笑みを浮かべればいいのか。

 少年は結局どんな顔をしているか自分でも分からないまま声をかけた。

「……久しぶり、唯」

 少女は嬉しそうに、けれど何を言っているのか分からないと言ったように首を傾げた。

「………誰、ですか?」

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