第11話 間話 玲奈


 とても長い時間私は千冬を見ていた。

 堅パン一個で飢えを凌いで一生懸命に生きている姿を。

 やっと食べられるようになってすぐに頭角を表し始めた!

 ほんとうに急にだった。

 千冬の中で何かが変わったのだろう。

 私はそんな千冬に恋をしていた。

 何にでも全力で我慢強くて、決して驕らない。


 でも、わたしなんて見ていない。

 だってバレないようにみているのだから。

 だけどそれも魔王軍との戦いが始まるまでだった。

 何度も怪我をして美琴ちゃんに治してもらった。

 辛くても頑張れたのは千冬のおかげ。


 エンシェントドラゴンに乗って現れた時には王子様のような気がした。

 私は案外メルヘンなのかもしれないが。

 でも千冬の言動も動き一つとってもとても前の千冬じゃないようだった。

 女王と宰相の首が刎ねられた時だって千冬なら止められたはずなのに止めなかった。

 これは天童が私達の怒りを表した結果であり、私達の為に手を汚す覚悟を決めていたからだと思う。


 日本に帰るとひっきりなしにシャッターが切られ、誰からかまわずインタビューしている。その中で一人僕から俺に一人称を変えた千冬は堂々としていた。


 親の時もそうだった。

 給食費も払えないような貧乏な子だと認識していた私は、親が綺麗に着飾って泣いた真似をしているのに嫌気がさした。どうしてそんなことができるのかわからない。

 それだけ着飾れるのなら給食費くらい払えるはずだと。

 だけど違った、慰謝料をもらって贅沢な暮らしをしているのが分かった。千冬は冷たい視線でそのことを言い縁を切ると言っていた。


 私はダメだ、お爺ちゃんお婆ちゃんが亡くなっていた。親はすでに亡くなっていて祖父母が私の家族だった。だけど親戚と名乗る人が私に近寄ってきた。心配してたと言うが誰かわからないのに心配も何もない。


 私にはどうしても他人としてしか見れなかった。どんなに取り繕うことをしてくれても私は笑えなかった。

 腫れ物を扱うようにいろんなことを聞かれ買い与えられる。

 我慢すればいつか親戚だと思える日が来ると思ったが千冬に会って私はタガが外れた。


 私と一緒なのは千冬だけだと、やっぱり千冬が好きだと。


 だから後をつけて見つかったら部屋までなんとか入れてもらえた。

 ここなら私も一緒に住める。

 お金なら私がいくらでも稼いでくるから私と千冬を離さないで。


 千冬のベッドは千冬の匂いがした。

 包まれてる私は幸せだった。


 社長には悪いが千冬を手放すことなんてあり得ない。結婚なんてしなくてもいい。


 私が千冬を幸せにしてあげる。

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