第7話 生還
帰って来てからは大騒ぎだった。6年前にいなくなった子供達が7年後に小学校の教室に現れたのだから、しかも鎧や剣を持って。
当時の小学校の校長は自殺したらしい。悲しいことだ。メディアがそれをしたのに、それをまたメディアで取り上げている。
皆、親が来て泣いて喜んでいるがうちの親は来て、泣いたふりをしている。美奈ちゃんの親はいなく祖父母に育てられたらしいが、祖父母は亡くなっていた。親戚が来て引き取るとのことだったがどうなることやら。
「泣き真似はやめたら?」
「ち…ふゆ?あんた、どれだけ」
「慰謝料もらったんだろ?」
「なっ!」
母さんも6年歳を取っていた。
「俺はもう昔の千冬じゃないからな」
「何言ってるのよ」
「俺はあんたと縁を切る」
「な、なら勝手にしなさい!」
と言って出て行った。パシャパシャとシャッター音がうるさいな。
「チフユ!行くとこ無いならうちに来ないか?」
勇者君は涙目でそう言うが。
「大丈夫だよ」
俺はこの世界に帰ったからこそやらなければいけないことがあったからだ。
親との縁を切る。
これを書類でやりたいので、近くにいた人に独占インタビューする契約をしたら、直ぐに行動に移してくれた。
部屋も用意してくれて、とりあえず一か月は面倒をかけると思う。
次の日には書類を用意してくれたが戸籍の分籍しかできないと言われた、あとは親からの干渉など、できないようにすることしかできないらしい。結局親子の関係は切れないのである。
まぁ。気にしなければいいと言われればそれまでだが。
俺はそのまま会社に所属することになった。
インタビューでこれまでの親の行為を伝えたところ大炎上した。そして事実上縁切りに近い状態まで持って行くことができた。
あとはあちらであったことを細かく話す。
勇者君が最後にやったことは伏せておいたが。
あとは自由にしていいと言われてさすがに体を拭くだけだったので、7年ぶりに風呂に入ったら泡立つのに二、三回では無理だった。防具や剣も整備して。用意してくれた服を着る。
背も高くなったし筋肉質だな。
「あっちに鏡なんかなかったからな」
髪の毛を乾かしていると、
「髪切りに行きますか?」
俺のマネージャーになった神谷さんだ。
「行きます!お願いします」
美容室に予約を取って髪を切ってもらう。
「今風ですね」
俺にはよくわからないが、
「そうなんですね」
「とっても似合ってますよ」
とても嬉しそうだ、前は切るのがめんどくて超ロン毛だったからな。
「服もそうですしありがとうございます」
「こんなかっこいいのにダサいのは許せませんからね」
「あはは」
2人で歩いて帰ると。
「何処行ってたの…って、イケメンになって帰って来たじゃない!」
社長の吉田さんだ。
「すいません。勝手に出歩いて」
「いいわよ!どーせ神谷がやったことでしょ?それにイケメンになったからそれなりにメディアに出れるからね!ファンもつくわよ!」
「あはは。それはどうかと」
ありがた迷惑なんだが?
この7年で変わったことがあった、ダンジョンというものができモンスターがいる世界になったらしい。インフラも整備されているそうだ。
「さて。今日はダンジョンのモンスター撮影に行くわよ?千冬君は大丈夫なのよね?」
「それなりにやれますよ?」
「ならそれなりにやってもらおうかしら?」
ダンジョンにはギルドが併設されているそうで。そこで免許を取らないといけないらしい。
「これ壊れちゃいますよ?」
「大丈夫!壊れないよ」
「じゃあ壊れても文句言わないでくださいね?」
「いいよー」
パンチを測るらしいが、
“ドンッ”
「ほらね」
「え、えー!マジで壊れた!」
「壊さないようにね、ね?」
「えー、じゃあ指一本で」
“ギューン”
「おふっ!」
握力系の針がありえないくらい回った。
「うん、君合格!」
「それがいいと思います」
免許証も発行され初めてのダンジョンだ。
「じゃあ、あいつから倒してみて」
「はい」
指定されたモンスターを狩る。
「…超スローモーションカメラが必要ね」
「それでも撮れるでしょうか?」
「わからないわね」
結局は歩いて狩ることになった。
“パン”
「ですよねー」
“パン”
「破裂音しか聞こえないわね」
「ここ37階層ですよ?」
“パン”
「これくらいなら全然平気ですね」
「そりゃモンスター倒すのに破裂音なんて聞いたことないもの」
「そうですね」
“パン”
「ちゃんとドロップも拾ってますから」
「アイテムボックスって何万人に一人?」
「何億ですよ」
“パン”
「私達声かけてもらって良かったわね」
「ですねー、マネージャーできるのがいいですね」
“パン”
「でも、これはやりすぎよね?」
「ですね」
吉田社長とマネージャーが困っている。
「あれだったら一人で下の階層まで行って来ましょうか?多分すぐですけど」
「じゃぁ、そうしてくれるかな?」
「はいカメラ」
「じゃ、行って来ます」
「ただいま戻りました」
あまり待たせるのも悪いと思い急いで狩ってきた。
「えっもう?」
「一時間経ってないわよ?」
カメラを確認するとレッドドラゴンが映っていてそれが一撃で倒される瞬間が映し出されていた。
「「………」」
「画角ってやつですか?気を使ってみたんですけどどうですかね?」
「うん。よく撮れてるわね」
「はい、よく撮れてますけど」
「ボスも一撃なのね」
「ですよねー?」
こっちのレッドドラゴンがあんなに弱いと思わなかったしね。
これは動画でバズったらしい。
「んじゃ、このダンジョンをゆっくりしたまで降りて帰って来て」
「え?そんなのでいいんですか?」
「いいのよ」
「それくらいがちょうどいいと思うの」
「はーい」
ダンジョンに入って小走りで行く。
「早すぎるのよ!」
「これでもゆっくりしてましたよ?途中でコーラ飲んでますし」
「うー。歩いて行って!」
「そしたら時間がかかるじゃないですか?」
「それくらいがちょうどいいのよ」
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