第6話 迷い子


『迷い子よなんのようだ?』

 エンシェントドラゴンは喋れた。

「あ、しゃべれるんだね、僕はチフユ」

『名前はない。迷い子よ?なぜここにいる?』

「レベル上げをしてたんだ。僕弱いから頑張らないとさ」

『カッカッカッ!ここまで来て自分が弱いじゃと?面白いことを言うのぉ』

「だって魔王を倒さないと元いた場所に帰れないらしいし」

『そりゃ、嘘じゃな。帰りたくば帰してやるが?』

「え?うそ?」

『誰が言ったか知らんが魔王如き倒したところでどうにもならんじゃろうな』

「えー!じゃあ、みんな騙されてるんだ」

 どうしようかと考えていると、

『どれ、一仕事してやろう』

 エンシェントドラゴンは僕を背に乗せると魔王城に降り立つ。


「みんな!帰れるって!」

 いきなり大きなドラゴンが降り立ったらみんな固まるよね。

 降りて話をする。

「みんな騙されてるんだって!エンシェントドラゴンが、僕らを帰してくれるって!」

「な!じゃあ、なんのためにここまでがんばってきたんだよ!」

 勇者君が大きな声を上げる。

「僕もわかるよ」

「さっきの話が本当ならまずは王城に行きましょう」

『話は決まったか?背に乗れ』

 エンシェントドラゴンの背に乗って王城に向かう。


「どう言うことだ!宰相!女王!」

 勇者君が飛び降りて二人に向かう。

「な、な、なんでエンシェントドラゴンが!」

「そんなことはどうでもいい!俺の言ったことの答えを聞かせろ!」

 勇者はキレていた。他の仲間もそうだ。

「妾は知らぬ!魔王を打ち倒せば帰れるはずじゃ」

『いいや、そんなはずないじゃろ?人間の考えそうな話だな』

「ええい!エンシェントドラゴンなんかモンスターじゃないか!そいつの言うことを聞くのか?」

 勇者は答える。

「あぁ。1人欠けてた仲間が持って来た情報だ!お前らなんかよりよっぽど信用できるんだよ!」

 宰相の腕を一本斬り落とす。

「ウギャアァァァァァ」

「さぁ!話の続きだ!嘘をついていたのか?」


「待て!私も初耳だぞ?魔王を倒せばこの国は救われ英雄達は国へ帰ると」

 騎士団長が現れて言うが、それはおとぎ話の類ではないのか?

「うるさい!うるさい!魔王を討伐すれば丸く収まるのじゃ!お前たちもそれなりの席を用意しようとしていたのに!」

「じゃあ、やはり最初から子供達を騙して」

 騎士団長は膝をついた。


「これでわかった。召喚の魔法陣は何処にあるんだ?」

「教えるわけなかろう」

「この城の地下にある。あとで案内しよう」

「騎士団長!」

 騎士団長は泣きながら言う。

「私はこの子達の小さな頃から見て来たのですよ?親と言っても過言ではない!」

「え、エンシェントドラゴンだっているのだから今から魔王を討伐して来なさい!」

「いやだね!まずはお前を殺す」

 剣を突きつける勇者君。

「ヒィィ!」

「やめろ!そんなことをしても無意味だ」

 僕は勇者君に言って、

「…エンシェントドラゴン?この地下にある魔法陣を壊してくれる?」

『お安いご用だ』

 エンシェントドラゴンの口から光が放たれて城に大きな穴が開く。

『これでいいか?』

「ありがとう、勇者君、君の気持ちは僕にもわかるけど人を殺してないなら殺すべきじゃないよ」

「…あぁ。ありがとう」

 勇者の剣が振り抜かれる。

 女王の首が転がる。

「勇者君?」

「仕方ないだろ?これは7年の恨みだ」

 もう一度剣が振り下ろされ宰相の首が飛ぶ。

「みんなもこれでいいかな?」

 みんな頷く。

「よし、みんなで帰ろうか。エンシェントドラゴンさん。よろしく頼むよ」

『よかろう。だが、経過した時間は巻き戻らないからな』

「分かったよ。さぁ、君も」

 勇者君が僕に、いや、俺に手を差し伸べる。

「あぁ」

 しっかり握手すると、エンシェントドラゴンが呪文を唱えている。光に包まれ来た時と同じような光だ。

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