第18話 再開と思い出

31日の0時になり乾杯をして年が明けた。

久しぶりの酒にすっかりと酔ってしまいすぐに眠りについた。


1日はゆっくりまどかの作った雑煮を突きながら、テレビを観て過ごし2日になり職業安定所に行くとやはり閉まっている。張り紙には4日から開庁だと書いていた。

金を使わないように過ごすしかない、というより使う金が無い。


キッチングッズや引っ越しや正月の食料などで金がかかり過ぎた。

もっと早く本気で働いていればと、悔やまれる。


とりあえず日中は外に出る事にした。

開いていない職業安定所に何度も足を運んだ。

「元輝…?」聞き慣れた声がした。振り返ると元彼女が立っている。

「…愛…」この世に二人しかいないような感覚に陥った。

俺の愛情を退屈だと言い残し出て行った元彼女だ。

どうしたらいいのだろうか。

沈黙が流れる。俺と愛はもう関係ない。

なにしろ俺にはまどかがいる。


話すことももはや無い。

「じゃあ、急ぐからまた」

「うん…また」

はないのだがそう言って別れた。

帰りにコンビニでワンカップ大関を買って公園で呑んだ。

吞まなければやっていられない。


鬼ころしも買おうかと迷ったがまどかが晩御飯を作って待っているので買わずに帰った。

帰るとまどかが忙しそうに台所を走り回っていた。

今日の晩飯は肉じゃがらしい。少し味見したら手の甲を叩かれた。

まるで子供時代に戻ったようだ。

思い返せばまどかの顔は母に似ている気がする。

男は母の面影を追うと言うが、俺もそうなのだろうか。


母は厳しい人だった。父はその分おっとりというか大らかな人でバランスがとれていた。

二人とももう亡くなったが、今でも思い出にはしっかり残っている。


一度母から躾と称し、習字の文鎮で叩かれた事もあった。

その傷は未だに跡がある。三針縫う傷だった。


母の面影を追っているのかはわからない。今はまどかの優しさに溺れていたい。


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