第17話 来年は

まどかが居るので早々に仕事納めをした。

「そろそろ帰った方がいいのかな?」

「危ないよ。なんで帰るの?」

まどかは髪の毛を一房取りいじっている。

「んー、離婚とかしなきゃいけないし…」

「話し合いとかできそうな人なの?」

「無理かも、思い通りにいかないと手が出るし」

「裁判とかでなんとかならないかな?」

「調べてみるけど、今年中になんとかしたかったなぁ」

部屋の電気に手をかざし、眩しそうにブレスレットを見た。

「向こうの熱が冷めるまで待ってもいいんじゃないかな」

「うん、でも早めに何とかしたい。元輝くんと結ばれたい」

結ばれる。心臓が大きく高鳴った。


どういう意味の結ばれるのだろうか。いけないと思いつつもついつい考え込んでしまった。これではまるで思春期の少年ではないか。

目で追っているまどかの横顔は美しく輝いて見える。


今日の飯はハンバーグとサラダだ。まどかはハンバーグが得意なようで、とても美味だった。

新婚のようで満ち足りた気持ちになる。

「あ、あのさ、お正月ってゆっくりしたいよね?」

「ん、別にどっちでも。なんで?」

「金がないから俺、すぐに働くと思う」

まどかがえーっと声をあげた。

「私も働こうか?コンビニとか簡単なやつでも」

「いや、それは俺のプライドが許さない」自分で言っていて恥ずかしくなる。

しかしまどかは笑ってくれた。

「大丈夫だよ。来年は私働いて元輝くんにお金渡す」

千と千尋の神隠しのカオナシの真似をし(どんぐりを渡そうと)「あ、あ…」と言ってきた。

「いや本当に大丈夫だから。困ったらよろしくね」と笑い涙を拭き答えた。


何日から働こう。財布と相談した結果だと2日か3日からでも働かなければならなさそうだ。

職業安定所は何日から開いているのだろうか。いつも正月はのんびりと過ごしていたからわからない。


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