第16話  ホワイトクリスマス

その男は細身でイメージとは大分違った。

あのような男性がまどかに暴力を振るっているのか。

ドアスコープで覗くとまだ家の前にそいつは立っていた。

外は寒いがいつまでいるつもりなのだろう。

まどかには暖かい紅茶を入れると飲んで落ち着いたようだ。

 

いよいよと寒くなってきた。雪が降り出し、男はたまらずに帰宅していった。

外に置いてある暖房とテレビを家の中に運び入れ電源をつけた。


「暖かいね、テレビも観れて幸せだね」

「俺、人間らしい生活できて嬉しいよ。まどかちゃんが居なかったらずっとホームレスだった」

「元輝くんって、私と色々したいとか思う?」

「色々って?」まどかは恥ずかしそうに黙って下を向いた。

「ん、ほら、キスしたり…」

「したくないわけじゃないけど、そういうの焦らなくてもいいかなって」

「私、元輝くんに逢えて本当に良かった」ぴったりと身体を密着させて照れくさそうに笑った。

こんな幸せが続けばいいが、先行きは暗くまだ足元が見えない。

これからまどかはどうするつもりなんだろう。

離婚するのか、家に帰るのか。 


「雪、綺麗だね」まどかは窓際で呟く。

「風邪ひくよ。こっちストーブついてるからおいで」

「うん、元輝くんは優しいね」

ブレスレットはまだ着けないようだ。

気に入ってもらえなかったのかと肩を落とした。

「ごめん、俺そういうセンスないかも」

「ん、もったいなくて使えないよ」

嬉しそうに膝を抱いてブレスレットをずっと握っている。

「ほら」とブレスレットを取り、まどかの腕に着ける。

その後何度も何度も腕を掲げて眺め、まどかは抱きついてきて頬にキスをされた。


元輝の膝枕でゴロゴロとしながら「ごめんね、何も用意できなくて」と言った。

「色々気にして考えないでゆっくりしてていいから」

髪の毛をふわりと撫でた。

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