第13話 イブの夜
あれは俺が22歳の頃だった。その時の彼女は20歳。
家を借りて、家から出たくないなら出なくていい。ゴロゴロしていればいいから。と伝えて俺は必死に休みなく働きに出た。
実際に当時の彼女は外出を全くしないようになり、家事も何もしなかった。
最終的には「つまらない」と言われて失恋した。
それを教訓に多少は何かさせた方がいいのか。
だが今回はまどかを外に出すのは危険だ。
やはりしばらくは大人しくしていてもらおうと思う。
「今から帰るね」とラインをしたら「買ってきて欲しい食材」のリストが送られてきた。肉や魚介類、パンやサラダ、香草。これがどのような変貌を遂げるのか。
家に帰るとまどかが窓から見ていた。
俺に気付き手を思い切り振る。それも今は怖いが、嬉しさの方が勝っている。
とりあえず食料を置き、風呂に入った。
今日は久しぶりに稼ぎのいい仕事だったのでビールを二本買ってきていた。
風呂から上がったらまどかと乾杯しようと思っていた。
まどかは狭い台所で行ったり来たりをしている。
後ろから物音を立てずに近付く。ビールを取り出しまどかの頬に当てた。
「ひゃぁっ!ビックリしたぁ!」
「ごめんごめん、乾杯しよ」
「今ご飯作ってるから後で呑むー」まどかは口をへの字に曲げ、丸い目は睨んでるように見える。
晩飯ができる間なぜか緊張して正座していた。
一品ずつ運ばれてくる。まどかも心持ち緊張しているようだ。
ローストビーフとアヒージョに色とりどりのサラダ、軽く焼いたバケッドだった。
「作るの早いね。それにこんなしっかりしたもの食べるの久しぶりだ」
「今日はイブだからね。特別メニュー」照れたようにはにかむ。
空いたグラスを持ち、互いのグラスにビールを注ぎ乾杯した。
「お疲れ様ー!」と料理に手を伸ばす。
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