第12話 できる事

味噌汁は少し味が濃かったが許容範囲内だ。すぐに全て平らげた。

「久しぶりにまともな物食べたよ」

「いつも何食べてるの?」

「虫とかキノコとかね」まどかはえっと声をあげる。

「ごめん冗談。炊き出しが多いかな」


まどかの旦那は仕事はしているのだろう。ならば来る時間も限られている。

「絶対に誰が来ても開けないようにね」と念を押す。


まどかは目を見据え、慎重にゆっくり頷く。こんな子がDVを受けているなんて信じられない。

守りたいが、今の俺には力不足だろう。とにかく仕事を頑張って食べるものに困らなくなるように努力しようと思う。


翌日も翌々日も朝5時に職業安定所の最前列に並び、割のいい仕事を取った。

「今日も誰も来てない?」

「うん、来てない。でも買い物怖いから行けない」いいよいいよと「いる物があったらメールして」と伝えた。

このまま二人だけで大人しく過ごす事は可能だろうか。

いつかはまどかの旦那と対立する日が来るのか。

玄関に鳩の死骸を置いていくような輩だ。何を考えているのかわからない。


とにかく家に来ない事るしかない。また家に来てもドアさえ開けなければ大丈夫だろう。しかしいつまでこのような暮らしを過ごすのだろう。


俺の中ではもうまどかを守りきるという考えが頭にある。

そのうちにまた引っ越しをしなければならないかもしれない。

情けないが、引っ越しをしたばかりで先立つものがない。

また敷金礼金がかからない物件に移動すれば大丈夫なのだろうか。


一度、まどかのスマートフォンを持ちそのまま仕事に行ったが、もう居場所が割れているし意味はなかったか。


もうすぐクリスマスだ。人とり過ごすクリスマスはいつぶりだろう。

何か買えそうなものをプレゼントしたい。

前に俺は同棲をしていた事がある。だが若さゆえか、相手を満足をさせる事はできなかった。

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