第10話 GPS

「わあっコンロだ~」まどかはぴょんと跳ねた。

「今日ほか弁でいいかな?」弁当を差し出すとまたも嬉しそうに跳ねた。


弁当を口に詰め込んで、コンロにガスを通す。

ボタンを押すとチチチチ、と音がした後コンロに火が灯った。

壊れていない。「なんだっけ。三種の神器ってあるよね」

「冷蔵庫、洗濯機、あとコンロかなぁ」俺は頭をポリポリと掻いた。


「冷蔵庫と洗濯機ほしいね。なんだかタイムワープしてきたみたい」と、顔を見合わせて笑う。


「まどかちゃん、本当にここ住む?贅沢できないけど…」

「元輝くんがいてくれるだけでいい」不意に抱きしめたくなった。

だが抱きしめると折れてしまいそうでできなかった。


その日は同じ布団で寝た。人のぬくもりを感じる。



「んーもう朝かぁ、まどかちゃんおはよう…」俺が声をかけると、まどかは布団から出てスマートフォンを持ち、部屋の隅で震えていた。

「元輝くん、これ…」スマホを渡された。


不在着信が30件、メールは長文で1件。

メールはまどかのスマートフォンにGPSを着けているから今日にでも迎えに行くという内容だった。


「殺されるかもしれない…」まどかは泣いている。

「今日は仕事行かないから。傍にいるから」優しく抱き寄せた。繊細な飴細工のように壊れてしまいそうだ。

「とにかくそのGPSを解除しよう」

どこに隠れているのスマートフォンの中を隅々までチェックする。見覚えのない怪しいアプリケーションがウイルスバスターの横に隠れていたのでアンインストールした。


メモを取ったり記録を残さなければ、ここの住所はわからないははずだ。

怪しいアプリケーションを消す間も不在着信が貯まっていった。


「今日、仕事休んだのかも。どうしよう元輝くん」

「守るから、大丈夫だから。ね」かと言うものの、どうやって守ればいいのかもわからない。

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