第9話 同居

まどかは財布も持たずに逃げてきたようだ。

「これからまどかちゃん、ここ住む?」内心ドキドキしていていたが、まどかは「うん。元輝くんはそれでもいい?」と聞いてきた。


俺は「とりあえず飯食った?食ってないなら食べに行こう」とまどかを連れ出す。

牛丼屋のチェーン店だったが、久しぶりに肉を食べた。

明日から本腰を入れて働こうと決心をした。


銭湯で風呂も済ませ、帰る。

歩きながら少し話した。


「殴られるの嫌だなぁ」

「好きな人そんなにいないよ。家ではゆっくりしてって」

「うん…ありがとう」


まどかとは、沈黙の時間が苦にならない。度々に沈黙になるが問題ない。まどかもそう思っているようだ。



翌日から朝の五時には職業安定所に並ぶ事にした。まどかを支えるのは今俺しかいない。仕事から帰ってきて、ドン・クホーテに行き必要そうな物を買った。


金が無い。だからと言ってまどかを働かせるわけにはいかない。

ただでさえ治安の悪い街だ。どうなるか分かったものではない。


買ってきたパジャマに着替える時にちらりとまどかの背中が見えた。

あざらけだ。明日から死ぬ気で働こう。

洗濯機や冷蔵庫などは後でいいだろうと、その日は一つの布団で寝た。


翌日俺は職業安定所が開くのを待っていた。手が寒さでかじかむ。

暖かいコーヒーでも買いたいところだが、無駄遣いに思え抑えた。

ありつけた仕事は工事現場の手伝いだ。日給7000円、これなら満足だろう。

帰りに不燃物置き場をチェックしに行った。運が良い。コンロが捨てられていた。

牛丼を買ってコンロを脇に抱え帰宅した。

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