第5話 テント

迎えに行くとまどかは薄着で駅にしゃがみ込んでいた。


「どうしたの?」上がる息を押し殺して聞く。

目を赤くしてこちらを向いたまどかの口の端は切れて腫れていた。


「急にごめんね。どうしていいかわからなくて」

着ている上着をまどかにかける。

「わかったから。とりあえず暖かい所行こう」

少しの金を持ってきていたのでスタービックスに向かった。


ホットコーヒーを持って行くと「っ痛い…」と言いつつ飲んだ。


「旦那がね、ご飯の味付けが気に入らなかったみたいでね」

そんな事で女の顔に手を挙げるのか。

「仕事もうまくいってないみたい」


「そっか。俺にできる事何かある?」怒りを表に出さないようにして話す。


まどかは微かに口角を上げただけで何も言わなかった。

もどかしい。


「うち、って言っても家じゃないけど来る?」

「いいの?でも迷惑じゃないかな…」

俺は手をブンブンと振って否定した。

「逆にボロボロのテントでごめん」


まどかは小さ足く俺の服をつまんで後を歩く。

「私、遠方から来たから友達もいなくて」

そんなまどかの話を聞きながらテントについた。


それを見たまどかは少し驚いていた。

んでる「本当にテントだ」と笑う。少しだけでも笑顔にできたのは良かった。

「どうぞ」まどかを導き中に入る。

壺から魚の干物を取り出して、炙って食べた。


「家賃かからなくていいけどコンセントとかないよね」

「あ、充電?実はスーパーの裏から盗んでるんだよ」スマートフォンを取り出してまどかは小さく悲鳴をあげた。

旦那からの着信が鬼のようにかかってきている。


今までこんなに離れたことがなかったのだろうか。

「充電しに行く?」と言うと顔を左右に振ってスマートフォンを投げた。


これからどうすればいいのだろう。

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