第3話 女
「あんちゃん、ここは俺の
これでは商売あがったりだ。結局この日も日雇い労働にありつけなかった。
どうも500円ババアに世話になってからというもの、ついていない。
心機一転残りの金を持ち、銭湯に向かった。
二着しかない服も変えて、髭も剃った。髪は伸びっぱなしだが床屋に行く金はない。
仕方なく髪を一つに縛った。
さっぱりしてこれから運が上がるといいのだが。
翌日は仕事にありつけた。日当3500円の仕事だ。割には合わないがまぁいいだろう。
工場の仕事が終わり、帰り道に公園のベンチで佇んでいると隣に女が座った。
「こんにちは」その声は冬空に澄んで響いた。
久しぶりの女の存在に胸が高鳴る。
容姿はずば抜けて美人ではないが愛嬌がある。年齢は22~25くらいだろうか。
髪はボブで白いコートを着ていてタンポポの綿毛のようなイメージだ。
こんな街に不釣り合いすぎる。
「こんにちは。何か用?」少し冷たい態度だったかもしれない。
「いいえ、用はなくて。でもあなたが気になって話しかけちゃいました」女は照れくさそうで、少し寂し気にふふ、と笑った。
女に話しかけられるのは風呂に入ってこざっぱりとしたせいなのか、こんな感覚は久しぶりだ。
「俺、ホームレスだよ」下卑た笑いが出た。自分でもなぜそう言ったのかわからない。
この女にはなぜか嘘がつけない気がする。
「そうですか。家があってもなくても生きているなら同じです」
「ありがとう。俺は元輝っていうんだけど君は?」
「まどか、です。また逢えますか?」
「スマホとか持ってないけど、またここでなら逢えるよ」
「じゃあ、また明日この場所で」
女はふわりとどこかに行った。
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