第2話 引きこもりになりたい




誰しも働きたくはないものだ

俺ことアリシア・リリースは思う

できることなら一生部屋から出たくない

テレビ見て漫画読みエロ本読んでカップラーメン食って寝て、そんな生活を送りたい

あともう一つ希望があるとすれば誰か長男を引き取って欲しい



『マスター、 ギルバート を引き離すのは流石に無理があると思います』



そしてシステムさんは辛辣

俺の味方はどこぉー?

左翼の長男、右翼のシステム

普通に終わってるな

とにかく、俺は引きこもりたい

ギルバートとかとも顔を合わさず一生引きこもりたい

俺は長男が用意していた部屋を見渡す

窓には鉄格子、そして家具は高級品

クローゼットを開けるとお上品なドレスがいっぱい

一万年前のよりも格段にオシャレになってる

あれれ?カップラーメンは?エロ本はどこかな???

試しにキングサイズのベットの下を覗くがエロ本はない

oh...

ドアは鍵がかかり開けられない

oh...

長男、お前、俺が美少女だとはいえ仮にも継母を監禁するのは良くないぞ?



『戸籍上マスターは公爵と離縁しており ギルバート と結婚しております』



え、俺婚姻届にサインしてないよ?



『魔界の王だからなんでもできんじゃない?多分』



雑すぎない、システムさん

まァもうこの部屋からは非力な俺では脱出できないからつまんないけど引きこもるか

暇だなを思いふと本棚を見ると生前(二度目の継母時代)読んでいた本や俺が好きそうな本が並んでいた。やったぜ!

俺は異世界に転生してから推理・ミステリー小説にハマって読んでいたが長男、よくここまで調べたな

メイドに下町で本買わせてたのに

んーと、とりあえず『人形は嗤う』という推理小説を手に取りソファに腰掛けた

うっわ、ソファフッカフカ



『そりゃルブル帝国の初代皇帝が使っていた国宝モノだから』



いらぬ情報ありがとう、システム

お陰で心は貧乏人の俺はソファからそっと立ちこれまた高そうなベットに座って読もうとした



『それはシャルル大聖堂で崇められた大聖女メルルが十年かけて作らせたベットだよ。高い物づくしで良かったですね』



うん、なんでこう余計なこと言うのかな

俺はまた移動して今度は床に体育座りして本のページを捲った

うんうんうん、なにこれおもろ!

本の内容は主人公の幽霊屋敷と呼ばれる伯爵邸に務めるメイド、コレットが不気味な人形と血痕が付着した手紙を拾い観察力の良さで手紙の送り主を探すというホラー風味の小説

一万年前とは全然小説の内容がグレードアップしている

人類って凄いね



『その作者は魔界に住む 獣人型魔族ポール・リガー です』



ちょっとシステムさんは黙ろうか

俺が本を読んでいるといつの間にか目の前に長男がいた

ホラーだよ、その幽霊みたいな存在感

俺はお得意のポーカーフェイスを使って顔面固定で耐えた

それよりあの一度目の人生の俺より100倍綺麗なムカつく顔面を殴りたい



「ギルバート、何のようですか?」



少し睨んで長男に問う

オメェのせいで俺は閉じ込められてんだよ!



「ふぅん、閉じ込めたことは聞かないのですか。あなたなら第一にそれを聞くと思ってました。まあいいでしょう、別に俺はアリシアに会いに来ただけですから」



ふーん、さっさとどっか行けよ

俺が長男を無視して本を持って立ち上がりベットに横になると長男はまた笑みを深めた

きっしょ、なんやコイツ



「怒っているアリシアも実に愛らしい。クソ親父と攻略結婚でほんっとうに良かったです。でなければ貴方はクソ親父のモノになっていましたしね」



俺が無視し続けるとギルバートがベットに上がってきた

そして後ろから俺を抱きしめ堪能し始める

きっも、きっしょ、くたばれや

腕から逃れようと腕を解こうとするがもはや非力すぎて動くことすら出来ない

なんなん、この状況



『日頃の行いが悪いからバチが当たったんじゃないですか?』



違うもーん、俺悪くないもーん

全部息子たちを置いて死ぬクソジジイと長男が悪いんですぅー



「ああ、可愛いすぎる俺のアリシア」



「んむっ」



長男にキスされた

わーお、俺のファーストキス奪われちゃた

殺してやろか?



『死にたいならどうぞ』



やめときます

でもさ、システムさんもこの状況見て俺可愛そうだて思わない?



『私的には外見は美少女なマスターとイケメンがイチャイチャしてるのを見てリア充くたばれと思うだけですけど』



酷くない?

俺悪くない、ただ長男が勝手に抱きついたりキスしてくるだけ

俺も男とイチャイチャしたくねぇんだよ




「そうだアリシア、貴方にこれを渡したくて...」



長男がどこからともなく四角い箱を出した

おいおい、まさかこれって......ゾワリと鳥肌が立つ



『わーお』



長男が俺を腕から開放しベットから降りたかと思うと跪いた

そして俺の左手にキスをし箱を開けた

中には一流の宝石細工職人が手掛けただろう美しく輝きを放つ小さめの宝石が嵌っていた



『終わったね』



終わってるわ



「愛しいアリシア、俺の妻になってもらえませんか?」



え、やだ



『この場合マスターが拒絶すると99999億の確率でギルバートが貴方以外の生命を奪うでしょう』



システムさんの無慈悲な回答に掠れる声を振り絞りなるべく優雅に見えるように美少女フェイスを動かした



「ええ、喜んで。あまりお役に立てないかもしれないけれど、ギルバートが望んでいるなら」



俺の返答にギルバートは顔を朱に染めて左手の薬指に指輪をはめた

でもな、言うぞ

お前一万年前とはキャラ変わりすぎ

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一度目はサラリーマン、二度目はTS転生して未亡人の公爵夫人、三度目の人生は引きこもりになります ちーずけーき @04110411

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