第33話 やさしい微笑み
コンビニのガラスドアを、まるで実態がないかのように通り抜けた涅(くろ)。駐車場に並ぶ10台のゴツいバイクの前に立つ。
コンビニの目の前の都道、そして交差する横を走る国道の途切れない車の往来を見定めているようだ。
交差する都道、国道の車が途絶えたほんの一瞬、涅(くろ)がバイク群に掌をかざし、小さな声で一言囁いた。
掌を閉じるのと、都道、国道に車が駆け抜けると同時に、何もないただ広い駐車場が広がっていた。
店の中、魄(たま)がいるレジの前、そして皓(しろ)がいたブックスタンドの前に、不良たちが身につけていた物の千切れた残骸を残して、ドロリとした赤黒い液体が床を汚している。
「あーあ、ふたりとも随分と派手にやらかしちゃったね」
いつの間にか店内に戻った涅(くろ)の呆れたような声が響く。
「だって失礼なんだよ。汚い手で、あたしに触ってきたんだもの」
美少女の魄(たま)が血色の可愛い唇を尖らせて呟いた。隣には何も語らず赤く濡れた口元を縫う、皓(しろ)がやさしく微笑んでいた。
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